異世界と変身ベルト~仮面ライダーとして転生した俺は静かに暮らしたい 作:星たつゆき
その日、俺とシオンは郷の近くの山に来ていた。ギルドからシオンに山でしか採れない薬草やキノコ類を採取して欲しいと言う依頼だ。俺は護衛としてシオンと一緒に居る。このご時世何が起こるか分かったものじゃない。そして今日は何故かシオンを一人にしてはいけないと言う勘の様なものも働いていた。
野山に分け入り、背丈程も有る下草の中を抜けて行く。シオンは慣れたもので山に入る前魔法で一種の防御呪文を唱えた。これで山に蔓延る害虫から身を守れるのだと言う。俺も一応かけてもらったが効くかどうかは分からない。
そうしてある程度進んだ所でシオンは腰に付けていた鉈を手にし、必要な部分だけ枝葉を払い、進んで行く。
「この辺かな」
近くに沢がある場所に来ると立ち止まり、シオンは鼻を効かせ、有った有ったと野草を見つけ、根元からぷちっと切り、俺が背負っていた籠の中に入れていく。
「今日は沢リンドウの葉と、もう少し上に有るキカラビダケを採るよ」
「よく分からないが、任せた」
シオンはある程度沢リンドウと呼ばれた野草を採るが、まだ結構残っているのにそのままにしている。理由を聞いてみた。
「一度に採り過ぎると次に来た時採れなくなるし。その辺はこの前の魚と一緒だね」
「なるほどな」
「じゃ、次は上に行こう。足元危なくなるから気を付けて」
「任せろ」
そこから小一時間程登った山中で、木の根元に生えているキノコが数種類。幾つか見るとシオンは選り分けて籠に入れていく。そうして別のものは大事そうに持って来た藁に包み、慎重に仕舞った。
「これはレアものだね。高く売れるよ」
「何種類もキノコ採ってる様に見えるが」
「そうだね。主にキカラビダケを採ってるけど、この時期にしか採れないアカナビタケもついでにね」
「アカナビ……? その大事そうに仕舞ったやつか?」
「そうそう」
「何に使うかは分からないが、まあ任せた。荷運びは俺がする」
「助かるな~。独りだと気楽なのもあるけど、何か有った時怖いし。頼りになるよ。旦那様?」
「こう言う時だけ旦那様呼びされてもな」
お互い顔を合わせて笑った。
昼になり、山を少し降り尾根近くの涸沢で休憩を取る。シオンは水筒の水を飲み、持って来たパンをもそもそと食べている。
「セイイチも食べる?」
「俺は良い。帰ってから酒場で何か食べられれば十分」
「本当、セイイチって便利な体してるよね」
「毎度そう言われてもな」
「まあともかく、今日はこんなところかな。山菜もキノコも必要以上に採れたし。あとはギルドに持ち帰れば依頼完了」
「なら良かった」
「じゃ、そろそろ帰ろうか」
ここで俺の危機センサーが頭の中を駆けた。シオンをさっと抱くと手近な岩の影に隠れる。
「なに? どうしたの?」
「静かに」
そっと耳元で囁き、岩の端から様子を窺う。果たして、かなり離れた距離の山道にゴブリンの一団と、滅多打ちにされてずるずると引かれる人の様なものが見えた。
「えっ、何でこんな所にゴブリンが」
シオンも驚いている。
「あの連中……十匹以上居るな」
「このまま巣穴に戻るのかな」
「引きずられている人間が居る。まだ息はある」
「セイイチ、ゴブリンが何故人を攫うか知ってる?」
真顔で俺に言うシオン。
そう言えば、転生前に何かの物語で聞いた事が有る。奴等の繁殖の為に使うと。
それを言うと彼女は驚いた顔を作った。
「どうしてそれを?」
「俺もよく分からないが、朧げに知ってる位だ。ともかく人を助けないと」
「待って。後を付けよう。もしかしたら巣穴が分かるかも」
「よし、行こう」
俺はシオンと籠を担ぐと、慎重に距離を取り、後を追った。