異世界と変身ベルト~仮面ライダーとして転生した俺は静かに暮らしたい 作:星たつゆき
その日は農業を手伝っていた。力持ちと言う事で郷の人達から何かと便利に使われてる気はするが、何もしないよりは何かしていた方が良いし郷の人の心象も良くなると言うものだ。それにシオンの手前も有る。
ふと、違和感が起きた。それは間も無く確信に変わる。シオンを含む郷の人に直ちに郷の中に避難する様告げる。そして郷の跳ね上げ橋を上げる事も告げた。
人々が避難して郷の入口が閉じた時を同じくして、目の前に黒い霧が湧き、先日の無気味な姿の--腕が六本有る魔物が、周囲に十匹程の武装したゴブリンやコボルトが現れた。
「久し振りだな、異界から来た者よ」
「今度は何の用だ」
「なに、簡単な事。お前を殺す」
「そうか」
「そしてお前の腹に埋め込まれた『神々の宝玉』を頂く」
俺の腹に同化している変身ベルト、そしてその中に有るサイクロイドストーンはこの世界ではそう呼ばれているらしい。
「俺も悪の軍勢は一匹でも少なくしておきたい所だ」
構えを取る。
魔物は六本の腕をわきわきとさせる。その姿はまるで蜘蛛の様だ。
「変身!」
サイクロイドストーンが輝き、姿が変わる。一瞬だけ、郷の見張り台にシオン達が心配そうに様子を伺っている事が見えた。無様な姿は見せられないし彼女達の安全の為にも絶対に勝たなければ。
「殺れ」
蜘蛛の様な魔物が手下に命じた。一斉に襲い掛かって来るも、瞬く間に全滅させた。興味深そうにその様子を見ていた魔物は言った。
「お前は加速魔法が出来るらしいな」
「正確には違うがお前達にはそう見えるらしい」
「それが出来るのはお前だけだと思うなよ?」
瞬時に姿が目の前に来る。重いパンチを繰り出してくるも寸前で躱す。
「なるほど。ならばどちらが優れているか勝負だ」
俺も時間流を変化させ、魔物にスピードを合わせる。
周囲から見たら超高速で動いて見えるであろうスピードで、戦いを開始した。
魔物は六本の腕にそれぞれ剣やメイス等の武器を持ち正確に襲って来る。流石に素手は危険なのでベルトから武器を出す。刀身が真紅に輝く日本刀の様な剣、ロードオリハルコンブレードだ。
「その妙な剣は何だ」
「俺の武器だ」
この世界ではこの形の剣や刀は無いらしい。
超高速で戦う中、メイスを弾き剣をいなす。隙を見て腕の一本を切り落とす。黒い液体が飛び散り、ぐわあと呻く魔物。腕と一緒に握っていたメイスがぼとりと落ち、共に黒い液体と化して地面に溶けて消えた。
「まだまだだ!」
切り落とした腕がまた生えて来た。今度は槍を持っている。だが俺は構わず敵に向かう。
スピードはほぼ互角だが徐々に俺の方が速度が上がってきた。スピードの差も利用して腕を全て切り落とす。液体が辺りに撒き散らされる。しかしその度に腕を生やして来るので厄介だ。
「おのれ!」
魔物は口から糸を吐き出した。ロードオリハルコンブレードでいなすも糸が絡み付く。魔物はそのままぐるぐると回り俺を糸で絡め取った。そうするなり突っ込んで来ると俺のベルトに手を掛けて強引に剥ぎ取ろうとした。刹那、サイクロイドストーンが輝き、魔物を照らす。ぼうっと魔物の手から腕が猛烈に炎が吹き出し、魔物は手を離し苦悶の叫び声を上げた。糸も全て焼け落ち、自由の身となる。
隙有り。
俺はロードオリハルコンブレードを深々と魔物の胸に突き刺した。ロードオリハルコンブレードからエネルギーが流れ込み、魔物の体が内部から轟々と燃え始めた。そして貫かれた体からはエネルギーが溢れ出しまるで火花の様にぶしゃあと吹き出している。
「何だ、このエネルギーは! く、苦しい!」
無言で力を込める。そしてずばっと横に薙ぎ払った。
「ぐ、ま、まだだ……まだ」
呻く魔物。
俺はロードオリハルコンブレードを仕舞うとすっと構え、地面を蹴った。そうして背中の紋様が光り、推進力となって俺の体を動かす。そのままの勢いでライダーキックを決め、魔物を地面にめり込ませた。
「何故だ……何故だ……お前の力は……」
最後まで呟けなかった魔物は爆発し、塵と消えた。斬って捨てた腕や持っていた武器も同じく黒い塵と化し、そのまま消えてしまった。
郷の方で歓声が上がるのを聞いた。俺はともかく、郷の人々が無事で良かった。