【完結】楽園の名を持つ少女に惚れた俺は、彼女の為に命を懸ける   作:塊ロック

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13話

 

あれから何日経っただろうか。

俺はあれから倒れて、そのまま搬送されたらしい。

 

幸い大事には至らなかったが……いつ、また倒れてもおかしくはない。

 

気掛かりなのは……リンに暫く会えていない事だった。

 

「ガンズ……」

 

病室のベッドの上で横になる俺を、パルドが悲しそうに見つめていた。

 

「心配すんなパルド……こんなの一時的なものだ」

「でも……」

「お前は俺達の希望、十三英傑だろ?こんな下っ端に構ってる暇は無いだろ」

「……うん」

「パルド。お前を必要としてる奴の所に行ってくれ」

 

パルドを病室から送り出す。

その後に、来客が現れた。

 

「……来たわ、ガンズ」

「悪いな……アポニア」

 

アポニア。

何故彼女を呼んだか。

 

「良いんだね」

「ああ、頼む」

「ガンズ……行って『ください』」

 

アポニアの持つ戒律の力。

それは、暗示を掛ける代物であるが……使い方次第では本人に限界以上の力を引き出させる。

 

「っく……!う、が……!」

 

全身が悲鳴を上げる。

それでも、身体は動く。

 

「……ガンズ。貴方に、良くない未来が待っているのが見えたわ」

「そうかい」

「リンを、お願い」

 

……アポニアには、隠せなかったので詳細を話してある。

 

「エリシアも、リンを頼むって」

「……そっか。頼まれたなら仕方ない」

 

一応念の為、相棒のバットを手にする。

 

「行ってくる。ありがとな、アポニア」

 

彼女は、応えなかった。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

今日は少し、基地の中が慌ただしかった。

何でも、次の律者が降臨するらしい。

あちこちで怒号が聞こえる。

 

そんな中、俺はいつもの道を通ってリンの元まで辿り着いた。

 

「リン」

「あっ、お兄さん……!良かった、来てくれたんだ」

「すまない、遅くなった」

 

相変わらずここは暗い。

今日は何を話そうか……。

 

「ううん、大丈夫。お兄さんが来てくれるなら私は……」

「居たぞ!!」

「っ!?」

 

視界が真っ白になる。

そして、大人数の足音が辺りに反響する。

 

「な、何だ……!?」

「居たぞ、律者だ!」

「えっ……!?」

 

思わず声が漏れる。

律者だって?!

俺は死に体の人間だぞ……!

 

そして、俺の後ろにひとりまだ人物がいたことに思い至る。

 

「え……まさか、リンが……!?」

「え、な、何……?」

 

……ライトに照らされたリンの姿は、痛々しいものだった。

鮮やかだったであろう髪はすっかりその輝きを失い、身体は痩せ細っていた。

 

しかし、白い肌にくっきりと崩壊汚染の爪痕は刻まれていた。

そして、瞳が……黄金のように爛々と輝いていた。

 

「律者だ!」

「殺せ!」

「人類の敵!!」

「何が何でも……!!」

「何が何でも律者を殺せ!!」

「人の意識を残している今のうちに始末しろ!!」

 

おかしい。

明らかに常軌を逸している。

火を追う蛾の兵士たちはこれほど錯乱しているわけが……。

 

まさか。

 

「戒律か……!?」

 

決して崩壊に屈しない。

最後まで崩壊に抗うことを諦めない。

そういった戒律をアポニアから受けていたという話を耳にしたことがある。

 

これが、最悪の形で暴走している……!?

 

「やめろお前ら!この子は人間だ!」

「お兄さん逃げて!」

「退けガンズ!」

「退かねぇ!!」

 

手にしたバットに岩石を纏わせる。

岩でできたギターを構える。

 

「絶対に、通さねぇ!!」

 

防壁を展開する。

少しでもリンが逃げる時間を稼ぐ。

それか、騒ぎを聞きつけた英傑に対処してもらうしかない。

 

「退けえええええええええ!!!」

「ぐっ……!!」

 

物理シールドと元素シールドの二重構造だ。

大抵の攻撃は防げる。

 

だが……。

 

(数が、多い……!)

 

兵士の数は35人前後。

全員の武器がこちらに向けられている。

なんとか耐えているが……時間の問題か。

 

「やめて!やめて下さい!お願い……!お兄さん……!」

 

背後からリンの必死の説得が続く。

しかし、眼の前の兵士たちにはまるで届かない。

 

「うっ……げほっ……マジか」

 

身体から力が抜け始め、口から血を吐いた。

流石に戒律で騙すにも限界があるか。

それに、崩壊エネルギーを使用したことにより汚染が進行、手に力が入らなくなってきた。

 

びしり、とシールドに亀裂が入り始める。

 

「やめて……やめて……!」

「殺せ!」

「殺せ!」

「律者は全て殺せ!!」

「させるかよ……!!」

 

リンを頼まれたんだ……。

こんな所で、こんな所でひとりで死なせてたまるか……!

 

「……あ」

 

……無情にも、俺は限界を迎えてしまった。

膝から崩れ落ちる。

ギターがボロボロとただの土塊に戻る。

足音が俺に殺到する。

 

ごん、と鈍い音がして、遅れて頭に激痛が走る。

世界が揺れて、ひっくり返った。

 

「う、げ」

 

殴られて、蹴り飛ばされた。

 

「リ……ン……」

「い、いや……やだ……来ないで……」

 

殺せ!

殺せ!

こいつらを許すな!

今のうちに!

 

「やめ……ろ……!」

 

ちくしょう。

ちくしょう、ちくしょう。

何で身体は動かないんだ。

何で、何で何で……!!

俺は見てるだけしか出来ない……。

 

「リン―――――!!」

 

そして、数々の凶器が……少女の小さな体を貫いた。

 

「やめろおおおおおおおおお!!!!」

 

俺の声は、無力に木霊した。

 

 

 

 

 

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