FAIRY TAIL 内なる鼓動は誰の為に   作:タマン

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皆さん。おはようございます。

今回は前回書ききれなかったセラの戦いをこちらに回したので、思ったより早く仕上げられました。

原作とは異なる設定や展開がありますが、楽しんでいただけると嬉しいです。



※追伸(9/2)
すみません。誤って消去してしまいましたので、再投稿いたしました。



7.本の記憶と少女の魔法

 

 

 

 

 

「何ここ?  ……あれ?でも、この景色見覚えがあるような‥‥」

 

「夜空みたいで、きれい~…」

 

 

 

現在、ルーシィとハッピーはプカプカと暗闇の中を漂っていた。

止まるための地面や壁はなく、あるのは暗闇と星砂のような小さな光達。

手を伸ばし、触れようとするがその星には決して届かない。

 

 

ただ、ひたすらに漂い続ける現状に戸惑いながら、周囲を見渡しているとハッピーの視界に、ひときわ強く煌めく光が出現する。

 

 

「!ねぇ、ルーシィ!あれって出口じゃ――― 」

 

 

「え?なに――  」

 

 

 

 

 

ハッピーの声に振り返った瞬間、ルーシィの視界が一面の白に塗り潰され、強烈な眩しさに思わず目を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくりと瞼を開いた彼女の前に映っていたのは、暗く、息苦しささえ漂う石畳の部屋と机に向かって座る男性、そしてその男の目の前には、一面全てが黒に塗りつぶされた原稿用紙があった。

 

 

 

 

 

『っ、駄目だ!わたしにはできない…。あの男を主人公にした本など・・!』

 

 

 

 

 

胸の奥から漏れる叫びは、掠れ、震えていた。

指先はなお震え、丸めた原稿用紙に残るインクの染みが、彼の無力さを映す。

 

 

 

 

 

『(私にも…初めは、期待があった。

愛読家という話を聞いていたからこそ、本を通じて分かり合え、たとえ噂通りの貴族だったとしても、考えが良い方向に変わるのではないかと…)』

 

 

 

『(だが現実は違った。確かに彼は愛読家だった。だが、それ以上に強欲で、噂以上の外道だった。

権力を最大限に振りかざし、金銀財宝、女を集め、飾り立てては侍らせる。そして、気に食わない者に対しては、奴隷のように扱う。

こちらに来て初めに見せられたのが、メイドを侍らせる彼の姿と、やせ細った体で働かされる人々の姿だった。)』

 

 

 

『(そんなものを見せられた直後だ。

奴から、「私を主人公にした本を作れ」と言われたのは。

書けるはずがなかった。作家としての矜持とプライドが、それだけは許さなかった。

だから断った。私には無理だと。だが、奴はこう言った――

 

「書かぬというなら、親族全員の市民権を剥奪する」と)』

 

 

『(私も言われてすぐ、そんなことできるわけがないと考えたが、この屋敷で見てきた全てが、それを否定する。奴には実際に、それを成すだけの力があると…)』

 

 

『(結局、私は承諾し、独房に押し込められ、こうして原稿用紙とにらみ合っている)』

 

 

 

 

 

 

 

『・・・書かなければ、家族が危険に晒されるというのに、私の作家としてのプライド、矜持が邪魔をする・・! 私は、いったいどうすればいい・・!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男が頭を抱えた、その時だった。

カツン、カツンと足音が鳴り響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お困りのようなので、私から一つ助言をいたしましょう』

 

 

『いや、待て。誰だ、君は・・?』

 

 

姿は闇に溶け、ルーシィの目にも、男の目にもはっきりとは見えなかった。声の主は、まるで質問を無視するかのように淡々と告げる。

 

 

『あなたは、「作家として自分」と「一人の親としての自分」を同時に考えているため、混乱しているのです。まず切り離して、どちらがより大切か天秤にかけてみては?』

 

 

『…誇りを守るために家族を失うことが、果たして本当に誇りと呼べるのか。私は、甚だ疑問ですが。』

 

 

 

 

 

その声に男は困惑しつつも、目を瞑り思案する。

 

 

 

 

『(……私が、いつも心に浮かべるのは――息子のカービィだ。

男手ひとつで育ててきたが、息子は一度として私のもとを離れず、ずっと一緒に暮らしてくれた。

そして何より、私の作家としての仕事を誇りに思ってくれていた。

 

 

――だからこそ、私は息子の想いに応えたくて、作家としての道にいっそう力を注ぐようになったのだろう。

だが、それがいつしか、"息子に駄作を読ませたくない"という、作家としての意地やプライドへと姿を変えてしまった……)』

 

 

 

『(……結局は、私の身勝手な驕りだったのだ。そんな誇りよりも、一人の親として、息子が健やかに生き生きと人生を歩んでくれることの方が、どれほど大切だったか)』

 

 

 

やがて彼は顔を上げ、決意の色を帯びた瞳で呟く。

 

 

 

『決心できたよ。‥‥ありがとう』

 

 

 

しかし彼が礼を告げた時には、先ほどまで確かに存在していた声の主の姿は、もうどこにもいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パチッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーシィの視界は、また白に覆われ、目を開けると先程より少し老けた男の姿が映る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ついに、完成した・・・』

 

 

『(表面上は、奴を主人公とした本に仕上がったが、一文字、一文字に魔法を掛けて置いた。これで、私の息子が手に取った際に、魔法が発動するはずだ)』

 

 

 

『・・私には、このやり方しか思いつかなかったよ、カービィ。

・・・・結局、2年間家族を放ったらかしにしたことになるのか・・・すまない。

駄目な親父で、本当にすまない・・・。』

 

 

 

息子にひたすら謝り続ける男。

そんな彼を、自身の家族のことを思いながら眺めていると視界が再び暗黒に包まれる。

気が付けば、隣には同じを記憶を目にしたのであろう、驚きと戸惑いを浮かべるハッピーの姿と、正面には、黄金の本が出現する。

 

 

 

 

 

「デイ・ブレイク・・」

 

 

 

 

 

私たちが見た記憶のその先で、彼がどのような行動を起こしたのか、何を思ったのか、私達には分からない。

 

結局のところ、彼は自身の存在価値よりも、家族の命を救う道、一人の父親としての道を選んだのだ。

 

 

 

 

 

(父親・・・か)

 

 

 

 

 

ルーシィとハッピーは互いに頷き、その本へと手を伸ばした。

――そして、次の瞬間。

 

 

 

 

「ボヨヨ、やっと来たぞ!あやつらは、魔法を使えん。やってしまえ!」

 

  

目を開いたルーシィ達を取り囲んでいたのは、随分大柄なメイドとその他メイド、そして少し下がった位置でゲスな笑みを浮かべるエバルーの姿だった。

 

 

「・・・!」

 

 

ルーシィ達は、驚いたように目を瞬く。

それは、待ち伏せされていたからではなく、体内を満たす温かな魔力の存在を感じ取ったからである。

 

 

 

 

「ハッピー」

 

 

「あい」

 

  

 

姿が一変し、馴染みのある体へ。

その変化にメイド達が驚いている中、

ハッピーはルーシィの服を掴んで、一直線に突き進む。

 

 

 

 

「アンタなんか・・」

 

 

 

 

 

慌てて地面に潜ろうとするエバルーの足を鞭で絡め取り、思い切り引き上げ、宙に浮かせる。

 

 

 

 

 

「序盤で倒されるような小物悪党がお似合いよっ!!」

 

 

 

 

 

記憶の中で見た男の思いが憑依したのかのように、ルーシィの拳に力が入り、その拳はエバルーの頬に放たれる。

彼の体は地面を弾むように転がり、やがて部屋の隅で力なく倒れ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<エバル―屋敷から少し離れた小道にて>

 

 

 

 

 

 

 

ローブを着込んだ少女、セラは、地に膝をつき、荒く息を吐いていた。

 

 

「さっきの強そうな腕を使わなくなったから…何かあるのかなって思ってたけど、何もないのね。」

 

 

メイド服に身を包んだ少女、ルナが、静かに言葉を落とす。

 

 

「これ以上は、きっと貴女は耐えきれない。だから――私が、その足枷を外してあげる」

 

 

そう言い放つ同時に、ルナの分身たちが倒れているナツたちを取り囲むように配置され、十本の槍が一斉に構えられる。

 

 

 

 

「じゃあ、さっさと終わらせるね」

 

 

「だめ…っ!」

 

 

槍が振り下ろされようとした刹那、セラがナツたちの体に覆いかぶさる。次の瞬間――、白い稲妻が三人の体から発生する。

 

 

「———っ!!」

 

 

痙攣するセラの身体。傷口からあふれた血が、ナツたちの体へと静かに滴り落ちていく。

 

 

「な、何してるの・・!?」

 

 

ルナは困惑し、思わず声を上げる。

だが、その発生した稲妻はセラの体だけでなく、槍を伝って分身へと迫っていた。

 

 

「っ…!魂抜(ソウル・アウト)!」

 

 

稲妻が到達する寸前、ルナの声と共に分身たちの身体が砂のように崩れ、同時にルナの姿も掻き消えた。

 

 

「・・・どうして・・・そこまでして‥?」

 

 

少し距離を取った位置に再び姿を現したルナが問いかける。分身を従えながらも、その瞳には動揺が浮かんでいた。

 

 

 

セラはその問いに答えずーーいや答える事ができずーー荒い息をあげながら立ち上がると、ボロボロになったローブを力任せに脱ぎ捨てた。 

 

 

 

「・・・え?  なんで、その服をあなたが・・?それはだって私が――」

 

 

言葉を失ったルナは、突然頭を押さえて、苦悶の表情を浮かべる。

 

 

 

一方、セラは―—

 

 

 

 

 

(私は別に、他人のために命を投げ出せるような立派な志をもっているわけでもないし、死ぬことはいつだって怖いし、戦いだって好き好んでやってるわけでないし、本当ならずっと、街の中でお仕事の手伝いだったり、治癒魔法で誰かの傷を治したりしてるだけの方が良かった。

 

だけど――自分に誰かを救う力があるのに、怯えて何もせず、誰かが傷ついたり、いなくなってしまうのを見るのは、もう嫌だった。そして・・・)

 

 

(何より、臆病な私を受け入れてくれた妖精の尻尾のみんな、街の人々、キャッツラブ……たくさんの人たちに対して恩を返したいから、私はこうして立っている。だから、今は…)

 

 

少女の意識は上空に。

 

 

 

彼女が、ずっと接収(テイクオーバー)を使わなかった理由——

 

それは、接収から治癒魔法に切り替えるためのインターバルと、一定量の魔力を放出するための時間稼ぎ。

 

 

 

 

 

上空には、黄緑色の魔法陣が浮かび上がり、そのさらに上にも幾重にも陣が積み重なっていく。

ルナは、依然と頭を抱えており、空を仰ぐことはできない。ほかの分身も同様に彼女からの命令が無いのか、ピタリとも動かない。

 

 

「ふぅぅ‥‥」

 

 

彼女は素手での戦闘を始めて現在に至るまでの間、相手に気づかれないように絶えず微量の魔力を放出し続けていた。その魔力は、時には彼女の分身の一部分と結合しながら、今まで散々鍛えてきた魔力操作と魔力維持能力によって、上空に押し上げられていた。

 

 

 

それでは、なぜここまで大掛かりの魔法を準備していたのか。

 

 

それは、

 

 

(店長のイナズマやナツさんの炎を避けようとしていた。つまり、魔法が有効…

だから、私の治癒魔法の出力を上げて、人の治癒限度を超えれば――)

 

 

 

彼女の思考が一瞬だけ止まる。

なぜなら、今から人を救うための治癒魔法を、人を傷つける魔法として使おうとしているのだがら。

 

 

 

だが、それでも魔力の操作と維持を止めることはしなかった。

彼女には、矜持や誇りよりも強い想いがあるのだから。

 

 

 

(ただ一人を狙うだけじゃ意味がない。

さっきみたいに直前で、逃げられるし、分身に命令を出されたら、魔法の行使で動けない私にはどうすることもできない。

だからこそ、ルナ先輩も分身の人たちも、一斉に拘束しないといけない。)

 

 

 

つまりは・・・・

 

 

 

 

 

「集積、拡大…展開――」

 

 

 

 

 

縦に積み上がっていた魔法陣は一つに重なり合い、瞬く間に横一面へと広がると、巨大な魔法陣へと姿を変える。

 

 

 

 

 

正直、今の魔力量を考えれば、この魔法を使えるのは一度きり。

戦いながら維持していたこともあり、消費した魔力は多い。

だからこそ、この一発で勝負を決めなければならない。

魔法陣は完成した。後は魔法名を呼ぶだけ。

魔法の命名も、魔法の「質」に影響する――いわば、爆弾に点火させるための起爆剤。

ただ、治癒魔法を拡大させ、出力を上げたものなのだから、「メガヒール」なども頭をよぎったが、何だがしっくりこない。

効果を考えた時、彼女の脳裏にある言葉が浮かんだ。

 

 

 

ゆっくりと目を開き、セラは腕をルナ達の方に向ける。

そして、それを振り下ろし、魔法名を唱える。

 

 

 

 

「大規模治癒魔法‥‥

天上の威光(ルクス・デイ)——!」

 

 

 

 

空より、巨大な黄緑の光が降り注ぐ。

 

 

 

「っ!?今度は何‥!?

これって、治癒魔法・・?でも、なんで私達に・・・?」

 

 

 

 

 

降り注ぐ光に驚く彼女達だが、その光には痛みはなく、むしろ、心地よい癒しに包まれるような感覚を覚えていた。

戸惑いながら目を前に向けると、小さな口で何かを詠唱する少女の姿が見える。

 

 

「הביטו לשמיים, הרכינו את ראשכם... תנו לגופכם לשקוע בכלוב האור המרהיב.」

 

 

「っ‥‥!?」

 

 

少女の追加の詠唱と共に、ルナとその分身たちの体は鉛のように重くなり、動きが封じられていく。

 

 

 

「魂抜!!」

 

 

 

11体の分身が掻き消える。

ゆらゆらと揺らめく魂は輝きを増し、光柱の中から抜け出そうとするが、その速度はだんだんと遅くなり、静かに地に落ちた。

 

 

それと同時に、少し離れた場所で同じような光柱が高くそびえたつ。それを、セラの目が捉えると

 

 

「解除!」

 

 

その言葉と共に、巨大な円柱は音もなく崩れ去る。

少女は、崩れ去ろうとしている自身の魔法に感心を示さずに、すぐさま、先程の円柱ができた方角に目を向ける。

 

 

(確か、あの方向にルナ先輩・・・が)

 

 

先程見た光源の方へと足を動かそうとするが、その一歩は地を踏むことなく、後方へと倒れ込む。

 

 

 

(あれ‥? 体が、全然…動かない…。

‥まだ‥‥ナツさん達を‥返してもらってないのに・・)

 

 

 

「わたし、が…やらない…と」

 

 

 

 

 

少女の意思に反して、意識が暗転していく中――何かが、彼女の視界を覆った。

 

 

そして最後に――どこか冷徹でありながら、不思議な温もりを含んだ声が響く。

 

 

 

『随分、派手な魔法ですね。セラさん。』

 

 

 




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


このエバルー屋敷編も後1話で終わります。
ここまで、大変長い時間が掛かってしまい、申し訳ありません。
正直に言うと、オリキャラを交えた戦闘や、その後を見据えた展開を作ることが、これほど難しいとは思っていませんでした。完全に、なめてました……。
今後は少しでも腕を磨き、できるだけ早く投稿できるよう努力いたします。


最後になりますが、オリキャラやセラの設定資料は、エバルー屋敷編が終わってから出したいと思います。

あらためまして、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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