内なる鼓動は誰の為に   作:タマン

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何とか、前回の約2倍の文量を書くことができました。

以上です。


13.嵐にかき乱されて

 

 

 

「エリゴールさん!ララバイの封印、解除できましたよ!」

 

「よくやった、カゲヤマ。これさえあれば⋯」

 

カゲヤマと呼ばれた人物は、エリゴールにドクロの付いた笛を渡していた。

 

(ララバイ?)

 

脳内で疑問符を浮かべるが、暗殺業に勤しむ彼らであるならば、良からぬものであるのは確かだろう。

 

「おい、そこに隠れてるガキ。さっさと出てこい。」

 

「!」

 

「あっ!そうですよ!さっき、彼女に傷を直して貰って、名前は確か⋯セラ・ホープライト!あの古代魔法の一つ、治癒魔法の使い手で、顔もなかなか可愛いですし、思わぬ収穫ですよ!」

 

目だけを覗かせていた私の元にやってきた彼は、笑みを浮かべながら、楽しそうに話していた。

 

「⋯今なんて言ったカゲヤマ」

 

「っ!」

 

溢れ出す殺気にいち早く気づき、彼を庇うように前に出る。

振るわれる鎌に、テイクオーバーした腕が真っ向からぶつかる。

 

「⋯仲間じゃないんですか」

 

「バカには、躾が必要だろう?」

 

「エリゴールさん、何して!?」

 

「てめぇ、分かってなかったのか。こいつは、あのクソハエに属する魔導士だ。まるで働きアリみてぇに、人助けしてるって、気色わりぃ野郎だよ。それに⋯なんだその腕は?ただのヒーラーかと思ったら、化け物じゃねぇか。」

 

自然と腕にこもる力が強くなり弾くように、カゲヤマさんと共に後ろに下がる。

私は、鋭い視線を彼に向けた。

 

 

「なんだ、その目は?この人数に勝てると思っているのか?」

 

「はい。私が止めてみせます」

 

カゲヤマさんを庇うように前に立ち、構えを取ると同時に列車が動き出す。

 

 

数秒の睨み合いのうち私が踏み込むと、突如目眩に襲われる。

 

その一瞬の隙を相手が見逃すはずもなく、エリゴールの足が私の横腹を捉え、蹴り払われる。

 

「おいおい、どうした?ビビったのか?

前から、テメェみたいな偽善者が気にくわねぇと思っていたんだ。サンドバックにしてやるよ!」

 

その後も謎の目眩に襲われながら、腕を変化させ、ガードすることしか出来ずにいた。

 

腕以外の服や腹に、刃のような風が切り込まれる。

 

「おお!もっと派手にやってくださいよ!エリゴールさん!」

 

「お!また服が切れた!フォー!」

 

「エリゴールさん、そこまでしなくても⋯相手はガキですよ!」

 

人々が熱狂的に叫ぶ中、私の背後から声が聞こえた。

 

「あ?何言ってやがる?」

 

「いや、その⋯。治癒魔法なんて珍しいですし、一緒にいたら便利な存在になるんじゃないかって⋯」

 

「っ!」

 

風きり音が耳元を通り過ぎると同時に、足を変化させ、カゲヤマさんと共に後ろに後退する。

 

「おいおい、またそうやって人助けか?随分余裕みてぇだな!」

 

「っ!」

 

鎌とテイクオーバーした腕がせめぎ合い、ギリギリと音が鳴り響く。

 

ガタンッ

 

列車が停止すると同時に目眩の治まりを感じた私は、鎌を押し返し、エリゴールの内に入り込む。

 

パキッ!

 

突如、今まで気づかずにいたブレスレットの水晶が、浮かび上がり、その水晶は私の目の前に砕けた。

水晶が砕ける中で、ただひたすらに黒い闇が、エリゴール達に向かって大きく伸びる。

 

 

「何?⋯!とにかく今は!」

 

 

数秒の後、暗闇が収まる。

固まったように動かない鉄の森のメンバー達を見て、背後にいたカゲヤマさんを抱えながら列車から飛び出す。

 

 

「皆さん!今、列車内に闇ギルド『鉄の森』がいます!今すぐ、ここから避難してください!!!」

 

何とか魔力の塊を生み出して、頭上に打ち上げようとした、丁度その時。

背後から破裂音が一つ、頭上からは轟音が鳴り響く。

振り返り、頭上に視線を移すと、天井には大きな穴が空けられている。

そして、そこには真っ青な空などはなく、荒れ狂う嵐があった。

 

 

 

私はすぐさま、塊を打ち上げ、光を散らす。

 

「なるべく外の建物に隠れてください!!!」

 

先程よりも、声を大にして叫ぶ。

光と叫びで注目を集めたと同時に、皆慌てたように、この場から逃げていく。

 

「良かった。皆さんがすぐに動いてくれて⋯。カゲヤマさんも早くここから離れてください。」

 

「⋯⋯何で、俺なんかを。」

 

「貴方が、あの時、声を出してくれたからです。

確かに、今まで貴方方がしてきたことは、許されるものではないですし、ギルドの名を侮辱したことも、許してません。

 

でも、私はしてきた行いよりも、心に従います。これまでの行いをどれだけ悔い、反省できるのか、そしてどう償えるのか……それを考えられる人だと思ったから、助けただけです。

……もちろん、この後すぐに捕まえますから、逃げないでくださいね?」

 

 

私は最後の方を少し強調しながら、にっこりと笑顔を向けた。

不安定な治癒魔法をかけつつ、「先程は、声を出してくれてありがとうございました」とお礼を告げて、彼の背中を押し出す。

 

 

彼が走り出すのを見送り、頭上を見上げると、大きな嵐の中に一人の人物が映る。

その者と目が合うと同時に、彼は一直線にこちらに向かって急降下してきた。

 

 

先程と比べ、禍々しい魔力に悪寒を感じた私の体は、受け止めるのではなく、避ける選択を取る。

 

鎌は、私が先程までいた位置に振るわれると、轟音と共に太く深い亀裂が地面に刻まれていた。

 

その凄まじい威力に一瞬の焦りを感じつつも、鎌を振り切った隙を突いて、その横っ腹に蹴りを叩き込んだ。

 

蹴り飛ばされたエリゴールは、列車の中に叩き込まれる。

 

私はそれを傍目に周囲を見渡せば、駅員が避難誘導をしている。少しの安堵の後、視線を戻した次の瞬間、すぐ目の前には、大きな列車が迫っていた。

 

「っ!!!」

 

私は、両手両足を変化させ、列車の鉄の部分を掴んで踏み止まろうと、足と手に最大限の力を込める。

 

(ここで止めないと、後ろの人も巻き沿いになる!!)

 

とてつもないスピードの反動によって、左右後方の列車が円を描くように背後に迫り、背中に衝撃が走る。

 

歯を食いしばりながら、数秒の後、何とか列車は停止した。

背後の人達の安否を確認しようとしたのもつかぬ間、突如、列車から無数の手が飛び出し、私の腕に絡みつく。

窓から見えるこの腕の主達の目は、赤く充血し、苦しそうにうめき声を上げている。

 

「うぅ⋯苦しい!苦しい⋯!」

 

「がはっ!!」

 

「なんで、こんな⋯何!?」

 

困惑さえも与えまいと、彼らの後方から、魔力がどんどん膨れ上がるのを感じた。

 

「まさか、あの人!!」

 

腕を下に叩きつけ、無数の手を振り払い、車両を飛び越える。

視線の先には、鎌を横に構え、魔力を高めている男の姿が。

 

私は、地面に到着すると同時に、地面を思いっ切り蹴り飛ばして、弾丸のように前方に飛び込む。

 

(それだけは、絶対させない!!)

 

ガンッ!ガリガリガリ

 

鎌が振り抜かれるギリギリで、刃を掴む。

刃はまるで、チェンソーのように高速の微振動を繰り返し、

その振動は、連鎖するように私の腕にも伝わり、腕にこもる力が安定しない。

 

 

(っ!だめ、抑えきれない!!)

 

数秒のせめぎ合いで、受け止めることは無理だと悟った私は、耐える為に地面に食い込ませていた片足で、鎌の刃から離れたの方腕を下から上に打ち上げる。

それと同時に頭を下げながら、腕を離すと、

その刃は想定の高さよりも、少し高く振り抜かれる。

まるで、大きな刃のような風は、駅のホームの二階部分をみごとに両断してみせた。

 

そのあまりに綺麗に切断された建物を傍目に、小柄な体で、内に入り込み、拳を打ち込む。

上半身裸の男は、誰もいない柱に叩きつけられ、何かもがき苦しんでいた。

 

 

(っ!今は⋯!)

 

私は、すぐさま、列車のある方に戻る。

二階が両断されたことで、瓦礫が倒れ込む中、列車は、へこみ部分も見られるが何とか無事であることを確認した後、先程逃げていた人達に怪我がないかを確認する。

 

数名程、怪我人を見つけ、治癒魔法をかけて、外側の建物に避難するように促す。

 

(さっきより、治癒魔法にかかる負担はない⋯。でも、テイクオーバーを使ったばっかで、ちゃんとした治癒は出来てない⋯。っ!何で、必要な時に上手く使えないの?私の魔法!)

 

自分の実力不足に歯噛みしつつ、今度は、列車に乗り込み、地面に伏せる人達に治癒魔法をかけていく。

 

まだまだ、制御が出来ず、ブレブレな魔力が彼らの体を覆う。

先程の人達には最低限の治癒しか出来ていなかったが、以外にも今は、もがき苦しむ人達の顔がだんだんと晴れていく。

 

「っ!!」

 

私は、必死になって、治癒魔法を維持し続けながら、ふと考える。

 

 

 

きっと、ここまで被害が甚大になったのも、彼らがこうして苦しんでいるのも私のせいだ。

私が付けていたブレスレットのあの光のせいでこうなった。

つまり私が、油断して気を失わされたから、こうなっている。

 

全て、私の責任だ。

私の油断でこうなっている。

勿論、彼らは今まで悪いことをたくさんしてきたのだろう。であるならば、しかるべき罰も必要なのだろう。

 

だが、それはこんなもがき苦しむ痛みではない。後悔と反省、そして償い。全て、心の変化、行動をもって償うべきだ。ただの苦しみは、人の心を更に苛むことにしかならない。

 

だから、私がするべきは、痛みによる強制ではなく、説得、改心させるために力を振るう。より良い、人としてのあり方を。

 

 

 

「っ!?」

 

 

そんな大事なことを、緊迫したこの状況の中で考えていた事が間違いだった。

 

 

 

 

 

私は、例えどんな状況でも、反省と改善について考える。

それがよい方向に傾くこともあれば、こうして油断にも繋がる。

だから、私は背後からくる男に気づけなかった。

 

私は、腹の痛みで知覚する。

腹には、まるでドリルのような風を纏った腕が突き抜けており、その回転は勢いを増し、臓腑がかき混ぜられる。

 

「がっ!!アアァァッッッ!!!」

 

今まで感じたことのない痛みで頭がチカチカし、自然と叫びが漏れる。

何とか背後を蹴り飛ばして、前かがみに倒れ込む。

 

「はぁはぁ!うっ!!?」

 

呼吸を整える暇もなく、溝に、突風のような衝撃を受け、私の体は、駅のホームを突き抜け、空を舞った。

目の前には、ただ黒く渦巻く嵐。

私の体は、その嵐に受け止められることはなく、更なる速度を増して、はじけ飛ばされ、地面に叩きつけられる。

 

 

「ぐぁっ!!」

 

 

 

朦朧とする意識の中、最後に見えたのは、こちらに向かってくる一つの人影。目を凝らしてみると、そこには、銀の甲冑に紅の髪をなびかせる、一人の騎士の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございました。

キャラのエミュがかなり不安ですが、漫画やアニメを見返しつつ、適宜修正致します。また、この『鉄の森編』ですが、あと2〜3話で終わらせたいと思っています。



ここまで読んで頂きありがとうございました。
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