オリジン・リフレクション   作:ジェームズ・リッチマン

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人の心を覗いてやねぇ
勝手に傷ついていってやねぇ


海浜バーベキュー

 

 待ち合わせ場所は以前と同じ灯台だ。

 どうせ行くなら香織さんも灯台を見て行った方がいいだろうからね。

 

「前はここで伶那さんが男にナンパされてたんですよ」

「へえ、そうなんだ」

「ナンパってか、絡まれてたんだろ。あいつら伶那のこと舐め切ってたし」

「ナンパなんてそんなもんですよ」

「そういうのが許せねーんだよ」

 

 海側から吹きつけてくる風は強く、寒い。が、ここから見下ろせる砂浜では強風に煽られた砂が煙のように舞っているのが見えた。あそこに突っ立っているよりはマシだろう。

 これバーベキューできるか? 場所選ばないと風で大変そうだ。

 

「ごめん! ちょっと遅れた」

 

 三人で横並びになって海を眺めるというなんかエモいことをやってると、伶那さんがやってきた。

 彼女は遅れたと言っているが、待ち合わせの五分前だったので全く遅れてはいない。ハハァ、真面目だなぁ……。

 

「伶那さん、オッスオッス」

「よう伶那。別に待ってねーよ」

「ここで一人で待ってるのも危ないから、ギリギリに来ようとしてて……あ、もしかしてあなたが?」

「はじめまして、伶那。アタシが香織。三井 香織」

「……はじめまして」

 

 香織さんの姿を見た伶那さんが目をぱちくりさせている。

 どういう反応? 

 

「何?」

「い、いや。なんか……他の二人もそうなんだけど、三井さんも一緒に並んでるとこう……何の集まりなんだろうって、一瞬思っちゃって」

「あー」

「どう見てもソシャゲのオフ会ですよ」

「正直見た目の雰囲気だけならあたしが前までつるんでた連中とそう変わらねーんだよな」

 

 百合ソシャゲをきっかけに女四人が集まったにしてはまぁね。

 顔面偏差値の高さと陽の者感はあるかもしれんね。

 けどその中にはしっかり伶那さんも入っているのをお忘れなきよう。

 

 

 

 バーベキューは海水浴場近くにある専用のBBQエリアでやることになった。ここでなら砂嵐も関係ないし、そんなに寒くない。

 テーブル、椅子、洗い場などの必要な施設が一通り揃っているので楽なのだ。丸太を横倒しにして“椅子!”なんてことはしなくていいのである。

 って、椅子はエーテルで作るもんでしょうが! ってな、ガハハハ! おっと古代人ジョークが出ちまったぜ。

 

「さあ、DAT(ダアト) IS GOD全員集合記念しまして……始めますか! バーベキュー!」

「……ん? ちょっと待って」

「はい、なんでしょう伶那さん」

「ダアト? ダットじゃなくて?」

「アタシもダットだと思ってたんだけど」

「あーダアトか」

「ダアトはダアトですよ。ダアトさん」

「いや誰」

「人間の神様的な存在ですよ」

「なんのゲームの設定よ……」

 

 バーベキューコンロに炭をがさーっと入れ、固形着火剤を丸ごと全部ぶち込んでおく。ここでケチって消えたら意味ないんでね。

 

「おーい星藍、クーラーボックスから肉出して良い?」

「どうぞどうぞ。色々入ってますよ」

「……うわ、マジだ。ほー、かなり色が違うんだなぁ。脂がくっきり分かれてるっていうか」

「へえ、そんな見た目の肉なんだ。撮っておこ」

「ちょっと、野菜も買ったんだから焼かなきゃ駄目でしょ」

 

 そうして始まったバーベキューパーティーは、年頃の女子が集まっていることもあってなかなか姦しいものとなった。

 アルコールなんて買ってきてないのに炭酸ジュースだけでここまでテンションがブチ上がるってのがなんか面白い。

 

「脂身うまっ。豚肉っぽいけど全然イケるわこれ」

「漬け込んであるこれもタレなくても美味しいね。伶那、そっちのカボチャ取って」

「はいはい。……田辺さんも食べなきゃダメだよ、これ」

「おー、悪いね。いやぁ、広い場所で食う飯ってのも良いもんだな。海は……ここからだとちょい遠いからあれだけど、見えなくもないし」

「風車もよく回ってるし、見応えはあるよね」

「そこ見応えある?」

 

 比較的長身な女子ばかりだからなのか、単純にこのジビエたちが美味しいからなのか、肉がどんどん減っていく。

 こうして焼肉奉行しながらたくさん食べてもらえるとなんか、嬉しい……嬉しくない? 

 

「あ、この金玉は私のなので手出し無用に願います」

「……言い方あるでしょ」

「タマタマ」

「星藍の言い方はきたねーけど、金玉は金玉だからしょうがなくねえ?」

「……睾丸とか、色々あるでしょ」

「逆に生々しくない?」

「あ、ちなみに猪の心臓と金玉は生食できるみたいですよ?」

「無理!」

「いやあげませんけどね!」

「いらない!」

「金玉で騒ぐなよ小学生じゃねーんだから……」

「寄生虫とか大丈夫なんだ」

 

 あー金玉うめぇ……やっぱこれだねこれ。

 けど生食は流石に私も躊躇するな。せめて獲れたてならやろうかなって気にもなるんだけど。

 

「しっかし猟師ってのはすげーな。こんなにたくさんの肉を山で獲っちまうんだろ。いまいちスーパー以外で手に入れた肉ってのが想像できねーっていうか」

「ね。ファンタジーみたい」

「別に、田舎だったら猪くらい出るし……」

「このお肉獲ったのは皆さんと同じくらいの女の子ですよ」

「嘘でしょ」

「こういうの獲る人っておじさんじゃないの?」

「やべー女だな」

「ほらこれ、この画像。この子こころさんっていうんですけど」

「うわっ、グロ画像見せんな!」

「吊るしてるとこ? へぇ……てか、猪デカいね。いや、猪もデカいけどこの子も別に小さくないよね」

「胸でっか」

「……女の子だけ写ってるのない?」

「なに目を瞑ってるんですか伶那さん」

 

 別に吊るしてあるからってそんなグロい画像でもないんだけど。

 伶那さん怖がりだな……。

 

 

 

「やー、食った食った。結構食ったのにまだ肉あるのか、すごいな」

「小さめの猪鍋も食べましたからね。汁物はお腹にたまるってことでしょうか」

 

 ゲームの話をしたりアニメの話をしながら食べているうちに、みんなも満腹になったようだ。女子だけの集まりにしては、かなり食べた方じゃなかろうか。

 やっぱ好きなんすねぇ……。

 

「せっかくですし、海の近くまでいきましょうよ」

「おっ、良いねぇ。腹ごなしに散歩でもすっか」

「伶那は地元だからあまり新鮮でもない?」

「え? ううん、別に。私も海を眺めながら歩くのは好きだから」

 

 なんというか、バランスのいいメンバーだと思う。

 

 百さんはノリが良いし、伶那さんは一歩引いて意見してくれるところが慎重でありがたいし、香織さんはクールに俯瞰して物事を見ている感じがする。

 性格も結構バラバラだけど、お互いに相手を邪魔しないというか、尊重できている。話していて非常に心地が良い。

 

 こうして四人で一緒に歩いても、馬鹿騒ぎはしないものの、確かな一体感を感じる。

 風……吹いている、確実に……私たちの方に……。

 

「……うーん、仲間。仲間……か」

「? どうしたの、星藍」

「ああ香織さん。いえ……まぁ、悩みというか」

 

 貝殻を拾っている百さんと、海風に乱れる髪を気にしている伶那さんを見て……私は決心した。まあ、別にそう変に身構える必要もないだろう。

 気軽に誘えば良いか。そう思い直したのだった。

 

「香織さん。もし、魔法少女になれるとしたら、なりたいですか」

「え? なりたいけど」

「マジで?」

「また星藍が変な話してる……」

「……おいおい星藍マジかよ?」

「マジですね」

 

 リフレクターの数は多ければ多いほど良い。

 それが気心知れた相手だったら、尚のこと良い。

 

 そう思った私は、伶那さんと香織さんへの勧誘を心に決めた。

 

「私と契約して、魔法少女になって欲しいんです」

 

 




:各務原 星藍
車の運転もできるリフレクター。
金玉の間に長ネギを入れて焼こうとしたら伶那に引っ叩かれた。

:田辺 百
みんなで車に乗れるけど運転したいので一人バイクに乗ってるリフレクター。
祖母に待たされて糠漬けを持参した。猪鍋にマッチする。

:宮内 伶那
海岸付近を一人で歩くのが少し苦手になった女の子。
初めて香織を見て「またギャル系か…」となった。

:三井 香織
陸上部を引退してからソシャゲにハマった女の子。
ファンタジーっぽいジビエに密かな憧れがある。
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