あ!ゲートから野生のドータクンがとびだしてきた! 作:でかすぎ史郎
「ドウ、オモウ?」
夜の酒場での一件を受けて1日が経った。私は駐屯地にいる自衛隊に事の顛末を説明した。ヤオも傍らにいる。
「ダメです。絶対に行かないでください。いいですね絶対ですから」
断られた。なぜだ。
「貴方の立場を考えてください。門がもし壊れた時の保険、アルヌス協同生活組合の幹部にして日本でも信者がいるほどの有名銅鐸なんですよ。それを危険にさらす真似は自衛隊としては完全に反対です!行くようであればこちらにも考えがありますよ。だからダメです」
確かに…まずは
「ジエイタイ、トウバツ、スルノハ?」
「それも無理です。炎龍がいるシュワルツの森は地図によるとエルベ藩王国領内。属国とはいえ帝国ではありません。軍が相手国の断りもなく国境を超えるのは問題ですよ」
「そんな!」
ヤオが悲痛な声をあげる。
「力になれず申し訳ありません」
自衛隊の担当者はヤオに謝った。
そしてヤオは車でアルヌスの町に戻される。
「俺達の世界では軍隊ってのは暴力装置、個人が独断で動かしちゃいかんものだが…あいつなら伊丹ならやるかもな」
送迎をしてくれる柳田二等陸尉はそんなことを呟く。
伊丹さん…三人娘…テュカ。テュカは炎龍で親を失ってるんだよな。そしてそれを受け入れてない精神薄弱状態。
私がヤオの立場ならテュカに現実を突きつけてテュカをおかしくさせて伊丹さんを焚きつけるな。…これは杞憂のはずだ。とはいえヤオは追い詰められた人間、なにをしでかすか分からない。一応、それとなくヤオとテュカを接近させないようにはさせるか。
伊丹さんは用があるのか帝都の方面にいった。ヤオの件に何も出来ないのは忍びないが私は日常を過ごした。事業の効率化するために動きに動きまくり、木の実をジャンジャン増やして儲けに儲けまくった。
そんなある日の昼下がり。
「ドータクンさん。今日はこれで何もやることがないです」
「ナント」
「私らだけで十分回るんで、異常が起きたら報告しますんで」
天候も最近は調子が良く『あまごい』『にほんばれ』の出番もない。つまり暇だ。暇を持て余したのだ。…ドータクン食堂にでも行くか。
「あ、ドータクンさん」
「ミューティ」
アルヌスの警備を担当している警務のセイレーン種のミューティだ。
「その節はどうも」
その節…?…ああそういやイタリカを襲っていた盗賊だったか。そして私達によって撃退された。それが今や治安維持を担当しているのだから人生とはわからないものである。
「キニスルナ」
「その…いい天気ですね」
「ソウダナ」
クッソ気まずい。いや元敵なんだから当たり前なんだけど。
「えっと、その、アルヌス音楽祭って知ってます?」
「シラン」
「私ら組合の中堅幹部で企画しるんですよ。みんなで歌や楽器を奏でようって催しなんですが。1週間後にやるんで良かったら見物しませんか?」
「エンソウ、二、サンカ、スル」
「え?別にエントリー自体は構いませんが」
「カンシャ、スル」
そうと決まれば練習だ。まともに話せないのに歌を歌えるのかって?問題はない。私には秘策がある。
1...2の...ポカン!
そして!
これで音の微細な調整ができるようになった。後は再現するだけだ。ポケモンのbgmを。
この世界にはゲームとしてのポケモンが存在しない。つまりはそれに付随する神bgmも存在しない。ならば私が再現しようじゃないかという話だ。
ビートルズのいない世界でビートルズの曲で成り上がる映画を思い出す。要はそれの真似事だ。
私はこの1週間、暇だったので『きんぞくおん』を微調整し練習しまくった。私は元が銅鐸、つまり
「あれ?ドータクンもいるのね」
テュカがいた。どうやら彼女も音楽祭に参加するようだ。これが気晴らしになればいいのだが。
「お父さんが見てるかもしれないからね。私、頑張るよ」
「ソウダナ」
彼女の父はもう…とりあえず話は合わせておく。
そうして音楽祭は始まった。
ミューティの魅惑のボイス、テュカのハープ、ウォルフのシャウト、コダ村の民謡、自衛隊の軍歌etc、盛り上がりが最高潮になった時、私の出番になった。
「ドータクンさんだ」
「彼って歌えるのか?片言しか喋れないはずだが」
「確か出身が特地でも日本でもないんだよな」
ギャラリーがなんか言ってるがこれを聞けば黙るしかないだろう。
さてと、披露するか『けっせん!ディアルガ!』を。
やはり同じ鋼タイプでbgm名がシンオウ様なことを考えるとこれしかない。私はこの1週間、これの練習しかしてこなかった。いい曲なんだよ。
私は奏でる。かつてある世界で起きたとある絆の歌を。
会場は厳かな雰囲気に包まれる。
そして演奏が終わると会場から拍手が起きる。これは決まったな。
「アンコール!アンコール!」
おいおい、ポケモンに『アンコール』するなんてもうするしかないだろう。
私は再度奏でた。
音楽祭は大成功に終わった。
「すごい曲よね。貴方の世界の曲なの?」
音楽祭後、テュカにそう尋ねられた。
「…ソウダナ」
私がいたのはポケモン本編世界だからポケダン世界とは別だけど。前世で聞いた曲という意味では「貴方の世界の曲」なのは違いあるまい。
「貴方の世界の民謡も中々よね。そうだ。お父さん見てない?」
「ミテナイ」
お父さんか。どうしたもんかねぇ。真実を言うべきか。それとも理想を追い続けさせるべきか。
私はそう思いつつ私の家に帰る。
その夜のこと、いきなり叩き起こされた。なんでも地震が起こるとのこと。いや地面技は特性『ふゆう』で無効だけど。まあいいやとりあえず指示に従って集まるか。
「きゃああ!」「うわあああ!」「神様ぁ!」
そして予想通り地震が起きた。私には当然効かない。
だがこれはかなり大きそうだな。数10秒間くらい続いただろうか。地震は収まった。…門は大丈夫だろうか。
「近郊の数か所で家屋の倒壊アリ、負傷者がいるもよう」
「了解した。銀座では揺れを感知せず門に損傷はない」
自衛隊の無線から情報が伝わる。門が無事ならよかった。私の力をもってしてもあれだけの大きさと持続力のあるウルトラホールは作れないからな。
一安心した私は『じんつうりき』を使い自衛隊の救助活動を支援する。…この時の地震の後処理に手一杯で気が回っていなかった。ヤオがテュカに接触しようとしていることに。
ノ||◎皿◎||\ノ||◎皿◎||\ノ||◎皿◎||\
時間は巻き戻り、1週間前。
ある女が項垂れていた。彼女の名前はヤオ。炎龍に故郷を焼かれたダークエルフだ。
そして
「どうすればいいのだ。私は」
だがここで折れてはいけない。彼女は柳田二等陸尉の「伊丹ならどうにかしてくれるか」という言葉を思い出す。他の自衛官に縋りついた時も「伊丹なら」と言っていた。まだ希望はある。
「イタミか」
早速、情報を集めた。伊丹というのは緑の人で彼女が先日、トラブルになった自衛官であること、ロゥリィ・テュカ・レレイという3人娘と仲が良いこと、テュカは炎龍に父を殺されそれがトラウマになって父がいるかのように振舞っていること、そして伊丹は既に帝都に行ってしまったこと、を掴んだ。
「本人に交渉する前に外堀から埋めるか」
行動に起こそうとするがそれは出来なかった。テュカとコンタクトを取ろうとしたらドータクンカンパニーの人間に防がれた。ドータクンは私の話を聞いていた。その部下が動いた。おそらくはドータクンの指示であろう。
新参者の彼女では彼らの守りを突破するのは難しい。そうして何も出来ず1週間が経った。音楽祭が開かれる日だ。
「アンコール!アンコール!」
ドータクンは奏でていた。異世界の曲を。彼女は許せなかった。私達がこんなにも苦しんでいるのに彼らは幸せそうにしている。鬱屈した感情が溜まっていく。
そして事態は起こった。地震だ。ドータクンもドータクンカンパニーの人間も地震の後処理に追われている。
行幸だ。天啓だ。チャンスだ。彼女は確信した。そうして動き出した。
ヤオはテュカに会うことができた。
彼女の心は酷く痛んでいた。だからこそ目的を達成するために手段を選べる状況下にはなかった。
「貴方は?」
「私はヤオ。其方の父は死んだと聞いたが?」
「なにいってるのお父さんは死んでなんかいない!」
「炎龍に襲われた時の事を思い出せ!生き残りは其方1人ではないか。つまり其方の父は炎龍に殺されたのだ」
「あ、ああ嘘よ!」
「其方の父の仇は炎龍、それを認めろ!そして緑の人に仇討ちの女性を頼むのだ!」
ヤオはテュカに真実を突きつけてしまった。
ノ||◎皿◎||\ノ||◎皿◎||\ノ||◎皿◎||\
伊丹さんが帰ってきた。なんでも帝国に拉致されてきた被害者を奪還してきたらしい。
だが…
「あっ!おとうさん」
「…テュカ」
テュカはヤオに現実を突きつけられてしまった。
そして受け入れるでもなく妄想を酷くしてしまった。
今は伊丹さんを父親だと認識して現実から逃げている。
「ヤオ、キサマ!」
「此の身を八つ裂きにしてくれても構わない。緑の鐘よ緑の人よ此の身の同胞を救ってほしい!」
我が友、テュカを傷つけた。この事実は許されない。
コイツへの一番の復讐は炎龍に何もしないことだ。しかしテュカにしっかり気持ちの整理を付けさせるには炎竜を倒すことだろう。
「イタミ、ドラゴン、タオセ」
「…」
伊丹さんはテュカの父の事を知らない。本人とのズレは全てテュカが背負うことになる。テュカの症状が日に日にひどくなっている。このまま放置はできないだろう。
「シンジツ、テュカ、二、オシエル、ニハ、ヒツヨウ」
そうして数日がたった。そして伊丹さんは…
「決めた。俺、テュカと一緒に行くよ」
伊丹さんは炎龍退治に行くことにしたらしい。そしてそれについていくのは…
「ちょっとぉ水臭いんじゃないのぉ?」
「生還率を上げるには魔法が必要…」
「ごぉん」
「待て待て、ロゥリィとレレイまではいいとしてドータクンは行ったらダメだろう」
「セイフ、イチド、ウラギッタ。ナラ、コレクライ、シテイイ。ソレニ、ワタシ、ツヨイ」
私は一度政府に米中に売り渡されそうになって困った身だ。ならばこっちからも困ったことをしてやろうという魂胆だ。無断外出、それが日本に対するささやかな復讐だ。
私が闘志を燃やしているとヤオが隣に来て伊丹さんに向けて傅いた。私らに同行する気か?
「此の身はただいまより永久に御身のもの。今この場で命を断てと仰るならただちに」
「はぁ、ここで死なれても困る。道案内も必要だしな。行くぞ!」
そうして私達はこの世界の600族、炎龍討伐に向かうことにした。
●ノ||◎皿◎||\ドータクンの解説③
・説明
帝国方面の話には全く関わらない本作主人公。本当は日本人救出させたかったけど、日本政府が門を開けれる重要存在を敵地の真ん中に置いとく訳ないという思考が邪魔してどうしてもできなかった。
・技
『じんつうりき』『にほんばれ』
『きんぞくおん』『あまごい』
遂に攻撃技が1つになった。これでは悪タイプになすすべがない。しかも『きんぞくおん』を採用した理由は音楽の為。平和ボケしまくっている。
サイコキネシスではなくなぜ神通力を採用してるのかというと神通力の方がPPが多いから。
・特性
『ふゆう』
もちろん地面技の『じしん』は無効化する。
・性格
なんだろう。