赤龍生徒のマーセナリー! 気になるアイツは異世界帰還者 作:傭兵企業赤龍帝
「……ぐ……ぁ…………」
「む……ぅ……ぉ……~」
「はぁ……はぁ……ァッ」
駒王学園高等部。数年前に男女共学になったばかりの、名門学園の高等部。
近辺では有数の学園であり、高等部に入るのはかなり困難。偏差値は上から数えたほうが早い部類の高校であり、入れる時点で勉強ができるほうなのは確定的な学び舎である。
その高等部のある教室で、こうしてうめき声をあげる三人の男子がいる。
兵藤、松田、元浜。
ある意味学園でも有名人である彼らの、その苦悶の声に助けようという生徒はいない。
それは彼らが嫌われていて、苦しめばいいと思われているからではない。いや、人気という意味では低い部類だが、そういうことではない。
なぜなら、彼らに向けられるのは嘲笑ではなく苦笑。
またかコイツら。一言でいうならそういった感情を、彼らはやれやれといった状態で見ていた。
そしてその理由を、右藤友助がため息交じりに告げる。
「そろそろ克服しようよ。エロ本禁断症状」
「無茶言うなぁ!」
一誠がそう反論するが、友助は再びため息をついた。
「いや、もうそろそろ三年目でしょ? なんでエロ本を学校で読まない程度で、禁断症状を起こして痙攣するのさ」
呆れるほかないと全身で体現しながら、友助はそういったうえで缶ジュースを三人に渡す。
かつて異世界に一誠とともに転移し、そして帰還。その後兵藤家に居候になって以来、一誠の悪友である松田や元浜とも腐れ縁になっている。
それゆえに、ある意味この光景には頭が痛くなっている。
変態三人衆とも称される彼らは、とにかくエロい。煩悩の使徒といってもいい。
年頃の男子はエロに関心が強く、こっそりエロ本を隠し持っていたりゴミ捨て場から拾っていたり立ち読みしたりすることは多い。そして女子はそういった男子を毛嫌いする者が多い。これが年頃の男女のあるあるといってもいい。
だがしかし、この三人はそういった次元を超えている。
そもそも駒王学園高等部に行くまでは平凡な成績であり、頑張って偏差値を上げて進学した。一誠の場合は異世界転移というディスアドバンテージを乗り越えてともいえる。
その理由は「女子比率が多いから、彼女ができるかもしれない」というものだ。その一念で、進学校に受かったのだ。
そして同時に、彼らは変態性を抑制していた。
この三人、当たり前のように女子の着替えは覗こうとする。なんならエロ本やエロゲーについて同等と教室で語る。それこそ持ち込んで広げることもするようなレベルだ。
年頃の女子どころか、一般的な女性も毛嫌いするだろう。何なら男でも嫌うものが普通に出てくるだろう。
友助は一誠と苦楽を共にした経験もあり、三人そろって付き合いがあるがゆえにいいところもある。反面、噛めば噛むほど味があるタイプであり、初見で食べようと思わないタイプだ。控えめに言って、人を選ぶ。
だが、彼らはそんなあり方を猛省した。自分たちが女子にとって嫌になる者であり、誰だっていやな奴と仲良くなろうとはしないということ、悟ったのだ。
故に彼らはそれを自制しているのだが、その結果として禁断症状レベルで発作的にもだえ苦しむようになった。
一年も続けば有名にもなる。理由が理由だから何とも言えなくなる。だが、それゆえに彼らは元の気のいい人物であることが分かり、思うところはあるが悪い奴じゃないというポジションに収まったのだ。
……最も、同居人ゆえにフォローせざるを得ない友助が保護者のように扱われるという弊害ももたらされているが。
「まったくもう。ま、こうなってるってことはちゃんと我慢できてるってことだけどさ」
苦笑で済ますのも大変だが、それができるのが友助だ。
実際、我慢はしているという点をもって学園内で三人の評価はそこまで悪くない。
……というより、半分ぐらい哀れまれている。具体的には「ここまで煩悩が強いと生きづらいだろうなぁ」と思われている。
そして当然だが、友助はその点もあって「フォロー役お疲れ様」という道場の視線をよく向けられている。
女装すれば絶対に男と思われないだろう体格・顔立ち・声の三点セットもあり、「女装して発散させてるんじゃないだろうか?」などという疑念も持たれている。最もネタにして同人誌を書いてきた文芸部女子には、「肖像権の侵害でいくら請求できるか」の小論文を作って抑え込んだが。
その点において、右藤友助は間違いなく苦労人であり、そしてほかにも苦労をしょい込んでいるといってもいい。
「……で、イッセー。どうするの?」
その言葉の意味を、イッセーもすぐに理解している。
小さな声で告げられる確認に、イッセーの返答もまた小声だ。
「う~ん。こっちから動くのってまずいんじゃね?」
この学園における二大マドンナ。リアス・グレモリー及び姫島朱乃の二大お姉さま。二人がオカルト研究部で部長と副部長をしているが、同時に上級悪魔リアス・グレモリー眷属の主と女王であることは、一部しか知らない。
そして自分たち、傭兵部隊フォース・デリバリーのチーム「チーム・ピース」は対応しないといけないだろう。
……問題は、その対応次第で事態はかなり悪化しかねないことなのだが。
リアス・グレモリーは昼休みに、部室まで来て調べ物をしていた。
「……兵藤一誠。面白い子のようだけど、彼がフォース・デリバリーねぇ」
有名人ゆえに、表向きの情報は割と簡単に集まった。
モテたいというシンプルな理由で、偏差値的に厳しいところを一気に持ち上げてこの駒王学園高等部に入学。その後は強すぎる煩悩と我慢による弊害で、「悪い人ではないが変わった人」として有名になる。
成績としては中の下。体力としてはそこそこ。人から聞かれた際の長所は「スケベ根性ならだれにもも負けない!」を堂々と言う気質。ただし、情報をまとめると「気のいい男」という結論になる。
ただし、警戒するところも調べられている。
そのうちの一つが家族構成だ。
彼は両親と暮らしていて、一人息子。これに関しては出生届などから調べがついている。親戚筋についても大体のところは把握している。
だが、いま彼の家には親戚の妹分という、どこから出てきたのかわからない少女が一人住んでいる。さらに交友関係が見当たらない男女が一人ずつ、突如として同居しているらしい。
仮説は立てれる。フォース・デリバリーの関係者とすれば筋は通るが、それにしても同居という形にする必要があったのだろうか。
フォース・デリバリーについては実態がわからない。依頼における信用はあるが、所詮は傭兵であり、だからこそ解せない。
かのアジュカ・ベルゼブブが手練手管を用意して、ようやくわずかな情報をつかめる程度の情報統制。本来、傭兵レベルがそれだけの能力を持ち得るのか。
どこかの勢力と密接につながっている。そう仮定するほうが納得できる防諜のすさまじさに、警戒心を抱いている悪魔も数多い。
だからこそ、リアスも警戒を入れる必要があると考えた、その時だった。
「……部長、大公からの通達ですわ」
朱乃の言葉を聞いて、リアスはこめかみに手を当てたくなった。
「この忙しい時期に、どこのはぐれ悪魔が来たのかしら?」
「Aランクはぐれ悪魔の
地図を確認すると、確かに駒王町の境界線ギリギリに廃ビルがあり、そこに入っていくところが確認されている。
「まったく。……この忙しい時に……っ」
潜伏している堕天使の警戒という、管轄としての業務。魔王ベルゼブブから命じられたフォース・デリバリーに対する接触。そこにはぐれ悪魔討伐まで来て、リアスは軽く頭痛を覚えた。
とはいえ、現地を担当する上級悪魔として対応しない理由はない。仕事はしっかりしておかなくてはいけないだろう。
故に、リアスはいら立ちを飲み込んで立ち上がる。
「まずは一つずつ終わらせましょう。……準備を整えて終わらせるわよ」
「了解ですわ、部長」
一方そのころ、帰宅した一誠と友助もまた、連絡を受けていた。
「え、俺たちに依頼だって?」
「どっちかってゆーと、以来の現場が駒王町って感じ?」
イッセーに答える星奈はそういって、モニターを宙に展開して顔写真を映し出す。
「なんていうか、
モニターに映し出されているのは、数十人の神器保有者と思われている構成員。
支配下に置いている半グレは百人を軽く超える規模であり、用心棒や幹部として神器保有者を擁している。結果として逮捕を試みた警察官にも死者が出ているらしく、警察側も異能保有者を集めたり、異形や異能の勢力に応援を要請している。
だがそれを待ってられない被害者遺族に、過去にフォース・デリバリーに依頼をしたことのある人物がいたため、こうして依頼がなされたのだ。
異形や異能がかかわっているなら、これぐらいはまかり通る。相手が神器保有者や異能保有者で、それを分かって使っているのなら、裏側の対応になることも当然だった。
その点に限って言えば、調子に乗った異能保有者の自滅ともいえる。
だがしかし。
「それにしても、十人以上の異能保有者がこの町の廃ビルに集ってるの? 何を考えているのかしら……?」
雪美が首をかしげるのも当然だろう。
彼らの活動範囲に駒王町が近いとはいえ、それなりに距離はある。
わざわざ足を運ぶ―それも幹部待遇が多数―というのも、解せない。
それに対して、星奈はちょっと苦笑いをしていた。
「それなんだけどさー。どーもその半グレ、はぐれ悪魔がいるかもしれないんだよねー……ほら」
と、星奈が映し出すのは、廃ビルに入っていく半グレたちの写真。
……周りの反応から見て、リーダーもしくは最高幹部と思われる人物にピックアップがされている。
「大物っぽいってことで調べてみたら、はぐれ悪魔で賞金掛けられてたよ。Aランクはぐれ悪魔の半藤小昏だって」
「……まさかと思うけど、リアス先輩をわざと狙って……?」
友助が首をかしげるが、そのうえでため息をついた。
「馬鹿なんじゃないだろうか?」
リアス・グレモリーは名門グレモリー家の本家出身。そんなVIPをはぐれ悪魔が積極的に害したとなれば、悪魔側が本腰を入れることは間違いない。半グレ程度が手を出していいわけがないだろう。
「ま、犯罪に走る連中の九割以上は育ちか頭が悪いもの」
同じようにため息をついた雪美は、そのうえで全員を見渡した。
「とはいえ、そうだとするなら厄介よ。……動き方、考えたほうがいいかもね」
その言葉に、一瞬だが沈黙が包み込まれる。
「計画を進めるのなら、効率的なやり方はわかるわね? ……それでいく?」
その言葉に、真っ先に答えを決めたのは―
「―その、提案いいっすか、雪美さん」
―イッセーだった
できればそろそろ感想が欲しい今日この頃。もらえるように頑張りたいと思います!