ナチュラル   作:レイジー

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エピローグ 切り拓く者たち

「ったく……引退とはいえこりゃ流石に派手過ぎじゃねえか?」

 

 苦笑する元親。

 その視線の先には、以前クラス対抗戦の際に乱入してきた無人機《ゴーレムⅠ》を発展させた《ゴーレムⅢ》が。――九機。

 渡辺元親、織斑一夏、篠ノ之箒、セシリア・オルコット、更識楯無、更識簪、凰鈴音、シャルロット・デュノア、ラウラ・ボーデヴィッヒ。九名全員に配分して数的には拮抗。

 だが、無人機は圧倒的なスペックを誇る。単純な数で考えるのは愚かだった。

 

「全員ペアを組んでそれぞれ二機を相手、残った一人が逃げつつ一機を引き寄せて時間を稼ぐ。異論は?」

「異論はないけどどういうペアにするの?」

「織斑篠ノ之ペア、オルコット凰ペア、デュノアボーデヴィッヒペア、更識姉妹ペア。構成に問題がありそうならその都度再編成」

「了解!」

 

 指示とともにそれぞれが散開。

 元親はIS能力を開放し――『獅身人面』と『天馬』を召喚、脳処理が膨大化する中で『獅身人面』の装甲を全員に付与した。

 

「ぅッく……」

 

 表情が歪む。

 全体の戦況を把握し、調整するように動きながら『獅身人面』の空間掌握能力を発動。

 加えて『天馬』の逐一必要な微調整。

 

「ッ――!!」

 

 掌の砲口から放たれる熱線。

 宙を漂う『獅身人面』の装甲が庇うように前へ躍り出て、その装甲表面に刻まれた黄色の線が眩く輝くと同時に熱線は消え去る。

 

「突破したいなら最大火力持ってこいッ!!」

 

 熱線を消した『獅身人面』の能力。

 それは空間掌握によって空間に隙間を生み出し、そこへ攻撃を封じ込めるというモノ。

 一定以上の威力――エネルギーまでならばどんなモノでも可能。

 装甲が空間操作し隙間に流せる――アップロード速度限界のようなモノを超えれば攻撃を受ける。

 

「キッツ……」

 

 全員の受ける攻撃を消す。

 その負荷は凄まじく、攻撃に転じるなどできるはずがなかった。

 

「――セシリアは行動中心点を東へ23メートル、北へ8メートル移動して行動範囲を4メートル拡大! 鈴は東へ4メートル、北へ14メートル、上へ1メートル移動して行動範囲は5メートル縮小! 箒は俺に合わせてくれ!」

「そういうことね一夏くん! なら、ラウラさんは西へ38メートル、北へ10メートル移動して行動範囲はプラス14メートル。シャルロットさんは西へ30メートル、北へ17メートル、行動範囲はマイナス7メートル! 簪ちゃんは察して動いて!」

 

 元親の負荷を悟った二人が動いた。

 一夏の鍛えた先読み能力、楯無の戦闘慣れ。

 どうすれば良いのかを察した二人は元親の負荷を減らすべく戦況把握がしやすいように位置どる。

 

「ナイスぅ――力を寄越せ『隻眼之神』」

 

 纏う緑のアイマスク。

 そして速射。

 焔備が火を噴く。

 その弾丸は緑を纏っていた。

 

「ちッ、カテぇな……」

 

 攻撃に用いた『隻眼之神』の能力。

 シールドエネルギーを攻撃に転用することによる高火力。

 以前元親が使った疑似零落白夜と異なるのは、ISの能力として成立しているからこその低燃費と、防御無視ではなく攻撃威力の底上げ。

 シールドエネルギーは内部に介入せず、表面で発散されるため副次的に起こる効果は零落白夜の防御貫通防御無視とは異なり、防御力低下である。

 

「けど、通る」

 

 周囲を見れば着々と攻略が進んでいた。

 ペアを組み、長所掛け合わせて短所を補うことで同じ存在が単純に二機なだけの相手とは異なりより強く戦うことができる。

 そうして損傷は軽微で、相手の戦力は削げた。

 

「――アシスト切るぞ」

「了解!」

「わかったわ!」

 

 換装。『獅身人面』から『賢者之馬』へ。

 手には弓幹。

 青の一斉射撃。その青矢は緑を纏っている。

 

「――『月雷(つきいかづち)』」

 

 ただでさえ威力と速度を兼ね備えた高効率の矢が。緑の加護によって威力を増す。

 その攻撃を受ければいかに束の作った傑作とはいえ耐えきることなどできない。

 

「……?」

 

 全壊させないようにある程度加減をしたとはいえ、被弾音から考えてもっと壊れているのは自然なはず。

 にもかかわらず、元親が撃った機体は一部破壊されてはいるものの健在。

 不審に思ってつい今しがた一夏が零落白夜で切った機体を見るが、同様。

 

「――」

 

 咄嗟のこと。

 思考よりも早く『輪転竜』と『不死鳥』を展開していた。

 すると、一瞬にしてシールドエネルギーがゼロに。

 それは元親だけではなく、その場の全員。

 元親は『不死鳥』の能力によってシールドエネルギーを三割まで回復、橙色の光を一つ消す。

 装甲を瓦解(パージ)する無人機たち。

 残った箇所を用いて無人機たちは一つの機体となった。

 

「おいおいおいッ! ふざけろッ!!」

 

 焔備を放つ。

 氷雨も火垂も効かない。

 その全てが消去されるかのように塵芥と化す。

 

「その能力……拒絶壁かよ……」

 

 一目見て理解した。

 基礎理論は恐らく『獅身人面』と類似している。

 空間の隙間に攻撃を逃がす。だが、元親のそれよりもより高度。

 物質ごと隙間に入れる元親に対し、目の前の技術は物質からエネルギーを取り出してエネルギーのみを逃がしている。

 面を設定し、そこを超えることができない。

 

「けど、だったら弱点も同じだろ!」

 

 『輪転竜』を『賢者之馬』へ。

 再び放つ一斉射撃。

 だが射撃音のみが虚しく響き、着弾音はしない。

 

「ッ――『双頭之犬』ッ!」

 

 黒が纏わりつき、姿が二つにブレる。

 青を黒が覆い、幻影かのように思えた矢は威力を伴って拒絶壁を破壊した。

 その直後。

 逃がしたように思えたエネルギーは内部でISのモノへと変換されており、レーザーが曲射される。

 

「『白雷牛』! 『獅身人面』!」

 

 攻撃を逃がし、逃がしきれなかった威力は装甲でさらに減衰。

 けれど被弾は免れなかった。

 

「『天馬』『嵌合獣』」

 

 限界が近かった。

 複数盤面を支配するかのような戦いののち、束の代理存在との戦闘。

 十全に発達しきっていない脳は本人を苦しめる。

 

「『不死鳥』『隻眼之神』」

 

 埒が明かないと突撃を仕掛けた。

 焔備による防御低下。そして同位置に葵を突き立てる。

 

「ルゥアアアアァァアッ!」

 

 装甲を一つずつ突破し、無人機が爆発した。

 

「グァッ……」

 

 至近距離で巻き起こった爆発。それによって飛び散った破片が全身を刺し、そして爆煙の中から放たれた熱線が肩、腕、脚、腹部を貫く。

 

「――『獅身人面』『嵌合獣』ッ!」

 

 攻撃を一定値まで無効化し、変形武装で一気に畳みかける。

 プレート装甲能力とプレート装甲能力の複合。

 削減されたコストが他へ割り当てられ、向上した能力が無人機を破壊。

 

「あ~、キッツぅ……」

 

 金色に光るキューブ――ISコアが露出する。

 そして砕け、戦いが終わった。

 

「これ、何考えて作ったんだ――って、愉快目的だよなぁ」

 

――――――――――

 

「ちゃんと勝てて良かったね~」

「頭イテェんだが?」

「もー、元親はおバカさんだな~」

「うっさいわい。……もう良いか?」

「うん」

「本当に?」

「これから先で愉しませて貰うから大丈夫」

「そうか」

 

 笑いあう。

 

「これから、楽しめそうか?」

「にひひ~、愉しませてよね」

「しゃーねーな」

「私を社員として使うんだからそれくらい当然だよ~。てことで、これからよろしくね、シャッチョサン」

「おう」

 

 実体のない会社で、現状は名前だけ。

 実績も繫がりもなく、公表できないことも多いため現状の売りは高校生起業と、その高校生が二人目の男性操縦者という点のみ。

 会社名『フロンティア・ペイヴァーズ』。

 現社員四名。

 渡辺元親、篠ノ之束、織斑マドカ、クロエ・クロニクル。

 のちに数名が増え、フロンティア・ペイヴァーズは医療産業を基盤としつつゲームと宇宙開発で世界的に有名な企業となる。

 前線にて切り拓く者たちとなった元親たちは、その名を体現するように様々な技術を生み出したという。




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 これまで応援ありがとうございました
 これにてマルチエンド(MF文庫J7巻分版)終了です
 オーバーラップ文庫版はそちらを購入した際に意欲が残っていれば(あるいはその時に要望が多ければ)書きます

 とりあえず次作は『陰の実力者になりたくて』か『鬼滅の刃』でも書こうと思ってます。前者は書籍持ってるしBD全部買ったしゲームもやってるから、後者は古本屋で読み易いからですね
 んじゃ、またいずれ
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