異世界と変身ベルト~仮面ライダーとして転生した俺は静かに暮らしたい 作:星たつゆき
にわかに郷の見張り台が騒がしく鐘を鳴らし、人々の動きもせわしなくなった。郷の兵士達は慌ただしく武装を整えている。
「何事だ?」
「外の麦畑にモンスターが出たって」
「俺の出番か?」
シオンの答を待たずに俺は騒ぎのする方向へ駆け出した。
俺が駆け付けると、収穫期間近の麦畑に火を放っているゴブリン達を見つけた。先日遭遇した混成部隊と同じだ。ゴブリンシャーマン、ゴブリン、コボルト……。サイクロプスは居ないがとにかく小物が多く郷の兵士達も対処に苦労している。
俺は走って駆け付けながら構えを取る。腰のサイクロイドストーンが輝き、ベルトが顕現する。ベルトの光を見て、動きが止まるモンスター達。一様にこちらに注目している。
「変身!」
兵士達も俺の仮面ライダーの姿を初めて見るのか、皆ぽかんとした顔で俺を見ている。すぐさまストームスピアを取り出し、ぶんぶんと振り回しアイスストームを巻き起こし、麦畑の火を消す。
これには兵士達は勿論敵も驚いた様だった。ある程度鎮火した所で、敵に駆け寄り、すれ違いざまにストームスピアでばっさばっさと斬り捨てて回った。深手を負ったゴブリンとコボルトは声にならない奇妙な悲鳴を上げ、数秒苦しみもがいた末に次々と爆発した。最後に残ったゴブリンシャーマンは形勢不利と見て逃げ出したがみすみす逃がすつもりは無い。跳躍し目の前に立ち塞がる。今回のゴブリンシャーマンはすぐさまファイアボールを放ってきたがストームスピアで弾く。ファイアボールの炎が体を掠めていく。焦ってゴブリンシャーマンは次々とファイアボールを連発したがその都度ストームスピアで斬って捨てる。そして近付き、一撃、また一撃と奴の体を切り裂き、最後、ストームスピアで貫き、えいやっと投げ捨てた。ゴブリンシャーマンは無気味な悲鳴を上げてもがき苦しみ、少しの間を置いて爆発した。魔物は一匹たりとも逃さない。ようやく現場も落ち着いた様だ。
呆然と俺の様子を見ていた兵士達は、変身を解いた俺の回りに集まってきた。
「噂には聞いていたが、いや、あんた本当に凄いな」
「麦畑の火を消しただけじゃなく、敵をあっと言う間に全滅させるとは」
「そりゃあシオンが気に入る訳だ」
兵士達が口々に色々な事を言ってくる。
「それはどう言う事だ?」
俺の問い掛けに兵士達は答えてくれた。
「あいつはお転婆な奴だけど何処か乙女な所が有ってな。そう、あんたみたいな--」
「ボクの事はそこまでだよ」
シオンが遅れて、走ってやって来ると口を尖らせた。
「おっと、新婦様のご登場だ」
兵士達は苦笑いして誤魔化した。
「でも、あんたが居てくれて助かった。麦畑も被害が少なかったし、収穫も殆ど問題なさそうだ」
「なら良かった」
「これで冬の間飢えずに済む。救世主様々だな」
「自分に出来る事をしただけだ。救世主とか大袈裟過ぎだ」
「謙虚だねえ。ますますシオンが惚れる訳だ」
「ちょっと」
シオンは俺の服の裾を掴むと、兵士達の前に立った。兵士達は笑った。何だかちょっとおかしくなり、俺もついつられて笑った。シオンもそんな俺を見てくすっと笑った。