ナチュラル   作:レイジー

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第十四話 海だ、砂浜だ、ビーチバレーだ

「渡辺くんは海好き?」

「海。海かぁ。見たことはあっても遊んだことないからわかんないんだよね~。そういう谷本さんは?」

「好きだよ~。でも珍しいね、海で遊んだことないって」

「僕んちは両親が共働きだったからね。基本的に家族旅行とかあまり縁がなかったなぁ。たまーに遠出したことはあったけど東西それぞれのテーマパークだったり、親の趣味で神社仏閣巡りだったり」

「そっか~。じゃあ一緒に遊ぼ。楽しいよ!」

「じゃあそうさせてもらおうかな」

 

 臨海学校が始まる。

 晴れ渡った快晴。明るい陽の光は海面の反射で眩むほど。

 隣の席では谷本癒子が嬉しそうに、楽しそうに窓の外を指さしていた。

 

「ならビーチバレーで勝負しない? 織斑くんも誘って!」

「ははは、そうしようか」

「負けないぞー」

「気合十分って感じだね。でも相川さんってバレー部だっけ? 記憶が確かならハンドボール部だと思ったんだけど」

「その通り。けど、球技で素人相手に負ける気はないのだよ渡辺くぅん」

「ほほう? ではこちらも真剣に取り組ませていただこうではないか相川くぅん」

 

 そんなふざけあいに二人は思わず笑い、元親の隣の癒子、清香の隣のさゆかがつられて笑う。

 

「そろそろ目的地に着く。全員ちゃんと席に座れ」

 

 千冬の指示で全員が素早く指定の席へ戻る。

 それからすぐ、バスは目的地である旅館前に到着し。四台のバスから一年生一同が出て整列した。

 

「それでは、ここが今日から三日間お世話になる花月荘だ。全員、従業員の仕事を増やさないように注意しろ」

「「「よろしくおねがいしまーす」」」

 

 全員で挨拶。

 着物姿の女将さんが丁寧にお辞儀を返す。

 

「はい、こちらこそ。今年の一年生も元気があってよろしいですね」

 

 人間的成熟の雰囲気を感じさせる様子。

 笑顔は見た目年齢を若くするというように、綺麗な笑顔を見せる女将はとても若々しく見えた。

 

「あら、こちらが噂の……?」

 

 一夏と目が合った女将が千冬に尋ねる。

 

「ええ、まあ。今年は数少ない男子のために浴場分けの手間をかけさせてしまい申し訳ありません」

「いえいえ、そんな。それに、いい男の子に見えますよ。しっかりしていそうに見えます。見た目からして先生の弟さんでしょうか。なら後ろの彼が、渡辺くんですかね?」

「はい、渡辺元親って言います。僕らのせいで手間を増やしてしまってすみません。改めてよろしくお願いします」

「お前も渡辺を見習って挨拶をしろ、馬鹿者」

「お、織斑一夏です。よろしくお願いします」

「うふふ、ご丁寧にどうも。清州(きよす)景子(けいこ)です」

 

 一瞬、かしこまった対応をしそうになった元親だが。

 そんな堅苦しい挨拶ではなく、学生らしい敬語と友好の混在した具合の口調の方が良いだろうと考え。

 柔和な笑みを浮かべて軽めの謝罪と挨拶を行った。

 

「それじゃあみなさん、お部屋の方にどうぞ。海に行かれる方は別館の方で着替えられるようになっていますから、そちらをご利用なさってくださいな。場所がわからなければいつでも従業員に訊いてくださいまし」

 

 ここから何かをする、ということはなく。

 この時から自由行動になった。

 

「ね、ね、ねー。おりむ~、もっちー」

 

 元親が部屋に向かおうとしていると特徴的な呼び方がそれを止める。

 

「二人の部屋ってどこ~? 一覧に書いてなかったー。遊びに行くから教えて~」

 

 女子たちの聞き耳が見ずともわかった。

 本音の言う通り一覧には二人の部屋が書いておらず。それに気づいていた元親は事前に聞いている。

 自室の場所を知っている元親だが、諸事情により口止めされており、また一夏がそもそも知らない様子なこともあって口をつぐんだ。

 

「織斑、お前たちの部屋はこっちだ。ついてこい」

「えーっと、織斑先生。俺の部屋ってどこになるんでしょうか?」

「黙ってついてこい」

 

 会話を封じられ、無言で旅館の中を移動する。

 広く綺麗な旅館。

 一学年丸々受け入れられる規模に、設備の完備された質の良さ。

 なるほど、IS学園という大事な立ち位置の者たちを受け入れるだけのことはあると一人で納得しながらその後のこと――主に食事に期待をする元親。

 

「ここだ」

「え? ここって……」

 

 臨海学校用につけられた紙には『教員室』の文字。それが二つ。

 

「最初は二人で一部屋のつもりだったのだがな。それでは女子が押しかけるだろうということで却下された。結果、織斑は私と同室、渡辺は山田先生と同室になったワケだ。同じ部屋ならお前に近づく者も減るだろうし、隣ならそれなりの効果が発揮されるだろう」

「女子避け最終兵器……」

「調子に乗るな渡辺」

「あびゃッ。さーません」

「一応言っておくが、それぞれ相手は教員ということを忘れるなよ」

「はい、わかりました」

「はい、織斑先生」

「それでいい」

 

 別れる。

 元親は真耶と二人、一方の教員室に入る。

 

「窮屈な思いさせてすみません、先生」

「いえ、気にしないでください」

「着替える時とかは言ってください。部屋を出るんで」

「そ、そんなっ、気にしなくて大丈夫ですよ! あっ、べ、別に見られて平気ってことじゃないですからね!?」

「見ませんよ……」

 

 ポンコツを発動させる真耶。

 少し呆れながら元親は水着などの着替えを持って部屋を出る。

 

――――――――――

 

 一夏に見つかって絡まれたくなかった元親は足早に教員室を離れ、シンプルなデザインのハーフパンツ水着と薄手のパーカーへ着替えを済ませて海へ出ていた。

 

「あれ~? もっちー、おりむ~は?」

「あとから来ると思うよ? にしても随分カワイイ姿だね。狐?」

「えへへ~、可愛かろ~! キツネさんなのだ~!」

「さては泳ぐ気ないね?」

「泳ぐのはいいかな~?」

 

 正面から見れば色が黄色で耳の先端が黒なことからピカチュウかと思うがよく見れば尻尾が普通のキツネのモノ。

 なんとも彼女らしい格好に元親は笑いながらも似合っていると褒める。

 

「そういうもっちーはパーカー?」

「流石に日差しが強くてね~。それに砂浜に反射して眩しいから光カットの意味も込めてフード付き」

「どれどれ~? うひゃ~、眩し~」

 

 薄くてもフード。

 その有無による目への負荷はかなり違った。

 

「あれ? 元親くんは水着に着替えなかったの?」

「さゆか。ちゃんと着替えたよ、ほら」

 

 さゆかや清香、癒子、ナギといった面々が続々と到着。

 パーカーを着ている姿から着替えただけで水着にはなっていないと勘違いしたのだろう。

 元親は笑いながらそれを否定し、パーカーの下の部分を見るように指さした。

 

「あ、ホントだ。……って、脚の筋肉スゴ!?」

「わっ、ホント、ビックリ」

「ISを操縦するにあたって操作力向上のため筋トレしてるんだ」

 

 普段から運動している元親の脚は非常に筋肉質。

 周囲の興味が元親に注がれる。

 

「別に見ても女子的には楽しくないでしょ。筋肉質な男を気持ち悪いと思いがちって聞いたことあるけど都市伝説? ……まあいいや、ほら」

「うわぁ……スゴ」

「やっぱ筋肉あるねもっちー。私だったら持ち上げられる?」

「両手ならともかく片腕かぁ……ちょっと試してみようか。軽くぶら下がってみて」

「ぶら~ん」

 

 パーカーを脱いだ元親。

 現された筋肉質な肉体に周囲の女子の視線が釘付けに。

 本音との軽いふざけあいで元親は本音を右腕にぶら下がらせ、身を構える。

 が、本音は元親の想像以上に軽く、特に危なげもなく腕を上下することができた。

 

「軽くない? 大丈夫? ちゃんとご飯食べてる?」

「食べてるよ~。お父さんみたいだね」

「下手にダイエットとかしちゃダメだよ? やるなら栄養考えてね?」

「大丈夫だよ~」

 

 普段、大規模な加重トレーニングを行っていない元親は人一人分の体重を支えるのは流石に無理だと考えていた。

 だが可能だった。

 そうだったがゆえに、元親は本音を心配する。

 

「何してるんだ元親……」

「筋肉がどーのこーので本音がぶら下がりたいって」

「なんだよそれ。って、うおっ、ホントだスゲェッ!?」

 

 背後からの姿だったため元親の筋肉を把握していなかった一夏だが、正面に回って改めて肉体を見ると引き締まった肉体に驚愕した。

 

「といってもこの程度だとすぐだよ? 難しいのはあくまでもボディビルダーみたいな大きな筋肉であって、この程度の筋肉だったらメニュー次第ですぐ育つよ」

 

 筋量という点であれば概ねその通り。

 筋トレでは初期が一番育てやすい。

 もちろん初期ゆえの正しいトレーニングの仕方や、体力面などの問題はある。

 が、そこをクリアすれば世間一般での細マッチョ程度までは簡単に育つ。

 のだが。元親はネットで調べたトレーニング以外にも、自分の体質や体格に食事配分などを考慮した独自のトレーニングを行うことでより効率化を図っていた。

 

「そうか? 俺も鍛えてるけどそこまでじゃないぞ」

「フォームの問題じゃない? 例えば背筋を鍛えるのに重りを持ち上げたりするけど、その時に腰を使ってたら負荷がそっちに行くからやるならちゃんと背中で、みたいな。――って女子の皆は興味ないよね、話はここで切り上げて遊ぼっか」

「筋肉のことはわからないのだ~」

「ごめんなのだ~」

「もー、真似しちゃダメだよもっちー」

「あははっ、ごめんごめん」

 

 一応は本人に努力意志がある手前、軽めの助言はしたもののやはり一夏と話をするのは未だに苦手な元親は女子を気遣うようにして話を断ち切る。

 遊ぼう、と元親が言うと女子たちのテンションが上がり。

 そしてバスの中で言っていた通り一夏をビーチバレーに誘う。

 だが生返事で肯定。

 楽しんでいる女子たちは気づかないが元親は気づく。

 

(姿勢。そうか、姿勢か……。剣術は教わってたからその姿勢は大丈夫だけど、筋トレの姿勢とかは教わってなかったもんな。今度からその辺りもちゃんと考えてやってみるか。そうしないと元親に負け越しちまう。今までは俺が剣をやってたアドバンテージで勝ててたけど、最近は負けが増えてきてる。俺もちゃんとしないと――)

 

 考える一夏の脚を横から元親の足が軽く蹴った。

 

「女子が一緒に遊ぼうって言ってるんだからちゃんとしなよ。適当は失礼でしょ」

「あ、ああ。そうだな。ワリィ」

 

(元親って前からあんなんだったか?)

 

 以前から起きていた元親の変化。

 積もりに積もった一夏の中での無意識の違和感が疑問となり。

 だが確証にはいたらず振り払われる。

 

「織斑く~ん、元親く~ん! チーム分けするけど二人は戦力的に別で良いよね~?」

「お、おう!」

「わかった~。大丈夫だよ~!」

 

――――――――――

 

「えいっ」

「――あっ……」

 

 手にあたったボールはあらぬ方向へ飛んでいく。

 

「はッ」

「――わっ……」

 

 ちゃんと手にあたっているにもかかわらず、ボールは誰もいない場所へ。

 

「わァ……ぁ……」

「もっちーって下手なんだねー」

「……投げる蹴るならできるんです。バレーはわからんのです……」

 

 初めてだから仕方ないとはいえ、あまりにも下手な元親の制球に皆は不思議そうに首をかしげていた。

 間に合っていることから身体能力は問題なく。IS操作から考えても運動神経は悪くはない。

 にもかかわらず、元親はバレーが下手。

 不思議がるのも無理はない。

 

「手の形と角度かな?」

「相川さん……というと?」

「私も詳しくはないんだけど、私はこういう手の形で――」

「こう?」

「そうそう。で、ボールが手にあたる瞬間はこうで――」

「なるほど?」

 

 ビーチバレーでいくつかのペアに分かれ、その中でそこそこの実力を発揮している清香。

 彼女に教わりながらフォームを調整する元親は、他の者たちが戦っている中。少し離れた場所で観戦しつつ予備のボールをひたすら撥ねさせていた。

 

「お前にも弱点はあったのだな」

「先生……それは当然ありますよ。超人じゃないんですから」

「成績良好、IS知識も短期間で豊富に、IS操縦も上手く、運動もできる。学生の中では十分超人と呼ばれる資格はあると思うがな」

「学生の基準は一般認知に当てはめちゃダメですよ……」

 

 いつの間にか来ていた千冬は少し離れた後ろから声をかける。

 その格好は元親がいくつか候補を出し、一夏の好みで選出された水着。

 

「それと、水着似合ってますよ」

「そういう恥ずかしげもなく教師相手とはいえ異性を褒められるところ。そういうのも十分スゴイと思うがな」

「別に……褒めるのは恥ずかしいことじゃないでしょ……」

 

 元親の言葉に千冬は溜め息を吐きながら「そういうところだ」と呟いた。

 その後、千冬の姿に気づいた女子たちの声によって一夏も気づき、実の姉に見惚れるという異常的シスコンを見せたり。

 ボール操作を憶えた元親を巻き込んで元親一夏ペア対千冬真耶ペアでのビーチバレー勝負など。

 色々あった。




よう、カス二次創作を読んでるカス読者諸君
想定していたよりも文字数がかさんでおおよその目安にしている五千文字になっちまったぜぇ?

けどまあ、次の部分って臨海学校二日目だし、良かったんじゃねーかなって
この後の旅館でのお話? カットだよカット、一夏および一夏ヒロインズとの交流が少ない以上は食事風景大して面白くねーもん
せいぜいがラウラと本音があーんを所望する程度

部屋での話も、元親は即行で寝たからね
基本的に用事がなければ八時か九時で寝るボーイ
用事があるとちょっと夜更かしする不良ボーイ
寝ないと脳スペックが低下するの知ってるからちゃんと寝るぜぇ
グッスリスヤスヤだぜぇ
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