オリジン・リフレクション   作:ジェームズ・リッチマン

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ボス敵以外ならまぁ余裕

 

 集落の人々の仕事は、狩猟と採集だ。

 今では海沿いの場所に拠点を構え、そこに定住している。狩猟採集の暮らしは移動しながらでなければ食い扶持を得られないが、そこら中に魔物がいるために仕方なく定住している形だ。

 とはいえ海沿いの場所ではあるので、貝や一部の魚などの漁獲が得られる。人数も百人程度であれば、どうにか騙し騙しやっていける豊かさがここらへんのエリアにはあった。

 また、ダアトさん曰くここは豊富なエーテルが存在する特異点であるため、定住すべきであるとしている。神様に言われたら仕方ない。どの道ここから動けないってわけだ。

 

 私の仕事は戦闘だ。

 もちろん私だって腹は減るので、歩きながらそこら辺の木の実とかを拾い食いしたり海で旨そうな獲物を捕まえたりすることはあるが、私にしかできない事が多いために、基本は戦闘と哨戒に回っている。

 主なターゲットは大型の魔物で、集落の人々では対処が難しいような連中の駆除を請け負っている。

 

 今日も私は、エリアの外周部で警戒に当たっていたのだが……数日ぶりに、遠目にデカめの魔物を発見できた。

 

「どうして古代に機械生命体がいるんだよ?」

 

 樹林をベキベキとへし折りながらゆっくりと進む、巨大な鉄の塊。

 六本の足も相まってまるで昆虫のようだが、鈍く輝く外装はどう見ても鉄。機械のそれだ。

 たしかにこの世界の魔物はゾンビっぽいやつもいればスライムっぽいやつもいるし、タイプが様々なのは今更ではあるのだが……まぁいい。

 

「ダアトさん、発見しました。はい……大型の魔物です。……奴が特異点に侵入すると同時に、仕掛けますね」

 

 動くことのできない人間の拠点。そこに攻め入る魔物たち。

 私はそんな魔物に目標を絞り、討伐する。こちらから別の特異点にまで足を延ばして戦うことはない。あくまで防衛戦だ。そうでないと人類を守れない。

 

 相手の都合で戦わなきゃいけないっていうのは不安だけども、我慢する他ない。

 原種たちは互いに争っているらしいから、私達人類が穴熊を決めている間に潰し合っていると良いんだけどな。争え……もっと争え……。

 

「……よし。こっちのテリトリーに入ったな?」

 

 指輪を掲げ、光を纏う。

 卍解! 

 

「人の想いよ、私と共に!」

 

 変身完了! 

 私から放たれるエネルギーを感知してか、遠くにいた巨大機械が針路を変えて向かってくるが……もう遅い。

 馬鹿め、無防備な変身の瞬間を狙って仕留められなかったお前にもう勝ち目などないぞ。

 

「タワーディフェンスって考えるから緊張感あるけど、無双ゲーって考えればわりと緩いんよな」

 

 掲げる剣が放つのは想いの力。

 私が守るべき人々の純朴な感情を束ねた、心の剣。

 

「ファースト・ピアッサー!」

「ゴゴッ、ガッ……!」

 

 間合いに入った巨大甲虫メカの額に向けて、渾身の刺突。100m近く伸びて真っ直ぐに射出された銀色のエネルギーは、魔物の装甲をブチ抜いて頭部をひしゃげさせた。

 動きは止まった。が、死んでいない。頭を潰したと思っても実は弱点じゃないってのは魔物あるあるですな。

 

「けどお前の防御力は見抜いたぜ。案外ショボい装甲してんだなオイ!」

 

 敵が衝撃で立ち止まっている隙に、接近戦に持ち込む! 

 インファイトバトルだオラァ! 

 

「人間様の領域に手土産も無しに乗り込むとはいい度胸だぜ! 死んだら鉄器でもドロップしてくれよ!」

 

 プラチナの盾で装甲をどつき回し、剣で脚を切断する。

 大型はサイズ的な理由で一撃で終わらない場合がほとんどだが、まぁ手順が増えるだけで苦戦することはない。

 セイラちゃんは最強だからな。

 

「グォオオオ」

「ようやく反撃かよ! でもな」

 

 半死半生になったメカが残った脚の一つを大きく掲げ、踏み潰そうとしている。

 しかしこのタイミングこそが、私の最も得意とする瞬間なのだ。

 

「セルフィ・ミラー」

 

 盾を掲げた私が、巨大な鉄塊の脚に踏み潰された。

 容易く粉々になった私は、白銀の輝く粒子となって立ち昇り……巨大メカの頭上に跳んだ私の剣へと宿ってゆく。

 

「リフレクターは反撃してなんぼよ」

 

 虚像を砕いた相手の力を、そのまま反撃のエネルギーに転用して扱う技。

 大型の魔物なんて時々しか出てこないもんだから、使う時はテンション上がっちまうぜ。

 

「しゃあっ リフレクト・カウンター!」

「ゴアアアッ!?」

 

 普段以上に威力が乗った斬撃は巨大メカを一刀両断し、森に残骸が散らばっていった。

 破片はそのまま煙となって消滅してゆく。終わり! 平定! 

 

「Foo〜 気持ちいい〜」

 

 そして納刀から変身を解くまでがセットである。

 娯楽のない世界。人類の存亡をかけたこんなバトルが私の娯楽の一つになっているというのも、ちょっとおかしな話だよな。

 けどまぁ、すげぇ差し迫ったピンチの時の戦いならともかく、こういうぬるめのバトルだったらほんとすげー楽しいのよ……。

 

 

 

 哨戒も終わって集落に戻ると、人々は毛皮を加工したり、木の実を擦り潰したりしていた。

 牧歌的な暮らしなんでね。何をするにも衣食住が関わってくるんだよな。

 

「おーセイラが戻ってきた!」

「おかえり、セイラ! 魔物はどうだった!?」

「はい、大きめのを倒してきましたよ。しばらくは安全かと」

「やったー! セイラいつもありがとう!」

「待っててな、セイラに新しい服を作ってやるからよ!」

「い、いやいや。今着てるのありますし大丈夫ですよ」

「いいからいいから!」

 

 彼らの使う道具はエーテルによって生み出された専用のものだ。打製石器ですらない。

 しかしナイフやハンマーの精度はなかなかのもので、工具としては現代のものよりも優秀かもしれない。画用紙をカッターで裂くかのように簡単に毛皮をカットしていくし、細かな加工も思いのままだ。エーテル超便利。世はエーテル時代である。

 

「ほらよっ! 新しい革ベルトだ! 使ってくれ!」

「ど、どうも。ロッグさん。ありがたく使わせていただきますね」

「俺たちはこのくらいしかできないからな! 力仕事と革の加工は任せてくれ!」

 

 エーテルの扱いに長けているのは若い女性だ。男はそこまで出力の強いエーテルは扱えない。それでもこうしてナイフやハンマーなどの小道具は扱えるので、こうして集落での製作作業をメインに請け負っている。

 女性は武器を手にして、小型の魔物討伐だ。男女の役割がまるきり逆転してるってのが、結構面白いよな。

 

「私達戦士組も、セイラみたいに大型の……とまではいかないけど、中型の魔物くらいは倒せるようになりたいね!」

「うんうん。小型の相手も良いけど、やっぱり大きな魔物を倒せるようにならなきゃ!」

「セイラ以外にみんなを守れるのは、私達若い戦士組だけだものね!」

 

 能天気に暮らしているように見える彼ら彼女らだが、戦士として戦いに携わっている者はさすがにある程度の現実が見えている。

 自分たちは追い詰められていて、より奮戦していかねばならないことを知っているのだ。

 それでも表情に悲壮感はない。家族を、仲間を守ろうという明るい決意に満ち溢れていた。

 

「……」

 

 そんな少女たちの中で、一人だけどこか暗い顔の子が混じっている。

 口数少なく、パリピだらけの原始人にしては物静かな女の子だ。彼女の名はアイーダさんという。

 

「アイーダさん、どうかしましたか?」

「! い、いや、別に……なんでもないよ?」

「何か腐った食べ物でも食べたのかと……」

「いやぁ、あはは……お腹は大丈夫だよ。ちょっと眠かっただけー……」

 

 アイーダさんは見るからに空元気な様子でとぼけて見せた。

 まあ、グイグイと空気を読まずに深掘りしてやることもないだろう。

 チンパンな精神性を持った原始人たちとはいえ、隠したいことの一つや二つもあるだろうしな。

 

 その時の私はそうしてあえて触れなかったのだが……その日の夜、アイーダさんに異変が発生した。

 




:セイラ
カウンターが得意だけど別に使わなくても勝てる系リフレクター。
集落のみんなから革の服やアクセサリーをよくプレゼントされるが、量が多くて少し困っている。

:アイーダ
比較的物静かな原始人の女の子。
手先が器用だけどあまり戦闘には参加しない。
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