異世界と変身ベルト~仮面ライダーとして転生した俺は静かに暮らしたい 作:星たつゆき
厳かな雰囲気漂う大きなホール。円卓の形にしつらえたテーブルに、物々しい姿をした者達が集う。ここは勇者達が集う「議会」だ。様々な問題や話題が上る中、ひとつの議題が取り上げられた。
「さて、今回の議事で他には--」
「例の、突然現れた奇妙な者についてです」
発言したのは先日セイイチと戦った勇者だった。
「これを御覧頂きたい。私の従者の魔術師が記録したものです」
あの戦闘では魔術師が映像を記録していた。その半立体的映像が議会のテーブル中央に映し出された。
セイイチが変身の構えを行い、サイクロイドストーンが輝く所でどよめきが起きた。
「これは……」
「そう。我々が探し求めている『神々の宝玉』に極めて近い」
「輝き方や鳴動の様子も古来よりの伝承と一致する。しかしどうしてこの若者が。しかも何故腹に装着している?」
「分からない事だらけです」
「私も気になり、この男に命を助けられたと言うオーヴェルの聖女に事情聴取を行いました。彼女の話によるとこの者は別の世界から来たと話していたと」
「と言う事はこの男、『外世界人』と言う事か」
「その話は確かに辻褄が合う部分も有る」
映像はセイイチが時間流を変化させ一瞬で従者達を無力化した所で終わっていた。
「この男は詠唱も無しに時の流れをも操れるのか。何と強大な力を持っているのか」
「先日の接触時は、私含め全員が叩き伏せられました。だが奴は我々を無力化しただけで誰も殺しはしなかった」
「それは興味深い」
「オーヴェルでも郷の守護騎士と生身で決闘を行ったそうだが、やはり同じ様に不殺で終わったと」
「ふむ」
「だがモンスター相手となるとまるで容赦が無い、と言う事も知っている。ヒューマンの姿でも相当の怪力を持ち、あの異形の姿に変化すると更に力が増し素手でゴブリンの頭を叩き潰す程だ。先日の戦闘の模様を魔術師が遠視で捉えている」
「なるほど」
「我々としては非常に興味深い観察対象と言える。今の所我々人類に危害を加えるつもりは無いらしい」
「この男、私には『魔物達の敵であり人類の味方』と話していました」
「ふむ。では処遇はどうする?」
「腹の宝石を差し出す様に言うか?」
「いや、腹の宝玉を寄越せと言っても、半ば埋め込まれて体と同化しているので恐らく奴を殺さないと取り出せないだろう。流石にそれは我々のやり方に反する」
「この男が来たと言う元の世界に帰すべきか」
「しかしその手段はこの男も分からないのでは無いか? 分かっていたらとっくに帰っている筈だ」
「この男自身も困惑している、と聖女は話しておりました」
「そうか……。ならば我々と共に戦えと言うのは」
「全く事情を知らぬ外世界人にいきなり我らと共に『悪の軍勢を倒せ』と言うのも少々虫が良すぎやしないか」
「しかし、奴の力は実に魅力的。出来れば助力を願いたい所だが」
勇者のひとりが、ちらりと、セイイチと一戦交えた勇者を見て言った。
「先日接触した際、我々『勇者』と言う存在に対して悪印象を持たれたか?」
セイイチと交戦した勇者は、かも知れません、と答えた。
「ともあれ暫くは観察対象で良いかと」
「しかし先日の戦闘を遠視していたが存在を気付かれて攻撃された。対応していた魔術師が負傷したぞ」
「乱戦の最中の事だ、仕方無いのでは」
「観察の仕方も気を付けねばならぬと言う事か」
「いっそこちら側から接触してみてはどうか?」
「そこは難しいかも知れぬ」
「奴がベルガーの郷に居るのは分かっている。『モンスター退治の専門家』とやらで郷の者達からも慕われているそうだ。郷の者達を含めて下手に刺激するのも避けたい」
「では、現状維持のまま継続審議、そして奴は引き続きそれとなく観察対象……と言う事で宜しいか」
「異議無し」
「同じく」
「では、次の話題へ。東方から来たと言う奇妙な剣士について……」