(ここまでのあらすじ)
「神気」というエネルギーが大気に満ちる、魔術と武術を用いて人が魔物と戦う世界、ステラエモルク。
そこでは時折、異世界の死者の魂が「テンセイ人」となって生まれてくる現象が存在した。
トーリ・ノウェルグレイという少女は、三十歳で病死した男性の魂と記憶と、
十五歳となった彼女は冒険者の資格を得て
シフェルはトーリに対し、自身が手にしている、ある宝石の運搬を依頼する。
目的地は大陸の東端、聖地ノルデ。
運ぶ宝石の名は、フラム・ルージュ。
それは膨大な神気を宝石の形に閉じ込めたものであり、醸し出す神気が手にしたものに異常な執着と防衛本能を働かせてしまう。
故にそれを安全に運べるのは、トーリのような、
シフェルは自身の身柄を依頼の「前金」としてトーリに渡し、二人一組のパーティを組み、ともにフラム・ルージュを聖地へと届ける旅に出たのであった。
第七話 「王都エルンシャード」
聳え立つ木々の隙間から覗く木漏れ日が、赤みを帯びて傾いていく。
風のない山。今この瞬間に音を鳴らすものがあるとすれば、それは動物か魔物だけである。
故に、彼女たちは息を殺して待っていた。がさがさと草木を踏み荒らす、その音を鳴らすものが目の前に現れる瞬間を。
赤い外套を纏った少女は、剣を構えていた。
切っ先を正面へ向け、握る手を顔の横に。
彼女の足元に燃え広がる灰色の炎は、魔物を殺すが故に魔物を遠ざけると同時に、より強い魔物だけを引き寄せる。
『逃げねばならない』と判断する魔物と、『消さねばならない』と判断する魔物とを、選別する。
濃紺のケープを纏った少女は、その後方で短剣を地面に突き立てていた。
魔石を嵌め込まれた短剣は杖と同じ魔術の媒体であり、彼女はこれを用いて魔術を行使する。
乾いた土に膝をつき、祈ることで魔力を練り上げ、ただその時を静かに待つ。
――刹那、静寂と草木を裂いてそれは飛び出す。
『イノグマ』と呼ばれる魔物である。それは地を這うような呻きと唾液を撒き散らしながら、正面を向いて生えた巨大な二本の牙とともに襲い来る。
丸太の如き四肢を振り回す、人の数倍はある体躯が赤い外套の少女を覆った瞬間。
「“滑進”」
切っ先が、イノグマの牙に触れ。
ほんのわずかに手首が捻られた瞬間、イノグマの体が持つ速度の方向がずれ、その巨体が地面に向かって転げた。
頭から地面に突っ伏したことで、イノグマの下半身が持ち上がる。持ち上がった下半身に向け、振り向き様に剣が閃いた。
「――“閃斬”ッ!!」
放つ技の名を口にするのは、彼女自身がかつて師にそう習ったが故。
これから俺は、これを放つ。そして確実に決める。自分自身に放つ宣言は、果たして違えることもなく。
両断された丸太の一本が、鮮血を散らしながら宙を舞う。体のバランスが大きく崩れたことに混乱したイノグマは、直後に襲い来る激痛に悶えた。
――悶え、吠えながらイノグマは本能で理解する。自身を見下ろす人間。脚をやったのは、こいつだと。
その者の右手には剣、左手には炎。勝てない、敵わない。激痛によってそう理解し、闘争心が恐怖に塗りつぶされた瞬間に、標的はより弱い方へと移し替わる。
即ち、遠方にいる無防備な少女の気配へと。
「シフェル!!」
イノグマが一本の脚と二本の腕で地面を駆け出した瞬間、剣士は彼女の名を呼んだ。
地面から短剣を引き抜き、精神の統一と詠唱を終えた魔術師が構える。短剣の切っ先を、イノグマの頭蓋に向け。
口にする言葉は剣士と同じ。ただ、それを果たす、という宣言。
「――“
瞬間、切っ先から飛び出した青い雷撃がイノグマの頭蓋に直撃する。
ばぢんと大きな音がひとつ鳴った後、巨躯が地面に倒れ伏す音が山中に響き渡った。
「ふうっ……」
真後ろと真横、同じ方向を見ていない一対の大きな眼球が渇き、煙を上げている。
それを見下ろしながら彼女は息をつき、ゆっくりと短剣を懐に納めた。
「お見事です。トーリ」
「そっちこそ」
一方は足の断面を見て。もう一方は、決着を見て。
駆け寄る相棒に賞賛を投げ合い、そして受け取った。
二ツ足のイノグマ。四ツ足と比べ気性が荒く、特定の縄張りを持たずに山を徘徊するという特徴を持つ、
その強さからクマ殺しは
赤い外套のトーリ・ノウェルグレイ。彼女のランクは
濃紺のケープのシフェル・ブルーメル。彼女のランクは
たった今、流れるようにクマ殺しを果たした少女たちは、双方が双方、ともにランクに見合わぬ実力を備えた冒険者であった。
*
ぱちぱちと鳴る焚火だけが明るく光る、夜の山。
食事を終えたトーリは剣を磨き、シフェルは設営を終えたテントの中から彼女の背中を覗き見ていた。
「寝ないんですか、トーリ?」
「ああ」
シフェルの言葉に背中で返事をするトーリ。
少女の体躯には僅かに不釣り合いな大きさの剣。その黒い刀身に、焚火の赤色が吸い込まれて写っていた。
「寝ずの番は必要だろ? これも前衛の役目だ」
「けど……昨日も番を任せてしまいましたし。ヌシと思わしきイノグマも討伐したのですから、今夜ぐらい二人そろって寝てもいいんじゃないですか?」
磨き終えた剣をぱちんと鞘に納め、振り返りながらトーリは答えた。
少しだけ困ったような顔をしながら。
「危険は、まあ、ないだろうが……問題はある。その、そろって、ってところが特にだ。テントは一つしかないだろ?」
「寝具は二つありますよ。寝返りがうてる程度には広くもあります」
「そうでなく! いや、気遣いはすごくありがたいが……その」
一瞬だけ目を伏せてから、トーリは自分の胸に手を当てて示した。
そこに宿る魂のこと。自分という人間のことを。
「話した、よな。俺が……俺の中身が、男だってこと」
「聞きました」
こくりと頷くシフェル。
「だからだ、シフェル。年頃の女の子と年食った男が、ひとつのテントの中で一緒に寝るのは問題だろ?」
「……私から見る貴女の姿も、年頃の女の子そのものですけど」
言葉で指をさされ、むぐ、とトーリが口をつぐみ、会話が止まる。
トーリ自身の自分に対する認識は、『成人した男性』のまま変わっていない。五年前にステラエモルクで目を覚ましたその時からずっと。
だが事実として、そこにいるのは男性を自称する少女であった。シフェルにとってトーリという少女は、腕の立つ頼れるテンセイ人の女性でしかない。
トーリの言う『年を食った男』は、今この場のどこにも存在していないのである。
「この言葉は……貴女にとって、不本意なものかもしれませんが」
湖畔街を出る前、トーリはシフェルにそのことを打ち明けた。
聞かされた当初は礫を食らった鳥のようになったが、時間を経るにつれ、ゆっくりと考えるにつれ、シフェルの中の答えはひとつに集束していった。
「けれどやっぱり、わたしにとっては、トーリはトーリです。わたしと年の近い、わたしと同じ、女です」
シフェルは性別や性差というものに深く理解があるわけではない。
彼女の歳は十六である。十一の頃に独り立ちし、大陸を渡って旅をして過ごした。
世間の常識や認識というものを学びはせど、誰かと深い関係を築くことはなかった。
故に――である。
年の近い、同じ女性のトーリと二人で旅をするということが、単純に新鮮で楽しく。
からかうように、少しの願望を混ぜながら、シフェルはトーリにこう言った。
「
一人で旅をしている時には使わなかった、小さな勇気。それを用いて、小さく微笑んで、彼女をテントに誘う。
炎の明かりを反射して、きらめく金髪をわしゃわしゃと掻きながら、そう言われると断りづらいとトーリは剣を担いで彼女の元へと歩いた。
当のトーリは自身の性自認を理由に、自分の体を
自分の魂は三十歳の男なのだから、彼女との付き合い方は慎重になるべきだ、自制すべきだと。
そう考える彼女と対照的に、シフェルはその壁を無くしてもらいたいと願っていた。
これから長く旅をする仲間として、それから個人的な感情も含めて。
「……もう少し向こうに寄ってくれるか、シフェル」
「これで限界ですよ。大人しく寝てください」
トーリとシフェル、剣士と魔術師。
フラム・ルージュを聖地へ運ぶという使命を自ら背負った二人の旅は、まだ始まったばかりである。
*
山道はだんだんとなだらかな下り坂になり、平野に踏み出す頃には、それは彼女たちの目の前に鎮座していた。
デクシード王国の国王が住まう街、王都エルンシャード。
王城の建つ小山と、ふもとの街を取り囲むように建てられた巨大な城壁。
背にも山脈を抱えた王城の護りは堅く、正面の城門以外に侵入する術を許さぬ形状が、デクシード王国という国の在り方を表していた。
武術と魔術を合わせて『術』。それから潤沢な鉱石資源と、その加工技術の高さを示して『鋼』。
大陸西部に位置するこの王国を、故に他国は『術と鋼のデクシード』と呼ぶ。
その名がけして誇張や大言ではないことを、ここ王都エルンシャードに足を運ぶ誰もが知ることとなる。
トーリとシフェルが城門に近づくと、彼女たちの目に城門の前でギュウバ車が何台も止まっている様子が映った。
停滞しているわけではなく、一台一台が検問所で綿密な検査を受けた後に門を潜っている。
その検査に時間がかかっている為に、城門にはギュウバ車の列が出来ていた。
「お嬢さん方! こっちだ、人はこっち」
よく通る声がトーリとシフェルを招く。ギュウバ車が並ぶ先とは別の、小さな検問所がそこにあった。
シフェルは手慣れた動作で懐から鞘に納まったナイフとタリスマンを取り出すと、赤い革鎧に身を包んだ門兵にそれを手渡した。
シフェルに促され、トーリも背嚢と剣を検問所の木箱の上に乗せる。
「装備はこれで全部かい?
「はい。わたしが
シフェルはケープの間に繋いであるギルド証を見せ、そこにはめ込まれた白く輝く宝石をとんと指で示した。
彼女に倣い、トーリも自分のギルド証を取り出して見せる。シフェルのそれと違い、丸いくぼみだけがある
「なるほど、
狼狽えながらも門兵はナイフとタリスマンをシフェルに返す。
それからトーリの剣と背嚢を丁寧に検め始め、ロード級の
「イドラ教と言ったか……その異教の噂は王都にも広まっている。加えて今は、『赤砂糖』という悪薬がスラムで流行っていてね。その薬の出所も、どうやらイドラ教らしいという話まで出る始末だ」
「赤砂糖……ですか?」
「ああ、ひどい幻覚作用と中毒性を備えた赤い粉末さ。曰く、舌に乗せると甘くとろけるらしい。頭の中身も一緒にね」
門兵はそう言って、こんこんと指で頭をつついて見せた。
話を後ろで聞いていたトーリは、ギュウバ車の列を見て、だからこんなに慎重なのだろうかと推測する。
ぱたんと背嚢を閉じ、慎重に剣を鞘に納めると、門兵はそれらを揃えて木箱の上に置き直した。
「スラムに足を運ぶ機会がもしあれば、十分に気を付けたほうがいい。憲兵の目にも限界はあるからね――問題なし。ああ最後に」
それらを受け取ろうと近寄ったトーリに対し、門兵は手のひらを差し出すようにして、トーリの赤い外套を指し示す。
「そのコートも見せてくれないか。見たところ、内側に何かしまい込んでいるようだが……」
「失礼、先に差し出しておくべきだった」
そう言ってトーリは外套を脱ぐと共に、内側のポケットから宝石箱を取り出す。
門兵は木箱の上に並べられたそれを手に取り、蓋を開けて宝石箱の中を検める。
――燃え盛る炎の時を止めて、丸く削り出したような、美しい赤い宝石。
「ふむ……これは」
「お守りです。困ったら質に入れろと、母が」
道中、シフェルと話し合って決めた建前。
それを口にするトーリの顔には、小さな揺らぎもなかった。
「……なるほど。それは肌身離さず持っておくべきだね。ありがとう、手間をかけさせてすまなかった」
そう言って門兵は外套と一緒に宝石箱をトーリに差し出した。
トーリはそれを受け取ると共にふわりと纏い、宝石箱を仕舞ってから、背嚢を背負って剣を装備する。
そうして検問を受ける前の姿に戻った二人の
「エルンシャードへようこそ、
*
「緊ッッ張したぁ…………!!」
血管のように張り巡る王都の道路を構成する石畳の上で、トーリは曲げた両膝に両手をついて大きく息をついた。
大動脈、大通りからは離れた場所にある裏路地。そこで彼女は口数の少ない剣士の無表情という仮面を剥がし、トーリ・ノウェルグレイという少女の本来の顔をさらけ出していた。
その背中をぽんぽんと撫でさするのは、依然変わらぬ様子のシフェル・ブルーメル。
「上出来ですよ、トーリ。少なくとも、あの門兵を通じて国家憲兵に警戒されるようなことは無いと思います」
「だといいんだけど……はあ、悪いことしてるわけじゃないけど、ああいう検査を受けるのはやっぱり苦手だ」
「少なからず同意しますよ」
顎に垂れる冷や汗を拭い、今一度宝石箱を取り出すトーリ。
中に納められた赤い宝石――フラム・ルージュが放つ神気は、すべてトーリが出す炎によって遮断し続けられている。
神殺しの炎は神気を焼き、神気に燃え移る。故にフラム・ルージュに纏わされた炎は、それが醸し出す神気を燃料として、常に燃え続けているのである。
現状は無害な宝石でしかない、それの正体は未だ定かではない……が。
赤砂糖という悪薬のことを門兵から聞いたとき、トーリの胸の内で、小さな氷が融け落ちるような悪寒があった。
――フラム・ルージュも、イドラ教の者たちが体に埋め込んでいた宝石も。皆、一様に……赤色をしている。
「……なあシフェル。赤砂糖、ってのは……」
まかり間違って、門兵に没収されようなることがなくて安心した。その安堵を噛みながら、トーリはシフェルの顔を見た。
シフェルもトーリの顔を見ていた。そして口にした言葉に、小さく頷いて答えた。
「気になりますが……我々の目的は聖地への到達です。長居して、深く首を突っ込むわけにもいきません」
まあ、そうだろう。シフェルの言葉にトーリが無言の肯定で答えた直後、けれどもシフェルはこうも付け加えた。
「でも、でもです、気にはなりますから。ギルドへ行って、それとなく探ってみましょうか」
「……ああ、そうしてみよう」
言葉にはせずとも、両者の思いはそれとなく一致していた。
――王都エルンシャードのハディマギルドは、その規模のあまりの大きさから、建物の形をしていない。
王都の西にエルン山と王城、大規模なバザールが立ち並ぶ商業区を中央とし、そこから北東の区画がすべてハディマギルドの傘下にある『ギルドエリア』となっている。
ギルドエリアを保有する街は他にも存在するが、そこは術と鋼のデクシード、こと武術と魔術の研鑽や、質の高い武具の調達において並ぶもののない王国のギルドエリアは四大国の中でも最大規模のものであった。
ギルドエリア内に三つ存在するエルンギルド酒場。その中で唯一イドの鐘を備えている第一エルンギルド酒場にて。
木椅子に腰かけ、旅の疲れを癒しながら、トーリは自分宛の手紙をじっくりと時間をかけて読んでいた。
「そうか、そうだよなあ……聖地ノルデって、今ミア姉さんが居るんだよな……」
ずっと昔、トーリの姉であるロヴィミアは、その才能を買われて聖地ノルデへと旅立っていった。
今でも彼女はそこに居て、この手紙もそこから届いたものである。これが自分たちの目的地から発ち、大陸を横断してやってきたという事実が、トーリを何とも不思議な気持ちにさせた。
一方、シフェルはめぼしい依頼を探しにクエストボードを睨んでいる最中であった。
女性の従業員が大半だったフェリスギルドと違い、エルンギルドには男性の従業員が多く、屈強な体にスーツを着こなすギルドボーイ達が酒場の中を歩き回っていた。
そのギルドボーイの一人を捕まえて、彼に手頃な――ロード級の実力に見合う――クエストがないかどうかを訊ねたシフェルは、彼と共に酒場を歩き回って一枚のクエストを選び取った。
クエストの内容は、『エルンシャード南東の山に生息する二ツ足のイノグマ討伐』。
「やっぱりありましたよ、トーリ。見つけて来ました」
「シフェル? そのクエスト……あ、あーー。なるほど」
木椅子を引き、少しだけ誇らしげな顔を浮かべてトーリの隣に座るシフェル。
王都に向かう旅路の中で、イノグマは既に討伐を完了している。その証として、事前に彼女たちはイノグマの大きな牙をはぎ取っていた。
つまりこの依頼は、受けると同時に達成の報告が可能なものであった。
「あれだけ狂暴なイノグマなら、討伐依頼も出てるんじゃないかと思ったんです! この報酬額なら、二日ほど王都で過ごしてから準備をしてもおつりがくるでしょうし……調査もそれなりに出来そうですよ」
「そりゃいいな……! 俺も王都の剣術道場を覗いてみたかったし……そうだ、魔術学院も見学できるかも」
「……魔術に興味があったんですか? 言ってくれれば、いつでも教えたのに」
話をしながら、シフェルは自身の
ごとんと牙がカウンターに置かれる音が酒場の中に響き渡る。クエストボードを見ていた他の冒険者たちの目線が、その音の方向へ集まっていく。
「
「…………畏、まり……ました。ぇえと、そちらの方は……」
「
ぱちぱちと瞬きを繰り返し、困惑と驚きを示すギルドボーイにすらりと少しだけ剣を抜いてみせて、自分と自分の剣の紹介を行うトーリ。
最短時間で行われる受注と達成の処理に彼らが慌てる中、物珍しいものを見る他の冒険者たちの目線をすり抜けて、ただ一人だけきらきらと輝く目を向けて二人の元へ早歩きで接近する影があった。
「さすがに報酬をその場でポンってわけにもいかないか……? うん……?」
たかたかと鳴る足音に気づいたトーリが振り向いた先。
そこに、彼は立っていた。
「キミ達っ!!」
急いた気持ちが吐き出させた声に、シフェルも振り向く。
癖のある淡い茶髪に、青い下地に黄色いラインで紋章が描かれた革鎧。
首に下げた
「白位階と初位階――と言ったか!? それに二ツ足を討伐できる実力と、その体つき!! あまりにも……あまりにも僕が求める条件に合致しすぎているッ!!」
「え……え? え、ぇっと……??」
困惑するシフェルの目の前で、ぴょん、と青年の体が跳ねて。
ばたん、と落下すると同時に、彼は土下座した。
「
箱、という言葉を体現するかのような。
美しく、立方体にぴたりと収まるような形をした、土下座であった。