オリジン・リフレクション   作:ジェームズ・リッチマン

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みんなもブルーリフレクション、やろう!


第2章 さまよう美少女リフレクター
KGMHRSIR


 

 ここ数日、ネットサーフィンと散歩を続けてわかったことがある。

 

 まず、この世界は私のいた世界とほぼほぼ同じではあるが、部分的に異なった並行世界であるということだ。

 知ってる漫画や映画、ラノベ、有名タイトルなども多いのだが、その反面全く聞いたことのない有名作品なんてのも多かった。

 一般的な大企業としても、そんなのあったっけみたいな会社が結構ある。知らん財閥とか知らん重工業とかが結構あってビビったわ。

 

 ひょっとすると地名でも同じような差異があるんじゃないかと調べてみたが、そこはあまりよくわからなかった。けど都道府県単位では変わっていないのは確かだ。市町村単位になると正直よくわからんけども。

 

 だからまぁ、基本的にはほぼ同じだ。完全初見の有名作品が多いのでその点は逆に嬉しかったかもしれない。初めて見るアカデミー級の映画とかアニメ作品が色々あっていいゾーこれ。本屋での立ち読みがめっちゃ捗るわ……。

 

 あと、この世界のオカルト要素だが。

 エーテルは未だに存在していた。だから、エーテルのない世界になったというわけではない。まぁ未来に来ただけで地続きの世界ではあるのだから当然ではあるんだけども。

 変身するにはちょっと力む必要があるものの、しっかりとリフレクターの姿にもなれる。

 とはいえ魔物の姿はなく、戦う理由がないのでリフレクター形態は完全に宝の持ち腐れだった。エーテルのおかげで怪力が使えるし腹も減りにくいからその点は助かってるけどね。

 

 だが、問題もある。主に散歩で。

 

「こら君、こんな時間に出歩いてちゃ駄目でしょう」

「チッ」

 

 私の素の姿のままでいると、夜間は補導されてしまうのだ。

 私は背も高いしやや大人びているタイプの容姿ではあるものの、20歳以上に見えるかというとそこまでではないからだ。

 

「うおっ……」

 

 そしてこの私の容姿。これがまた単純に目立つ。人目を引く。

 暗い夜道で遠目から近づいてきた警官が、いざ間近に来てみて思わず声を上げる程度には、私は美しかった。

 

 これは自惚れではない。私が美少女なのは紛れもない客観的な事実だからだ。おかげで昼夜を問わずナンパされる。これが面倒くせーんだマジで。

 チヤホヤされるのは嫌いじゃないけど好きでもない。私はただ黙々と落ち着いた場所でネットサーフィンできればそれで良いんだが……まぁ、人の多い場所ではどこに行ってもそう上手くはいかないものだ。この賑やかな時代が好きではあるんだけども。

 

「き、君は最近ここらで出没するという謎の美人ギャル……」

「なんですかその都市伝説は……」

「日本語!? 日本人なのか……」

 

 実際は日本人どころか人種的にホモサピエンスかどうかも怪しいのだが、魂としては日本人だと思う。多分……いや、微妙に他の人種の要素も入ってるかもしれないけど。

 ただ、ガワとしては日本人離れした顔をしているのは間違いない。国籍不明の美人。それが私である。

 

 かろうじてギャルっぽいファッションと流暢な日本語のおかげで外人扱いはされていないが、下手したらパスポート見せろなんて言われたりするのかもしれないな。

 まあ、こうして補導されるだけでも勘弁ではある。

 

「星ノ宮女子校の子かい? 身分証があるならそれを……」

「おっとすみません。空手の稽古があるのでこれで失礼します」

「あっ!? こら、ちょっと!?」

 

 お仕事お疲れ様ではあるが、身分証もないし戸籍もないので逃げ一択である。本当に申し訳ない。

 

「は、速っ……!? あんな靴でどうして……!?」

 

 リフレクターの身体能力をもってすればチャリに乗ったお巡りさんだろうと簡単に撒けるから助かるわ。

 適当に入り組んだ路地に飛び込んでパパパッとパルクールして、終わりっ! 

 

「やれやれ……しかし、夜の間ずっと肩身が狭いってのも嫌だなぁ。何か現金手渡ししてくれそうな夜勤のバイトでも探して、そこで金稼ぎでもするか……多少はお金が欲しいし」

 

 雑居ビルの屋上で、スマホを見ながらため息をつく。

 金がない。これは私にとって少々問題であった。

 

 空腹や眠気はどうとでもなる。

 ベンチで数分うたた寝すればそれだけで体調は万全になるし、エーテルが豊富な地域であればそこまで腹は減らない。なんなら今まで狩猟採集で生きてきたナチュラルボーン古代人の私だ。自然の深い場所でうろちょろしてれば食えるものはいくらでも手に入る。

 

 問題は、遊ぶ金が無いということだ。これはいけない。

 動画サイトも見れるしソシャゲだって何故か容量を気にせず無限にダウンロードできる最強スペックな私のスマホであっても、有料コンテンツを素通りというわけにはいかないようだった。普通に登録して金払わないと恩恵を受けられない。

 ソシャゲは、まあいいよ。課金しない楽しみ方もあるしその方が健全だから。けど動画とか配信サービスのサブスクはないと辛い。

 ホモビのMAD見てるだけでいちいち広告が挟まるし、画質もガビガビなんだ。こんなんじゃ最低限の文化的な生活が送れないよ……。

 

 だから、金が必要なのだ。

 

 ……手っ取り早く稼ぐ手段はいくらでもあるけどね。

 私は美人だし。薄着して下手くそな料理をする動画でも配信してればそれだけで金が入ってくるかもしれないレベルに容姿には自信がある。

 でもやりたくない。私はコンテンツを追いかけるのは好きだけど、自分からコンテンツを生み出すのは嫌なのだ。なんとなく性に合っていないから。

 

「……仕事、探すかぁ……いかがわしくない系で、給料手渡しで、スマホ弄ってても許される感じのやつ……」

 

 自分で言っといてなんだけど、私の中の転生前の総意がナイナイって言ってるな……いや、でも探すよ私は。必ず見つけてやるよ……。

 好きなことして、生きていく……! 

 

「えーと、求人求人……お? ジュラルミンケースを運ぶだけの仕事か。どれどれ、番号は……あっ」

 

 スマホの電話機能を開いて、気付いた。

 

「やっべ、忘れてた」

 

 アドレス帳にあるダアトさんの名前の見てようやく思い出した。

 やっちまった。ダアトさんへの連絡完全にすっぽかしてたわ。無事に消滅せずに未来に来れたってこと報告しないと。ネットサーフィンとかしてる場合じゃねぇよ。

 

 いざ発信。してみたものの……繋がるのかこれ。

 ダアトさんまだ生きてるよな……? 

 

「……あのー、もしもし……」

『……驚いた』

「あ、どうも夜分にすみません。セイラです。じゃなくて……お久しぶり、ですよね? 私としては、そこまで時間が経っていないんですけど」

『セイラ。まさかこの時代に再び現れるとは』

 

 ダアトさんは通話に出てくれた。けどめっちゃ驚いてる。まぁ驚くわな。

 何年振りなんだって話だもんな。

 

『……久しいな。時間の流れに耐える力を身に付けたと言っておきながら、結局その姿を見せることはなかった。お前は消滅したものと考えていたが』

「いや、どうにかなったんですよ。色々あって、帰還がこの時代になってはしまいましたけど……再びお話できて良かったです。ダアトさん。人の世界も、仰っていた通り……繁栄してるようで」

『……戦いの時が近づき、エーテルの流れに変化が生まれた影響か? それとも世界の機構が始動した証か……』

「ダアトさん?」

 

 どうやらダアトさんは通話の向こうで考え事をしてしまったらしい。

 相変わらずの神様だ。

 

『……ほう、今は特異点に居るのか』

「特異点? ああ、ダアトさんからはわかりますか。色々と便利なので、エーテルの多い地域にいますね、一応。星ノ宮ってところらしいですが」

『ふむ。……良いだろう。セイラよ。良くぞ戻ってきてくれた。お前の帰還は我にとっての朗報だ』

「えっ、そ、そうですか? そこまで言われるとなんか照れるなぁ」

『お前の存在は心強い。だが、今回は我にも試したいことがある。そのためにも……しばらくの間は戦いから離れ、休むと良い』

「はい。平和な世界ですからね。存分に楽しませていただくつもりです」

 

 部下をしっかり休ませる上司の鑑。やっぱダアトさんなんだよなぁ……。

 

「あっそうだ。ダアトさん、話は変わるのですが……」

『?』

「仕事……いや、なんでもありません。また何かありましたら、電話させていただきますね」

『うむ』

 

 さすがにダアトさんに私的なバイトについて聞くのは憚られた。

 聞けば簡単に見つけてくれそうな気はするけどね……さすがにね……。

 

「ふぅ」

 

 通話終了。

 

 ……よし。リフレクターとしての仕事は終わりだ。

 これからの私は、一人のセイラとして生きていこう。

 

「……日本人名がいいよな。セイラだけじゃ異質だし……セイラ、セイラ……それプラス苗字……うん」

 

 スマホにいくつかの文字を入力して、消したり足したりして……決まった。

 日本で暮らすための私の名前。

 

各務原(かがみはら) 星藍(せいら)。これでやっていくか」

 

 適当な仕事をするにしたって、偽の履歴書くらいは書けないと駄目だしな。

 今日から私は各務原だ……誰がなんと言おうと各務原なんだ……。

 

「……とりあえず、片っ端から面接受けてみよう」

 

 各務原 星藍。頑張ります! 

 

 




:各務原 星藍
百万年後の日本にやってきた最初のリフレクター。
スマホが時代に合わせて様々な機能を獲得したおかげで不自由少なく遊べているが、お金がないのが最近の悩み。
昼夜問わず星ノ宮に現れるやたらと美人な黒ギャルとしてちょっと有名になっている。

:ダアト
前回勝者の原種ダアトさん。
百万年前の戦いの後でセイラが消滅したと思ったら、とても良いタイミングで再び現れたのでものすごく驚いている。
今の時代の人の心が昔と比べると想いの力が弱まっていることに懸念を抱いている。

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