【完結】楽園の名を持つ少女に惚れた俺は、彼女の為に命を懸ける 作:塊ロック
夜。
俺は中々寝付けなくて部屋のベランダから外を眺めていた。
歌が聞こえる。
誰かが歌っているのだろうか。
何となく、気になってしまい耳を傾ける。
こんな夜中に聞く歌と言うのもたまには乙なものだ。
落ち着いた、女性の声。
俺の知らない言語だろうか。
何を言っているのかは分からないけど。
「誰だろうか……」
興味が出てきたので声がする方へふらふらと歩いていった。
暫く歩くと、声が止まってしまった。
「……あ、やべ。迷った」
火を追う蛾の基地の敷地内なのだが……森が広がっていて帰り道がわからなくなってしまった。
「どうすっかな……」
「あら、ガンズじゃない。こんな夜にどうしたのかしら」
「ェ"ッ……エリシア……!?」
背後から声をかけられ、思わず臨戦態勢で振り向いてしまった。
まぁ仮に手が出ても俺はこの人には勝てないんだけど。
「ハァーイ、こんばんは。どうしたのかしら?」
「いや……」
どうしよう。
道に迷った、と正直に言うべきか。
「……声が、聞こえてさ」
「声?」
「凄く、綺麗な歌声」
「まぁ!エデンの事ね。分かるわ、エデンの歌はとてもキレイなの」
エデン?
そんな人居たっけか。
「それでここまで?」
「え……まぁ、はい」
「そうなの、そうなの!」
エリシアはとても嬉しそうに笑っている。
まるで、我が身の事のように。
「ねぇ、会ってみたい?」
「え?」
「この歌の主に」
……興味が無いといえば嘘になる。
「会ってみたい……とは思います」
「もぉー!ガンズってばあたしと話す時はずっと固いわよ?アポニアとは普通に喋ってたじゃない」
「アポニアは……!関係、ないだろ……」
ついつい声を荒げてしまう。
その様子にちょっと驚いたような顔をされてしまった。
「……申し訳ない。ただ、本当にアポニアとは何ともないし想ってる訳じゃない」
「あら……じゃあ、あたしは誤解してたのね」
「まぁ……そうなる」
「そうなの。ごめんなさい」
「あ、いや……そんな、謝ることじゃ」
エリシアが目を伏せて謝罪してきたので、焦ってしどろもどろになってしまう。
俺は、貴女にそんな顔をさせたいわけじゃないのに。
「あら、エリ。こんばんは」
第三者の声。
振り向くと、薄手のドレス姿の女性が立っていた。
「エデン!こんばんは、ここまで迎えに来てくれたの?」
「エリが遅くなるなんて珍しいもの。心配になって」
「ごめんなさいね、エデン」
エリシアがエデンと呼んだ女性の手を取ってそのまま腕を絡ませた。
「この方は?」
エデンの視線が俺を捉えた。
……心無しか、鋭い眼光のような気がした。
「この子はガンズ、ガンズ・ロックよ」
「……どうも、十三英傑第四位…『黄金』のエデン」
思い出した。
火を追う蛾最大のスポンサーにして、ムー大陸出身の世界的大スター。
エリシアと同じく楽園の名を持つ女性。
「同じ志を持つ同志よ。そんなに畏まらないでちょうだい」
「あっ!そうなのエデン。ガンズがエデンの歌を聞いてここまで歩いて来たみたいなの」
「なっ……」
「あら、そうなの?大したおもてなしは出来なくてごめんなさいね。ガンズ、貴方はお酒とか飲める?」
……え?
「……いや、俺は未成年だ」
「そう……残念。またお酒が飲める年齢になったら誘うわね」
「……そのときには、崩壊汚染で死んでますがね」
つい、口からそんな言葉がこぼれてしまった。
それくらい、俺はエデンと言う女性を妬ましく感じている。
なぜなら……先程からこの二人の距離感は間違いなく恋人のそれだ。
俺はただ単に邪魔でしか無い。
「すみません、長居するつもりは無いので」
俺の中で羞恥と、情けなさが膨れ上がった。
俺は何をやってたんだろう。
「ガンズ?」
「それでは」
「エリ。放っておいてあげましょう……感情の整理の時間が必要なの、彼には」
気が付けば、走り出していた。