【完結】楽園の名を持つ少女に惚れた俺は、彼女の為に命を懸ける 作:塊ロック
皆さんはやりますか?
「エッ、何でそんなところに居たの!?」
夜。
パルドに頼み込んで深部までのルートを聞いていた。
「頼む……!教えてくれ」
「え、えぇ……私前に忍び込んで痛い目見たんだよ?」
「それでも……!」
「何でそんな頑なに理由も話さないの……?」
「それでも……!」
「ガンズ?」
「それでも……!」
「話を聞いてよ」
「いってっ!?」
殴られた。
流石に駄目か。
「もう、そんな必死に私に頼んでくるなんて……何か悪いものでも食べた?」
「いや……ただまぁ……ちょっとな」
リンの存在は、何となく伏せたほうがいい気がした。
明らかにサクラは知らない。
パルドはサクラと仲が良いし、こいつがバラす可能性が大いにある。
リンがここに居ると知ったサクラは絶対に何かやらかすだろう。
アイツは妹を溺愛してるからな……。
だから、パルドに事情を話さないで何とかルートを確保するしか無い。
「……もー、分かったよ」
「!」
パルドがため息を吐きながら項垂れた。
「あんな場所に何の用があるか知らないけど、これが地図。これ盗む……手に入れるの大変だったんだから」
「パルド……恩に着る!」
パルドから今どき珍しい手書きの地図を受け取る。
最近は紙も限られてきて紙媒体はほとんど見かけなくなってきた。
とはいえセキュリティの観点からも重要な情報は紙に纏めることもある。
閑話休題。
「……ガンズ、身体がもうボロボロなのに無理しないでよ」
「ははは、大丈夫だ。もう俺は前線から外された後方勤務員だからな」
そう、流石に身体が駄目になりつつある今俺は前線から外された。
いつ崩壊汚染の限界を迎えるか分からない身なのだ。
これ以上崩壊の被爆に晒されるのも崩壊エネルギーを行使するのも禁じられた。
「……ガンズまでいなくなったらさ」
「うん?」
「私も、寂しいんだ」
「……気を付ける」
もう一度パルドに頭を下げて、俺は走り出した。
――――――――――
それから、俺は定期的にリンの元を訪れては三十分程度他愛の無い話をするようになった。
相変わらず俺は彼女の顔を見ることは出来なかったが、声色は明るくなりつつあった。
「へぇー、お姉ちゃんそんな事を……」
「ああ、この前なんて傑作だったぞ。あまりにもコズマが動かなかったからアイツ、ヘッドホンをコズマに被せたんだ」
俺個人としても、この時間は結構大切に感じることがある。
前線から外され、戦うこともなくなりどこか消化不良を起こしていたからかも知れない。
「おっと、もうこんな時間か」
「え……また、来るよね……?」
「勿論。すぐは無理かもしれないけど、必ず来るよ」
「うん!約束!」
「ああ。またな、リン」
「バイバイ!お兄さん!」
――――――――――
「ガンズ・ロック。君の担当はここでは無いはずだが」
「……っ!?」
抜け道を通った後、不意に声を掛けられて硬直してしまった。
この、聞いた奴すべてを拒絶するかのように冷たい声は。
「け……ケビン……」
白髪の青年が、そこには立っていた。
全身から滲み出る冷たいオーラ。
一切のスキを見せない刃のような気配。
彼こそがこの火を追う蛾の最強戦力。
十三英傑第1位……「救世」のケビン。
そいつが、目の前に居た。
「ここで何をしている」
「えっと……」
どうする。
ケビンがこの抜け道を知らない可能性は高いけど、そもそも確かにこのエリアは俺の管轄外だ。
下手な言い訳は通じない。
最悪ここで殺処分もあり得る。
どうする。
どうする。
どうする……!?
「……君ももう長くないんだ」
「えっ」
「あまり、無理をしないでくれ」
「あ、はい……」
意外だ。
ケビンが俺みたいな末端を気に掛けるなんて。
「あら?ケビンじゃない。それに……ガンズも」
……え?
「エリシアか」
今、最も会いたくない女がここに居た。
「え、エリシア……」
「ハァーイ、ガンズ。最近あたしの事避けてるみたいで悲しいわ」
「……すまん」
「ケビン、メイが探してたわよ」
「……分かった」
そう聞くやいなや、ケビンはすぐさま姿を消した。
ここに、俺とエリシアが二人だけになってしまった。
「「………………」」
沈黙。
俺はさぞ苦虫を噛み潰したような顔をしてるんだろう。
対する彼女は、いつもの微笑みのまま。
「大丈夫よ。ケビンは隠し道を知らないわ」
「っ……!」
と、言うことはエリシアは知っている。
「だって、フェリスに教えたのはあたしだもの」
「マジかよ……」
「……サクラに気を遣って、黙ってあげてるのね」
「……そこまで知ってるのか」
何故リンが幽閉されてるのかも、知ってて……?
「それは、あたしも知らないわ。決めたのはメイとメビウスだもの」
「そうなのか……」
「……黙ってて欲しい?」
「……出来れば」
「それじゃあ、条件がひとつ」
思わず身構えた。
でも、彼女をまた一人にするのはもっと嫌だ。
「あたしの事、何で避けたの?」
「……それは」
……答えるべきか?
………………まぁ、もう失恋してるし。
別に良いか………………。
「……フラれたから」
「……えっ」
エリシアはキョトンとした顔になった。
「俺が、アンタに失恋したからだ」
「……そうだったの。どうして?」
「どうしてって……アンタ、エデンとデキてるんだろ?」
「違うわよ?」
「は?……ええっ?!」
「エデンはあたしの親友よ」
「え、えぇ……?」
嘘だろ。
親友ってそんなに距離近いもんなの???
「そ、れ、よ、り♪」
エリシアがニコニコしながら俺の顔を覗き込んできた。
「ガンズ、あたしの事好きなんだ」
「……そうだよ」
認めるしか無かった。
勘違いが産んだ結果。
もう言い逃れできない。
「いつから?」
「初めて会ったあの日から」
「えっ……そうなの?」
「ああ。あの日から……俺は、その、エリシア……君に夢中だった」
崩壊する街から俺を救ってくれた。
だから、俺のこの命は……。
「だから、俺は……俺の命は、アンタのために使いたいんだ」
「わぁ……とっても、情熱的だったのね貴方は」
「………………」
「からかってる訳じゃないの。だって貴方……あたしと話す時はいつもぶっきらぼうで、すぐ逃げちゃうじゃない」
「……皆まで言わんでくれ」
「全部照れてたのね」
「エリシア!」
「うふふ……でも、ごめんなさい」
突然の謝罪。
流石に、これが何を意味するのか分からないほど鈍いつもりではない。
「あたしは……
皆。
それが何を指しているのかは……分からない。
「だから、誰か一人のものになることは出来ないの」
「……そうか」
振られた。
けどまぁ……納得はした。
本人から言われたんだ。
「そうかぁー……」
納得はするけど無茶苦茶凹む。
「でも、やっぱり人から好かれるのは嬉しいわ」
「そうかい……まぁ、それがアンタの美点でもある」
「あら?ガンズがあたしを褒めるなんて珍しい」
「だって……皆アンタのこと、好きだろ」
「……あら」
何だかんだ英傑全員から好ましくは思われてるんだろう。
人を惹き付ける魅力が、彼女には確かにあった。
「今日のガンズは、おしゃべりね」
「……やっと、胸のつかえが取れた気がする。アンタと……こうやって、気楽に話せるのが存外嬉しいのかも知れない」
「じゃあ、貴方の話を聞かせてくれない?」
「え?そう……ゴホッゴホッ、ゲホッ……!!」
「ガンズ!?」
慌てて駆け寄ろうとしたエリシアを手で制す。
口を抑えた手に生暖かい液体がべっとりと付いていた。
「血が……」
手のひらに夥しい量の血。
「……そろそろ、かな」
俺の寿命、思ったより短いみたいだ。
2部が始まるまでに完結させたかったのですがなかなかそうもいかない様で。
あと3ページか4ページで完結できるかな……。