原種コクマーを撃破した。
巨大虫野郎の質量は圧倒的だったが、それだけといえばそれだけではあった。まぁシンプルな力攻め相手だったから、相応に疲れたけどさ。リフレクターにとって相手の攻撃を利用するのは十八番なとこはあるけど、ある程度までいくと誤魔化しが利かないのがつらいわね……。
強くなりたい……(弛まぬ向上心)
原種を倒した私は、また集落の皆から盛大に祝われた。
一時避難していた彼らもそのついでとばかりに一帯の魔物の群れを掃討したらしく、おかげでしばらくは平和な時間が続くであろうとのことだ。原種と戦えないだけで普通にみんな戦闘民族なんだよな……最近ではみんな中型までならコンビネーションでどうにかしてしまうあたり、人の持つ可能性が垣間見えるというか……オラわくわくすっぞ。
肉と果物、魚と貝のごちそうに舌鼓を打ち、アイーダさんから新しく戦勝記念のギラギラした首飾りを貰い、ミッテナさんから祝福の謎の水を頭からバジャーってかけてもらったり(嬉しくない)した。
原始的ながらもほのぼのとしたお祭りである。今日もいい天気! やっぱり平和が一番! 愛だよ愛!
しかし、原種を撃破したとなると一大事である。
祭りの後の疲れに身を任せ惰眠を貪っていても良かったのだが、直接上司へ報告しておかなければならないだろう。
私は神殿まで足を運び、ダアトさんの前に立っていた。
「ダアトさん。ご存知でしょうが、一応直接のご報告を。コクマーを倒しました」
『見ていたぞ、想いを束ねし者。相手の特性を見破り、よくぞ倒してみせた』
「はい。相手の攻撃の影響にヒヤリとする場面はありましたが、勝ち負けの心配は特になく、順当に勝てたかなと思っています」
『力の扱いも上達した。今後はより強い原種とも渡り合えるだろう』
「……他の、未だ生き残っている原種たちですね」
イェソドは楽勝だった。まだ心構えも不慣れな中でもそうだったのだから、本当にあまり強くない相手だったのだろう。
今回戦ったコクマーはそれと比べるとやや強といったところ。厄介な攻撃もしてきたので、それだけ印象深かったかな。
原種達にも強い弱いはある。
だからこそ、今後現れる原種は更に強敵なのだと覚悟しなくてはならないだろう。
「ダアトさん、今生き残っている原種は何体でしょう。あ、ダアトさんは抜きで」
『マルクト、ネツァク、ゲブラー、ビナーの四体だ』
「四体……へ、減りましたね」
『ケテルがマルクトによって仕留められ、ティファレトがネツァクによって打ち砕かれた。ゲブラーとビナーは今交戦中だが……決着の前に、マルクトに介入され両者とも消し飛ばされるだろう。そう考えると、残るは三体といったところか』
減りすぎィ! 決勝トーナメントもう始まってる!
『
「ネツァク……戦闘狂という認識でよろしいですかね」
『間違いではない。もちろん、奴も退き際は弁えてはいるだろうが。……傷付いた身体を休めているな。愚かな奴だ。この局面で、残す相手を計算できていない』
ダアトさんからすると、ネツァクとやらはあまりクレバーではないのだろうか。語り口からは少々の侮蔑が含まれているように感じた。
『
「……えっ? マルクト? が勝者……? えっ!? 前回覇者ってダアトさんじゃなかったんですか?」
『そうだ』
すげえ意外だった。ダアトさんって賢いから連戦戦勝を続けているものかと思っていたんだが……前回負けてたんかい。草生える。
けど負けたって言われて、それもあり得るかとも思えちゃうのが不思議なところだ。ダアトさん時々思い付きで行動指針を設定するとこあるからな……。
この原種バトル、何回くらいやってんのかは知らないけども、ダアトさんは負けてもいいデータが取れたとか言って満足してそうな気がするわ。
『マルクトはこの百万年で世界の根幹に触れかけた。原種による戦いをより完全な形で掌握するため、理の根幹へと接近し……その試みは、時間切れという名の失敗に終わった』
「……?」
難しい話が出てきたな。試み、時間切れ、世界の根幹。
神のスケールはんにゃぴ……よくわかんないです。
『だが、その試みの一端によりこうしてお前を創り出せたということは……ある種、マルクトの目論見は当たっていたということなのだろう』
「……すみません、ダアトさん。私にはよくわかりません」
『気にする必要はない。お前はただ、勝てばいいだけだ』
「あっはい」
言い方はドライだけど、敵はあと1……か2くらい。そう、それを倒せばいいだけのことだ。それに間違いはない。
原種ネツァク。そして原種マルクト。それらを倒した時……人類を脅かす存在は消え、平和な世界が訪れる。……ことになってはいるのだが。
……ダアトさん、絶対ラスボスだよなぁ……。
ネツァクとマルクトを倒しても間違いなくそれで終わりにはならんでしょ。ダアトさんが立ち塞がってなんか色々やばいことするタイプだよこれ。私はこの手の物語に詳しいんだ……。
『最後の戦いに備え、人間達と交流するが良い。現時点でも大きく苦戦することもないだろうが、想いを束ねる者よ。お前の全力を見ておきたい』
「はい……」
強くなった私の身体を乗っ取ることでダアトさんが支配者に君臨するエンドの可能性……濃いすか?
有り得なくはないか……覚悟はしておこう。
「ぬわーん、疲れたもう……」
神殿を後にし、集落の広場に戻る。
原種たちの戦いもついに終わりが見えてきた。エンディングの形までは私にはわからないが、グッドエンドであれバッドエンドであれ、途中経過のベストは同じなはずだ。つまり、ネツァクとマルクトは例外なくぶっ倒す。それだけは迷わずにやっておこう。
その後はどうしたって気がかりだが、今考えても仕方がない。
ダアトさんの言う通り、集落のみんなと一緒に過ごすのが一番だろう。
仮に別れの時が来るとするなら、悔いを残したくはないもんな。
「セイラ、まだ起きてたのか」
「あ、ジナさん」
広場で星を見上げていると、声をかけられた。
背の高い女性だ。
日に焼けた肌、ボサボサの黒髪、そしてしなやかな筋肉の着いた、美しいアスリートのような身体。
集落の武力をまとめ上げる戦士長、ジナさんである。
最も戦闘に優れ、エーテル武器の扱いに長けた女性が彼女だった。
私が来るまでの間は常に先陣で魔物と戦い続け、集落のみんなを守ってきたのだという。その証拠に、ジナさんの身体には無数の傷痕が残っている。
「ほんと、セイラは寝てないんだねぇ。大丈夫なのか? って、そりゃいらない心配か」
「はい。まあ、さすがに今日は疲れましたけどね。ちょっとだけ」
「あははっ、ちょっとだけかよ。遠目に見ただけでも、あれはとんでもない相手だったろうに。けどあんたらしいや。……眠くないってんなら、ちょっと付き合ってよ。海まで散歩しよう」
「ええ、喜んで」
みんなが寝静まる時間。私はジナさんと一緒に、夜の海岸をデートすることにした。
:セイラ
メタ読みで最終的にダアトがラスボスだと並んでる系リフレクター。
あからさまにダアトのデザインが悪に寄りすぎているのである。
:ダアト
今後の方針をしっかりと話してくれる有能上司であり原種の一体。
前回の原種バトルでは舐めプして負けた模様。
:ジナ
日焼けマッシブ恵体戦士系原始人の女の子。
戦闘が得意かつ好き。エーテルの武器を使わせたらセイラ以外では集落で一番強い。