悲劇は予告なくやってきた。
理不尽。
どのように定義するかは個人によって当然差異は生じるが道理に合わない事柄が発生してしまうことだ。
内原明美は10年前の理不尽を思い出し一人自室の壁を思いっきり叩いた。
――――――
「母さん………母さん!」
「明美…早く逃げなさい」
少女、明美の目には絶望的な光景が写しだされていた。
母の身体には無数の穴が開き赤く染まり母が明美を握る手はどんどん冷たくなっていく。
内原家は母子家庭でその日は遊園地のお遊戯会があり明美は久方ぶりに母と一緒に家へ帰った。
仕事で日中はほとんど会えない母と話せて食事も一緒に出来て5歳ながら明美は幸せな時間を過ごしたつもりでいた。
………だが突如武装して来た複数の男達の銃撃により母は痛手を負うも急ぎ明美を守ろうと、母と家の奥へと逃げていた。
いったい私達が何をしたのだろう……?。どうして私達がこんな理不尽に襲われなきゃならないのだろうと少女は悔しさから泣いた。
「うぅ…」
「お母さん!」
とうとう母は動かなくなり床へ座り込んでしまった。
母の身体が凄く冷たい。
幼いながらに明美は理解した。
母は死ぬんだと……。
「あ、けみ……」
「なに……お母さん……」
「そんな顔しちゃだめよ」
母はにっこり笑いながら明美の頭を撫でた。
「あ、なたは……今…強くなったの……。この悔しさは絶対…あ、なたを強く……する」
息も絶え絶えなのに母は笑みを崩さず明美の目を見て必死に勇気づけていた。
間もなくし……母は息を引き取った……。
母が死にショックでボーとしてる明美の周りを先程の武装した男達が動き回る。
「午後6時04分死亡確認致しました。隊長。娘はどうします?」
「構わんでおけ。こいつがこれから前を向いて生きるか後ろを向いて生きるかはこいつの精神次第、俺達の仕事は終わったのだ。帰るぞ」
「「「「は」」」」
武装した男達は引き上げ明美は一人その場に残された。
異変に気づいた近所の住人が明美を見つけ警察が駆け付けるまで……明美は冷たい母の死体に寄り添い赤子のように穏やかな顔で眠っていたと言う。
警察は物証と明美の証言から複数の男に殺されたと断定。
捜査を進めるが今の今まで犯人達は一人も見つかっていない……。
明美はその後、祖父と祖母に引き取られた。
―――――
「どうした?。明美また大きな音を立てて」
部屋の外から祖父の声がする。
「ごめんなさいお祖父ちゃん『あの事』を思い出しただけ」
「そうか。模擬戦でもやるか気晴らしに?」
「うん。本気でいくからね」
「あぁ。構わんとも。お前のどんな思いも受け止めよう」
明美は部屋を出た。