バレンタインにもらったチョコが爆弾だったんだが。   作:佐藤特佐

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バレンタインに、俺は決意したんだ。


バレンタインには愛と爆弾を添えて

 

 俺はただのバイト社員だった。表向きには。

 

 2月14日、俺は最重要任務のためにバイトの前に、別の仕事場にいた。仕事場といっても、薄汚いビルの路地裏なんだがな。

 

 俺はそこで仲間と今日の最終確認をしていたんだ。黒いスーツに身を包み、サングラスをかけた仲間が言う。

「お前は予定通りここの交差点で運び屋と接触しろ。」

「あぁ。そっちも頑張れよ。」

「おう。」

 

 この日、某大企業の社長が、市内の一流ホテルにやってくる。彼の接客をするのが我々の仕事だ。

 そう、接客なんだ、これは。俺の役目は、街中で仲間に紙袋を渡すこと。そしてそれを仲間が社長に渡す。バレンタインにピッタリなチョコレート。そう思って社長は油断するだろう。中身は爆弾なんだけど。

 俺は〈運び屋A〉。爆弾を〈運び屋B〉に渡すのが任務だ。その後〈運び屋B〉が〈花火師〉に爆弾を渡し、〈花火師〉が爆破を実行する。

 

 ちなみに俺は優しいから、爆弾と一緒にチョコレート菓子「ポッキッキー」を同封してあげた。

 

 

 俺は〈運び屋B〉との合流場所に向かった。手に持っているのは偽物チョコ…つまり爆弾が入った紙袋。〈運び屋B〉は本物チョコを持っている。

 〈運び屋B〉のはカモフラージュ用だ。防犯カメラの死角の位置で、これらを交換することでアリバイ工作ができる。さらに言えば、俺は〈運び屋B〉からチョコを受け取れるってわけだ。やったぜ。

 

 唯一の不安要素は、爆弾とチョコをを交換する〈運び屋B〉が対面で会ったことのない人ってことだ。ネット上で募集した…いわゆる闇バイトの人だから。

 でもまぁ、そいつも馬鹿じゃねぇだろう。それなりにやってくれるはずだ。

 

 

 商店街のはじの方。ここで〈運び屋B〉と合流する予定になっていた。俺は、その時を待っていた。まさか俺が爆弾を持っているなんて誰も思っていないだろう。周囲の人々は、皆楽しそうに会話しながら歩いていく。本当は、俺もあっち側にいたかった。

 

 

 黒ずくめの人物が歩いてきた。その手には、チョコレート店の袋が。あれだ間違いねぇ、〈運び屋B〉さんだ。おぉ、しかも女性だぞ!スタイルもいいし、彼女からチョコもらえるなんて最高じゃねぇかっ!!報酬2倍より嬉しいぜ。

 

 〈運び屋B〉は俺の方に歩いてきた。俺は待ちきれなくなって…彼女へ向かって突進したんだ。まもなくぶつかるという時、〈運び屋B〉が転んだ。なるほど、これで目立たないように交換できるって寸法か。やるやんけ。

 

 俺はつまずいたふりをして、〈運び屋B〉の横に倒れた。近くで見ると、彼女はけっこう若くて、そして遠巻きに見るより綺麗だった。ショートの黒髪、まっすぐな目。めっちゃ美人じゃん。

 

うおっ、やったーーーー……じゃなくてやっば!!

 

 これじゃ爆弾渡す前に痴漢として通報されちゃうよ。俺は急いで立ち上がり、〈運び屋B〉に謝る。

「すっ、すみません!」

 彼女も立ち上がりながら応じた。

「い、いえいえ私が悪いんです…。私大丈夫ですよ。」

 

 こ、これは!俺は驚きを隠せなかった。発音とは違う口の動きで、〈運び屋B〉は、俺にこう伝えてきたのだ。(犯罪者は情報伝達に、発音と違う口の動きをしてメッセージを伝えられるのだ!)

「任務ご苦労様。これはあなたへの想いだ。」

 マスク越しだったけど、彼女は確かにそう言った。俺はマスク越しでも口の動きがわかるんだぜ。

 

 初対面の女性に告白された…!?俺は嬉しさと驚きでいっぱいになり、すぐに逃げてしまった。一応礼は伝えた…と思う。記憶が曖昧で良くわかんないけど。

 

 

 

 

 

 数分後。俺はコンビニで買い物をして、駐車場で袋をガサゴソしていた。缶を取り出し、蓋を開ける。ジュッ!と音がして、飲み口が開く。

 俺は一気に飲んだ。爽快感が身体中に広がる感覚がする。俺の仕事は無事達成。加えて可愛い女の子にチョコもらえた(任務の内だが)。あぁーーー、やっぱ仕事終わりのコカコーラはさいこうだなぁーー。

 誰だ、俺がビール飲んでるって勘違いしたのは。俺は酒飲まない主義なんよ、健康第一だから。

 

 

 

 

 そこに、誰かが走り寄ってきた。全身黒いジャージを着たおじさんだ。

「〈運び屋B〉、参上!遅くなってすいませぇーん。」

 おじさんはそう言って、昭和のヒーローの決めポーズみたいな格好をした。誰だお前?

「だから、〈運び屋B〉ですよ。早く爆弾とチョコ交換しましょう。」

「はははは、運び屋ってなんのことか………えっぇぇぇぇえぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

 俺は叫んだ。周囲の視線なんて一切気にせず叫んだ。一体どういうことだ、〈運び屋B〉が2人…?

 

あ。

 

 俺は察した。人違いしたんだ。

 

 

「どうしましたか?ホラ、〈運び屋B〉からのチョコ、受け取って泣き止んでぇ〜。」

 おじさんの〈運び屋B〉が俺を宥めようとするけど、全く効果がなかった。俺は悔しかった。

 悔しかったのは任務に失敗したからでも、おじさんからのチョコがチョコじゃなくてカカオ豆だったからでもない。

「〈運び屋B〉の女の子のチョコ、本命じゃなかったのかぁァァァァァァァァ」

 

 ガックリと項垂れながら、俺は決意した。自首しよう。そして真っ当に生きよう、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

エピローグ

 

 

◇◇◇夜のニュース番組◇◇◇

 

 2月15日、夜のニュースです。

 14日夕方、〇〇県××市の公園で爆発がありました。関係者によると、チョコレートの袋に入れられた爆弾が爆発し、高校生の男女2名が軽傷を負いましたが、いずれも命に別状はないということです。

 なお、市内在住の25歳の男性が「爆発事件の犯人だ。悲しいから自首したい」などと出頭していており、現在事情聴取が行われていると思われます。

 

 

◇◇◇ネット上に書き込まれたコメント◇◇◇

 

⚫︎軽症で済んでよかった。バレンタインは嫉妬で犯罪を犯す人が増えそうだから、即刻廃止すべきですね。

 

⚫︎2人の愛が爆発したんだろうね。お幸せに。

 

⚫︎「悲しいから自首したい」ってどんな理由よw 犯人は彼女にでも振られたんか

 





チョコをもらった時は、中身をしっかり確認するようにしましょう。
【完】


作者から。
実はこれ、3日で書き上げました。なのであんまり上手いとは言えない部分もあるでしょうけど、でもこうやって「完全オリジナルの小説」を作り上げられて楽しかったです。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。

…さて、ゴジラ書きつつ別のオリジナル小説のネタ考えるか…
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