オリジン・リフレクション   作:ジェームズ・リッチマン

14 / 55
うまれかわったりかわらなかったりしろ


エンディング後の勇者

 

 ネツァクは消滅した。戦ってて楽しい相手だった(小並感)

 

 残る原種は前回覇者のマルクト。……そして、ダアトさん。この二つだけだ。

 

 ダアトさんは人間を生み出し、人間を用いてこの戦いに臨んでいるが……正直、いまいち信用はしきれていない。

 つーかあのビジュアルのどこに信用できる要素があるんだって話だ。どう見てもラスボスでございって見た目しとるがな。……まあ、見た目を抜きにしても、これまで聞けていなかったことも多くある。

 後回しにしてきた疑問をぶちまけるには、今がいいタイミングじゃねえかと思ってるんだ。

 

 マルクトは多分、すげー強い原種なのだと思う。それこそ、私がいないと倒せないくらいの。

 だからこそ、場合によっては交渉のやりようもあると思うんだ。

 

 ダアトさんの真の目的。それを探ってやる。

 

 

 

「ダアトさん、お話があります」

 

 私は神殿にやってきて、ダアトさんの降臨を待った。

 見上げれば満天の星が煌めき、人工灯のない空の美しさに感動する。

 しかし、そんな空もすぐさま暗雲が立ち込めてくる。呼び出されたダアトさんが姿を現したのだ。

 ……いやまあ、だからほんと……この登場の仕方もさ。やっぱ悪サイドなんだって。

 

『よくぞネツァクを倒した。想いを束ねし者よ』

「……はい」

『残る原種はマルクトのみ。奴は前の戦闘で勝利を収めたが、動きは鈍く本調子でないようだ。あるいは上手くすれば、ネツァク以上に容易く──』

「ダアトさん。このタイミングなので、あなたと真剣な話をしたかったのです」

 

 ダアトさんは私に顔を向けた。

 輝く双眸が不吉で恐ろしいが、気圧されてはいけない。

 

「ダアトさん……私は、あなたの目的がまだわかっていません。私たち人類をどうしたいのか、勝った後にどうするのかも」

『この戦いに勝つこと。それ以上を気にする必要はない』

「いえ、あります。我々の人生は、戦いの後も続いていかなければなりませんから。……私は、人類の繁栄を願っています。しかし、実際にダアトさんが勝ち残った後で人間をどうするのか、いまいちわかっていないのです」

『ふむ』

 

 ダアトさんは腕を組んだまま、翼についた無数の目玉を四方にギョロギョロと動かした。

 

『我がこの戦いに勝ち残った後、当然ながらこの世界を変革させることとなるだろう。それこそが勝者への恩恵であり、特権だ』

「変革とは、どのような?」

『人間がより繁栄する世界を構築する』

「えっ」

 

 なんか意外なマニフェストが出てきたな。

 

『意外でもあるまい。今回の戦いで、人間たちの想いが生み出すエーテルの強力さは実証された。これまで様々な戦いを繰り広げてきたが、人間の力は凄まじい。であるならば、その力をより増強させるため、人の数を増やし、次の戦いに備えて適した環境を整えるのは当然だろう』

「……え、ええ、はい、そうですね」

『つまり、百万年に及ぶ人類の繁栄を我が主導する。……想いを束ねる者よ、これはお前たちにとって不足か?』

「い、いえ全然。まったく……いや、まあそうですよね。ダアトさんならそれが都合が良い……いやいや! ですけどダアトさん、勝ったあとであなた自身はどうされるのですか? 地球を人間の暮らしやすい環境に変えて、あなた自身はそこで過ごすことに満足なのですか?」

『我が力の大半はコモンである。地球といった次元に縛られるものではない。地球の環境がどう変わろうとも、不満はない。人間の生存に適しているかどうかが重要だ』

 

 ……ひょっとしてダアトさんって……滅茶苦茶良い神様なんじゃないスか?

 

 いや、いやいやいや。丸め込まれるな! まだなんかあるだろ、なんか……!

 

「……全てが終わった後で、人類を滅ぼしたりなんかしないですよね?」

『? 質問の意図が不明だ』

 

 ですよね! 完全に失礼なだけだったわ今の! 

 

「いやあの、えーっと……ほら、私って強いじゃないですか。だからこの戦いが終わった後で、私がダアトさんにとって危険な存在だからー、みたいな……念の為に殺しておくか、みたいな。あ、というかダアトさんって私なんかよりはるかに強いんですかね?」

『ふむ。面白い』

 

 どこが??? なにが???? 

 

『我が力は弱くはない。だが、その力の多くは人間のコモンの維持に捧げている。全力を振るう機会は無いだろう……が、そもそも我が全力であったところで、想いを束ねる者よ。戦えば勝つのはお前の方だ』

「えっ!?」

 

 なんか戦力普通にゲロったぞこの人!? 

 

『全ての原種を消し去る力、それこそがリフレクターの力だ。当然、我をも上回る力でなくてはならない』

「……えっ、でもそうしたら……私がダアトさんに、刃向かえちゃうんじゃ……」

『もちろん可能だが、そうすることに益があるのか。お前は人間であり、人間を守るために戦っている。我もまた、これから人間のための世界を構築していく。それを崩す理由とは?』

「……いや……思いつかないですね」

『だが、面白い。仮に我を含む全ての原種が消滅した時、世界に何が起こるのか。一度見てみたくはある。そのために今回の勝利を捨てるのも悪くはない』

 

 面白いか??? 悪くはないか??? 

 

 ……いやけど、そっか。ダアトさんがすっげぇ悪そうな姿をしてるから疑心暗鬼になってたけど、うん。よかった。この人はマジで邪神みたいな姿をしてるだけで、わりとちゃんとした神様だったんだ。見た目は完全に邪神だけど。

 

「あはは……なんだか色々と的外れで失礼な質問ばかりをしちゃってすみません。けど、ダアトさんから戦いの後の話を聞けて、良かったです。安心しました」

『疑問は解消されたか』

「はい。いやー、ほんとすみませんね。てっきりダアトさんはこの戦いの後で人類を用済みだとか言って滅ぼすんじゃないかって思ったりしてて……」

『そのような真似はしない』

「あははは。ですよね、よく考えたらダアトさんに人間を消すメリットはないですもんね」

『うむ。消えるのはあくまで、お前一人だけだろう』

「ははは…………は?」

 

 私がダアトさんを見上げると、ダアトさんはわずかに首を傾げていた。

 いや、いやいやいや。え、なにそれ。どういうリアクション? こっちがやりたいポーズなんだが……。

 

『これまでの原種との戦いの後、世界の歪みを修繕するために時が巻き戻る。壊れた自然や物は修復され、ある程度の命も補填される』

「え……は、はい……そうですね」

『お前たちエーテルを操る人間は、リープレンジ……そういった巻き戻りや時の停止に一定の抵抗力を持っている。だが、原種のうち一体が勝ち残り、世界の管理者が選定された時、この世界全てを覆い尽くすほどの巨大な巻き戻しが発生するのだ。それこそ、原種同士の戦いが始まる以前まで遡るほどのな』

「……時の……巻き戻し……」

 

 つまり、原種バトルの影響は一切世界から消えるわけだ。

 その時間まで戻って、新たな世界の管理者による治世が始まる……。

 まあ、それは良いだろ。たくさん死んだであろう人も蘇るってことだし? そこからはダアトさんが色々と人間のためにやるだろうし、私は……あっ! 

 

「まっ……時が巻き戻ったら、私いねぇじゃん!?」

 

 気付いた。時間が巻き戻されたら私いなくなっちゃうよ! 

 だって私は、原種同士の戦いが始まってしばらくした後……人類が魔物の侵攻に劣勢になっていたタイミングで、そこでダアトさんが追加で生み出した存在なのだから。

 原種バトル開催中に途中参加した私は……き、消えるゥ〜! 生まれねぇ〜! 

 ふざけんなやめろバカ!! 

 

「どっ、どどど、え!? いやいや困りますダアトさんそれは!」

『お前の存在が消えることは既定路線だ。我でない他の原種が勝者となろうとも、仮に全ての原種が敗北しようとも、それは変わらない』

「ヤダーッ! 消えたくなーい! え!? なんでそれ早く言ってくれなかったのぉ!?」

『聞かれなかっただろう』

「なんでよりによって今こんなタイミングでキュゥべえみたいなこと言うの!?」

『お前が我を勝利に導くことで、人類の繁栄は約束される。不都合があるのか』

「不都合……っ……いや、それは万々歳ですけど……! ただ、いや、もう、ほんとこれ個人的な話なんですけど……! 私自身もやっぱ、消えたくねぇわ……!」

 

 こ、この退屈な原始世界で余生を過ごすのかー、暇そうでやだなーとか思ってたのに……それどころじゃないじゃん! 私消えるじゃん! 

 

「なんとかなりませんかダアトさん……このメンタルはさすがに、あの……マルクト戦に引きずっちゃう……!」

『それは不都合だ』

「はいめっちゃ不都合です……」

 

 ダアトさんは組んでいた腕を解き、顎に手を当てて悩むような仕草を見せた。

 そのポーズがシュールだなとか思っていられない。私の消滅がマジで秒読みで困る。

 

『……巻き戻しは世界のシステム。我が管理者になったからといって、この大きな枠組みに手を加えることは難しい。そもそも、生まれていないものを取り戻す手段はない』

「俺……消えっから!」

『だが、枠組みに手を加えず、お前自身が時空間変動への耐性を身につければ、あるいは』

「えっ!? 今からでも入れる保険があるんですか!?」

 

 でも理にかなってるようで言ってることは『時間操作耐性身につけりゃええやん』みたいな無茶苦茶なんだけどマジで大丈夫? 

 

『そもそも、想いを束ねし者よ。お前を創り出すきっかけとなったものは、その通信機だ』

「通信機……え、スマホ? これ?」

 

 私が愛用している赤いスマホもどき。これ? 今このタイミングでこいつがキーアイテムになるわけ? 

 

『それは元々、この世界に散らばる原初の力の一つであった。世界の理、あらゆる根源にあり、過去と未来に根差すもの。マルクトが求め続け、そのうちに散逸した一欠片……その力は我にも解析できず、未知に包まれている。我はそれを操ることはできなかったが、それを触媒として時空を超えた場所から知恵あるお前の魂を呼び出し、優秀な存在を創ることには成功した』

「スマホが私を作ったのかよ……」

『それはお前の意志によって、お前にとって都合の良い形を取っているだけに過ぎない。通信機という機能も、所詮は後付け。お前の願望に応え、赤い欠片が擬態しているに過ぎん』

 

 マジかよ……ダアトさんが作ってくれたやべーアイテムだと思ってたけど、普通にダアトさんの手から離れたやべーアイテムじゃん……。

 得体の知れないスマホとは思ってたけど、まじなんなんだこれ。

 

『不確定要素は多い。何より、我に制御できるものではない。だが、その触媒と繋がっているお前自身であれば。その欠片の力を引き出し、時の巻き戻しに耐えることも可能なのではないか』

「な、なるほど……こいつが新たな可能性に目覚めれば……!」

『もちろん、これは我の推測でしかないがな』

「いえ……いえ! 希望が持てました! ダアトさん、マジでありがとうございます! すっげえ助かりました!」

 

 私は過去一番誠意を込めてダアトさんに頭を下げた。

 っぱダアトさんなんだよな~上司にしたい原種ランキング一億年連続一位ですわ。

 

「このスマホに機能を追加すれば、きっと……多分……いける。私が消滅しなくても済むような未来が……!」

 

 世界を救っても消えちゃうのは困る。できれば私も、平和な世界でダラダラのんびりと暮らしたい。

 よおし、やるぞ……! なんかこう……スマホへの神頼み! 

 

 




:セイラ
ゲームクリアすると消滅する(仕様)系リフレクター。
ダアトさんの追いリフレクターするタイミングがナオキすぎて普通にクリアするとデータが消える。うーんこの。
ダアトさんへの不信感は拭い去れたが、それはそれとしてちょっとダアトさん大事なこと話してくれねえな? とは思い始めた。

:ダアト
人類を守護してくれる超優しい神様。DAT is GOD.
本番環境で仕様変更や追加をしてくれる優しい人。
…ん? あれ? これ優しいのか?

:赤いスマホ
主人公のふわっとした願望だけでスマホの形になってるだけのヤベー存在。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。