今回は、前回の更新よりも少し、ほんの少しだけ早く投稿することができました。
いつものように、特に話すことはありませんが、
今回のお話も楽しく読んでもらえたら嬉しいです。
<エバルー屋敷前の小道>
「あの野郎、ぜってぇ許さねぇ!! 行くぞ、ハッピー!」
「あいさー!」
「ちょっと⋯!本くれたんだから、もういいでしょ!?」
「んっ⋯」
近くで響く声によって意識が覚醒しそうになるが、まだ夢の続きを見たいと、重たい体をなんとか動かし寝返りを打つ。
(……なんか、もちもちであったかくて、落ち着く……)
頭の下にある何かをギュッと抱きしめて、心地よい感覚に浸る。
何やら、ひゃん!?なんて変な鳴き声が聞こえたが、気にしない、気にしないと再び深い眠りへと落ちかけたその時――
何やら頬を押されるような感覚に襲われる。
「えっ、すご・・・。ちょっとした仕返しのつもりだったけど、このほっぺ……気持ちよすぎない?すべすべでもちもちだし、寝顔も可愛いし……癒される⋯」
何やら聞き覚えのある声が耳に届くが、先程まで見ていた夢の世界に戻りたいと目をぎゅっと閉じる。
⋯だが、一向に頬をぷにぷにと押される感触は止まらない。
「気持ちいい‥可愛い‥癒される‥」
ぷにぷに⋯ぷにぷに⋯ぷにぷに⋯
徐々に何を言っているのか聞き取れるようになった時、彼女の頬は赤みを帯びて、体はプルプルと震えだす。
数分の抵抗もむなしく、耐えきれないと目を強く瞑ったまま、彼女は口を開いた。
「あの!……ルーシィさん? なにしてるんですか……」
「わっ!? ごめん、起こしちゃったよね?
いや、その、これはね……セラのほっぺがあまりにもすべすべもちもちすぎて、手が止まらなかったっていうか……」
言い訳を口にしながらも、手は止まることなく、つまんだり、撫でたり、つついたり。囁きまで交じって、セラに刺激を与え続ける。
「気持ちいい‥かわいい‥」
むにむに
(も、もうムリ…!小声だから聞こえてないと思ってるけど、私にははっきりと聞こえてますから!早くどうにかしないと体の内側から爆散しちゃいそう!)
「そのっ‥‥!ルーシィさん!ナツさんたちは、いったいどこにいるんですか?」
重い体をなんとか動かして横向きから仰向けになる。
ルーシィの顔を少し恥ずかしそうに見つめながら、先程から声が聞こえない人物達について話を切り出した。
「‥‥あっ‥‥‥」
一方のルーシィは、指からセラのほっぺが離れていくのを寂しそうに見つめていたが、
数秒の沈黙の後、正気に戻ったのか、大きく咳払いをして先程の出来事を語りだした。
「えーっと、順を追って話すとね。
20分ぐらい前に私とハッピー、それにナツが同時に目を覚ましたんだけど…みんな、記憶がすっぽり抜けた感覚があったの。私も、電撃みたいので気を失ってから、ケム・ザレオンの記憶を見るまでの間が思い出せなくて。
まあ、私はそこまで重要な記憶だとは思ってないんだけど、ナツだけは不満げでね。
そんな時に、メイド服着たルナって子が現れたの。」
「ルナ先輩が…」
「私達も最初は、突然現れた彼女に警戒してたんだけど、『エバルーと店長を倒してくれてありがとう!』って感謝と共に、依頼の本を渡されちゃって、その後も楽しそうにセラやキャッツラブのことに話してくれたんだけど、その中でね
『何かを忘れたり、記憶が消えたりするのは大体店長のせいだよー。私もセラちゃんのこと忘れちゃってたし!』
って、ぷんぷんしながら話してて、それを聞いたナツが、ハッピーを連れてあの屋敷に行っちゃったわけ」
「な、なるほど……」
今も屋敷の方角から響く轟音に、セラは苦笑を浮かべる。
しかし次の瞬間、視界上に大きな裂け目が生じると共に、そこから一人の人物が現れた。
「まじでふざけんな……。ルナの野郎、後でたっぷりしごき倒してやる」
舌打ちをしながら、裂け目から出てきた人物は、ルーシィの膝枕に収まるセラと目が合う。
だらしない姿を見られて恥ずかしそうにしながらも、セラの方から先に口を開いた。
「あ、あれ、店長? 今、ナツさんに追いかけられてるはずじゃ…」
「あん?そりゃ、今逃げ回ってるのが、俺の外見を纏ったルナだからな。今頃、ひぃひぃ言いながら逃げ回ってるんじゃないか」
ザマァと、店長はエバルー屋敷を見ながらクツクツと笑う。
「そういや……本以外で渡すもんがあったんだが‥‥、お、あった。」
ゴソゴソと懐を探り、カギと結晶を取り出すと、ルーシィに向かって放り投げた。
「ほれ。
そっちは、お前に必要なもんだろ。」
「えっ!これって、黄道十二宮の鍵!?でも、なんで…」
「俺よりでっかいメイド見ただろ?あれ、星霊なんだよ。
アイツからこの鍵をお前に渡すよう頼まれたってわけだ。」
「彼女が星霊…」
全然分からなかったと驚いていると、店長はもう一つの結晶の方に指を向ける。
「…で、もう一つのやつは、お前がルナの分身に入ってた時に握りしめてたもんだ。
‥まあ、それは、依頼人に渡すのがいいんじゃないか。
じゃあ渡すもん渡したし、俺は戻るわ」
「ま、待ってください!その…」
セラが呼び止めると、店長は振り返り、短く告げる
「店や俺達のことについて知りたいんだろ?
依頼を完了させたなら店に来い。そこで話してやるよ」
「……はい。あっ!すみません、あと一つだけ。私の傷を治してくれたのは、ローブを着た人ですか?」
彼女の問いに店長は踵を返し、ぽつりと呟いた。
「……知らんな」
そう言い残して、裂け目の向こうへ姿を消した。
「最後、すごい不機嫌じゃなかった?」
「はい…」
セラは、そう返事しながら自身の体に掛けられた毛布を優しく撫でる。
「それで、あの……さっきの続き、してもいい?」
「えっ!?今の流れでですか!?さっきので、終わったんじゃないんですか?
その⋯、囁きながら頬を触れられるのは流石に恥じらいがあって…」
ルーシィは意味ありげに笑みを浮かべ、毛布をめくりあげる
「ふーん、恥じらいね⋯」
こんな服、着てるのに?と言いたげな表情をするルーシィ。
「い、いや!これはエバルーを油断させるためであって‥」
「でもその服、今日寄った店で買ってなかったってことは……家から持ってきたんでしょ? ってことはつまり――元々使う予定が……」
「ち、ちがいますよ!? そんなのじゃありません!ルーシィさんの変態!ふともも!ももっぱい!」
「ちょっ!?最後のどういう意味よ!?」
ルーシィが慌ててツッコむと同時に、セラは顔を真っ赤にして毛布に包まってしまった。
やがて毛布の隙間から、恥ずかしそうに顔をのぞかせる
「……あの、ルーシィさん」
「ん? どうしたの?」
「今回、本当にありがとうございました。膝枕もそうですけど……色々精神面で助けてもらって」
少し恥ずかしそうにはにかむ少女。
その表情がなんともいじらしくて、ルーシィは思わず手を伸ばし、少女の髪を優しく撫でる。
少女は、まるで猫のように気持ちよさそうに目を細めていた。
ーーその後。
ナツ達と合流したセラとルーシィは、二度目となるカービィの屋敷を訪ねていた。
再び対面したカービィは、破棄せずに本を持ってきたことに困惑しつつも、ルーシィから本を奪い取って「私が焼却します」と力強く言い放つ。
だがその後のルーシィとナツの言葉が彼に響いたのか、彼はまるで苦虫を噛み潰したかのように顔を険しくして、やがて重たい声で過去を語りはじめた。
31年前——
エバルーから本の執筆依頼を受けたカービィの父は、2年ぶりに帰ってきたのだが、
玄関に現れたその姿は、酷くやつれ、憔悴しきっていた。
彼は、そのまま物入れに向かうと、そこから斧を取り出して一言告げた。
「作家をやめる」ーーと。
その言葉と同時に、彼は利き手の右腕を切り落とした。
そんな光景を目の当たりにしたカービィは、入院することになった父に対して、金のために誇りさえ捨てて駄作を作り出したんだと失望し、冷たい言葉や態度で突き放した。そして、その先に待っていたのは―――父の自殺。
苛立ちはやがて後悔へと変わり、時が経つほどにその重さは増していたのである。
「…だから…」
そう語りきったカービィは、自身の罪を告白する罪人のようだった。
彼は本を握りしめ、震える唇から言葉を絞り出す。
「だから、父の誇りを守るためにも……この本は、この世にあってはならないんです」
カービィは静かに懐からマッチ箱を取り出し、火を灯す。
「待ってください、カービィさん。まだあなたに渡していない物があるんです」
ルーシィは、ポケットから何かを取り出したかとおもうと、手のひらには光輝く結晶があった。
「信じられないかもしれませんが……私は確かに、あなたのお父さんの記憶を見ました。そして、その時……この本に触れた時、私の手の中にこの結晶があったんです」
結晶をカービィに渡すと、それは突然砕け散り、とある声が響いた。
『カービィへ。
この掠れ声では、誰だが分からないかもしれないので、名乗らせていただきたい。
私は、ザクス・メロン。カービィ、お前の父親だ。
まず初めに、どうしても言わなければならないことがある。
……すまない、カービィ。
私は、誇りに溺れた醜い人間だった。
ある意味、罪人と呼ばれるにふさわしいのかもしれない。
なぜなら、最も大切なものを蔑ろにしてきたのだから。
だが、この二年間を通して私は気づいたのだ。いや、思い出したのだ。
私が最も大切にしているものは、名声でも、金でも、作品でもない。
それは――我が息子、カービィだ。
私は、いつもおまえのことを想い続けた。
物語の筋書きなど遥かに及ばないほど、深く、強く。
その想いを伝えるために、この本にとある魔法をかけた。』
その言葉とともに突然、本が淡く光を放つ。
眩い光がページを開き、無数の文字が宙へと舞い上がる。
「おお!なんだこれ!!」
「文字が踊ってるよ!!」
「すごく、綺麗です‥」
その場にいる皆が、まるで夜空に浮かぶ星のように輝く文字をただひたすらに見つめる。
その星々のような文字達はやがて列をなし、吸い込まるように本の中へと戻っていく。
そして、ルーシィ達が視線を本の方に向けると、表紙には、新たな文字列が刻まれていた。
『DEAR KABY 親愛なる息子へ。
今まで、私の仕事を誇りに思ってくれて、ありがとう。
私は、もうおまえに尊敬されるような作家ではなくなったが、一人の父親として言わせてほしい。
――いつまでも愛しているよ、カービィ。
どうか、おまえが元気に、そして健やかな生活を送れますように』
文字がやさしく輝きを放ちながら消え、本は静かにカービィの手の中へ納まった。
「……っ、わ、私は……」
カービィの肩が震え、嗚咽が漏れる。
「父を……何一つ、理解できていなかった……!」
頬を伝う涙が、本の表紙を濡らす。カービィは、その本を大切そうに、そして優しく抱きしめた。
「セラちゃん、こっちも頼むよー!」
「はい! 少々お待ちください!」
まるで奇跡のような魔法を見た後—————私達はキャッツラブのお手伝いをしていた。
経緯としては、
ルナ先輩がナツさんから逃げ切った後、「お店復活!!」と街の人々への触れ込みを行ったのだが、エバルーの逮捕にショックを受けた先輩方はお店の方に来ておらず、捌きれないと困っていた所に私達と遭遇。
あんなものを見せられた後に、困っている人を放っておけるはずもなく、手を貸すことになったのだった。
「いやぁ、ほんと助かったよ、セラちゃん。
あのエバルーの奴がこの店を管理しだしてから、俺たちなんて門前払いされてね。こうしてセラちゃんに接客してもらえて嬉しいよ」
「いえいえ、喜んでいただいて私も嬉しいです。ですが今回に関しては、私だけじゃなくて、私と同じくフェアリーテイルに所属しているナツさん、ルーシィさん、ハッピーのおかげなんです。なので、『俺がお前のお兄ちゃんだ!』さんも、何かあればぜひフェアリーテイルを頼ってくださいね!」
「ああ、セラちゃんのお願いなら、もちろ・・ん?」
「? どうしました?」
「えっと確か、……あそこにいるのが、ナツ君だよね?」
視線を向けた先には
「てめぇ、さっきからあおってきやがって!」
「いやいや、悪い悪い。お前の炎の性質が面白くて、ついな」
軽やかな動きでナツの炎を纏った拳を避ける店長。
しかし、後退しようと後ろに飛び跳ねると、そこには、
「そこのメイドさん、この魔法のおまじないお願いしてもいい?」
「はい!かしこまりまっ!? 「ガンッ!」いたっ!?」
メイド服に猫耳カチューシャを被ったルーシィが立っていたが、店長とぶつかり押しつぶされる。
「やべっ」
店長は身の危険を覚え、一目散に飛び跳ねる。
一方、ルーシィはやっと退いてくれたと安堵するのもつかぬ間、目の前には、炎の拳が。
「ひゃあ!?ちょっと!危ないでしょ、ナツ!
あと少しで当たって…て!?私の服燃えてるんですけど!?」
「ルーシィ、早く”萌え萌えキュン”やらないと、お客さん待ってるよ」
「先に私の心配をしてほしいんだけど!?」
「ちょっと新人君ー!燃え燃えが足りてないんじゃない~?」
今度は、服が燃えた状態でルーシィに迫るメイド少女、ルナ。
彼女が、ルーシィに抱き着くと、火は瞬く間に燃え広がる。
他方では、店長とナツによる格闘乱舞が繰り広げられており、
それを観戦しながら、店の生け簀にいた高級魚を食べるハッピー。
このカオスな状況を必死に弁明しようとしたセラだったが、客たちは笑いながら「もっとやれー!」と声援を送っているなど、店全体が楽しげな空気に包まれており、少女はただ目の前の男性と顔を見合わせ、苦笑するしかなかった。
お手伝いも無事?に終わった後、
少し店長と話したいことがあるとルーシィ達と別れたセラは、現在、店の裏口にいた。
「何でエバルー屋敷にいて、キャッツラブはあんなことになっていたのか、だろ?」
「理由なんて、意外と単純だぞ。
元の店、全体的に古かっただろ?だから、新しく立て直そうと思った時に、まとまった金が欲しくてな。
そんな時に、高額のメイド募集のチラシを見て、これだって思ったわけだ。
これが一つ目の問いに対する回答だな。で、二つ目に関しては、
俺たちがエバルー屋敷で働いている時に店の存在を知ったエバルーは、使わないのは勿体ないからと、自分好みに立て直して、今の店ができたんだよ。」
「そんな勝手に・・。その、店長達は、怒ったりしなかったんですか?」
「ん?俺は特になかったな、逆に新築に立て直してくれてありがたかったよ。まあ、内装や飾りの趣味は最悪だと思ったが、そんなもん、後で取り外せばいいだけだろ。」
「そ、それは…」
「別に同意を求めるわけじゃねぇよ。お前の好きなように考えればいい。実際、ルナ達も最初は反対してきたしな」
「・・・はい」
「あー、そう言えば、お前に一つ言っておきたい事がある」
「?」
「————————まあ、そんな感じだ。モノにできるかはお前次第だからな。大事なのは、解釈の仕方だ。頑張れよ」
「はい!」
少女は、笑顔で返事をすると、「また、接客の依頼してくださいね」と大きく手を振りながら、去っていた。
バン
「店長~、このハート型の飾りとか、どうするのー?」
「エバルーが用意したもんだろ。それなら、『貴族愛用の~』とか付けて売れば、高くつくんじゃねぇか?」
「えー、なんかめんどくさいなー。捨てちゃおうよー、てっ!セラちゃんじゃん!待ってー ぐえ!?」
「お前、さっき別れの挨拶は済ませただろ」
「一回じゃ足りないよー!」
猫のように捕まえられたルナはブーブー文句を言うが、ふと何かを思い出したように動きを止める。
「あっ、そう言えば店長。私、思い出したんだけど、昔さ―———」
パンッ
「⋯⋯
はぁ⋯、ホント面倒くさいな⋯」
しばらくの静寂、夕日が完全に沈んで、町の明かりが点滅しながらつき始めたころ。
店長は深いため息を吐くと共に、店の中に戻っていった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回以降の投稿については、
キャラ設定を投稿した後に、鉄の森編を投稿したいと考えているのですが、
現在ちょうど忙しくなり始めたので、いつ投稿できるか分からないです。申し訳ありません。
最後となりますが、
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回以降も楽しみにして頂けると幸いです。