オリジン・リフレクション   作:ジェームズ・リッチマン

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ブルリフ燦……5月でサービス終了です……(呆然)
うせやろ……


第3章 暗躍する辻斬りリフレクター
非売のあまり効かない薬


 

「セルフィ・ミラー」

 

 プラチナの盾に光を集め、魔物の攻撃を受け止める。

 盾が砕け散り、私の姿もその場から掻き消え……魔物の背後を取った。

 

「はいドーン」

「グギャッ」

 

 最後の一体を剣でズドン。工事完了です……。

 

「よし、この辺りのお掃除は充分だろう」

 

 私は今、人の集合無意識の世界……コモンにいる。

 人々のフラグメントはまだ暴走するほど不安定ではなかったが、それでも日に日に環境エーテルの変化と共に揺らぎを増しているのは事実である。

 あまり効果のある対症療法とは言い難いが、フラグメントを守るためにコモン内の敵性存在を減らしておくことで、有事に備えようということだ。

 

「しかし、百万年前より随分と広くなったというか、複雑になったよなぁ……コモン……」

 

 多分、人類がクッソ増えたからだと思う。昔も果てしなく続く空間ではあったが、現代のコモンは構造が複雑だ。適当に歩いていても目当ての場所には絶対に辿り着けないだろうなぁ……。コモンが広がってないか?

 

 コモン内の魔物は、人の感情が生み出したものもあれば、ダアトさんとは異なる原種による力を与えられ変質したものもいる。

 どちらにせよあまり大きな脅威ではないんだが、害はあっても益はないので駆除推奨だ。さっさと殺そうぜ!

 

「ファースト・ピアッサー!」

「ギッ」

 

 コモンを駆け回りつつ、サーチ&デストロイを繰り返す。魔物は見つけ次第排除。MMOとかの広いフィールドを走りながら無心で狩りをやってるような気分だ。

 作業感は否めないが、悪くはない。元々私が戦うために創られたからってのも無関係ではないんだろう。けどそれを歪んでいるとは思わない。

 戦う為に創られた命。良いことじゃないか。それが人類のためだというのなら、喜んでやってやる。

 

「あ……もう今週分のネトラジ聞き終わっちゃったよ。そろそろ帰るか……」

 

 ただし、働くのはながら作業で聞いてるコンテンツが終わるまでだ。

 コモン内での時間の流れが異なるのを利用して、スマホにダウンロードした大量のデータを消化する。リフレクターにのみ許された最強の娯楽だ。

 一般人じゃ時間的にどう足掻いても無理なコンテンツ量であっても、コモン内で視聴すれば時間はほとんど経過せず、全てをむしゃぶり尽くせる……捗るわぁ……。

 おかげでまた加入サブスクが増えちゃったぜ……へへへ……。

 

「また来週も楽しみだなー」

 

 正義の戦士。それもよかろう。

 けど戦士にだって休息が必要なんだ。そうに違いない。

 

 

 

 表向きの顔として仕事も軌道に乗り、今では人任せにしてもどうにかなるように動いている。

 私は私で、気が向いた時に好きな仕事をするだけの役員になってしまった。いや、実際は役員にすらなってないんだけどね。

 男連中は改心したのかしてないのかわからないが、今では全員真っ当に仕事に向き合っている。少なくとも、私の観測できる限りでは。

 真面目に働くっていうのは素晴らしいことだ。ルーチンワークは素晴らしい。私の中のごちゃごちゃした魂の大半もそう言っている。

 

 けど、働くだけでは息が詰まる。時々、しっかり休息を取って、趣味の時間を取らなければ人は上手くやっていけない。

 私にとっては人が生み出した様々なコンテンツの鑑賞が趣味にあたる。

 ドラマ、映画、漫画、アニメ、音楽、動画、淫夢、なんだっていい。多分、この雑食性も私の魂が大勢の人間に由来するものだからなんだと思うけど、そのおかげというか、せいというか……見ているだけで時間が溶ける溶ける……。

 コモン空間を活用して一部は時間の流れを歪めてまで視聴してるけど、キリがないや。いくら見ても終わりがない。だからこそ面白いんだけどね……。

 

「そこのお姉ちゃん、ちょっと良いー?」

「んー、あ、はい? なんでしょうか」

 

 夜の屋外にて。画面を横にしてドラマを鑑賞していたところ、隣から声をかけられた。

 若い姉ちゃんだ。よくセットされた茶髪に、高そうな冬物のコート。身なりをバシッと決めている。

 それはともかく、彼女の後ろには一人の男が控えている。屈強そうな体つき。威圧的な装飾と髪色、刺青。ヤダ怖い……。いざとなったら出てくる気満々じゃん。

 

「あのさ。ここ、私達の場所なんだよね。売るならよそでやってくれない?」

「売る? ……ああ、麻薬か何かですか?」

「そうじゃなくて。見てわかんない?」

 

 変な薬でもばら撒いていたとしたならちょっとお話する必要があったが、どうもそうではないらしい。

 じゃあなんだよと女の親指が示す方向に目をやると……私と同じように、このだだっ広い高架歩道でスマホをいじいじしている少女たちが大勢いた。

 ……あーこれってあれか。

 

「なにここ、ウリやってるんですか」

「知らずに居たなんて言うつもり?」

「前から時々ここでこうしてましたけど、補導もされない良い場所だと思っていたんですよ」

「……そう。あなたみたいな造りの良い女にここにいられるとね、私達の商売に差し障りが出るのよ。わかる?」

「そんなこと言われましてもね」

 

 美人が罪というなら確かに罪なのだろうが、別にここは誰かの土地ってわけでもないからな……。

 商売の邪魔になるのはわからないでもないけど、我が物顔でどけと言われるとそれはそれでムッとするわ。

 

「どけよ千恵美、俺に任せておけ」

「ちょっ……ここ仕切ってるのは私なんだけど!?」

「お前を使ってやってるのは俺のボスだろ。しゃしゃり出るな」

「……!」

 

 男が前に出てきた。女の方は何か言いたげだったが、どうやら力関係では男が上のようだ。

 

「近くで見たらすげぇ美人じゃん。ねえ君、名前なんていうの?」

「星藍です」

「千恵美がごめんな? あいつの言うことは気にしないで。あいつ馬鹿だから。てか、君くらい可愛かったら大歓迎だよ。俺の女にならない?」

「ちょっと……!?」

「お断りします」

「良いじゃん。俺と一緒ならVIPルームも入れるよ?」

「未成年なのでお酒はちょっと」

「マジで!? すげぇ。大丈夫だよ、俺が色々と教えてあげるから。てか、薬に興味があるなら俺の知り合いでやってるやつがいるから――」

 

 あ、こいつ胸掴んできた。はいっクズ確定、ぶん殴ります。

 

「え~マジでぇ~? すご~い! 教えて~!?」

「うぐッ……」

「ちょっ、アキラ……!」

 

 間延びした声を出しつつ、ボディブローを一発。そのままさりげなく欄干に押し付けて、肩を組んでやる。もちろん優しくはしない。ギリギリと締め付けるように、圧迫しながらだ。

 

「いッ……て、め……」

「あんまり声出すなよオッサン。勢い余って鎖骨折っちゃうぞ」

「……!」

「鎖骨折れるとギプス付けられなくて大変らしいぞー……ねーマジ超怖くね~?」

「う……」

「あ、アキラ……」

「うっわ、なにこれ指輪メッチャ良いじゃ~ん! シルバーすっご~、めっちゃイカチィ~」

 

 アキラと呼ばれた男の手からシルバーのリングを抜き取って、そのまま眼の前で……ぐにゃりと握り潰す。この時点で完全にアキラの身体からは抵抗が消えた。

 

「ね~アキラ~? 千恵美はちょっとうるさいけどさ~、ウチさぁ~、ここにいるだけなら別にいいよね~?」

「は、はい……もちろん……」

「ちょっと、あ、アキラ……」

「マジで~? 嘘ついたらウチまじで怒るよ? 激おこぷんぷん丸だよ? 突撃テメェんちの晩ごはんからのテメェが東京湾の晩ごはんやっちゃうよぉ~?」

「す、すみません! すみません……! 勘弁してください……! お、折れそう……!」

「ウチねぇ、痛みとか熱さに耐えて声を抑える男ってマジ格好良いと思う」

「……!」

 

 手の中でグニグニと潰して練っていたシルバーリングだったものを、男の首元に押し付ける。

 

「~……ッ!」

 

 何度も強引に変形させて熱を持った金属塊による根性焼きだ。やりすぎるとさすがにひどい火傷になるので、あくまでちょっとだけ。

 

「は……はぁ、はぁ……!」

 

 周りからは二人で密着して車でも眺めているように見えるのかもしれない。後ろの女が慌てているだけで、騒ぎにはなっていなかった。

 

「次また私に舐めた真似してみろ。お前の身につけてるアクセをまた新しく作り直して……今度は“着け直してやる”」

「……!」

「リングでも、ピアスでも、好きな物を着けてきてください。熱いうちにジャストフィットさせてあげますからね」

 

 解放してやると、アキラは女に支えられながらそそくさとその場を離れていった。

 デッキの上にいる立ちんぼの少女たちは何事かとチラリとこちらを見ていたが、彼女らにとってはその日の稼ぎ以外はそこまで興味もないだろう。すぐに目の前の端末いじりに戻った。

 

「……特異点からちょっと離れている場所だってのに、影響が強いな」

 

 少女たちから立ち上る負の感情は、強い。まだフラグメントの暴走には至っていないものの、このまま原種の戦いの日を迎えた時、どこまで悪化するだろうか……。

 

「このポイントも要警戒かなぁ……念の為、コモンリープ」

 

 そうして私は再びコモンの世界に飛び込んで、近場の魔物を狩ってゆく。

 

 少女たちの心に巣食う闇がほんの僅かにでも晴れてくれれば……根治に至らない対症療法だとしても、気休めでも、僅かな安息のために魔物を倒す。今の私にできるのは、その程度の事だけなのである。

 




:各務原 星藍
立ちんぼに混じってスマホいじってるだけの営業妨害系リフレクター。
人の想いを守りたいと思っているものの、リフレクターに出来る根本的なことといえば原種とのバトルで勝利するくらいなので歯がゆい思いをしている。
シルバーアクセを指でこねこねして練り消しにできる。アツゥイ!

:千恵美
高架歩道で少女たちのウリを統括している女。しかし彼女もまたいつでも切り捨てられる末端である。
縄張りとするには最適なスポットだったが、たまーにクソ強黒ギャルが出現するのが怖くて次第にこの場所から離れるようになった。後任の別な女に任せて、とにかくもう関わらないようにしたいと考えている。

:アキラ
首元をちょっと火傷した上になんだかんだ鎖骨にヒビが入っており、お気に入りのシルバーリングはこねこねされて最終的に銀色の小さなウンコ型にされていた。
怪我を理由に色々と上手く話を作って別の仕事をもらい、二度とこの橋に近づくことはなくなった。
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