異世界と変身ベルト~仮面ライダーとして転生した俺は静かに暮らしたい 作:星たつゆき
暫く後を付けると、奴等はなだらかな山を一つ超え、麓の小さな洞窟へと入っていった。周囲には見張りが立ち、ちょっとした塀の様なものも有る。さながらゴブリンの要塞だ。
「あそこだね」
シオンは指差した。
「他に仲間は居ないか?」
「奴等は昼も夜も無いから、どうだろう」
一団が入ったところで見張りのゴブリンが粗末な塀を閉めた。
「あの様子だと、多分中に居るので全部じゃないかな」
「よし」
俺はその場で籠とシオンをそっと下ろし、構えた。静かに言う。
「変身」
仮面ライダーに変身すると、目を光らせ、内部の透視を試みる。どうやらまだ巣穴は出来て日が浅い様で内部は奥にただ大きな穴が一つ有るだけだ。数人の人間らしき者が捕らえられている様に見える。それを伝えると、シオンは頷いた。
「じゃあ、どうする? ボクも何か--」
「待て、奥から何かが出て来る」
「え、どんなの?」
「これは……獣の体に首がふたつ、尻尾が蛇」
「キメラ? 何でそんな魔獣が」
「まずいな。シオン、お前はここに隠れているんだ。俺が突入して一気に片付ける」
「でも、どうやって?」
「まあ見てろ。いや、見えないかも知れないが」
「えっ、それってど--」
俺はいつもの時間流変化の能力を使った。シオンが何か言いかけて止まっている。
周囲の時の流れがほぼ止まって見える。俺だけが違う時間の長さで好きに動けると言う、数有る仮面ライダーの中でも非常に便利な能力のひとつだ。
一気に山を駆け下りると塀を蹴破り、中に居るゴブリンの群を片っ端から潰していく。頭を殴り潰し、蹴りでも潰す。ある程度片付いた所で能力が一旦切れた。
途端に、屍と化したゴブリン達が続けざまに爆発した。残されたゴブリンの一団は突然何が起きたか分からないと言った感じで慌てふためいている。だが俺は容赦しない。再び能力を発動させ、一方的とも言える猛攻を加え、数秒後には全てのゴブリンを屠った。時間の流れが元に戻ると同時に、再び爆発が何度も起きた。
さて、次はキメラだ。転生前にゲーム等で見た事があるが、実際に目にするとかなり大きい。動物園に居たヘタなトラよりも図体は大きく、獅子と山羊の首に蛇の尻尾がこちらを睨み付ける。俺は構えを取る。キメラは何かモゴモゴと呟く。突然俺の視界が猛吹雪に覆われた。魔法が使えるらしい。みるみる体温が下げられるがこんな所でくたばる訳にはいかない。そうして、ライダーの先輩達はこう言う大きな獣相手にどう言う戦いをしていたか思い出す。よし。一気にダッシュするとキメラの体を持ち上げ、空中で猛回転する。
「ライダー返し!」
そのままの勢いで地面に叩き付ける。ぐしゃっと嫌な音が聞こえるがまだキメラは健在。しかしのたうち回っている。俺は好機と見、軽く跳躍するとライダーキックを見舞った。
手応え有り。キメラはそれぞれの口から怨嗟に近い悲鳴を上げ、爆発四散した。
奥の巣穴には、先程連れて来られた者も含めて三名の“犠牲者”が居た。うち一人は大分前からいたぶられていた様で見るに堪えない。
「大丈夫か? 助けに来た」
「あ、貴方は一体何者?」
「それは後で話す。他に敵のゴブリンは? 此処には何体居る?」
「え……」
「た、多分、全部かと」
「よし、今すぐ助けるから待ってろ」
鎖に繋がれた足枷や手枷を力任せに外し、一人ずつ背負って巣穴から外に出す。遠くでその様子を見ていたシオンに手を振って合図する。すぐにシオンはやって来た。
「突然姿消すの止めてよ。びっくりするじゃん」
「もう何度も見てるだろ」
そう言いつつ、辺りを見回す。とりあえず敵は居なさそうだ。
「まあ、そうだけどさ」
「早速で悪いが傷の手当てを頼めるか。一人は大分酷い」
「分かった」
シオンはすぐさま治癒魔法を使う。淡い光が負傷者を包み込む。
「多分大丈夫とは思うが、早めに引き揚げた方が良いな。もし次に同じ数が来られると少々厄介だ」
俺は変身を解かずに辺りを窺う。
「そうだね」
「シオンは籠を。俺は残りの三人を何とか担いで帰る」
「分かった」
「あ、あの……」
一人の女性がふらふらと立ち上がった。先程連れて来られた者だ。比較的傷は浅い。
「あたし、歩けるから大丈夫」
「分かった」
俺達はすぐに、その場を離れた。まずは安全確保が先決だ。途中、多分大丈夫だろうと言う所まで来て、俺はようやく変身を解いた。俺の姿を見て女性達は驚いていた。まあいつもの事だ。