異世界と変身ベルト~仮面ライダーとして転生した俺は静かに暮らしたい 作:星たつゆき
宴は結局その後三日続いた。余程の事なのかと聞いてみたら普段の祝祭日が少ない代わりに何かお祝い事が有ると盛大に何日も行うらしい。色々な文化や伝統もあるものだと感心する。
ようやく日常を取り戻したある日、シオンは俺を連れて郷の冒険者ギルドに行った。
「お、噂の二人だね、いらっしゃい」
ギルドのカウンターで事務仕事をしていたハーフリングの女性が声を掛けてきた。
「こんにちは」
「どうも、はじめまして」
「はじめましてセイイチ様。郷の英雄だね」
「大袈裟だ。それと『様』って付けられるの何かアレだし、普通でいい」
「ならセイイチ、で良いかな」
「その方が気が楽だからそれで頼む」
「分かった。じゃあセイイチ、よろしくね」
「こちらこそ。で、あんたの名を聞いてなかったが教えてくれないか」
「カーラとでも呼んでくれ」
「よろしくな、カーラ」
「あいよ。で、シオン、話ってのは」
「セイイチも冒険者ギルドに登録しておいた方が良いかなって」
「なるほどね。無職っての流石の英雄でもちょっと格好が付かないし」
それを聞いて複雑な気分になった。仮面ライダーの主人公達は、定職に就いている方が少数派で結構な数が無職かそれに近い感じだったのを思い出す。でもまあそれはそれ、これはこれと言う訳か。
「そうそう。それに何か有った時に動きやすいかなって」
俺を置いてけぼりに、とんとん拍子に話が進んでる。
「ちょっと質問良いか?」
「はいどうぞ?」
「冒険者ギルドって具体的に何をするところなんだ?」
「そうだね。色々な人や団体なんかからあれをしてくれ、これを取って来てくれと雑多な依頼が来るんだ。それをこなして貰う。勿論無茶な依頼は受けないし依頼に適さない冒険者には割り振らないよ」
「なるほど」
「この前シオンには他の冒険者と一緒に六人でパーティーを組んで書簡を届けに行く任務に当たって貰ったんだけど--」
そこで少し話が止まる。思い出して顔が暗くなるカーラとシオン。
「まあ、書簡を届ける任務は成功した。ただ、帰り道で--」
「うん。他の五人は残念だった」
「で、その唯一の生存者を助けたのがお前さん、セイイチって訳だ」
カーラが俺を指差して言った。
「その話はシオンから聞いている」
「なら話が早い。最近はこの付近に限らず街道沿いも物騒になってるから、必要とあれば護衛に付いて貰うかも知れないが良いかい?」
「ああ。けどひとつ条件が有る」
「どんな?」
「とんだ我が儘かも知れないが、俺はなるべくシオンと一緒に居たい。だからそれを配慮して貰えると助かる」
俺の願いを聞いたカーラは豪快に笑った。
「そうだったね。あんた達は夫婦だった。結婚したばかりなのに仲を引き裂くのも気の毒だしバチが当たるわな」
シオンは少し恥ずかしそう。
「分かった。なるべくシオンの方に合わせよう。あんたは話を聞く限り戦士って感じだからそちらに割り振ろう。じゃあ書面のここにサインを」
「どう書けば良い? 俺はまだこの世界の文字を知らない」
「セイイチって分かるものなら何でもいいよ」
「じゃあ」
見慣れぬ文字が並ぶ書面に、ローマ字で自分の名前を書いた。流石に漢字は似合わな過ぎる。
「なるほど確かに不思議な字だ。読めそうで読めないなこりゃ。でも逆に一発であんただって分かる」
「ならそれで頼む」
「了解。まあいきなり難しい仕事は頼まないし、冒険者のあんたには断る権利も有る。安心しな」
「そりゃどうも」
「じゃあ、ボク達はこれで」
「これから二人はどうするんだ?」
「郷を案内しようかと思って。色々忙しかったから」
「そっか。まあ他よりは小さな郷だけど、ここは良いとこだよ。自分の郷だと思ってゆっくりしな」
「それはどうも」
「何よりシオンの婿殿だもんな」
意味ありげに笑うカーラ。
「言っとくけどセイイチは渡さないよ。ボクのだからね」
「シオンから捲き上げるなんて無理だろ、二人で仲良くな」
「ありがとう。じゃあまた」
そうして、俺達は賑やかなギルドから出て来た。
シオンが郷の中を案内してくれた。カーラは小さいと言っていたが歩くとそれなりに大きく広い。
「ここが郷の中心。この前宴を開いてくれた長が住んでる。たまに郷の偉い人や住民が集まって会議をするのもここ。横にはこの前結婚式を挙げた教会」
「ふむふむ」
「で、その横は商人の屋敷が有って、その前の広場では定期的に市が開かれるんだ」
「なるほど」
「で、こっちは職人達が住む住居、ボク達の住宅地はあっち」
「職業毎に分かれてるんだな」
「何かとその方が便利だしね」
基本的に住居のある建物は三階層以上の高層建築が多い。一見すると石造り、部分的に木造と言う印象を受けるがあまり詳しくないので適当に話を流す。
「住宅地の中にはボク達のお店みたいに毎日開いているところも有るね。ちょっとした食料品を扱ってるとことか。でも保存食や軽食とかが多いかな。で、近くには湯屋も有るから湯浴みも出来るよ」
「湯屋--湯浴み--銭湯みたいなものか」
「何それ」
「ああいや、気にするな。色々と勉強になるな」
そこでシオンが俺の服の袖をくいと引っ張った。
「ちょっとセイイチ。物見遊山じゃないんだからちゃんと覚えてよね。これから一緒に暮らして行くんだから」
「ああ、すまん。今まで見た事無いものばかりだからつい好奇心が」
俺の言葉にはっと気付くシオン。
「そう言えばそうだよね。じゃあこれからどうしよう。セイイチの行きたい所って有る?」
「行きたい所か……。そうだなあ」
ぱっと思い付かない。でも都市と言えば、そこの名物と言うか食べ物が気になる。それと、お祝いの席で出ない普通の食べ物などなど。
それを聞いたシオンは笑った。
「昼間からお酒と食事? 良いね。行こう、セイイチ」