異世界と変身ベルト~仮面ライダーとして転生した俺は静かに暮らしたい 作:星たつゆき
翌朝、シオンは郷の外れにある墓地に俺を連れて来た。
「父さん、母さん、ただいま」
並ぶふたつの墓石。俺は大体を察した。
「シオン、お前のご両親は--」
「ボクの親はボクを守る為に命を落としたんだ。この郷にも何度か襲撃が有ってね」
「そうか」
花を手向ける。
「ボクを助けて、守ってくれたセイイチだよ。ボク達幸せになるから、見守ってて」
シオンは墓石に言葉をかけた。俺は思わず、頭を垂れた。
「それって、セイイチの世界での挨拶?」
言われて気付いた。思わず昔の癖が出ていた。
「ああ。何かの礼をする時、こうやって頭を下げるのが俺が元居た国の習わしなんだ」
「そうなんだ。わざわざやってくれたんだ。ありがとう」
「いや、こちらこそこの世界の習わしに疎くてすまない」
「おいおい慣れていけば良いよ」
そして次に、回りのものより少し大きな墓石に花を手向ける。命を落とした冒険者を合祀する墓だそうだ。そう言えばシオンは全滅したパーティー唯一の生存者である事を思い出す。
「皆、ごめん。そしてありがとう。こうして帰って来る事が出来たよ」
そっと手をやるシオン。俺がもう少し早くこの世界で目覚めていれば救えた命だったのだろうか。悔やまれるところだ。
墓地を見ていて、ひとつ気付いた事が有る。墓地にはこの「合祀」していると思しき墓もかなり多い。もしかすると、この世界では人の命は俺が思っている以上に軽いのかも知れない。それをシオンに聞いてみる。
「どうだろう。ボク達はこれが普通だから。悪の軍勢も魔物を沢山繰り出して来るし、戦いは日常だし」
「なら尚更どうして人をもっと大切にしないんだ?」
「そこまで事細かに皆を守る余裕が無い、と言えば良いのかな。セイイチが元居た世界は違うの?」
「人の命の大切さか……。地域や国によって違った。一人の命をめちゃくちゃ大事にしている国も有れば、問題解決の為にあっさり殺す国も有った」
「やっぱりセイイチの居た世界、おかしいよ」
シオンと、この世界の価値観を垣間見た気がする。まあそれはそれで当たり前なんだが、俺としては違和感が有り、つい言ってしまった。
「ほら、やっぱりそう思うだろ?」
シオンはすぐに発言を訂正した。
「あ、でも今のはセイイチ自身の事じゃないよ? セイイチはセイイチだから」
「それはどうもありがとう」
シオンは名残惜しそうに墓石を見た後、俺の手を取った。
「……さ、みんなに挨拶も済ませたし、戻ろう」
「ああ」
シオンの家は郷の中心から少し離れた所の住宅地に有った。一階が薬草や香草に幾つかのキノコ類、それを元に作ったポーション等を扱う店舗になっている。二階より上が住居になっている。三階層、いや四層以上の建物が多い。部屋に通される。家具や調度品も質素だ。
「ボクの住まいへようこそ。……あ、これからはボク達の、になるんだったね」
案内しつつ嬉しそうに笑うシオンが何処か艶めかしく感じた。
「ボクはフォレストエルフだからね。何も無い時は近くに出掛けて薬草を採りに行ったりもするんだ。で、下のお店でそれを使って色々作って売るんだ」
「流石はフォレストエルフ」
「えへへ。でも今はそこら中にモンスターが居るから、油断できないんだよね」
「なら俺が一緒に付いて行けば問題無いな」
「そうだね。あとボクは郷の冒険者ギルドにも登録してるから、何か声が掛かればそちらの仕事で出掛ける事も有るよ」
「色々と大変だ」
「まあね。生きて行くって大変。でもこれから数日はお祝いも続くし、ちょっとはゆっくり出来るかな」
そう言うとシオンは俺を引っ張って一緒にベッドに横になった。
「昨日の夜の続き、したいな」
シオンは顔を赤らめて言った。
おかしい。俺は全ての生理的欲求が無い筈なのに、この前も、そして昨日もシオンと身体を重ねた。そして今も、身体は「やる気」に満ちている。これは一体どう言う事なんだ? でもそれをシオンに聞いても分からないと言うだろうし、聞くだけ野暮だ。そっとキスを交わし、シオンを抱いた。
宴の二日目は、俺とシオンの結婚式になった。教会の前での式。俺達は共に肉親が居ないが、郷の人々が我が子、親友の様に祝ってくれた。シオンは艶やかな民族衣装と言った感じのドレス姿、俺も同じく華やかな感じの衣装を着せられた。この世界に来てある程度日にちが経つので少しの事では動じなくなっている。
昨日郷の入口で迎えてくれた郷の長、教会の神職の方々が祈りや祝福の言葉をかけてくれた。
「二人の愛と絆の日々が末永くつづきますよう……」
この辺は俺が昔出た知人の西洋式の結婚式に似ている感じだ。しかし見た事も無い不思議な世界で同じく不思議な衣装を着、そして会って間も無い可愛い子と結婚式を挙げるとは夢にも思わなかった。起きたら夢で道端か病院のベッドの上だったとか無いよな、と何度か自分の頬をつねったり叩いたりしたが現実の様だった。そんな俺を見て不思議がるシオン。
「どうしたの? 何か虫でも居た?」
「いや、これが本当に現実なのか確かめようと思って」
「面白いねセイイチ。こんな時に冗談言えるなんて」
「なら、シオンはこれが現実だと受け止められるか?」
シオンは俺の手を取った。少し震えている。
「まさか自分が結婚出来るなんて、って思ってる」
「緊張してるのか」
「勿論」
神職の方の祈りが終わり、長が俺達の肩を持ち、俺達をぎゅっとくっつけた。
「では、二人を祝して!」
「乾杯!」
本格的な「宴」二日目の始まりだ。人々はお祝いの言葉を俺達にかけ、そしてまた飲めや歌えの大騒ぎになった。俺達は着替えて食事と酒を楽しんだ。豪華な食べ物が並んで皆嬉しそうだ。勿論シオンもとても嬉しそうなので俺も何故か幸せな気分になった。