「いらっしゃいませ。こちらへお掛けください、お嬢様」
学園祭当日。
中でも特に盛況なのは一年一組。
執事の燕尾服でもてなす一夏と、メイド服姿で愛想を振りまく元親。
「うそ……アレが普段見てる元親くん?!」
「普段放課後に見る姿と全然違う……」
「以前のほんわかした可愛さとも、最近のカッコよさとも違うっ」
「綺麗とかわいいが合わさって最強に見える!!」
裾は長く、またタイツによって隠され。
他の物より長く作られた襟によって喉仏も隠れている。
化粧で中性的な顔つきは女性的に、声音も変えられ。
もはやそこに男の面影はない。
「渡辺さ~ん。次のお客様お願~い」
「は~い!」
大きな声でもその声音は変わらない。
「やぁや、元親く――元親ちゃん? 今は」
「あら、薫子さん。いらしてくださったのですね♪」
「んっ……破壊力と違和感が凄いね。今日来たのは新聞部の取材兼カワイイ後輩の応援なの。写真良い?」
「ええ、もちろん大丈夫です。一点だけ、他のお客様にはお気を付けいただければ幸いです」
「そこは大丈夫。じゃ、早速エスコートお願いできるかしら?」
「喜んで。それではお嬢様、こちらへどうぞ」
クラスメイトの指示に従って客を入り口まで迎えに行く元親。
いたのは
新聞部副部長であり、元親との個人的な交流は、彼女が整備科であるという点。
「ご注文はどうなさいますか?」
「本当は君の執事姿が取りたかったな~」
「そちらは午後からとなっておりますので。申し訳ございません」
「……え、午後から執事?」
「はい」
にわかに、周囲が騒めく。
「くっ……タイミングを誤ったか。けどメイド姿は絶対に抑えておきたいッ」
「そちらは再度お並びいただくしか……」
「仕方ないわ。これ、お願いできるかしら? あ、食後に『メイドにご褒美セット』もお願い」
「……ふ、『深き森にて奏でよ愛の調べセット』と『メイドにご褒美セット』、ですね。かしこまりました。それでは、少々お待ちください」
「ふふっ、照れてるわね」
演技に慣れている元親。
だが、中二病じみたネーミングのオーダー復唱というのは羞恥心が刺激された。
メイドにご褒美セット。つまり客からメイドへの食事提供はラウラによって頻繁にされているため羞恥心はないが。
ネーミングセンスとはどうやっても相容れない。
特に、中二病的センスと愛という言葉の組み合わせが元親的には最悪に近かった。
「お待たせしました。こちら『深き森にて奏でよ愛の調べセット』、でございます」
他の客を案内し、料理提供を行いつつ、薫子に料理提供を行ったのはタイミングとして元親だった。
「うん、可愛いわ~ッ」
そして、奇しくもメイドは他にもいるにもかかわらず薫子へのご褒美セットの提供も、元親。
奇しくも、とはいうが。
実際には仕組まれた必然である。
目玉
加えて、元親を相手にしたい薫子も周囲を観察し、オーダーを聞き、その様子に合わせて食事を終える。そうして食後の提供タイミングを調整。
「こちら『メイドにご褒美セット』でございます。それでは、失礼いたします」
何も知らない元親はただ忙しいからだ、という認識で仕事を行っていた。
「はい、あ~ん」
「あーん。美味しいです」
「……普段の姿を見てないと男の子とは信じられないわね」
「メイドですので」
「メイドって超人のことだったかしら?」
呆れる薫子は最後の一本を元親に食べさせる。
「じゃ、元親メイドさん。織斑執事とツーショット、お願いして良い?」
「は~い。織斑くん、撮影お願いしま~す」
「お、おう!」
隣り合う二人。
一度それで撮影するが、華がないと思った薫子がポーズを要求する。
「ポ、ポーズ? 元親、どうする? お前は女装してるけど男だし……」
「あ~……うん。扱いは女で良いよ、メイド姿だし」
男同士のポーズをすれば良いのか、それとも設定を守って男女で考えるのか。
けれど中身が男である以上は男女ペアでイメージするような構図で取るのは気が引ける。
そういった思考で一夏は悩み。
そうしている間にも視線が周囲――教室内外から集まる。
「はぁ……ちょっと織斑ジッとしてろよ」
「え? ――うおぁッ!?」
悩む一夏を見て、面倒に思った元親は一夏を抱き抱えた。
いわゆる『お姫様抱っこ』である。
「良いわよ! 凄く良い!!」
「
「生きてて……良かったぁ……」
薫子および周囲が騒がしい。
謎の歓喜が響き、それ以上にシャッター音がけたたましく鳴る。
「よっ、と。……一応他にもポーズ入れますか」
「え――」
「――」
一夏を床に下ろし、困惑で低姿勢になったままの、その顎を軽く掴む。
つまりは『顎クイ』だ。
「公式からの供給量がエグイ!!」
「元親くんの表情がエッチすぎる!! それに織斑くんの困惑顔が演技じゃなくて素だからこそ映える!」
「むひょ~ッ!」
この時、午前中最大の爆音が轟いたという。
――――――――――
「やあ元親少年! 随分と面白い格好をしているじゃないか!」
「ヒカルノさん。来たんですね」
「おいおい、随分じゃないか。キミが送ってきた招待券だろう?」
「仕事が忙しいと思いまして」
呼び出され、迎えに行くとそこには篝火ヒカルノがいた。
格好は白衣に外出着。だがよく見れば襟口からISスーツが覗き見えている。
「折角のキミからのお誘いだ。そんなものさっさと片づけるに限るさ」
「喜んでいただけだようで何より」
「でもそういうことなら休日でしょう? 俺なんかと一緒で良いんですか?」
「なあに、構わないさ。欲を言えばキミに色々聞きたいことがあるのだけど、子どもの意思を無視して強引に我を通すほど腐ってもいない。やるならキミが受け入れられる程度の要望にするさ」
そういう彼女は笑いながら元親と肩を組んだ。
「そっすか。ところで、以前渡した論文って読みました?」
「ああ、読んだとも。ただアレを公表するのは難しいだろうね」
「やっぱり?」
「キミぃ、論文を読んだことないのかい? 論文というのは一つの理論証明のために用いる公式などは既知の証明済みのモノを用いるんだよ? どこに新理論発表にあたってその事前知識にさらなる新理論を持ち出すバカがいるんだい。ここか? この頭の中にそのおバカさんが住んでいるのかな?!」
夏休みのこと。
ヒマつぶしに適当に組んでいた理論を、それを用いた論文調の資料をいくつか彼女に渡していた。
軽く考えた程度のモノで、実用性はそこまでないだろうからとそうしたのだが。
殊の外難解だったらしい。
「ちなみにどの部分が?」
「まず、空間の微積分っていう部分だ。キミは空間に対する認識がおかしいんじゃないのかい? 既存のIS武装ってのはあくまでも圧力と反発によるモノ。捻じったりはしていないんだよ」
「え~……そこからぁ?」
「あれ、空間転移すらできるんじゃないのかい?」
「ん~、その辺りはどうなんでしょうね? 空間転移って現状でもいくつか理論はあるんですけど、一つは倫理的に普及しなさそうで、一つはその理論が本当に通用するのかどうか。他はできるだろうけどコストが膨大で無意味って感じで」
「???」
「えっと、一つはISの
「なるほど。確かにそれは難しそうだ」
「で、次が空間の微積分による距離のゼロ化。これにあたっての不都合は、一度肉体を積分してそのあと微分してってやる都合上、三次元存在が一時的四次元存在になることで負荷が測り知れないってところです」
「……確かに四次元空間の情報に三次元空間存在が耐えられるのかはわからないね」
空間負荷。
正確性を捨て、理解に割り振った説明をすれば、それは水の抵抗だ。
水面から指一本を突き立てる。そのまま動かす。抵抗は少なく、動くことができる。線、一次元
水面から手のひらを差し込む。そのまま動かす。抵抗は大きく、動きは鈍くなる。面、二次元。
そういったように次元が大きくなれば受ける抵抗は増える。
三次元であれば深度。深く沈めばその負荷によって自壊すらあり得る。
それが、さらに次元を上げればどうなるのか。
問題はそこだった。
「まったく……ままならないね」
「ですねぇ。ちなみに五感再現の方は?」
「あちらに関しては理論自体は大丈夫なはずだね。あのサイズまでコンパクトにできる発展性の方が少々受け入れがたいかもしれないけれど」
「むぅ」
「基礎部分の発展が大きいんだよね。機械の排熱処理や情報処理の効率化。抑えたんだろうけど段階を飛ばしている」
そのマズさというのは元親も理解できる。
技術の飛躍的革新というのは良いことだけではなく、むしろ経済面で考えれば短期的に甚大な損害を被ることになるのだ。
既存のレベルで稼いでいる者たちにとってその技術進歩は食い扶持をなくすことで、そうなると大企業はともかくとして中小企業は経営が難しくなるのは想像に難くない。
長期で考えれば利益は大きい。
社会も発展するだろう。
だが、長期化に至る以前に、短期的に社会が崩壊してしまう。
長期とは前提あってのもの、それが壊れるのは全てを無に帰すも同義。
「……も~なんか、メンドクセーっす。理論上げるんで整備してくれません?」
本人は否定するだろうが、元親は根本が束と同類だ。
自分の興味に付き従い、社会に適合する、社会に称賛されるなどといったことに興味がない。
最低限、自分の居場所を社会と認知しているから譲歩的にルールに従うだけなのだから。
「おや、良いのかい?」
「そもそも渡した理論って使ってどうこうする気なかったんで。個人利用して、ハイ終わりって感じなんで」
「ん~、ならありがたく貰うかな。適当に整備して公表すれば利益が出る。そうしたら研究費が捻出できる。でもなぁ、企業に属している以上は特許とかとっても会社のモノだし。利益を出したからって研究費にはできないかぁ」
「ままなりませんね。お互い」
「まとめちゃってぇ」
空を仰ぐ二人は揃ってため息を吐いた。
――――――――――
「いらっしゃいませ。こちらへお掛けください、お嬢様」
「元親は……なぜそんなにも格好が良いのだ……」
「ご注文はどうなさいますか?」
午後。
正確には正午前だから午前。
昼食時は稼ぎ時ということで、本格的に昼食時になる前の客呼びの話題として元親は再び入っていた。
執事姿で。
「待って、待って待って待ってッ。私の目がどうかしてるの?!」
「大丈夫。正常よ。あれは……破壊力が……ヤバい」
「神……?」
女装メイクから。
今度は男としてのメイクへ。
表情も普段とは異なり自信に満ちた様子に。
立ち居振る舞いも男と感じるもの。
そして何よりも。
「筋っ、筋肉っ……」
「さ、さわっ」
「ダメよ! 私たちが触ったら穢れちゃう!」
演劇部および家庭科部協力のもと、身体のラインに合わせた特注の執事服。
着痩せしている普段とは異なり。
そこには明確な筋肉があった。
肩幅、背中、腕や脚の太さ。
肉体の信用性、演技も含めた雰囲気。男としての存在感が圧倒的だった。
「こっ、こここっ、この『執事にご褒美セット』を一つ! そ、それと普段の口調で頼めないだろうか?」
「オーケー、『執事にご褒美セット』な。ちょっと待ってろ」
執事としての振る舞いから、普段の高校生としての姿。
ギャップや。
凛としている彼が実は本当は勇ましい姿をしている。それを自分だけが知っている、というような少女漫画的思考が。周囲の少女たちを賑わせる。
「ほら。じゃ、俺も座るぞ」
「あ、ああ。……あ~ん」
「あ~んむ。……楽しいか? これ」
「う、うむ。幸せだ」
「ああ、そう?」
ある意味で男に飢えている周囲とは異なり、普段からこういったことをしているラウラ。
慣れたことをやって楽しいかと疑問に思う元親。
「ああ……終わってしまった……」
「じゃ、俺はそろそろ接客に――」
「「「彼女と同じのを!」」」
執事にポッキーを食べさせるという出し物決定前の候補を捩じ込んだ商品は。
元親の腹をそれだけで埋め尽くしてしまうのではないかというほど、飛ぶように売れた。
この日、元親は自分の燃費の悪さに久々の感謝をしたという。
「は~、凄いわね~」
「楯無先輩。来てくれたんだな」
「普段とは異なる姿だから画になるわね」
「で、どうだ? 結構気合い入れたんだが」
メイクや、立ち居振る舞いの研究、服の協力。
そうしてできた今の姿。
見せつけるようにその場でゆっくりと回り、楯無はジックリと観察する。
「ん~……私は普段の姿の方が好きね」
「えぇ……」
「私、貴方らしい姿が一番好きよ?」
「素の自分を褒められて嬉しい一方、頑張りが報われなかった感じがあって複雑ですね~」
「格好良くはあると思うわよ? 比較して個人的には普段が良いってだけ」
「やった」
「そうそう。そういう笑顔が好きよ?」
クスリと笑い、『似合ってる』と扇子を開く。
それを証明するかのように、作った笑みを浮かべた時以上に周囲から少女たちの吐息が漏れた。
「うおっ、元親の男らしさが上がってる!」
「あ、一夏くん。じゃあ二人揃ったことですし用事を済ませようかしら」
「?」
「用事は二つ。まずは新聞部代理として、二人の写真撮影ね」
一度済ませていることもあって撮影は楯無の指示のもと、すぐ終わった。
「二人は生徒会の出し物に参加してもらうわ。内容は観客参加型演劇よ!」
「は!?」
「へ~」
驚愕する一夏。
彼女の言動に関してはよほどの理不尽でなければ反応する気のない元親。
「演目は『シンデレラ』よ」
そういう部分だから仕方ないとはいえ日常多いね
読者的にどうなんだろ。日常を求めて読んでるのか、戦闘を求めて読んでるのか、別の部分か
ま、自由にするかな?
ところでよぉ、最近は友人に借りて読んでるんだけどよォ
旧版しか持ってねーんだよなぁ?! 近所の古本屋も旧版なんだよなぁ?!
どうすっぺ……
MF版7巻までしか内容わからな~い
……次書くのどうしよっかな
個人的には他の作品を書こうかなって意欲はちょっとある
ただ読んでもらえるのか?
私の文体って多分クソだし、原作人気に乗っかってるだけだから。ううむ……