「元親。シャルロットたちが向かった……」
「――協力しただろ」
外で空を眺める元親に、ラウラが背後から声をかけた。
チラリとラウラを見、元親は空に目を戻しながら呆れたように呟く。
「すまない……お前に嫌われるのは理解している。だが、私の友人なんだ……」
「じゃ、仕方ねえな」
頭を下げたラウラ。
元親はそんな彼女の頭を撫で、苦笑すると空を睨む。
「ラウラ、ISを展開して待機だ」
「あ、ああ!」
「――織斑先生、聞こえますか?」
指示を出し、自らも打鉄を展開しながら千冬へ連絡を取る。
数度のコール。
それを経て電話は繋がった。
『なんだ、渡辺』
「篠ノ之箒、シャルロット・デュノア、セシリア・オルコット、凰鈴音の四名が少し前に出撃しました。――渡辺元親、ラウラ・ボーデヴィッヒ両名は作戦行動可能状態で待機中。指示を」
『――すまない』
「謝らないでくださいよ。察してましたし、だから準備も進めてました」
『そうか』
「――ああ、今、織斑一夏も出撃しました」
『救助を頼む』
「了解」
ドイツ軍特殊部隊であるラウラは
そして同様の情報を元親にも渡し。
元親はその情報を利用して自らも索敵し、出撃した四人の位置情報の推移を手掛かりに計算。
武装を召喚し、微調整を行っていた。
「――ということだ、ラウラ、先行ってろ。俺はやることがある」
「ああ。道は開けておく」
「任せた」
ニヤリと笑うラウラ。
そうして彼女は飛び立ち、一夏を追った。
「さて、相手の行動パターンと四人の動きから――ざっとこの領域か。として……先行したラウラに誘導を任せて、よし」
滑らせるように《撃鉄》を移動させ、そこから調節を行う。
定めた中央位置。その方向はセンサーが示す
「やあや~あ。何してるのかな?」
「狙撃」
「距離三〇キロ。できる気? そこまでバカなのかな~?」
「イケるに決まってるだろ。――ちょっと黙ってろ」
中央位置から左へ微調整。
それはハイパーセンサーを用いても曖昧なほど、目視では一切の変化がないほどの僅かな差。
そうして元親はその方向へいくつかの修正を加えながら三〇連射。
続き、中央位置から右へ。
同じく三〇連射。
最後。中央位置。
神経が注がれていた。
(タイミングを間違えたら台無しになる。間違えるな、間違えるな、間違えるな――)
狙撃距離三〇キロ。
発砲から着弾までかなりの時間差が生じる。
そこを狙撃。
位置は問題ない。
元親の座標指定に基づいてラウラが指示をして、誘導する。
問題は着弾タイミング。
ISのハイパーセンサーにかからないほどの弾速。
座標に常駐するワケもなく、コンマ未満の秒数で当てなければならない。
(――――――――――)
意識が情報を遮断する。
色が、音が、温度が。
必要なのは正確なタイミング。
視界すら要らず。目の前が深夜の闇に暗む。
黒く。
黒く。
景色の輪郭も。自分自身の輪郭すら曖昧に。
ただ二つ。
時を刻む心臓と、引鉄を触る指先だけが残る。
――仕方ないから手伝ってやるよ。感謝しろよな
音ではない声が聞こえた。
魂と触れ合うような。
何か得体の知れない。けれど知っているような。
そんな声。
(――助かる)
短いやりとり。
ISが脳に膨大な情報を流し込む。
だが負荷に思考は負けず。
ISの補助を得た脳は流し込まれた情報を姿として処理していた。
(見えた)
色のない、砂嵐のような世界。
未来。
無数の未来が脳の世界に生まれ。
元親は指先によって分岐を収束させた。
「じゃあな、天才。邪魔するなよ」
白光を纏う弾丸。
放った弾丸を追うように、元親は飛翔した。
「うっそ……アレを再現しちゃったの? ――アハハ! 面白いね! 面白いよ、元親!」
――――――――――
四人が
三人にとっては初めてで、一人にとっては再び。
銀はひとりぼっちで泣く子どものように丸めた身体を翼で覆っていて。
そうしていた銀は外の世界を見ると――砲弾によって攻撃を受けた。
「命中した。続き、行くよ!!」
多様な武装の中で最長射程の武器を構え、狙撃をしたシャルロット。
初撃は見事命中。
二撃、三撃と撃ち放ち。その狙いは正確だが有効打にはなっていない様子だった。
反動相殺のための機動力低下。
二名の距離が詰められる。
砲撃を撃ち墜とし、直進する
「ありがと、セシリア」
通過するはずだった場所をレーザーが通る。
海面に着弾し、多くが反射や散乱を行うが、有した熱量が白煙を昇らせた。
「お気になさらず、当然のことでしてよ」
BT兵器複数による多数連射のレーザー攻撃。
回避され、けれど回避先を読むセシリアはその回避先の、あえて回避できる位置に射撃をする。
「先読みに長けた渡辺さんにご教授いただきましたの! そう簡単に彼女への接近を許す気はありませんことよ!」
暴走状態の
だが、行動を観察すればいくつかのパターンなどがあることに気づける。
例えば、通常機動では回避できないと判断した攻撃は多少の機体負荷を覚悟してでも高機動を行う。が、通常機動のみで回避可能と判断した場合――その時点で観測可能な射撃を含めた予測で問題ないと判断すると――必ず通常機動での回避を行う。
人間であれば曖昧な攻撃は安全のために無茶を選んだり、判断に迷った結果反射的に無茶を選ぶことがある。それゆえに行動が読みづらい。
だが、その0と1の二進数組み合わせ行動で正確に行動している
『……優先順位を変更。現空域からの離脱を最優先に』
全方位にエネルギー弾を放つ防御的攻撃。
直後、全スラスターを用いた強行突破を計られる。
「させるかぁっ!!」
海面の拡散。
二つの赤。
『紅椿』と『
紅椿の接近戦による引きつけ。
そこを狙い、甲龍の衝撃砲狙撃。
「やりましたの!?」
「――まだよ!」
直撃。
だが依然として機能は停止しない。
銀が一斉に放たれ、作戦の要である第四世代機、紅椿を守るべくシャルロットが立ちはだかり。
そして被弾の直前に、エネルギー弾が暴発した。
目の前を不可視に近い赤い炎の衝撃砲が、機能増幅パッケージ『崩山』を用いて増幅された衝撃砲が通り過ぎた。
「遊撃はわたしに任せて!」
実体を持たないエネルギー弾。
つまり、攻撃が当たる前に何かしらと接触させてやればエネルギー弾は誤認によって炸裂する。
であれば適任なのは鈴音だろう。
通常は威力のために収束された衝撃砲。
だが、その収束を解除すれば衝撃砲は広範囲に行き渡り。
ある程度の威力強度があればエネルギー弾に通用するのだ。
それはエネルギー効率の良い彼女の兵装だからこなせる彼女だけの領分だった。
「であればこちらはお任せになって!」
「任せたよ!」
左右からの同時射撃。
シャルロットとセシリア。
実弾とレーザー。
異なる攻撃が、先読みを行うセシリアの指示に従って行われ。
逃げ場を失った結果、
「逃がさないわよ!」
爆発による煙の中から抜け出し、逃げようとする
狙撃ではない。
ただ当てることに意識を置いた、広域攻撃。
ゆえに威力はなく、シールドエネルギーの減少も極小。
だが、異なる点において効力は大きかった。
それは相手の機動力を裂くという点。
強い空間作用を行う鈴音の攻撃は、拡散してなお強い空間の揺らぎを起こす。
空間の揺らぎは機体を直接揺らすのだ。
「獲った!!」
その隙へ箒が斬りかかる。
多数のダメージによって片翼をもがれ、高機動は失われた。
二刀での斬りかかり。
回避はできない。
勝ちを確信した箒がそう叫び。
攻撃無効の白羽取りではない。
損傷覚悟の、死中に活を求める攻防の一手。
「なっ!?」
二刀から放たれるエネルギーが大きなダメージを与えるが、意に介さない。
それどころか二刀が左右に離され、それを握る箒も両手を広げた無防備を晒す。
「箒! 武器を捨てて!!」
だが箒は武器を手放さなかった。
エネルギーの収束。
銀の光が溢れ、放たれる。
万能機、第四世代。その展開装甲は防御も行える。
阻む装甲はエネルギーの刃となり、その斬撃がダメージを与えた。
「だ、大丈夫!?」
「私は……大丈夫だ。それより福音は――」
蓄積したダメージに加え、箒の攻撃。
勝ったのではという希望が生まれる。
「!? まずい! これは『
叫ぶような
飛翔するその動きは目で追えない。
翻弄される者たち。
その背にはエネルギーの翼が生えていた。
「うっ!?」
シャルロットが捕まる。
実弾狙撃による機動力低下で速度が一番下とみなされ真っ先に。
「お放しなさい!」
助けるべくセシリアが飛びかかり、シャルロットを盾にするような動きに戸惑いを見せ、そこをエネルギー弾が襲う。
先に墜とされるセシリア。それを追うようにすぐ沈むシャルロット。
「よくも!!」
感情のまま。
箒は斬撃を放つ。
「うおおおおっ!!」
乱打。
早く助けると急く箒が徐々に出力を上げ、
(いける! これならっ――)
決着の確信。
エネルギーを込めた打突。
だが、無情にもエネルギー切れを起こす。
「ぅぐッ!」
喉が掴まれる。
締め上げられ。
圧迫された喉は呻き声とともに唾液を垂らす。
酸素と血を失ったことで顔色もみるみるうちに悪化。
うっすらと。
視界がそうなったのは光の翼の輝きゆえか。
それとも意識の朦朧ゆえか。
箒の意識は暗く、落ち。
黒と、白が入り混じる。
(一夏に、会いたい)
「ぃ……ちか……」
沈む、沈む。
彼女が発したのは人生の多くを、意識の多くを占領していた少年の名。
『!?』
掴んでいた手が離される。
虚ろな視界に、荷電粒子砲による狙撃を受けて吹き飛ぶ
「俺の仲間は、誰一人としてやらせねえ!」
「あ……あ、あっ……」
現れたのは、白式第二形態『
「ここは私が受け持つ。お前は行ってやれ」
「ああ、任せたラウラ」
ともに来たラウラが一夏を箒のもとへと向かわせる。
「さて、二名脱落とは……私としては予想外だ。……鈴音、動けるか?」
「そこまで攻撃受けてないから平気。エネルギーも半分以上あるわ」
「ならば時間稼ぎに付き合え。織斑一夏が戻ってくるまでの時間稼ぎをする」
「……アイツは?」
「元親か? 少し遅れてくる」
「……そう」
鈴音は思い出す。
元親が死にたくないし戦いたくもない、と言っていたことを。
ゆえに鈴音はラウラの言葉を受け、元親は逃げたのだろうと判断をした。
だが責める気はなかった。
そもそも、命令違反をしたのは自分たち。
そこを責めるというのはあまりにも自分勝手だと理解していた。
「まあいいわ。あんな奴いなくたって勝てるんだから!」
「ふっ。勇ましいのは良いが判断を誤るなよ!」
そう叫び、ラウラは距離を取りながら砲撃を行う。
「って! 消極的ね!」
「これで、良い!」
「どういうこと!?」
砲撃を受け。
襲い掛かろうとその姿を追い――あらぬ方向からの狙撃によって全身が凍てつく。
『!?』
弾丸が飛来した方向を見ても水平線しか見えない。
そこにハイパーセンサーは何も映さない。
「!?」
「私の嫁を甘く見るな」
凍てついた全身は機動力を損なう。
そしてハイパーセンサーに映らない敵をその思考は敵と認知できず、けれど確かに受けた攻撃に思考回路が凍てついた。
「同じ場所。流石だ」
次いで二弾、三弾。
同じ位置に攻撃を受け、上へ避けるが。被弾。
「曰く――『実弾狙撃を受けたら逃げるのは上だろうな。重力で垂れる都合上、左右や下よりも安全確率が高い』と」
合理に基づいて判断する相手ゆえの一手。
それは正確に攻撃となった。
「元親に続け!」
「姿の見えない奴に続けって言われても実感ないわよ!」
ラウラの狙撃。
鈴音の斬撃。
隙を突かれ、避けるべく咄嗟に後退。
だが、その目前を多数の弾丸が通った。
停止する
「ぜらあああっ!!」
追撃。
零落白夜がエネルギーの翼を断った。
けれど二撃目は避けられる。
そもそも一撃目すら狙い通りにはいっていなかった。
そして冷酷にもエネルギー残量が二〇%を知らせ、稼働時間三分を告げる。
「一夏!」
「箒!? お前、ダメージは――」
「大丈夫だ! それよりも、これを受け取れ!」
繋いだ手。
その瞬間、エネルギーが回復をした。
直前に覚醒した紅椿の
名は『絢爛舞踏』。効果は――エネルギー増幅。
「うおおおっ!」
一閃。
一夏の斬撃が敵を捉える。
光の翼が斬り墜とされた。
再生する翼。
再び斬り。一閃、一閃。
都度、傷が浅くなる。
(くっ! やっぱり本調子じゃないからか!?)
「だったら!!」
一夏は被弾覚悟で特攻をした。
「おおおおおっ!!」
零落白夜を高く振り上げ、振り下ろす。
そんな、判断ミス。
「!?」
実戦経験の乏しさゆえ。
弊害。
生身で行って来た剣道の癖が出てしまった。
一番慣れ親しんだ攻撃を、行って。
そしてもう一つの判断ミス。
傷が浅かったのは本調子ではないから、ではない。
相手の学習だ。
有り体に言えば、攻撃を読まれた。
「一夏ぁッ!!」
一斉射撃。
一夏の回避は、間に合わない。
「っ!」
咄嗟に防ごうと剣を持ち上げ――
『!?』
一発の弾丸が光を散らした。
光を散らし、肩装甲を大きく破壊。
誰が、と見れば、遠くへ元親の姿が見えた。
「元親――助かった!!」
今度は外さなかった。
零落白夜は確かな手応えを感じさせ、銀は動きを止める。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
実際、本調子ではない一夏が表情を歪めながら勝利を噛みしめる。
そしてアーマーを失った
「助けるなら最後までやれよ」
落下距離二〇メートル。
衝撃で怪我をしないように柔らかな軌道で水平飛行に切り替える元親。
勝者たちを朝日が照らし始めた。
称号『篠ノ之束の興味対象』を手に入れました
効果はデバフ『精神負荷』『胃痛』『監視』。および篠ノ之束関係者からの認識変化
派生先『篠ノ之束の興味対象――』『篠ノ之束の――』『篠ノ之束の――』
やったねモトちゃん、胃痛が増えるよ!
てか誰~、小説書き終えてないのにこの時期の午後五時過ぎにランニングに行くバカは~?
寒くてしばらく動けないし、温かくなったら眠いんだけど~?
眠すぎて後半多分おかしいと思う。変だったら言って、直せる部分直すから