オリジン・リフレクション   作:ジェームズ・リッチマン

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燦で澪キャラが動くの見たかったけどなー俺もなー


第4章 悪そうな奴はだいたいリフレクター
お前もリフレクターになるんだよ


 

 コモンの世界に魔物が増えた。

 

 魔物は人の心に忍び寄ってくる。唐突に出現するし際限もほぼ無いと言っていいだろう。それでも狩れば狩るだけ、人々の想いにつく傷を減らすことはできる。

 目に見える成果にはならないが、リフレクターにしかできない仕事だ。

 それに、増えた魔物のパターンも少し変化が出てきた。

 

「以前にも見たことのないタイプの魔物ですね。かといって、突然変異的ではないというか……私の知らないタイプのジャンルの相手が現れたというか」

『異なる原種の眷属なのだろう。お前が百万年前に遭遇しなかった者たちだ』

「ああ、他の原種の……なるほど」

 

 スマホでダアトさんと連絡を取り合いながら、今しがた仕留めた魔物を観察する。

 刺々しいフォルムは魔物として珍しくはないが、甲虫じみたシルエットはそこそこレアだ。気になって画像付きで電話してみたら、さすがはダアトさん。色々と知っているようだった。

 

『前回はマルクトにより支配されていた世界だったが、今回は我が支配する世界。当然、我が有利となっている』

「百万年かけて自分に都合の良いように世界を構築していけますからね。わかりますよ」

『それ故に、原種達最大の標的は我々だ。人間と、そしてコモンが標的とされる』

「……前回勝者をみんなで集中攻撃、ってわけですか。厳しい〜」

『コモンに現れた魔物達はその尖兵だ。種類が豊富なのもその影響だろう。……今や魔物は、特異点や一部コモンの世界でしか現出できないようになっている』

「それはダアトさんが?」

『敵に表の世界で際限なく暴れさせてやる理由はない』

「……助かります」

 

 もし前回のように現実世界にまで現れて原種が大暴れしたら、さすがの私でも厳しかった。守りが追いつかない。

 その点、今回は特異点を守れば良いので楽である。いや、楽とはいえそれでも私の手が足りない数ではあるんだけどさ。

 

 だから、肝心の人手。最近はこれが気になっていた。

 

「ダアトさん、そろそろリフレクターを増やすべきだと思います」

『もちろん、そのつもりだ。戦力はいくらあっても良い』

「選ぶなら早い方が良いかと。突然戦士にされて敵の大群の前に放り出されると、焦りますからね……心の準備というか、慣れる期間はあった方が良いですよ」

『ふむ』

 

 なにせ私がまさにそれだったからね。

 転生直後にすぐさまバトルだった。勘弁してほしい。一対一ならともかく無双ゲーはやめてくれって思ったね。

 それに、巻き込まれて始まるタイプの能力バトルもののラノベじゃないんだからさ。わざわざ様式美的に“今すぐ契約を! ”とか言って慌てて始めちゃうことはないと思うわけよ。

 しっかり予め伝えた上で正義のヒーローになってもらうってのも悪くないんじゃないすかね。

 

『ならば、セイラよ。お前にもリフレクターを選んでもらうとしよう』

「ええ……?」

『適性はわかっているだろう。年頃の女、強い想いの力を持つ者。それこそがリフレクターたる資格を持つ』

 

 私の目の前に光が生まれ、そこから四つの指輪が生成された。

 

「おっとっと、いきなりですね」

 

 キャッチすると、それは私のしているリフレクターの指輪とほぼ同じデザインであった。違いは私の指輪の石が光を透過せず鏡のように全反射しているのに対し、ダアトさんの生み出した指輪の方は無色透明な石が嵌っているというところか。

 

『我も適した者を選んでゆくつもりだが、セイラ。お前の選ぶリフレクター達にも興味がある』

「また知的好奇心ですか? ……私の同業になる人々ですからね。真面目に選ぶつもりではありますし、面白味は多分ないですよ」

『フッ。……その指輪はお前自身の力で生み出すこともできる。足りなければ、いくらでも追加で創り出せば良い。期待しているぞ』

「マジですか……」

 

 通話はそこで終わった。

 ……どうやら私自身も、仲間のリフレクターを増やすために色々頑張らなければならないらしい。うーん、まあそれ自体は構わないんだが……。

 

「……なるほどなー。確かにこりゃ難しいわ。“近々世界の危機が迫ってくるんで、一緒に命をかけて戦ってくれませんか? ”……いやー無茶振りすげぇな。そんなノリノリな人見つからんだろこれ」

 

 困った。やっぱりキュゥべえみたいに悪質なタイミングと内容で勧誘した方が効率は良いのかもしれない……。けどそれはなー……でも人類の存亡がかかってるしなー……。

 

 

 

「百さん、おはようございます」

「おー? おー、星藍来たか。おはよう……うわ、なんか渋いの乗ってんじゃん」

「VRX400 ロードスター、私の愛車です」

 

 休日。私は百さんが暮らしている家にやってきた。

 百さんの実家はまた別にあるのだが、そっちを飛び出してきて今はおばあちゃんと一緒に暮らしているらしい。

 

「勉強でお忙しいところすみませんね。久々にお会いしたくて」

「ああ、いーんだよ。あたしも久々に息抜きしたかったんだ。それに、勉強っつっても追試ばっかやってるようなもんだしな」

 

 百さんは今は、真面目に学校に通い直しているところである。

 出席して、授業を受けて、これまでに溜め込んだ追試を受けたり、色々と頑張っているそうだ。大変だろうな。

 

「先公には嫌味ばっか言われるわ、馬鹿にされるわ、うんざりだよほんと。もういい加減慣れちまったけどさ。……少しは、ちゃんと見てくれる教師もいるしよ」

「良かったですね」

「ああ。……けど、難しいもんは難しい! たまには遊びてーよ、あたしもさ」

 

 百さんはグッと背伸びして唸った。元々結構背の高い百さんが伸びをすると、かなり高く見える。

 

「……今日は一緒にツーリングに付き合ってくれるんだろ?」

「はい、是非」

「良いね。そいじゃ軽ーく、流してきますか」

 

 そう言ってスクーターを取りに行った百さんと入れ違いで、百さんのお祖母さんらしき人物が縁側からやってきた。

 

「どうも、はじめまして。百さんの友人の各務原 星藍と申します」

「あらまご丁寧に。話には聞いてますよ、百と仲良くしてくれてありがとうね」

「……もう、いいだろ二人とも! ツーリング行こうぜ!」

「ああはい。では、安全運転で行ってきますので」

「行ってらっしゃい」

 

 どことなく恥ずかしそうにしてる百さんに引っ張られるようにして、私たちは走り出したのだった。

 

 

 

 ツーリング。とはいえ、そう難しい道は走らない。

 少し遠い場所に目的地を定め、二人でダラダラと走っていくだけだ。スピードも大したものではない。

 それでも、バイクに乗っているだけで百さんとしては満足らしい。インカム越しに聞こえてくる百さんの声は、ずっと上機嫌そうだった。

 

『なぁ星藍。そっちは最近どうなのさ。あたしは勉強ばっかでつまんねーけどさ』

「私の方は、いつも通りですよ。世直ししたり街をうろついたり」

『そのいつも通り、多分あんただけなんだよなぁ』

「修行してます。いつの日か、世界を救うと信じて」

『ゲームみてぇ』

 

 信号の少ない真っ直ぐな道に入ったところで、私は考えた。

 ゲーム。ゲームか……うーん。ゲーム感覚で戦うには、ちょっとリフレクターはキツいかもしれないな。使命がわかっているだけ重い。

 

 ……いや待てよ。ゲームとか使命とかじゃなくて、仕事だったらどうだろう。

 

「……百さん、今お金に困ってますか?」

『えっ、なにいきなり。……そりゃ、あたしはいつだって金欠だけど。人から借りるほど落ちぶれちゃいねーよ』

「いえそうではなく。ちょっと百さんにやってみていただきたい仕事というか、バイトがあるのですが」

『ああ。前の、オフ会で行った海岸みたいなやつ?』

「人助けという意味では同じかもしれませんが、もうちょっと期間長めでハードなやつですね」

『……何か困ってんのか』

 

 困っているというか、なんというか。

 

「……まぁ。私達、友達じゃないですか」

『だな』

「だからこそ、百さんにだったら良いかなぁと思って相談してみたんですよ。気心知れた相手だからこそ、まともに聞いてくれるかもと思ったので」

『……そうか』

 

 百さんはインカムの向こう側で、ちょっとだけ笑ったようだった。

 

『あんたも人に頼ることってあるんだな』

「そうですか? まあ、確かに普段はそこまで頼りませんけど」

『なんか、ちょっと嬉しいよ。あんたに頼ってもらえたことがさ』

 

 私の前を走る百さんが、親指で近くのファミレスを指した。

 

『話聞くよ。あんたのことだ。そう無茶なことは言わないんだろ?』

 

 いやすんません、マジで無茶っぽいこと言うんで覚悟の準備だけしといてもらえますか。

 

 




:各務原 星藍
盗んだわけじゃないけど真っ当な登録がされてないバイクで走り出す系リフレクター。
これまで知り合ってきた少女達からある程度リフレクターとしての適性がわかる。
バイクで走るのは結構好き。

:ダアト
百万年も人間中心の世界を見守り続けてきた原種。
最近コモンに対して人間側からの干渉があり、そちらを興味深く観察している。

:田辺 百
スケバンっぽい見た目は変わらないまでも、しっかり学校に通うようにはなったヤンキー。
嫌味の多い先生が嫌いだが我慢して色々と続けている。
両親からちょっとだけ見直されているらしい。
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