オトン・カゲノー男爵の居る応接室へ向かう、早急に何かに備えなければならない。
聖教が、そして代官を操る誰かの話をしなければならない。
...騎士か、しかも王都の。
尋問に時間をかけ過ぎたか、遅かったか。
「いったいどうしたのだね、こんな時間に。」
「はっ!!王都より伝令であります!!」
「近年貴卿の領内にて盗賊による私掠行為が横行してるとの訴えあり、早急に事態を解決されたし。
成果を上げねば領地を接収し、別の者に統治を任せるものとする。」
「なっ...!!」
...どういう事だ?私はそんな話聞いてないぞ?
「待て、伝令名前は。」
「申し訳ありませんが、王都に連絡をしたと報告せねばなりませんので失礼いたします。」
「この私の命令が聞けないのか?」
「...アレクシア様ですか?!失礼しました!!」
王女の顔をしらねぇのかよ...あっいや髪型の問題か...
今髪を下ろしているからね、ツインテールがないと私って気が付けないか。
「そうだ私だ、これは私の預かった案件なのだが?誰がソレを決めたのか説明してもらおうか。」
「ミドガル王国議会内務部であります」
「へぇ...まあいいだろう、王都に戻るといい。」
きな臭いな...
「確かにお伝えしました、ではこれにて。」
「いや...そう急がずとも!!
そうだ!!ここは一服して詳しい事を...」
「ご好意痛み入ります、ですが私も伝えた事を報告せねばならないので...申し訳ありません。」
そして無常に帰っていく伝令、あんなクールな男爵があんなヒョロヒョロに...あさてはコッチが素か?だろうなぁ。
ふざけやがって議会のクズ共が...
私は先の盗賊の私掠行為はクーデターを起こす為のモノだったと見ている...
議会が男爵領の資源の権益を狙ったのだ、盗人猛々しい行為である。
その為に代官に盗賊を率いらせて利用した、そして聖教も権益を狙っている訳だ...あわよくば武力で制圧しようとか考えてるのだろうな。
その為の大義名分にカゲノー家に悪魔憑きありと宣伝してきたのだ、カゲノー家の屋敷に聖教が沢山抱えている悪魔憑きを置くだけでいいんだもの...ふざけやがって。
「申し訳ありませんアレクシア殿下...この様な為体を...」
「確信した、これはクーデターだ。
...大方ココで産出される無数の資源が目当てだろう、申し訳ない王国の腐敗は相当酷い有様らしい。
軽慮浅謀にも程があるぞ首謀者は馬鹿なんじゃないのか...」
「いえ...私の領地の管理が完璧ならば起きなかった問題です...」
「はぁ...
第二王女アレクシア・ミドガルは男爵の治世は問題ないものだったと認む、男爵は精強な騎士団を率いて幾度も盗賊を撃退したのは疑い様もない事実である。」
「だとしてもです...今の私にはどうしようも...何もできません...申し訳ありません...」
「そうだな、根本的な解決も難しいだろう。」
「お父様...話は聞かせて頂きました!!」
ワぁ...ァ...
ブラコン登場である、話がややこしくなるぞ。
多分自分の中で何かのスイッチ入ったわ、そう神父を虐め返す時の。
「クレアさん少し黙ってて下さい、今考えてるので。」
喋るなよ?何も...
「はっ...はいごめんなさい...」
どうしようもない、陛下は事なかれ主義だから頼りにできないし...私がやらないとね。
頼みの議会が敵だ、根本的な内部改革も不可能...しかも聖教のせいでタイムリミットつき。
「男爵これはどうしようもない事です、根本的に解決する事はできませんね。」
「何と...それではどうしたら...」
「席を変えましょうか、防音の部屋があれば嬉しいですね。」
「分かりました...人はどう致しますか?」
「私と男爵が信頼の置ける人だけで話しましょう、少し踏み込んだ話をしますので。
ああそれと信心深い方々は除いて下さいね...」
「これで全員です」
騎士3名と男爵と男爵夫人、そしてゴネて参加したクレアさんとクレアに連れてこられたシド...そして私の計7人。
「では結論を言いますね、どうしようもないです。
男爵はこれまで通り民に寄り添った領地管理を継続して下さい、そもそも私は内部を調べるだけなので対処は男爵様が行って下さい。
一応解決策の提言として、代官の数を増やす事をオススメします。
日常生活からナニからナニまで代官同士で監視させて下さい、やはり代官が盗賊を招き入れている様ですからね。
それと聖騎士含む聖教関係の人間に監視を付けるべきです、奴らはカゲノー家に悪魔憑きありという噂を大義名分として男爵家の屋敷を襲撃してくる可能性があります。
...潜在的な脅威でもあります、注意した方がいいでしょう。」
「待って下さい!!突拍子が無さ過ぎます!!」
「だって突拍子のない話ですから...
不服みたいですね騎士の方々も、でも安心して下さい最後まで話を聞けば納得できますよ。
議会と聖教の最終的な目的はこの地にある資源の数々です、どんな価値があるかは知らない様ですが資源という言葉にホイホイ釣られて狙っています...ここまではいいですね皆様。」
「はい...では続きは?」
「どっかの誰かはどうやってこの領地の資源を得るつもりなのかですね、代官に甘い声で囁きます...カゲノー領の不祥事を起こして男爵を引き摺り下ろす事ができたら男爵として領主にしてやると。
それで賢い代官は考えました、盗賊の私掠行為を許可したんですよ...それで男爵家が悪戦苦闘してる内に国に直接盗賊討伐を依頼したみたいです。
領地経営に不真面目な男爵様を引き摺り下ろそうって魂胆ですね...
議会も一枚噛んでるでしょうし自分達でこれは解決せねばなりません、絶対に。」
「...殿下は何故その様な答えに至ったのですか?」
真っ当な質問だ、いい質問ですね。
「人攫いが決め手でしたね...
盗賊が奪った資材などを、誘拐した人間に運搬させて外の領地で売っていたという事が先の石投げ少女の親の取り調べと先日説明された書類で判明しました。
あと似た様な事例を何度も見た事があるからです、これだから権威主義者はクソなんですよ。」
壮大な陰謀、ただのマッチポンプである。
「...私にはよく分かりません、分かりやすく説明して欲しいです。」
だって誘拐された人の使い道がそれしかないじゃん、需要と供給を知らんのか...知らないんだろうね。
「ああすみません...
誘拐された人が何をしているか、そう思い至った理由を話していませんでしたね。
需要と供給です、盗賊が律儀に隣の領地まで行って物を売ると思いますか?それを誘拐した人間にさせているならばその需要元と供給先の関係がマッチするからです。」
「なるほど...とても難しい考えですね、ご教授ありがとうございます。」
相当オーバースペックなんだなこの俺の知識って...
やっぱ俺11歳児じゃなくてもおかしいんだ、あれだけの異名が生まれた理由が分かった。
「では聖教の方の説明しますね、これはただ俺が嫌いだからこじつけただけです。」
「「「「「「...は?」」」」」」
「でも本気ですよ、聖教徒の大多数は子供が好きで掃除の好きな善人です。
ですが聖教の中で巣食っているほんの一部のドブネズミ以下の存在が今回の敵です、ソイツらが男爵様を殺し自分の息のかかった人間を領主としてこれまで通り資源を横領する気なんですよ。」
正直ね鉱物等を中抜きしてたのは代官だと思っていた、でもどうやらソッチは盗賊じゃないと判明した...んで消去法で聖教しかない。
「聖教が...ですか?」
「でも聖教の黒い噂を聞いた事なんて...」
「お偉い騎士様は気にする機会すらないでしょう、二歳の幼気な第二王女を悪魔憑きと蔑み弾圧する奴らの本性は。」
「「「「「「...」」」」」」
「私はあの病的な事なかれ主義の国王陛下に命を賭して守ってもらった上、尚且つ母の命を対価としてナニかに捧げたおかげで日の元で石を投げつけられるのが日常程度ですが出歩けます。
ですがそれがただの男爵家の人間だったら?
悪魔憑きなんて噂の立っている家に、聖戦を主張した誰かがカゲノー男爵家に侵攻を決定したとして助けてくれる他の家はないでしょう。
まあ勝てるとは思いませんが...
孤立無援の内紛でゆっくりと擦り減り続け、そしてもし何らかのうっかりで男爵様の屋敷で誰かが悪魔憑きを発症したら?さあどうなりますかね。」
「あぁ...そんなの嫌...」
泣き崩れるクレアさん、狼狽える騎士の面々と顔を歪ませる男爵と男爵夫人。
ん?クレアさんの魔力のバランスが悪いぞ...フラグじゃねぇんだよ...
「まっそんな事はこんな計画を立てた馬鹿が破滅しない訳がないのでパス、そもそも男爵領で掘られる資源がないとこの国成り立たないんで男爵が足掻けばどうとでもなりますよ。
リン酸の一大採掘地であるここから国中に肥料を行き渡らせないと民が飢えます、窒素化合物に使う燃料とカリウムの輸入は男爵家の資源でトレードしてますから。
食事の所作だけ美しいと言われるほど、食が好きな私が国の食を支えてるのが男爵の手腕のおかげと言います...これで王家の箔が付いて議会は手出しできなくなります。
それに私の趣味である色々な工学関係で使われる貴金属類、この国でそれらの製造に使われる資源のほぼ全てはこの領地の物です。
それらは男爵様とこの領地の民の手で成り立っていると、私は考えています...それを1〜3年以内に証明すればいいんです。」
そう、ただそう思わせるだけでいいのだ。
そこまで難しい話ではない、移住者の命その全てを擦り潰せば簡単に解決できる...領民と自らの手を汚す事なく。
私は調査しに来ただけだ、その調査で最も素晴らしい領地だったと議会と陛下に報告すればいい。
それで全部解決するんだ...
「そこまで我々を評価してくださるのですね...このオトン・カゲノー命を賭して必ず民と地を守ってみせます...」
...ん?何か意図が伝わってない気がする、ただ証明するだけでいいんだよ?実情を伴わせる必要はないんだからね?外からの監視がなくなった後にゆっくりと解決すればいいからねその事を理解してないのかな。
「カゲノー家はミドガル王国貴族の鏡です...
そのカゲノー男爵を差し置いて、この領地を統治する人間は存在し得ません。
...王家として指導者として、男爵の活躍を期待します。。」
「勿論です...」
男爵夫人は目を開けて泣き出したし、騎士の方々も涙ぐんでます...オトン男爵なんて号泣してるよ。
因みにクレアさんはシドにしがみついて言葉にならない何かを言ってる、因みにシドは何か目が死んでる。
何でだよ!!頑張らなくていいんだよ?何でだよ、勘違いすんな。
...もうどうにでもなれ、この際好きにしようか。
何か察した、名実共にアレクシア・ミドガルの裏庭になるわ。
私掠行為
国や国に準ずる機関が戦争中海賊行為を許可した行為、要するにブリカス海軍の事である。
海上警察
「ちょっと話を聞こうか」
でも男爵領は山奥ですので、国や国に準ずる機関が戦争中盗賊行為を許可した行為になりますが正しい言葉の使い方じゃないですね。
細かい?その通りで...
原作でもカゲノー男爵は獣人の侵攻を何回も返り討ちにしてたらしいです、原作から魔境なのが本当に面白い。
辺境の男爵貴族の癖して武神祭優勝候補のクレア・カゲノーなしで、カゲノー男爵は中央で名の通っている大物なんだよね。(原作アニメ1期19話を見た時に仰天した、何でハゲ有名なんだよ。)
その事に気が付かないでアレクシア王女の事を高嶺の花だの肩書きで語るシドが中世の貴族じゃなくて現代人って実感できるw後継者じゃないとは言え大物貴族の長男坊の自覚持てよ()
ミドガル王国の腐敗
小説6巻を見よう、シャドウフィルターがあるから実感し難いけどマジで凄いです。(小並感)
プロパガンダ
だだのお気持ち表明、ただし極めればアドルフ・ヒ◯ラー。
アレクシア・ミドガルの人生が酷過ぎて男爵達の感情の起伏が凄いです、彼女は極めるまでもなく偶然究極のお気持ち表明を行った...結果男爵が泣いた。