【完結】楽園の名を持つ少女に惚れた俺は、彼女の為に命を懸ける   作:塊ロック

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21話

 

エリシアの顔をした何者か。

 

肌で感じる違和感。

体験した事は……無い、このプレッシャー。

 

「酷いわ、ガンズ。あたしよ?」

「………………」

「もう、顔が怖いわよ?」

「エリ」

 

俺は頭の上に居るエリをそっと手の上に乗せて目線を合わせる。

 

「な、何……」

「雷電芽衣のところへ行け」

「で、でも……」

「行け」

「わかったわ……!」

「なぁに?ガンズはあたしよりその小さいのの方が大事なの?」

 

エリを送り出す。

この間、目の前に居る女は微動だにしなかった。

 

「……………」

「だんまりなの?そろそろ泣いちゃうわよ」

「うるさい」

 

俺は戦闘態勢に入る。

 

「……何をするつもり?」

「お前は」

 

そうだ、こいつは。

 

「お前はエリシアを穢した」

「……あたしが?あたしを?うふ……ふふふ」

 

……エリシアとはかけ離れた笑い方。

こいつは、ガワと声だけ真似をしているだけだ。

 

「おかしなことを言うのね、ガンズ。あたしは貴方の愛したエリシアよ」

「その声で喋るんじゃねぇ!!」

「きゃっ……!」

 

俺は、相棒で殴りかかる。

相手もすぐさま弓を手に出現させ受け止めた。

 

「危ないわガンズ。止めましょう?」

「黙れ!」

「ガンズ」

「俺の名を呼ぶなァ!!」

 

ハンマーと弓をの奇妙な鍔迫り合いを終わらせるべく、右足のハイキックで敵対者の脇腹をフルスイングする。

 

「ぐっ……!流石の馬鹿力ね」

「知った口を!」

 

ハンマーを上段に構えて思いっ切り振り下ろす。

偽物は既にその場に居なく、虚しく地面を叩き割った。

 

「知ってるわ。あたしは今楽園を取り込んでいる。貴方の情報は全てあたしの中よ」

「行けっ!」

「わ」

 

叩き割った地面を能力で大小様々な瓦礫を浮かび上がらせ、偽物に向けて飛ばす。

 

「でも、無駄よ」

「な、ぐ、ぎぃ!?」

 

視界にノイズが走る。

激しい頭痛が起きる。

三半規管がめちゃくちゃに揺らされ、立っていられるに片膝をつく。

ハンマーがばらばらと砕け落ちて鉄パイプだけになる。

 

「う、お、おえぇぇ……っ!?」

 

あまりにも酷い揺れに思わず吐いた。

 

「そんなに嫌がらなくても良いじゃない。傷付くわ」

「げほっ……げほっ……な、何をした……!」

「言ったでしょう?あたしは楽園を取り込んだ。だから……そこに生きる貴方を侵食するのも簡単よ」

「何……ぐっ……!?」

 

首から左眼にかけて燃えるように熱くなる。

 

「貴方、前はこんな風に傷が付いてたものね」

「く、くそ……」

 

こいつ、俺の情報を崩壊汚染されてた時に書き換えやがったのか……!?

 

「ああ可哀想なガンズ。余命幾ばく、死に体で死ぬまで戦って」

「黙れ……」

「それでも気持ちは届かなかった。そして……あら、貴方は前の文明の侵食の律者に殺されたのね」

「気持ち……だァ?」

「彼女には伝わらなかった。けど……エリシア(あたし)は貴方を愛してあげられる」

「……は?」

 

今、コイツは何と言った。

 

エリシア(あたし)も、愛してるわガンズ」

「やめろ……」

 

蹲るしか出来なかった身体を無理やり起こす。

こちらにゆっくりと歩いてくる偽物を殺すつもりで睨みつける。

 

「貴方はあたしを愛してる。あたしも貴方を愛せるわ。だから、あたしの中へ来て」

「うるさい……!こっちから願い下げだ!この偽物ッ!!」

「!」

 

こちらに歩いてくるなら好都合。

なけなしの力を振り絞り鉄パイプを振り上げ顎を狙う……!

 

「……でも、貴方にそれは出来ない」

「………………っ」

 

……()()()

 

顎に迫るすぐ目の前で、俺の手は止まった。

 

理由は明白だ。

 

……エリシアの顔なのだ。

 

俺が惚れた女の顔。

 

その顔に、傷がつけられるだろうか。

 

「くそっ……ちくしょう……!」

 

俺には、出来ない。

 

 

少しずつ、偽物は迫ってくる。

 

……終わり、か。

二度目の人生、少なからず悪くない日々だったなと思い返せる。

 

エリは、逃げられただろうか。

 

少しずつ偽物の手が迫る。

終わりが、近くなったか……。

 

「……あら?」

 

 

……その手が、空を切った。

 

 

「うふふ……でも、無駄よ。この楽園はもう……あたしの物なんだから」

 

 

そんな声が、遠のいていく意識の中で聞こえた。

 

 

 

 

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