異世界と変身ベルト~仮面ライダーとして転生した俺は静かに暮らしたい 作:星たつゆき
俺達が郷に連れ帰った女性三人はすぐ教会の脇に建てられた施療院に運ばれ手当を受けた。施術師の話によると、傷やその他の悪い事は何とかなるそうだ。それは良かったと声を掛けて外に出る。皆対処に手慣れているのが心強いが、この世界の事を思うと少し気が暗くなる。
シオンは一足先にギルドに報告と山菜、キノコの納品を兼ねて向かっていた。俺も遅れてギルドの建物を目指す。
ギルドの建物に入ると受付のカーラがカウンターの奥から出て来て言った。
「やったじゃないか。大手柄だったね。ゴブリンの巣穴を壊滅させて犠牲者を連れ帰るとは」
「俺達に出来る事をしただけだ。で、本来の依頼の方は?」
「こっちはさっき彼女に報酬を渡したよ。珍しいのも採ってきてくれたから額ははずんでるよ」
「そりゃどうも」
「それと、連れて帰った人達は郷の者に任せておくれ」
「ああ。悪いが頼む。色々する事も聞く事も有るだろうし」
「本当、大した奴だよあんたは」
カーラはそう言うと大真面目に頷いた。
ギルドの奥の部屋からシオンが出て来て言った。
「状況説明は済ませたから、後はもう大丈夫だよ。湯屋に行った後、酒場に行こうか」
「そうだな」
湯屋でひとっ風呂浴びてさっぱりした後、酒場でシオンと一緒に酒を飲み、飯を食った。話は既に広まっているようで回りの酔っ払い達からもありがとうよくやった、えらいぞ、と礼を言われたり褒められたりして悪い気はしない。
「今日は良い事をしたから気分が良いなー」
酒のジョッキを手にシオンは上機嫌。俺は今日のお薦めメニューの長フナのパイ包みと鶏の煮物を食べている。鶏の煮物はいかにも「鶏です」と言わんばかりの味で普通に美味い。長フナのパイ包みは初めて食べるが素朴かつ上品な味で悪くない。長フナは骨が取られ塩と香草でほんのり下味が付いていて、かつパイの中の部分にしっかり味のついたソースが有るので全部合わせて食べるとちょうど良い塩梅だ。
「ゴブリンの巣穴の事か?」
俺が聞くとシオンはジョッキの酒をごくっと飲み、言った。
「それも勿論。あと本来の依頼もね」
「ああ。……って早速報酬を使い込んでないだろうな」
「そこまでボクも浪費家じゃないよ」
「なら良かった。そう言えば、今日連れ帰った彼女達、大丈夫かな」
「大丈夫。こう言う事は過去に何度も有ったし。彼女達もじきに良くなると思うよ」
「それなら一安心だ」
シオンが言うなら問題無いだろう。カーラも任せろと言っていたし、俺は助ける事しか出来ないがそれで十分なのだろう。
「ねえ、ひとつ聞きたい事が有るんだけど」
シオンが俺に体を預けて、聞いてきた。
「ん? 何だ?」
「ギルドで今回の依頼受けた時だよ。セイイチ、何か妙に真剣な顔してたから」
「ああ。俺の勘だが、シオンを守らないとと思って」
「つまりそれは一人にさせたくないって事でしょ?」
「まあそれもあるけど、守らないとな、お前を」
「やっぱりセイイチ、凄いよ。ボクの自慢の旦那様だよ」
見て見てー、と酔っ払ったシオンは酒場の皆に向かって声を掛けると俺を指して言った。
「あっと言う間にゴブリンの巣穴を壊滅させたんだよ。瞬きひとつしたらもう終わってたんだから」
「そりゃ凄えな」
「この前も凄かったがあんた凄いよやっぱり」
まあまあ、と皆を宥めて回る。
「ボクの自慢の旦那様だからね、誰にもあげないよ」
「俺達にこいつをどうしろって言うんだ、むしろシオンにくれてやるよ」
「全くだ」
「シオン、酔ってるな」
「嬉しい時は思いっきりね」
その後しこたま飲み食いして、家に帰った。上機嫌なシオンは一緒のベッドでも酔いは収まらず、うつらうつらと俺に体を預けてきた。彼女の華奢な体をそっと抱き寄せて夜を明かした。