ヒカルの傍観者   作:dorodoro

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第21話

プロ試験本戦が始まった。

ヒカルとは、なぜか気まずい雰囲気で話しかけられない。

こんなことは初めてだ。

こっちは気になってちらちら見てしまうけど向こうは私がここにいることを少しも気になっていないようだ。

ヒカルの大人びた雰囲気を醸し出す横顔に嫉妬のような胸にもやもやする何かを感じる。

 

最初のくじ引きで対戦相手の日程がすべて分かる。

予選と違って緊張はない。それよりもヒカルとの対戦のほうが気になる。

ヒカルとは13戦目かな。

もう少し後のほうがうれしかったけどこのくらい早いほうがいいのかもしれない。

 

1回戦目の相手は足立君というそうだ。

1組の上位らしいのだけど、いまいち強いというような雰囲気を持っていない。

おそらく、地味で堅実な碁を打ってくるかと思われるけど。

この対局は、まったく負ける気がしない。

 

昼ごはん前に、ヒカルの対局者が泣きながら出て行くのが見えた。

ヒカルは、さっさと片して出て行ってしまった。当然中押し勝ちだろう。

 

私の方はというと、時間はかかったけど相手はひたすら堅実に打ってくるだけだったのできっちり打って最終的には相手が投了した。

調子もいいし、ヒカルと打つまでにもっともっと強くならなきゃ。

 

 

2回戦目の相手は小宮君というそうだ。

昨日とは打って変わっての攻め合いになる。

何かちょっと合わないというか私は苦手な感じのする打ち方だった。

最後までもつれ込み辛くも1目半勝ち。やっぱり院生の人はみんな強い。

ちなみにヒカルは全部中押し勝ち。

時間も殆どかけずに圧倒的強さで勝っているようだ。

ヒカルと話したいと思っても、いつも時間ぎりぎりに来て誰よりも早く帰ってしまうから結局話せずじまい。

 

 

3回戦、4回戦も危なげなく勝つ。

勝ったのはいいけど僅かに疲れが出たのかミスがところどころでてしまい、非常によろしくない。

 

 

5回戦目は奈瀬さんだった。

ヒカルについて聞いてみるも、最近ピリピリしているし余り話していないそうだ。

和谷君という人が同じ研究会に所属しているそうで、彼に聞いたほうがいいというアドバイスを貰った。

今回は実力を出し切って中押し勝ち。形も最初は少し悪かったけどこんなものかな。

「そういえば、前も進藤のこと聞いてきたけど知り合いなの?」

「はい、幼馴染です。」

「え、本当に。こんなかわいい幼馴染を無視して帰っちゃうとかありえないんだけど。」

どうやら初日にちらちらとヒカルを見ていたのとか全部彼女には見られていたらしい。

ヒカルはやはり注目度も高いらしく、そういうことすると目に付くんだって・・・・・・。

 

本戦に女の子は余りいないので、ついいろいろ話してしまう。

ヒカルが最近会ってくれないとか、どうとか、こうとか。あれ、私ヒカルのことしか話していなくない。

ふと気が付いて改めて奈瀬さんの顔を見るとニヤッとした顔をしていて、

「進藤も幸せ者だねぇ。幼馴染にこんなに思ってもらえるなんて。あんなやつのどこがいいんだかねぇ。」

あれ、なんか勘違いしてなくない!?いろいろ言い訳するも「わかったわかった」とまったく分かっていない顔して言われてしまった。

絶対あの人何か勘違いしているよぉ。

 

 

 

 


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