異世界と変身ベルト~仮面ライダーとして転生した俺は静かに暮らしたい 作:星たつゆき
翌日。
見張り台からの知らせで、またも悪の軍勢の魔物が攻めて来たと報告を受けた。押っ取り刀で向かったが何か違和感を覚え、改めて周囲の状況を見る。
……居る。この先とは違う場所に、もっと強い邪念と強大な力を感じる。
その事を周囲の兵士や冒険者達に伝えた。
「何でそんな事が分かるんだ?」
「俺は仮面ライダーだからな。遠くの気配も察知出来る」
「か、仮面……? ともかく、じゃあ俺達はどうすりゃいい?」
「恐らくこの先の敵は陽動だ。本体は反対側に居る。俺はそっちを片付ける。あんた達はこの先の魔物を頼む」
「お前一人だけで大丈夫なのか?」
「むしろその方が動きやすい。では頼んだ」
俺は走り出し、跳躍した。
敵は多くのモンスターを従えていた。無気味な姿の--腕が六本有る魔物だ。
「そこの異界から来た者よ」
分かる言葉で話す辺り知性が高そうだと身構える。
「お前はこの世界の異端」
俺の存在を見抜くとは。しかし--
「悪の軍勢に言われるとは心外だ」
「お前は何故人類に与する? お前の力はこの世界では異端。お前も肌身で知った筈だ。人類から、その手先の勇者から刃を向けられた事を」
「だからどうした」
「お前は人類の同胞たり得ない。我らの軍門に下れば相応の地位と報奨を与えよう」
「断る」
「何故だ」
「俺は人間だからだ。そして俺は仮面ライダー。人類の味方、人類の自由の為に戦う者だ」
「そんな固定概念を持っているとは面白い奴」
「貴様等こそ、何故人類を殺す?」
「それが我々の存在意義だからだ。そして我々は人類が嫌いだ。だからこの手で人類を殺す」
「なら尚更看過出来ん」
「交渉決裂か。残念だ」
大勢のモンスター達がにじり寄って来る。
俺は躊躇なく構える。サイクロイドストーンが輝く。
「その腹から出る光……太陽の様な眩しさ」
「それがどうした」
「やはりお前は我々の敵。お前を殺す」
「ならば俺はお前達を残らず倒す! 変身!」
俺は仮面ライダーになると、モンスターの真っ直中に飛び込んで行った。
今までに倒したゴブリンやコボルトと言った敵の他、ガーゴイルやサイクロプス、見た事の無い無気味な獣も居る。全部で二十体位は居るだろうか。それぞれ名前は有るのだろうが俺はまだ知らない。
「今日は接触までだ。次会う時は楽しみにしておけ」
そう言うとモンスターを残したまま六本腕の魔物は姿を消した。
「逃げたか」
残されたモンスターは一斉に武器を構えると襲い掛かって来た。
モンスターを片っ端から殺して回る。力の加減等一切お構い無しに、ただがむしゃらに、郷に被害が及ばない様、ここからモンスターが逃げて悪さをしない様、腕を千切っては投げ、頭を潰し、腹を蹴り抜き、鎧毎砕く。中でもすばしこい獣二匹は同時攻撃を仕掛けて来たので、こちらも両手でそれぞれを掴み、空中で猛回転し、そのまま地面に叩き付けた。ぐしゃっと嫌な音がした後、ぴくぴくと数秒痙攣してから爆発した。
一段落したので辺りを見回す。ぴくりともしないモンスター“だった”肉塊、いくつもの爆発の跡が地面に広がっている。息はあがってないが、先程対峙した腕が六本の魔物は要注意だ。他に比べて強さのレベルが違うだろう事が推測される。次戦う時は、より気を引き締めなければ。
「セイイチ! 大丈夫?」
シオン達が遅れてやって来た。郷の兵士達も駆け付けて来た。そして辺りの惨状を見て驚いている。
「ああ。そっちは大丈夫だったか」
「うん。セイイチが言った通り、大した数じゃなかった」
「なら良かった」
「で、こっちにはどんな奴が?」
俺は見た敵の事を話した。あえて交渉云々の事は言わなかったが、言葉を喋り俺に話し掛けて来た事をかいつまんで伝えた。
「もしかしたら……」
魔物に詳しいと言う魔法使い達がざわめく。
「やっぱり相当強い敵なのか」
俺の問いに一人の魔法使いが答えてくれた。
「魔王の配下、九知将のうちの一匹やも知れない」
「そんな奴が何で俺に」
「あんたみたいな強い奴が突然現れたんだ。様子見に来たんじゃない?」
「だろうな。そんな感じだった」
「まああんたが居れば百人力だ。俺達も力になるぞ」
周囲の兵士達や魔法使い達は皆頷いている。
「それは有り難い。勿論俺も全力で奴を倒す」
「頼もしいな」
他の兵士や魔法使い達は残った肉塊や破片を集めて焼いていた。青の炎で焼き清めている。
「すまん、辺りをとっ散らかしてしまって」
「やっつけてくれただけでも十分だ。気にすんな」
俺を見た兵士の一人がそう言ってくれた。
俺の表情を見て察したのか、シオンが皆に提案した。
「終わったら皆で酒場で気晴らしでもする?」
「良いね」
「誰の奢りにするか、何杯ビールを飲めるかで勝負だ」
「俺は酒には強いぞ」
「あんたは酒に強過ぎだから審判役だ」
何故かその一言で場が和み、笑いが漏れた。何だかんだで少しずつ受け入れている様で嬉しい。