異世界と変身ベルト~仮面ライダーとして転生した俺は静かに暮らしたい 作:星たつゆき
深夜、かがり火が焚かれた広場の真ん中。
「さあ、勝負だ」
ネイサンは大剣を振り回し威嚇する。俺達の後ろには数名の兵士達が槍を構えて間合いを詰めてくる。まずはシオンを守らないと。何事かと郷の人々が遠巻きに様子を見ている。
「大丈夫だシオン。お前はひたすら防御に回れ。お前は俺が守る」
「でも、セイイチ」
「やれるだけやってみるさ」
まずはばっとバク転して後ろの兵士達に向かう。奇襲にも憶せず綺麗に槍で頭を、足を突いてきたがひらりと躱す。流石にモンスターと同じく全力を出すと死人が出そうだ。手加減を試みる。兵士達も甲冑を着ていたが割と軽装の為、顔面を中心に攻撃し、槍を次々と奪い取り、あっと言う間に全員沈黙させる。槍をばらばらと地面に落とす。
「貴様、我が部下をよくも!」
「俺のたったひとりの、大事な者に傷を付ける訳にはいかない!」
「ほざけこの化け物が!」
襲い来る大剣は予想以上のスピードでぎりぎりで躱す。その勢いでカウンター気味に甲冑に打撃を加えるがびくともしない。
「本気で来い!」
「お断りだ」
「俺が戦いたいのはライカンスロープの姿になったお前だ!」
「断る!」
攻撃を躱し、勢いで伸びてきた腕を取る。力を込め、関節を決めてそのまま折る。嫌な音がし、ぬぐうと唸り声が聞こえる。まだ踏ん張っている。
俺は地面に捨てていた槍を一本拾い、軽く振って構える。
「その槍では、この鎧は貫けぬぞ!」
「だろうな」
狙いは視界を確保する為の目のスリット。全力で投げつけるもさすがに避けられる。槍は闇に消えていった。
「小癪な!」
何処が弱点なんだ? 確か、中世ヨーロッパの甲冑であればさっきみたいに関節部分が弱い筈。そこを狙うもよし。もしくは--
腕の関節を折られながらも尚も力任せに振るって来る大剣を避け、地面に刺さったところをがっと蹴り上げ、奪う。そのまま大剣を掴んで飛び上がり、渾身の力で頭部に一撃を与える。手応え有り。ヘルメットがへこみ、よろよろと数歩歩いてそのまま後ろにばったりと倒れた。後ろで戦いを見ていたシオンに声を掛ける。
「シオン、手当出来るか」
「して良いの?」
「しないと色々マズイだろう」
甲冑のヘルメットを無理矢理外す。幸い頭蓋骨にまでダメージは行ってない様で、甲冑がへこんだ衝撃で脳震盪を起こしたらしかった。シオンが何か祈り幾つかの言葉を発し、両手をかざすと淡い青緑の光がネイサンの頭部を覆った。今まで気付かなかったがよく見ると俺と同じくヒューマンか。血気にはやった豪胆な若者に見えた。
辺りがざわざわしていた。一部始終を見ていた郷の人々は尚も様子を見ている。
「不覚……」
気付いたネイサンはろれつが回らない感じで頭を振ると、シオンの腕を払い除けた。
「お前の力は認める」
ネイサンは悔しそうに呻いた。
「まさか生身のお前に腕を折られ、頭蓋を揺らされるとは。聖女様の仰る通り、お前は『本物』なのかも知れないな」
「たまたまだ」
「しかしお前、話には聞いていたが少し印象が違う。モンスターより対人戦の方が優れているのではないか?」
「気のせいだ」
確かに仮面ライダーは所謂「怪人」と戦うがそいつらは基本的に人型の姿形をしているのでそれも然りかと思った。こいつ、なかなかの観察眼だ。
ネイサンは気丈にも立ち上がると、部下の様子を見て回り、起こして共に引き上げていった。
「此度は我らの郷の者がとんでもない無礼を。どうかご容赦を」
昨日会った郷の偉そうな兵が胸に手を当てる。こちらも同じ仕草を返して、気にしない旨を伝えた。一件落着と見えたのか郷の人々も戻っていった。
「さあ、宿所に帰ろう」
シオンに声を掛けたが、何故か目を逸らされてしまった。どうして……。