【完結】楽園の名を持つ少女に惚れた俺は、彼女の為に命を懸ける 作:塊ロック
意識が戻ってくる。
全身が泥の中に居たように重い。
……近くに、誰かが居る。
「う……な、くそ……重てぇ……」
呻きながらなんとか、立ち上がる。
目の前に座る一人の女性。
俺はあまり接点がなかったが……顔は知っている。
「エデンか……」
「気が付いたようね」
手にワイングラスを持ち、俺を見据えていた。
「アンタがここに俺を?」
「ヴィルヴィが仕込んでいた保険の様ね。近くに居る英傑の元へ移動するプログラムよ」
「何でまたそんなものを……」
「……見越していたのでしょうね。この状況に陥ることを」
「どうやって……」
「ヴィルヴィが律者と一時的な協力関係にあった……けれど、その後のを事を考えた保険のため……と言ったところかしら」
ヴィルヴィが律者と……?
ただ、そんな疑問はこの際どうでも良い。
問題は。
「……この状況、どうにかなるのか?」
この一点のみ。
「今、芽衣さんがエリ……エリシアを復活させようとしているの」
「雷電芽衣が?」
「ええ。そして……私は、貴方にこれから残酷な
「……お願い?」
エデンから、俺に。
それは俺でないとできない事なのだろうか。
「……英傑達は自らの命と引き換えに律者の力を削いでいったの。だから……今はもう私しか残っていない」
「え……」
十三英傑の事実上の壊滅状態。
こんな状況下でどうしろと。
「エリが復活するまでの間……貴方には侵食の律者を足止めしてちょうだい」
「は……?足止め??」
「ええ。残念ながら私では太刀打ち出来ない。そして……芽衣さんをエリの元へ導かなくてはいけないの」
「……わざわざ俺に自我を与えたのはこのためと?」
最後の悪あがき。
本当に小さな抵抗。
それが俺の役割だと、そう言っているのか。
「……悪い事をしたと思っているわ。貴方がエリを好きなことを知っている。けれど……私も、エリを愛しているの」
「……そうか。いや、そうだろうな」
俺の想いは一生使ってでも届かない。
その座にはエデンが既に居るから。
「分かってたさ。そんな事」
でも。
でも俺は。
「やるよ」
あの、花の様に美しく……この世界で最も強い無瑕の少女を好きになってしまった。
彼女の為に命を懸けるなら本望だ。
「惚れた弱みだ」
「……ごめんなさい」
「謝るくらいなら、キスせびるくらい許してもらおうかな」
「それは、エリに聞いてくださる?」
「そうするよ」
「ガンズ・ロック。これを」
ぱちん、とエデンが指を鳴らす。
俺の目の前の空間にアタッシュケースが現れる。
「これは?」
中身を聞く前に開ける。
中には……一振りの金属バットが入ってきた。
「……お願いね」
「ああ。……エデン」
バットを握り、改めてエデンに向き直る。
「俺は諦めないからな」
「だから、私は貴方に賭けたの」
「そうかい……ま、俺は一途でしつこいからな!」
「……あまり、調子に乗らないのよ?」
エデンが微かに笑いながらそういう。
「分かってるよ。俺は俺の役割を果たす……だから、エリシアを頼んだ」
「ええ。いってらっしゃい」
「応」
行こう。
この楽園を賭けた最後の時間稼ぎへ。