オリジン・リフレクション   作:ジェームズ・リッチマン

50 / 55
あと10日以内に燦がサ終してしまうので、この小説を読んでブルリフに興味を持ってくださった方はブルリフ幻→ブルリフ澪(2クール分)→ブルリフ帝と履修してからブルリフ燦のストーリーを全クリしてください。


コモンの世界の歩き方

 

「これであたしもリフレクター? ってのになれんだな」

「はい」

「内側にブルー……リフ……なんちゃらって書いてあるな」

「リフレクションですね」

「そう、それな。……なあ、これ指に嵌めてると副作用とかあったりしないよな?」

 

 人のいない高架下、私は百さんにリフレクターのチュートリアルを行っていた。

 リフレクターの指輪を身に付けた百さんは、何故か指輪の石が当たる角度を気にしながらジャブを繰り返していた。そういうメリケン的な装備じゃないんすよそれ。

 

「その指輪を着けていることで生まれるデメリットはないかと思います」

「へー、ほんとかよ。美味い話だなぁ」

「装備している間はリープレンジの中を動けるようになって……えーと、確かあとは想いの力を同じリフレクターに伝えやすくなる、そうです」

「なんでそんなにふわっとしてんだよ」

「最近のリフレクター環境がいまいちよくわかっていないので……」

「ふうん、そういうもんなのか?」

 

 私はソロ性能の高さでやってきた部分がでかいので、あまりペアやバディを組んで戦うということをしてこなかった。

 けど百万年前の他のリフレクター……というより私以外の人達は連携技を重視していたように思う。私は人々から固定化したフラグメントを用いて出力を上げたりもするが、誰かと同調したり共鳴したりはしなかったので、かなり異端な戦い方をしていたんだろうなといううっすらした自覚がある。

 百さんの場合、今はまだ無理だろうけども、誰かしらと組んで戦っていく方が強くなれるはずだ。

 

「あとはコモンリープっていう大事な機能があります」

「コモンな。あれだろ、さっきファミレスで言ってた精神世界みたいな」

「大体そんな感じです。今回は、実際にコモンの世界に跳んでお散歩してみましょう」

「よし。ここまできたら覚悟はできてる。ばっちこいだ」

「それじゃあ百さんも連れてリープするので、お手を拝借」

 

 百さんの手を取り、強く念じる。

 ……せっかくだし、コモンリープの掛け声とか入れてみるか! 

 

「お兄ちゃんかっこいいィイイ! イクゥウウウウウ↑!!」

「は?」

 

 私たちは集合無意識の世界へと跳んだ。

 

 

 

「ここがコモンの世界になります」

「う、わ……なんだここ、花畑? いや、広いってーか……やべー、すげぇ綺麗だな……!」

「でしょう。まぁ、ここはコモンの中でも一番穏やかなエリアですからね」

「……さっきの入る直前のやつ、言わなきゃ来れないのか?」

「いえ、別に無言でも来れます」

「んだよ……」

 

 私たちがやってきたのは喜びをメインとしたゾーンである。

 どこまでも続く草原、花畑、あちこちに点在する遺跡のような構造物……神秘的で穏やかな、たまにピクニックに来たくなるような世界だ。

 かくいう私もよくここでダウンロードしたコンテンツを視聴しにやってきている。

 

「この世界では時間がほぼ進まないので、勉強するには良い場所です」

「おお!」

「ただしさっきも言いましたが魔物の姿もありますので、ぼんやりし続けるわけにはいきませんよ。ほら、ああいう奴らがいますから」

「……うわ、なんかいるな」

「コモンリュークですね。……最近また魔物が増えてきました」

 

 私達が話していると、人型の魔物……コモンリュークはこちらに気付いたようで、ふわふわと空中を滑走しながら近付いてきた。

 

「あいつこっちきてね? お、おい」

「あんな風に、基本的にコモンの魔物は全て敵対的ですので」

「あっ! 変身して戦うんだな!?」

「危なくなったら逃げましょう」

「えっ」

 

 百さんの手を取り、スッと帰還する。

 わずかな浮遊感の後、私達はコモンを離れて現実の高架下へと戻ってきていた。

 

「……てっきり戦いを見せるもんかと思ったよ」

「まぁ最初なので、安全の確保の仕方を学んでいただきませんとね」

「そりゃまぁそうだけどさ」

「さっきのように一瞬でコモンから帰還できますし、なんだったらコモンでこっぴどくやられてもさほど影響はありません。現実世界に戻されてちょっとだけ気分悪くなるだけで済みますよ」

「え? 死ぬとかじゃねーんだ」

「意外とそうなんですよね」

 

 まぁこれもコモンが通常通りに稼働しているからって話ではある。

 原種が近づいていたり、コモンの中により強い敵性存在がいた場合は私にも正直わからん。

 けど基本的にはコモンで怪我してもわりとなんともないのだ。原種との決戦に備え、戦いの経験を積むという意味でもコモンでの修行は悪くないだろう。

 

 

 

 高架下を離れ、次は繁華街にやってきた。

 月ノ宮周辺だけあってここらの人々はなかなか感情の振れ幅が大きい。少し探せば精神的に不安定な人は見つかるだろう。

 

「……この指輪をつけてるせいなのか? なんつーか、人から何か……見えるっていうか」

「人の想いに指輪が反応しているのだと思います。指輪は特に暴走したフラグメントに反応しますので、何か異変を見つけた場合はそれを辿るのが良いでしょう」

 

 フラグメントに反応する指輪はダウジングマシンのようなものだ。反応を見ながらじわじわと近づき、暴走した人を特定するしかない。これがなかなかめんどいねんな……。

 

「ほら百さん、あの人です。あちらのベンチで俯いている人」

「……うわっ、なんか靄が出てるぞあいつ」

「あれがフラグメント暴走のサインです。ああいう人を地道に探して助けるのが、我々リフレクターの普段の仕事になります」

 

 ベンチに腰掛けた若い女性は何事かをブツブツ呟いているが、声が小さいので聞こえない。

 こういう時は話しかけても反応が望めないので、さっさとコモンにリープしてフラグメントの暴走を止めてやるのが一番だ。

 

「次のコモンリープは実際の戦いをお見せします。百さん、覚悟の準備はよろしいですか」

「できてるよ。いつでもこい」

「ほいじゃ、イクゾー! デッデッデデデデッ」

「なにその掛け声」

「カーン」

「は?」

 

 

 

 再びコモンリープすると、次に私達が入り込んだ場所は青色に満ちた世界だった。

 どこか寒々しい、水と石の世界。悲しみのゾーンだ。

 

「……さっきの花畑より、殺風景というか。なんだか辛気臭いとこだな」

「コモンリープはその近くにいる人の無意識を色濃く反映していますからね。この世界は先ほどベンチで沈み込んでいた方の心の中と言っても良いでしょう」

「……助けてやりてぇよ。どうすりゃいいんだっけ? フラグメント……の、固定化? すんだっけ」

「はい。ちょうどあそこに見える……あのキューブ状の物体がそれにあたります。見えますか、あの浮かんでるやつ」

「あれか」

 

 飛び込んだエリアの見晴らしが良ければ、近くに浮かぶ暴走したフラグメントをすぐに見つけることができる。それに手を触れて固定化してやれば、リフレクターとしての仕事は完了と言っていい。

 しかし……。

 

「魔物がいるよな、あれ」

「いますね。まぁ、大抵はああしてフラグメントに魔物が集っています。それを片付けないことには、フラグメントの固定化はできません」

 

 フラグメントの近くでは数体の魔物がフワフワと体を揺らしながら暇そうにしていた。

 中にはフラグメントに対して攻撃的な魔物もいるので、そういう場合はちょっと急いでやる必要がある。

 

「ここまでは地道な調査ばかりでしたが、ここからはもう魔法少女アニメの世界ですよ。変身して、連中をボコボコにして、平定です」

 

 指輪を掲げ、光を放つ。

 さて、お仕事お仕事……地味に現代人の前で変身するのは初めてになるな、これ。

 

「人の想いよ……私と共に!」

 

 光が全身を包んだ後、姿は服ごと一変した。

 

 肌色は褐色から白となり、髪色は金から銀へと染まる。

 いかにもなギャル衣装は神話に出てきそうな白の衣となり、銀の剣とプラチナの盾が両手に現れた。

 

「うっわ、めっちゃ変わった!? すげぇ!」

「白ギャルセイラです。どうですか」

「剣じゃん!」

「剣ですよ」

「杖とかじゃないんだな……?」

「人によって武器が違うので、その辺りはまぁ百さん次第だと思いますよ」

 

 リフレクターに変身した私は一気に動きが良くなる。変身前でも人並み以上の運動能力があったが、今はそれをはるかに凌駕する。伊達に原種は狩ってねえぜ! 

 

「はーっ! くたばれ魔物! 迫真の通常攻撃!」

「ギャッ」

「えいっ! 通常攻撃!」

「ギィィッ」

「思ってた以上に普通に戦うんだな……」

「物理で殴るのがなんだかんだ一番効くので……」

 

 敵のところに飛び込んでブンブン剣を振るだけで掃討は終わった。

 ここはもう、レクチャーの必要もない。見たまんまなんでね……。

 

「これがフラグメント……」

「この想いの欠片に触れ、相手の想いを理解したり……共感することで、鎮めることができます。百さんがやってみてください」

「えっ!? あたしが!?」

「戦いよりもむしろ、この作業ができるかどうかがリフレクターにとっては重要です。共感……私のような上っ面だけでも良いのです。相手の想いの震えを受け止め、耳をそば立てる。それこそが、必要な作業といいますか」

「……わかった」

 

 百さんがフラグメントに手をかざし、目を瞑った。

 今彼女の中にはフラグメントの想いが溢れているのだろう。人間の奥底に秘められた無意識の感情。それを受け止めて、さて、どうなるか。

 

「……ああ、そうか。わかったよ」

 

 百さんはそう呟くと、手にしたフラグメントをそっと光に還した。

 成功だ。

 

「お疲れ様です。いかがでしたか?」

「……ん。まあ、だいたいわかったよ。どんなことなのかってのはさ」

 

 百さんは手を広げたり、握ったりしている。

 

「……あたし、やるよ。この仕事。いや、仕事じゃなくても。リフレクターになってやる」

「突然ですね。いや、嬉しいですけど」

「今の想いに触れてみてわかったんだ。こういう気持ちになる奴らを、放ってはおけねえなってさ」

「……良い人ですね、百さんは」

「そう?」

 

 百さんはわざとらしくニヤリと微笑み、照れ隠しした。

 

 




:各務原 星藍
物理で殴ればだいたい勝てるリフレクター。
フラグメントの固定化作業は上っ面の共感で行っている。
主人公適性があまりにも低い。

:田辺 百
指輪を手に入れてリフレクターとなった早起きヤンキー少女。
原作よりもリフレクターになるタイミングがめっちゃ早い。
根が良い人なので困った人がいるとわかると放っておけない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。