「アカリ、葉瀬中の文化祭のチケットもらったけどいる?」
おお、たこ焼き。久しく食べてないなぁ。
そういえばこの間ヒカルがたこ焼き食べたいとか言ってたな。
私がたこ焼き食べに行かないかと誘うと、
「何、たこ焼き?ああ、もう文化祭の季節か。そいうやそんなことあったなぁ。」
あったなぁ?相変わらず良く分からないことばっかりいっている。あれ、葉瀬中の文化祭なんて言ったかなぁ。
「ん、行く行く。2時でいいよな。」
うん、よかった。ちょうど二時から行こうと誘おうと思ってたからよかった。
ヒカルと息がぴったりなのがうれしい。
良くヒカルはど忘れするから念を押して言っておく。
「じゃあ、絶対忘れないでよ。2時からだからね。」
文化祭当日。
流石に30分前じゃ少し早く来すぎたかな。
当然、まだヒカルは来ていない。
周りを見渡すと大人がそこそこ集まっているブースがある。
文化祭だとはいえ少し珍しいな。
ヒカルは相変わらずマイペースに少し遅れてくる。
遅れてくるのが分かっているのに、相手に合わせて時間通りにくることができない生真面目さに少しいらいらする。
ヒカルおそーい。
「わりい、わりい。」なんて少しも悪く思っていない、いい笑顔で言ってくる。まったく相変わらずだ。
まずたこ焼きを買って食べながら二人で歩く。ちょっとデートっぽい。まあ、相手はヒカルだからなぁ。
しばらく見て周る。
さっきの大人が集まっているところでヒカルの足が止まる。
「ちょっと見ていっていい?」
そういうとヒカルは足を止め、おじいさんが打っているのを後ろから見ている。
おじいさんがどいてヒカルの番になる。
中学生のお兄さんが石がたくさんおいているけど、どういうルールなんだろう。
ヒカルは正解のところに石を置くと、周りの人たちが拍手を送っている。
次から次へと中学生のお兄さんが石の並びを変え、1子までとか3子までとかいっている。
おそらくヒカルが置いていい石の数のことを言っているのだろうということまでは分かったけど他はさっぱりだ。
ヒカルが毎回少し考えるそぶりをしたかと思うと石を置いていく。
その度に大人たちから歓声が沸く。私のことではないけどヒカルが褒められるのは少しうれしい。
中学生のお兄さんも驚いている。
どうやら、次が問題らしい。流石に見ているだけでは飽きてきた。
ヒカルが一手打った後に、後ろから和服を着たお兄さんが碁盤にここだろとタバコを押し付けた。
お兄さん同士が言い合いになる。
なぜかヒカルも怒っているらしく、対局するみたいだ。私もう帰ってもいいかな。
言い合っているのを聞く限りヒカルと対局するのは加賀さんというらしい。
対局しだすと、非常に話しかけにくい雰囲気になる、仕方ないから待つことにする。
しかし、ヒカルの真剣に集中しているときの顔を初めて見た気がする。
その横顔はとても大人びて見え、胸がなぜかズキズキする。
碁盤では絵を描いていくかのように、白と黒の模様が広がっていく。
ときどき石を抜いたり、まるで絵描きがキャンパスを修正するみたいだと思うとなんだか面白い。
いつの間にか打っている二人の世界に引き込まれるようだ。
面白いなぁと、つい思い声をかけてしまうと。
「ねえ、ヒカル?」
「うん?あ、やべ」
変なところで声をかけてしまったのかヒカルが石を落とすように碁盤に置かれてしまう。
バシッといい音を立てて加賀さんがすかさず打ち込んでくる。
「待ったなんてまさかいわないよな。」
ヒカルがおでこに手を当てアチャーという顔をしている。
そしてボソッ小さな声で、やっちまった。これも運命力か。などといっている。おそらく私以外は聞き取れなかっただろう。
申し訳なくなって、ごめんと誤ると、気にするなという感じで手を上げる。
その後何手か進むとまとめて石を加賀さんが持っていく。
「投了かい?」
「何この程度で勝った気でいるの。まだだ、まだ分らんよ。」
おお、ヒカルかっこいいけど、これってきっとかなりまずい状態なんだよね。
そうこうしているうちにどんどん打っていく。
ヒカルが一手一手打つごとに、加賀さんの顔色が変わっていく。
そうこうしているうちに、終局する。
最後に打ち終わると何か懐かしむような感慨深いような不思議な顔をして
「あと一手足りなかったか。持碁だね。」
「信じられん。この怒涛の追撃」
お兄さん二人が唖然としている。
というと、指導していたお兄さん、筒井さんというらしいの人の上着を脱がし、ヒカルに投げつける。
ヒカルは文句を言っている。
話の流れから行くとヒカルは中学生の大会に出るらしい。
ふーん、面白そうだけど。見ているだけじゃつまらないしなぁ。
まあ、がんばってきてね。