アレクシア・ミドガル、12ちゃいでちゅ。
国王陛下の名代としてカゲノー男爵領に視察に向かっています、陛下に自分は試されてますね。
仕事内容は人身売買及び横領の調査です、陛下からは調べ過ぎるなと、深入りするなと釘を刺されています。
...ええはい聖教案件ですね派手に粗を探します、何だったらどさくさに紛れて盗賊として捕まえちゃおうと考えています。
案内は勘のいい少年であるシド・カゲノー君にお願いするつもりです、いい感じに秘密を暴いてくれるだろうと考えています。
「初めましてアレクシア・ミドガル様、クレア・カゲノーです。」
「初めまして、アレクシア・ミドガルです。」
あれシド君じゃないの?
...ああ後継は姉だったのか、なるほど。
シド君も見る目はある筈なんだけどな、まあ剣の実力が優先か...いやでも私はシドの方が剣の方面でも実力が上にしか見えないけど。
「遠路遥々お越し頂いてありがとうございます、そちらにおかけ下さいませ。」
「いえいえこちらこそ、かのクレア・カゲノーさんに歓迎させて頂けるとは嬉しい限りです。」
「ありがとうございます、来年には特待生として王都の学園に通う事になるのでその時は宜しくお願いします。」
「そうですね、その時は王室総出で歓迎させて頂きます。」
上辺の会話はこれぐらいでいいかな、そろそろ本題に入ろうかね。
私とクレアさんと男爵家当主様以外を退席させる、無駄な耳は減らしたい...そもそもゼノンは聖教のシンパだしコソコソ会議するには邪魔だ。
連絡役は男爵の婦人様にお願いする、ゼノンは駄目だ。
「では建前はここまでとして、本題に入りましょう。」
「...陛下は何と?」
「私は深入りするなと言われました、概要は現地で聞けと言われましたので私は何も知りません。」
「分かりました、ではこちらを見て下さい。」
...この書類の読み方が分からない、何の書類か全然分からん。
「...見方が分かりませんね、少し口頭で教えて頂けると幸いです。」
男爵から説明を受ける、青色の文字が採掘した資源の量でオレンジ色が取引記録の残っている資源の量だ。
そして黄色の文字が行方不明者の数と...
リン酸や硝酸は約半分近くがどっかに消えてる、希少金属群はまあ手を出されてないから安心だ。
そんで更に誘拐か...
闇が深そうだ、相当面倒臭い事になっている。
カゲノー男爵領の鉱山、資源採掘場で掘れるモノは国の最重要戦略物資である。
でもその最重要戦略物資の意味を理解している人がミドガル王国には居ないのである、何故なら汚職大好きの彼らは平民の生活とかどうでもいいから。
俺達が食ってる美味しい美味しい白パンは、カゲノー男爵領のリン酸や私の作り出した窒素化合物製造機と外国から輸入しているカリウムで作られてるんですけどね...でもその事を知ってる騎士と貴族は存在しない。
だから消去法で俺を派遣したのか、自ら視察に来たかったんだろうけどついでに俺を試していやがる。
...どう穏便にこの事態を解決するか期待してんのかな、まあ見事解決してみせるよ安心してくれ。
実を言うと噂話から人口動態、自然環境の汚染状況とか色々と事前に調べておいた...そんで判明したこの領地の管理すげぇって。
男爵様は近世に毛の生えた今の時代で、民に配慮した採掘をしてる聖人を越えたナニかである。
鉱山での採掘は甚大な規模で環境汚染を引き起こすのだ、そしてその問題を解決するのには大きなコストがかかる。
でもこの人は何にも変えられない領の宝として、領民に健康被害を出させない様に配慮している。
「どうでしょうか、何か分かりましたか。」
畏敬の念が堪えねぇ...
男爵の優秀さが垣間見えただけだった、何この聖人凄い。
それなのにこの事態が起きてると...
やっぱ横流しだな、代官が怪しい。
「書類だけじゃ何も分かんないですね」
「そうですね...」
「「...」」
「「あっははは」」
笑うことしかできねぇ...
「...ありがとうございます、今日は疲れたので続きは明日で宜しいでしょうか。」
「承知しました、では予定を繰り上げて明日の午前に内務の確認をして頂きたく存じます。
...午後に視察の予定を入れさせて頂きます、本日はお休み下さい。」
「分かりました、それとシド・カゲノー君に合わせて頂いても宜しいでしょうか。」
「構いませんが...なぜ?」
「あのサラサラの黒髪、それに同じ年なので弾む話もあるかもしれませんからね。
それに...」
世辞からの本題に入ろうと思ったら話を遮られる、悲しい。
「シドはあげないわよ...」
「...ゑ?」
クレアさんから物凄い剣幕で...ヤバいブラコンじゃん...
曰く将来は私と結婚する...曰く今日初めて会った女に合わせるつもりはない...
目にハイライトがない、怖い。
「「...」」
「あの〜初対面じゃないですし...その既に面識がありましてね?
何年も前の話なんですが...紆余曲折あって参加した社交会でー...」
出会いを説明しようとしたら話を遮られて怒鳴られる、どうやら俺は弟を奪う雌猫と認定されたらしい。
「社交会ですって...シドと?
シドの貞操の危機に黙っていられないわお姉ちゃん!!絶対に守ってあげるからねシド!!」
...駄目だこれ、無視しよ。
「シド・カゲノー君を視察の際に、私の目として雇いたいと思っています。」
シド君は目がいい、そして本質を見抜く力がある。
何でお忍びの第二王女って事をピンポイントで見抜けるんですかね...でも今回はその目の良さにお世話になりたい...
「目...それはどういった意味でしょうか?」
「数年前社交会でシド君と会いました...
その時に彼は目がいいんだなと感じる経験がありました、彼の物事を見抜く目を借りたいと思っています。
いい弟を持ちましたね...クレア・カゲノーさん?」
「そうよ!!分かってるじゃない!!」
「「...」」
よし、チョロいな。
「という事で男爵様、明日の午後シド・カゲノー君をお借りしても宜しいでしょうか。」
「...」
彼らにとっては問題児みたいな扱いらしい、まあ苦労が絶えなさそうだ。
目と勘の良過ぎる子供の世話は大変なんだろうね...親父さんすみません...
「...バツの悪そうな顔しなくていいですよ、あれはあれで面白い経験でした。」
メイドを上回るシド、流石である。
「...分かりました、明日の午後にシドに時間を空けさせます。」
「ありがとうございます」
カゲノー男爵家には敵が多い、貴族としてのルーツは不明だしカゲノー家の存在には得体の知れない恐怖心がある。
挙句土地は豊かで資源も多いからね...
故に男爵家の領土を狙う貴族だけでなく、獣人や魔獣みたいな外界からの来訪者も居る。
なのに外敵に苦労している様子を一切見せない恐ろしい領地なのだ...
故に男爵家には悪魔憑きありだの、神代に魔人と契約したとかそういった噂が絶えない。
カゲノー男爵、人外魔境の異界の主として有名だ...カゲノー男爵領は冗談抜きでリアルグンマー帝国なのだ。
男爵もどんな怖い人だろうと思ってたけど...
実際はとても人当たりが良く、それでいて人の為に行動できるいい人だった。
この世界の噂話が全然役に立たない...
王家や議会に何をされるか気が気じゃないのだろう、権益だけを剥がされたらたまったもんじゃないんだろうね。
...そんな事、俺はしないって事を少しずつ表明していかないと。
まあそんな感じで話は終わった、そんでまあシド君に挨拶してシド付きであろう金髪蒼眼の乳デカメイドに部屋を案内された。
因みにシドには初めましてって言われた、忘れられてた悲しい。
因みに、疲れたってのは大嘘です。
元気いっぱいですよ、目がギンギンです全然寝れません。
...まあ寝ようと思えば寝れるんだけど、視線が気になって眠れない。
命の危険があるかもだしね、隠れている奴らを引っ捕らえて情報を引き出すか...その為には本物の諜者相手に戦ってみないと。
対人間に関しては初の実戦だと思う、いやまあ碌でなし神父は城の中で殺したんだけど...まあ真面な命の奪い合いは初めてだ。