「そういえば、先生はどちらにお住まいなんですか?」
執務中のある時、当番の生徒にそんな質問を投げかけられ、そういえば自分の家に帰らずに居て久しいことを思い出した。
あまり知られていないことだが、シャーレには連邦生徒会から専用の宿舎を与えられていたりする。
もちろん私もそれを利用できるのだが、キヴォトスに赴任して以来何かと忙しく、基本的にはシャーレ居住区の休憩室で寝泊まりしているためほとんど利用していなかったのである。
——だから、このシャーレオフィスが私の家と言えるのかもしれないね。
なんて冗談めかして言ってみたのが十数分前。当番の子に電卓を片手に「仕事は私が完璧に片付けておきますから、先生は家に帰って休んでください!」などと怒られてしまった私は久しぶりに自宅の前に立っていた。
シャーレの宿舎はあらゆる扉や窓が安全のためにオートロックとなっており、監視カメラやセンサー類も完備。辺りにはヴァルキーレ警察学校の警備局が定期的なパトロールを実施しており、中に入るには専用の端末を使用する必要がある。
そのセキュリティの厳重さはかつてどこからか私の家の情報を手に入れ、盗聴器を仕掛けるべく侵入を試みたとある生徒が僅か数分でお縄になった程であり、彼女を引き取りに行った際に説明されて随分と驚いたのは記憶に新しかった。
「まぁ、久しぶりに休める時間ができたことだし。ちょっと悪いかもだけど、今日はゆっくりしようかな」
懐から端末を取り出し、扉の前にかざす。数秒遅れて扉からカチャン!と鍵が解除される音が鳴り、ずっしりとした重さのドアノブを引いて中に入る。
「ん、あれ?」
扉を開けてすぐ、違和感を感じた。
部屋が綺麗過ぎるのだ。私はこの宿舎に半年近く帰って来ていないと言うのに、埃がまったく見当たらない。
試しに靴箱の上を指をなぞってみても、埃が指に付いたようには見えなかった。
慎重に周りを見渡す。すると、玄関に見知らぬ白い靴が乱雑に転がっているのが視界に入る。
明らかに小さなそれは当然ながら私が履けるようなサイズではなく、侵入者の存在を如実に示していた。
「このデザインはミレニアムのかぁ。となると犯人は……なるほど」
侵入者の正体に目星を付けた私は靴を脱いで家に上がる。目指すはリビング。恐らく、彼女はそこに居る筈だ。
「よし今っ!いけいけいけ!あーもう、何で肝心な時に当たらないのかなぁ⁉︎……うん、やーめた!確かゲーム開発部からオススメされたのがあったし、そっちをやろうっと!」
リビングのドアを開くと、果たして彼女はそこに我が物顔で居座っていた。
宿舎に備え付けられている大型テレビに持ち込んだゲームを繋ぎ、テーブルの上にはマンガとお菓子の山が積んでいる。
私は無言でその背後に歩み寄ると、ゲームのコントローラーを放り投げて手足をバタつかせる彼女に声をかけた。
「コユキ……何してるの」
ビクン!と肩を震わせてコユキの動きが静止する。そして錆び付いたブリキ人形のようなぎこちない動きでゆっくりとこちらに振り向き、視線が合ったところで彼女は大きくその場から飛び退いた。
「せ、先生⁉︎ど、どうしてここに⁉︎」
「どうしても何も、ここは私の家だし……」
コユキはわちゃわちゃとお菓子やゲーム機を隠そうとするが、小柄な彼女の体格では全てを隠すことは到底不可能であり、制服の影からコントローラーが私の足元に向かって転がり落ちて来る。
「にははは……せ、先生って思ったより良い家に住んでるんですね!このテレビってミレニアム製のお高い奴でしょう?やっぱりシャーレって高級取りなんですか⁉︎」
「コユキ」
「はい……」
何とかして誤魔化そうとするコユキだったが、私に名前を呼ばれると滑らかな動きで正座に移る。
それはさながら、DX超合金メカゴキラの購入履歴がユウカに見つかった今朝の私に勝るとも劣らない堂に入った正座であった。
「それで、コユキはどうして私の家に居るの?」
「それはその、ほら!先生はいつもお忙しいそうですから、私が部屋のお掃除をと思いまして!このゲームはちょっとした休憩、みたいな」
「で、本当のところは?」
「この前、暇潰しにシャーレの機密情報を漁ったら偶然先生の家の住所が出て来まして。家に帰ってる様子はなさそうだったし、ゲームとかの置き場も無いし。それなら私が使っても良いかなって——」
「あ、もしもしユウカ?」
「あーごめんなさいすみません反省してるのでユウカ先輩に連絡するのだけは勘弁してください!」
ウサギのように跳躍したコユキが端末を持っていた私の腕に絡み付く。
突然のことに反応できなかった私はそのままバランスを崩して側のソファーに倒れ込み、ユウカの連絡先が表示された端末を奪い取られてしまい、電源を落としたコユキは私の上で安堵の息を吐いた。
「にははは、セーフ!……先生!可愛い生徒を売ろうだなんて、ひどくないですか⁉︎」
「不法侵入よりはマシじゃないかな」
「だ……だってこの前、先生が告げ口した所為で反省部屋に私物を置けなくなっちゃったんですよ⁉︎処分されそうだったのをギリギリ取り返して来たのに、私のゲームとかマンガはどこに置けば良いって言うんです⁉︎」
「いや普通に自分の部屋でしょ」
「そしたらユウカ先輩たちにすぐ没収されちゃうじゃないですか!」
「それは没収されるような使い方をしてるのが悪いんじゃないかな……?」
「あー!あー!聞こえませーん!」
いそいそと私の端末を懐にしまうコユキにそう言葉を返したが、彼女は手を耳に当てながら大声で叫んで聞こえていないフリをする。
「そ、そうだ!そんなことより、一緒にゲームをやりませんか?いつもは一緒にやってくれる人が居なくてNPCとばっかり戦ってるんですけど、1回は誰かと対戦してみたかったんですよね!」
話を逸らすようにコユキがゲームソフトを取り出し、いそいそと準備をし始める。そうして画面に表示されたのは、国民的キャラクターが車やバイクに乗ってレースをするゲームだ。
私は楽しそうに準備をしているコユキの姿に思わず小さく苦笑し、彼女の隣に腰を落とすと差し出されたコントローラーを受け取った。
「ちょっとだけだよ。これが終わったらミレニアムまで送っていくからね」
「はいはい、分かってますよー!あ、先生はどのキャラ使います?私はこの強そうな亀のおじさんにしますけど」
「うーん、それじゃあこのキノコ人間にするかな」
「にははは、そーんな弱そうなキャラで良いんですかー?私、このゲームは何回もやってますかし、先生をボコボコにして勝っちゃうかもですねぇー!」
そうして始まったレースだったが、不慣れで操作がおぼつかない私に対して、コユキは軽快なスタートダッシュを決めるとすいすいと進んで行った。
私も見様見真似で食い下がってはいるものの、コユキは賑やかさで入れたNPCの妨害も意に返さず瞬く間にファイナルラップへ突入した。
「ほらほら〜、遅いですよ先生!このままだと私がぶっちぎりで1位ですよ〜?」
「いや、私は初心者だからね?むしろ上位に居ることを褒めて欲しい」
「1位以外はみんな敗者ですよー!あ、私が勝ったら駅前のアイス買ってくださいね!」
「えっ。これ、罰ゲームありなの⁉︎」
「今決めました!嫌なら勝てば良いんですよ、まぁこれだけ差があれば勝つのは私ですけどね!」
「あ、青甲羅」
「……えっ」
私の方の画面に表示されたアイテムを見たコユキから余裕の笑みが固まり、すっと顔が青ざめる。
「せ、先生?もしかして、それを使おうとか思っちゃってたりします?」
「うーんどうかな」
「そうですよね!優しい先生なら青甲羅は使わずに捨ててくれますよね!」
「うん、そうだね。今捨てるよ」
「ありがとうございまっぁぁぁー!なんでー!使わないって言ったのに!嘘つきぃぃぃぃ!」
「使ってないよ。ただ前に捨てただけだよ」
コユキの操作していたキャラクター棘付きの甲羅が落下し、大爆発が巻き起こる。
その隙に私のキャラクターはクラクションを鳴らしながらジャンプ台を飛び抜け、1位でゴールを通過した。
「ズルですズル!本当なら私が勝ってたのにぃぃ!」
「ズルじゃないよ。運も実力の内だよ」
バシバシと背中を叩いてくるコユキにそう返しながら、私は上着を片手にゆっくりと立ち上がる。
「それじゃ、そろそろ帰るよ」
「えー、もうちょっと遊んでも良いんじゃないですか?」
「ダメ。もう夕方なんだから、遊んでたら帰れなくなるよ」
「先生のケチ!せっかく隙を見てサボりに来たのに!」
その言葉に私は驚き、思わず聞き返してしまった。
こんなに堂々とくつろいでいたから、てっきりセミナーの仕事は全部終わらせたか、今日が休みだったのかと思っていたのだ。
「あったりまえじゃないですか!あんな退屈な仕事なんてやってられませんよ!」
「それじゃあ、残った仕事はどうしたの?」
「え?ユウカ先輩のデスクに置いて来ましたよ?今日、ユウカ先輩はこっちに居ませんでしたし、ノア先輩が席を外した隙に書類の中にこっそり混ぜておけばすぐにはバレないだろうなって——」
「あ、もしもしノア?」
「嘘ですごめんなさい帰ったらすぐ仕事を終わらせますので今だけはどうか先輩方には黙っていてくださいお願いします」
流れるような土下座。
それはさながら、ノアの詩集を睡眠導入剤の代わりに使っていたことがバレた昨日の私に勝るとも劣らない熟練の土下座であった。
「と言うか、先生は何で今日に限って帰って来るんですか!もう1、2日くらいシャーレに居れば良かったのに〜!」
「そんなこと言われても……」
「はぁ。ここを使ってることがバレちゃいましたし、新しいサボり場を探さなくちゃ。あーあ、ここは居心地良かったのなぁ」
口を尖らせて不貞腐れるコユキ。
どうやらこの部屋が相当に気に入ったらしい。
私は思わず苦笑した。
「うーん。そんなにここが良いなら、自由に使って良いよ?」
「良いんですか!……でも、ここは先生の部屋ですし、私がここに居たら邪魔になりません?」
「良いよ。そもそも私、大体シャーレで寝泊まりしてるし、ここにはあんまり帰ってこないからね」
「……え?」
そう言うと、何故かコユキから笑顔が消える。
「せ、先生。私が当番の時はそんなに仕事なかったと思うんですけど。もしかして、何かしちゃたんです?」
「違うよ。当番の子に任せられる仕事と、私がやらなくちゃいけない仕事は別にあるんだ。今日は強引に半休が取れたけど、いつもはそっちが片付かないと休めないんだ。ここに帰って来たのも大体半年ぶりかな?」
その時、甲高い電子音が鳴り響き、私は懐の端末を取り出すとメールフォルダを確認した。
これは、トリニティの子からか。内容は、ちょっと手伝いの頼み事か。うん、この程度なら今日中に終わらせられる。
「ごめんね、コユキ。私はちょっと仕事に行って来るから戸締りだけ頼めるかな?」
「い、今からですか?せっかくお休みなのに?」
「私は先生だからね。別に今日やらなくても良いけど、生徒が困っているなら少しでも早く解決しなくちゃ……帰り道、送れなくてごめんね」
そうして私は外に出るべく玄関の扉に手をかけ、中々開かない扉に目を丸くした。
「……扉のセキュリティを変更しました。多分、ミレニアムの生徒でも簡単には解けない暗号を仕込んでいるので先生は明日までここから出ることはできませんよ」
「こ、コユキ?何を——」
「先生にはいまから私の遊び相手になってもらいます!」
リビングから現れたコユキがビシッ!とこちらへ指先を向け、こちらの服の裾を掴む。
そしてグイグイと引っ張って部屋に引き戻し、私を強引に座らせたコユキは脚の上に腰を落としてすっぽりと腕の中に収まるような形になった。
「私、先生と次は協力するゲームがやりたい気分だったんです!ほらほら、早く!可愛い生徒の頼みを断るんですか⁉︎」
私は突然のことにしばらく呆気に取られていたが、ゲームの準備をするコユキが時々心配の色を滲ませていることに気付き、そっと彼女の頭を撫でた。
「ちょ、いきなり何ですか⁉︎くすぐったいですよ!」
「……コユキ、ありがとね」
「にはは、何のことですか?私はただゲームをやりたいだけですよ」
コユキが私の腕をギュッと握り、身体を小さく縮め込む。
そっぽを向いた所為で彼女の表情は窺い知ることはできなかったが、ツインテールから覗く耳はしっかり朱色に染まっていた。
「さ、ゲームスタートです!先生、今日は寝かせませんよ!」
♢
「知らない天井だ……このセリフ、現実で言うことなんてあるんだ」
早朝、私は窓から差し込む朝日と奇妙な息苦しさによって目を覚ました。
瞼を開ければ、私はお菓子の袋やゲームが散らばった部屋のソファーに寝ているのが分かり、そこでようやくこの部屋が自分の家のリビングであることを思い出した。
「えーっと、確か昨日は……コユキと夜までゲームをしてて。途中で寝落ちしちゃったんだっけ?」
と、言うことはだ。
私は身体にかけられていた毛布を身体から引き剥がし、自分にしがみ付くようにして寝息を立てているコユキを見つけた。
「ふぁ……あ、せんせぇ?おはよぅございまふ……」
「おはよう、コユキ」
私が起きたことに反応してか、コユキものそのそと目を覚ます。
私はそんな彼女のツインテールを解いて下ろされている頭のてっぺんで跳ね上がっている寝癖を手櫛で直し、未だに寝ぼけ眼のコユキに水を注いだコップを手渡した。
「ありがと、ござぃます」
コユキが受け取った水を飲んでいる間、私はリビングのゴミを片付けることにした。お菓子の空容器はゴミ箱へ、ゲーム器類はまとめてテーブルの上へ。
そうして掃除を終える頃にはコユキも目を覚ましたらしく、いつも通りのツインテールに結んで元気な笑顔を浮かべていた。
「さて。そろそろ始発も動き出す頃だし、ミレニアムに帰るよ」
「そうですねぇ、私も早く帰ってもう1回寝たいです」
「ごめんね、無理させちゃって」
「いえいえ。私もいっぱい遊べて楽しかったですよ?いつもはユウカ先輩に怒られるからこんなに夜更かしはできないんですけど、昨日はそんなこと気にせず遊べましたし——あ゛」
ふと、突然コユキが話すことを止め、ピシリと固まった状態で冷や汗を流し始める。
「せ、先生。ヤバいかも、です」
「ど、どうしたのコユキ?」
「私、先輩方に無断で外泊しちゃいました!」
そう言えば、そうだった。
確かコユキは自分の動向をユウカたちに連絡しなければいけなかった筈だ。
コユキがシャーレの当番の時も、事前に彼女たちに話を通しておく必要があった。
だが、今回コユキはサボり目的でここを訪れた。
ともすれば、当然自分が何処に居るかなんて連絡していない訳で。最悪の場合、C&Cのみんなが身柄を取り押さえるべく既に動き出してる可能性もある。その場合、この家とその周辺は跡形もなく吹き飛ぶことは想像し難くない。
「どうしよう、絶対怒られる!ユウカ先輩にお小遣いが減らされて!ノア先輩にネチネチお説教される!もうダメだぁぁぁ!」
「だ、大丈夫。早く帰って謝れば多分許してもらえるし、最悪私も一緒に謝るよ!」
「ぜ、絶対ですからね!裏切ったら怒りますからね、覚悟してくださいよ⁉︎」
泣き顔でこちらに抱き付くコユキの頭を撫でながら、私は頭の中でどんな土下座をすれば許してもらえるのかを思考する。
こうなったら最終手段である、号泣しながら相手の脚に縋り付く泣き落とし土下座を披露するしかない。
この技は、使えば大抵の相手から許してもらえるが、あまりのみっともなさにドン引きされると言う代償がある。
だが、これも可愛い生徒のため。私のプライドの1つや2つ、捨ててやろうじゃないか。
悲壮な決意を固めながらも、自らを奮い立たせるべく声を上げた私は玄関の扉に手をかけた。
そして隣で震え上がるコユキを連れて駅へ向かうべく1歩を踏み出し、そこでふと昨日言った言葉を思い出した。
「あ。そうだ、コユキ」
「ほぇ、な、何ですか先生?まさかユウカ先輩から何か連絡が⁉︎」
「いや、これを渡しておこうと思って」
「には?プレゼントですか、何です何です〜?」
「私の家の鍵」
「……え」
その場にしゃがみ、コユキと目線を合わせてから施錠に使った鍵をその手の中に握らせる。
確かもう1本の合鍵はシャーレの金庫の中に保管してあったから、これはコユキにあげても問題はないだろう。
「ほら、昨日言ったじゃん。この家は自由に使っても良いって。コユキなら鍵が無くても入れるけど、やっぱりちゃんとした方法で入って来て欲しいから」
「えっ、わ、私に?渡す人間違えてませんか、それ……」
「間違えてなんかないよ。私はコユキを信頼して渡してる。コユキならこれを悪用することは無いだろうから」
確かに、コユキはこうしてゴミや私物を散らかしてはいる。しかし、帰る時は玄関やリビングの様子から必ず掃除をしてくれているようだった。
何よりコユキは、部屋に盗聴器を仕掛けたり、爆弾を仕掛けたり、私物を勝手に持って行くことはしない。
それなら、合鍵を渡しても問題無い筈だ。
「ただし、来る時は必ず私に連絡すること。そんなに使ってないとは言え、勝手に人の家に入るのは悪いことだからね。分かった?」
「……はい。分かり、ました」
コユキは渡された合鍵をジッと見つめながら頷いた。
彼女にしてはやけに素直なのが気になったが、まぁ多分大丈夫だろう。
そうして私はゆっくり立ち上がり、駅の方に向き直る。
その後に続いて、コユキは私の家の鍵を大切そうに首の学生証の中に入れると私の手に自分の手を絡ませた。
「先生!次のお休みはいつですか⁉︎今度、昨日やったゲームの新作が出るので一緒にやりましょう!」
「それは楽しみだ。うん、ならそれまでに頑張って仕事を終わらせるよ」
「約束ですよ!この次のお休みも、その次のお休みも!ちょっとお時間いただいちゃいますから!」
「そう言えば、コユキが任されていた仕事ってどんなものなの?」
「んー、えと、確か、最近話題になってる爆弾魔?の作ったヤツらしいです。何でも仕掛けた爆弾のプログラムに次の爆破場所のヒントをを仕込んでるとかなんとか」
「それって、放置しちゃダメなヤツじゃない?」
「ですね!ノア先輩もなるべく早くお願いって言ってましたし!」
『速報です!先程ミレニアム学園自治区内で大規模な爆発が発生し、セミナーの所有するビル3棟が倒壊する被害を受けました。このビルでは次世代エネルギーに関する研究が行われていたとされ、ミレニアムの受ける経済的損失は100億円にものぼると想定されています』
「あっ」
「コユキ、これって。もしかして」
「には、にはははは」
「コユキ、急にユウカから連絡が来てるんだけど。メッセージボックスの通知も止まらないんだけど」
「……先生。私たち、死ぬ時は一緒って言いましたもんね?」
「……、……………………」
「どうして黙るんですか?嘘ですよね先生、絶対ですよ?約束ですから1人だけ逃げちゃダメですからね!先生、先生⁉︎何処に行くんですか先生?逃げるんだったら私も連れて行って……あ、その、おはようございますネルせんぱ」