【完結】楽園の名を持つ少女に惚れた俺は、彼女の為に命を懸ける   作:塊ロック

22 / 26
22話

 

意識が戻ってくる。

全身が泥の中に居たように重い。

 

……近くに、誰かが居る。

 

「う……な、くそ……重てぇ……」

 

呻きながらなんとか、立ち上がる。

目の前に座る一人の女性。

 

俺はあまり接点がなかったが……顔は知っている。

 

「エデンか……」

「気が付いたようね」

 

手にワイングラスを持ち、俺を見据えていた。

 

「アンタがここに俺を?」

「ヴィルヴィが仕込んでいた保険の様ね。近くに居る英傑の元へ移動するプログラムよ」

「何でまたそんなものを……」

「……見越していたのでしょうね。この状況に陥ることを」

「どうやって……」

「ヴィルヴィが律者と一時的な協力関係にあった……けれど、その後のを事を考えた保険のため……と言ったところかしら」

 

ヴィルヴィが律者と……?

ただ、そんな疑問はこの際どうでも良い。

 

問題は。

 

「……この状況、どうにかなるのか?」

 

この一点のみ。

 

「今、芽衣さんがエリ……エリシアを復活させようとしているの」

「雷電芽衣が?」

「ええ。そして……私は、貴方にこれから残酷な()()()をしなくてはならないの」

「……お願い?」

 

エデンから、俺に。

それは俺でないとできない事なのだろうか。

 

「……英傑達は自らの命と引き換えに律者の力を削いでいったの。だから……今はもう私しか残っていない」

「え……」

 

十三英傑の事実上の壊滅状態。

こんな状況下でどうしろと。

 

「エリが復活するまでの間……貴方には侵食の律者を足止めしてちょうだい」

「は……?足止め??」

「ええ。残念ながら私では太刀打ち出来ない。そして……芽衣さんをエリの元へ導かなくてはいけないの」

「……わざわざ俺に自我を与えたのはこのためと?」

 

最後の悪あがき。

本当に小さな抵抗。

それが俺の役割だと、そう言っているのか。

 

「……悪い事をしたと思っているわ。貴方がエリを好きなことを知っている。けれど……私も、エリを愛しているの」

「……そうか。いや、そうだろうな」

 

俺の想いは一生使ってでも届かない。

その座にはエデンが既に居るから。

 

「分かってたさ。そんな事」

 

でも。

 

でも俺は。

 

「やるよ」

 

あの、花の様に美しく……この世界で最も強い無瑕の少女を好きになってしまった。

 

彼女の為に命を懸けるなら本望だ。

 

「惚れた弱みだ」

「……ごめんなさい」

「謝るくらいなら、キスせびるくらい許してもらおうかな」

「それは、エリに聞いてくださる?」

「そうするよ」

「ガンズ・ロック。これを」

 

ぱちん、とエデンが指を鳴らす。

俺の目の前の空間にアタッシュケースが現れる。

 

「これは?」

 

中身を聞く前に開ける。

中には……一振りの金属バットが入ってきた。

 

「……お願いね」

「ああ。……エデン」

 

バットを握り、改めてエデンに向き直る。

 

「俺は諦めないからな」

「だから、私は貴方に賭けたの」

「そうかい……ま、俺は一途でしつこいからな!」

「……あまり、調子に乗らないのよ?」

 

エデンが微かに笑いながらそういう。

 

「分かってるよ。俺は俺の役割を果たす……だから、エリシアを頼んだ」

「ええ。いってらっしゃい」

「応」

 

行こう。

この楽園を賭けた最後の時間稼ぎへ。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。