あ!ゲートから野生のドータクンがとびだしてきた! 作:でかすぎ史郎
私達はとんずらするべく山海楼の駐車場に急ぐ。そしてそこには見張りがいた。もちろん銃で脅して無力化したのだが。
「悪人なら撃っていい?いいよね」
「よせ栗林」
「けどどうするの?連れていけないし縛っても逃げそうだし。気絶させようにも後遺症残しちゃうよ」
問題は見張りの処遇だ。
ここはアレだな私の出番だ。私は『さいみんじゅつ』を覚えたことがある。技を思い出すのに時間はかかるが大した問題ではないだろう。さて1...2の.「殺傷せず無力化できればよい?」…レレイがそう言うと呪文を唱えて見張りを眠らした。おお、私以外にも『さいみんじゅつ』の使い手がいたのか。
だが問題はそれだけではなかった。
「大変、車のエンジンがかからない」
「クソッ!壊されてたか」
当然のように車は壊されていた。逃げる手段を封じるのは定石だ。私という巨体を拉致するくらいだからどこかに生きてる車はあるのかもしれないが見つけ出す時間はないし、また戦闘になるかもしれない。
「隊長。宿の人に車を借りましょうか」
「うーむ。これ以上迷惑をかけるわけには。それに宿の車全部壊されてるかもしれないしなぁ」
確かに。どうしようか。私が悩んでいるとテュカが簡単な問題を解くように言い放った。
「簡単じゃない。ドータクンの超能力で車を浮かせて移動すればいいのよ」
え?
「…ハリポタの空飛ぶ車みたいな感じか。それならいけるか」
伊丹さんが納得といった様子で。
要は秘伝技『そらをとぶ』みたいなもんだろう。
了解した。みんなが車に乗り込んだ後に私は車を『じんつうりき』で浮かす。私は外で浮遊している。
「よし頼んだ。まずは銀座近くまで行ってくれ」
え?…ここって東京の山奥だよな23区外で東京でもかなり西のほうの。そして銀座は東京の東部にある。実質東京横断である。PP持つかな。いやいけるはずだ。『サイコキネシス』の方が出力は高いがPPの多さなら『じんつうりき』の方が上。頑張れ私。
そうして頑張りまくって銀座近くのパーキングエリアにやってきた。
今は休憩中だ。
「さてと、門の周りには工作員がウジャウジャいそうだけどどうしようか」
「はいはい!私にいい考えがあります!」
梨紗さんがそう言うと俺達異世界組の写真を撮影してきた。
なにしてんだ?
「銀座に大きなオトモダチを動員する。そのために証拠が必要なのよ。知ってる?そこの3人娘もそうだけどドータクンってかなり人気なのよ」
梨紗さん曰く、衆人環視の状況にすれば工作員は動けないと語った。そして衆人環視の状況にする為にネットに異世界一行が明日、銀座事件の犠牲者モニュメントに献花すると言う情報をばらまくとのことだ。
なるほど考えたな、流石は伊丹さんの元奥様。確かにたくさん目があれば滅多なこともできまい。特に
そうして車内で朝日を拝むことになり献花当日となった。
めっちゃ人いる。カメコもたくさんだ。これは工作員も表立って行動はできないな。梨紗さんの狙い通りになったわけだ。
私達はモニュメントに献花し無事に特地に帰る事となった。
いやはや。色々と会ったが日本観光は楽しかったけど、やっぱ安全の方が重要だよな。…盗賊とかが普通に蔓延る特地の方が安全ってどうなってんだ。
数日後、私はレレイに召集を受けた。要件はアルヌス協同生活組合幹部会議とのこと、幹部だったんですね私。今は三人娘とカトー老師と共に会議をしている。
「じゃあ始める。議題はこれからの組合について」
「いきなりじゃのレレイ。日本に行き何か考えでもかわったかの」
カトー老師がそう言う。それにレレイは答えた。
「私たちは竜の鱗である程度のまとまった金が手に入った。けどこれは持続可能じゃない。私達は更に一歩先を進むべき」
そう言ってレレイは俺達に1枚の紙を配った。そこにはアルヌス町化プロジェクトと書いてあった。
詳しい内容は竜の鱗を売った金を元手に商売を始める。商売相手は特地の人間と自衛官。特地の人間には日本から輸入する予定(自衛隊に許可は既に取ってある)の便利な日用品。自衛官には特地特有の土産物や生鮮食料品の納入。それにより自然と町ができる。要約するとこんなことが書いてあった。
「つまり町を作るってぇことぉ?」
なるほど、悪くない案だ。実際に軍の基地の近くには町が出来たりするしな。
「そうなる。差しあたっては日本のスーパーマーケットにあたるPXと自衛隊の為の食堂、ドータクン食堂を建てたいと思っている」
ドータクン食堂か…ドータクン食堂!?
「ごぉん!?」
「そこでは日本から輸入した食料と貴方が育ててる農場での木の実を使う。だからドータクン食堂。それでかまわない?」
「ごん!」
私は体を縦に振って肯定する。売り場所が見つかるのは此方としてもうれしい。持て余してたからな。
じゃあ早速増産するか。幹部会議が終わった後、私は木の実農園に向かった。
まずは『じんつうりき』を使い地面を柔らかくしつつ日本から買ってきた堆肥と混ぜ込む。これで土づくりは万全だ。そこに各種、ポケモン世界の木の実をぶち込む。そして『あまごい』を発動。芽が出始めたら『にほんばれ』をして光合成を支援。この繰り返しだ。
ポケモン世界の木の実は数日程度で育つ。ポケモンみたいな強靭な生物がいる影響か、どうやらあの世界の果樹も強靭らしい。
そうして倍々ゲームで木の実を増やしていく。そしてそれをドータクン食堂に卸す。私は順調に農家としてキャリアを積んでいった。
その間にもPXの経営も順調であり
自衛官達はこぞって来て大繁盛→それによってPXは更に拡大→組合にツテがあるフォルマル家に人手を要請→人が増えるということで需要が増える→需要が増えれば需要が需要を呼ぶ→次第にアルヌスに日本の優れた製品があると知れ渡る→他から商人が来るといった感じで泥縄式に経営は拡大。
そうして少し前までは難民キャンプしかなかったアルヌスの丘は町と化した。つまり食べる口も増えるということで私の木の実の需要も増えた。
私の木の実農家事業も人を雇うまでに成長を果たした。今の私はアルヌス協同生活組合傘下企業、ドータクンカンパニーの社長である。
「ドータクンさん。食堂よりマトマの実の増産のお願いが来てます」
「ドータクンさん。ヴァレッタからの商人がオレンの実を100個発注してきました」
「ドータクンさん。自衛隊の檜垣三佐から自衛隊として商談があると」
「ワカッタ、タイオウ、シヨウ」
この数か月、生活を続けるうちに片言ながら話せるようになった。依り代話法は効率悪かったし片言でも喋れるのは大きな進歩だ。まあロケット団の某ニャースには及ばないが。
まずは自衛隊だな。自衛官個々人とは商取引は食堂や木の実直売所で取引したことはあるが自衛隊という組織と取引するのは初めてになる。これは重要な話になるだろう。
私は伊丹さんを依り代にしつつ自衛隊の駐屯地へと向かった。片言で話せると言っても本当に重要な議論では依り代話法が基本だ。
「お招きして頂きありがとうございます檜垣三佐」
「はい。こちらとしても要請に応えていただきありがとうございます」
「ええ、色々とありましたが私は引き続き日本との友好的な関係を築いていきたいと思っております」
「…はい。その節は申し訳ありません」
日本に行った時に自衛隊は守ってくれなかった件は忘れてはいない。とはいえ日本への恩義もある。だからこそ牽制を行う。私は学んだのだ。日本は味方だが状況によって裏切ることもあると。
「単刀直入に行きましょう。モモンの実を100個ほど政府として買い上げたい」
マジかよ。政府として、これは大きなことだろう。
「特にモモンの実を臨床試験した結果、数多の毒性がきれいさっぱり無くなったことが確認されました。これを見た白衣組がもっとたくさんのサンプルを要求してきまして」
まあそうだろうな。モモンの実はインド象すら
「それでしたらクラボの実の購入もいかかですか?麻痺を治す実なのですが」
「…麻痺を…もしや脳性麻痺を治したり?とりあえず、そういう特殊な治癒能力の持つ実を沢山欲しいというのが政府としての要望です」
「では
もはや我が社の木の実栽培事業のラインナップはオレンとモモンだけではない。私が新たにウルトラ―ホールから取り寄せた木の実の栽培も軌道に乗り始めている。
「おおそんなに。わかりましたそれぞれ100個購入致しましょう。しかし物凄い効果ですねこの木の実達は。…これは独り言なのですが今は官民共同でこの木の実のメカニズムを解明しています。企業の一部がこの木の実に興味を持っているとか」
つまり将来的に日本にポケモン世界の木の実を輸出できるのか。今のところ日本の製品を買う特地人の落とす金
私と自衛隊(政府)商談は無事成功に終わった。終わっても別に忙しさは変わらない。他の案件を捌いていき次第と時間が経ち夜になった。
久しぶりに行ってみるかねドータクン食堂。木の実の終着駅の盛り上がりを見ていきたい。
「マトマパスタ一丁上がり!」
「ヒメリの実の盛り合わせだよ!」
「マ・ヌガ肉のオレンソースあえ!」
食堂は大いににぎわっているようだった。そして私の農場の木の実が使われていた何より。
「このモモンの実はすげぇぜ。コイツは毒を取ってくれる効能を持つだけじゃねぇ。酒の酔いを醒ます効果もあるんだ。酔い過ぎて気持ち悪くなってもコイツがあれば一安心だ」
酒場の方からそんな声が聞こえる。
なるほどそう言う使い道もあるのか。確かにアルコールは突き詰めれば毒だからモモンの実の対象範囲内か。なるほどいい商売文句に使えるな。
「あっ!ドータクンさん。おーい!みんな!この食堂の神、ドータクンさんが来てくれたわよ!」
「本物だ!」「豊作の神!」「炎龍を撃退した緑の鐘様!」
食堂の看板娘、デリラがそう言う。
騒がしかった酒場が更に騒がしくなる。
私の顔は割と売れている。なぜならKF〇のカー〇ルおじさんの如くドータクン食堂の目の前に実寸大の銅像が置かれているからだ。
私は酒場を見渡す。そこには伊丹さんがいた。彼はその部下の黒川さんとロゥリィと酒盛りをしていた。
「イダミ、サン」
「お、ドータクンじゃないか。丁度いい、テュカの事で話をしてたんだ」
テュカのこと?…まさか。
「で、黒川。話ってのは?」
「テュカの症状が悪くなってきています。いつまで放っていていいのでしょうか。現実を受け止めさせるべきなのでは?」
テュカの症状か。2人分の食料と生活用品を求めたり、食堂に現れては誰かを探そうとしたりとかが噂になっている。
確か彼女は炎龍のせいで自分の住んでた村を焼かれて父親を失っていたんだよな。そしてそれを受け入れられず父親がいるかのように振舞っている。可哀そうな話だ。
「黒川、俺達がテュカに現実を認めさせたとしよう。テュカは受け止められると思うか?いよいよあっちに行ってしまうぞ」
「このままにしておけと」
「そうだ。余計にこじれるだけだ」
「わかりました」
黒川さんは怒った様子で駐屯地に戻る。意見の相違という奴か。私としては伊丹さん派だな。彼女が死ぬかもしれないという危ない橋は渡ってほしくない。
私がナイーブな気持ちになっていると急に後ろから声が響いた。
「おい!店主!ここは子供に酒を飲ますのか!」
言われた対象は私ではない。ロゥリィだ。900歳越えの亜神に喧嘩を売りやがった奴がいる。私は後ろを向く。そこにはダークエルフの女がいた。
「我が名はヤオ・ハー・デュッシ。こちらに緑の人と緑の鐘がおられると聞き用件ありて参った」
それを聞いたロゥリィは悪い顔をした。ああ、これは侮辱されたことへ仕返しする気だ。
そしてロゥリィは叫んだ。
「お願い助けてぇ!この男、もう飲めませんって言ってるのに脅してくるのぉ」
「ええ!?」
これはこれは。ヤオは緑の人こと伊丹さんに剣をむけた。もちろん伊丹さんは自慢の逃げ足で逃亡、ロゥリィもどこかへと行き、私の近くにはヤオしかいない状態になった。
彼女は緑の人に用件があると言ってたのに緑の人(自衛官)に剣を向けた。これで自衛官の心証は悪くなっただろう。可哀そうに用件が遂行される確率は減ったなこれで。
さてと…彼女は言った「こちらに緑の人と緑の鐘がおられると聞き用件ありて参った」と。緑の人は自衛隊、そして緑の鐘は
「オマエ、ワタシ二、ナニヨウ?」
「うおっ!お前は生きているのか!てっきり食堂の前の銅像と同じだと思ってたぞ」
まあ、そりゃ驚くか。K〇Cにいったらカ〇ネルおじさん(本物)がチキン喰ってるようなもんだし。
「その人こそが緑の鐘、ドータクンさんだよ」
デリラが補足してくれる。
「そうか、なら話は早い。力を貸してほしい?」
「ナンノ、タメ?」
「手負いの炎龍を倒すためだ」
炎龍、この世界の600族か。
それは骨が折れそうだ。
「無論、ただでとは言わん」
報酬の話か。彼女は大きな塊を私の目の前にある机に置いた。
「人の頭大の金剛石の原石だ。これでも足りぬというなら我が身を捧げることをも厭わぬ」
報酬も十分。そして炎龍はお世話になったコダ村の村人を襲った仇。
ならば答えは1つだろう。
「ジエイタイ、二、カクニン、シテ、カラ」
まずは自衛隊に確認だな。私も責任ある立場だしな。動くには許可が必要だ。
流石に依り代話法は作劇上やりづらすぎるんで少しは喋れるようにしました。