\デェェェ 魔族のいるの村 ェェェン/
魔族のいる村――。
それは中央諸国のブレット地方では、そこそこ知れた噂話であり、フォル盆地の近辺にある村で魔族が人間と暮らしているという眉唾な話であった。
しかし、フォル盆地にあるその村に立ち寄ったという者は、口を揃えて"魔族がいた"と言うため、"魔族のいる村"と口伝に呼ばれているのだ。
また、ブレット地方に入った北部高原の魔王軍が次々と消息不明になっているらしく、当然ながら何処かに潜伏しているのではないかと考えられ、それも魔族のいる村などというモノの胡散臭さを上げる要因になっている。
彼女――元々は南側諸国の貧しい村に生まれ、口減らしも兼ねて自ら村を出て冒険者となった少女は、その噂を耳にし、学のないためにそれを鵜呑みし、噂に引き寄せられるように立ち寄っても仕方のないことだろう。
そのため、基本的には
「こんにちは、ここは村の便利屋兼魔族の魔法雑貨屋よ。今日は何の用事かしら? 村人とそれ以外で対応が違うのは了承してちょうだいね。魔法薬や魔道具なら相談して貰えればオススメを伝えるわ。値引きはしないわよ。魔物が出たなら場所と特徴を教えて、後で対応するわ。急を要さない依頼があるのなら優先度はこっちで考えるからそこに書いて。依頼料は交渉次第よ。急を要する依頼は受け付けていないわ。村外れにいる居候エルフでも頼りなさい」
「ほ、本当に魔族が店を開いている……」
結果、その村というものは、小さな町と呼べそうな規模の村であった。
村民たちは旅人にもとても優しく、村自体もかなり豊かな部類に入り、これならば自身のように口減らしで子が去る必要がないと考えるほどであり、それに何とも言い難い感情を覚えつつ魔族について話を聞けば、皆口々に”アウラ”という名の魔族のことを好意的に話す。
そして、案内された村役場の一角が丸々商店ブースになっており、そこのカウンターにちょこんと魔族が座っていた。
天を突くように伸びる二本の角、表情のない顔と光のない瞳、長命の魔族が身に着けているような軽鎧、つらつらと全く感情を込めずに読み上げられる定型文のような文言、その全身から誇示するように溢れる魔力。
どれを取っても明らかに魔族であり、女性としては大柄な魔法使いが小さくて可愛いと第一印象を抱く程度に美少女と言える外見だが、これで40代後半の年齢だというのだから人間的な感覚では、脳の認識がやや狂いそうになるものであろう。
それもあるのと、精巧過ぎる人形のような可愛らしさに当てられたためか、魔法使いは真剣な表情で無意識に呟く。
「しかし、人間の村で働いてる魔族など大した魔法使いではないのでは――」
「おい、そこの木っ端魔法使い。貴様、今なんて言った……?」
要するに可愛いということを形容したかった言葉は、途中で遮られた。
次の瞬間、目の前にいる無表情の魔族の額に青筋が浮き上がり、魔力が数倍に膨れ上がると共に魔力の奔流によって風が巻き起こり、魔法使いの髪をなびかせ、店内の棚が小刻みに揺れる。
どうやら魔力量を偽装していたらしく、熟練の老魔法使いを遥かに超えるほどの魔力量をしており、それは見ただけで魔法使いが交戦を諦めるほどの相手であった。
無論、魔族なので魔法についての侮辱は禁句であり、初手地雷を踏んだ彼女の未来は想像に難しくない。
ちなみに彼女は魔法の才があったばかりに冒険者として通用してしまい、人々のために魔族と対峙することを決め、冒険者として北部高原に出向くために旅している真っ只中であり、齢20も超えていないにも関わらず、既に中堅の魔法使いと言えるほどの実力を持つ。
つまりは一般に天才と言えるだけの魔法使いではある。
「えっ……?」
「表に出なさい。ここじゃモノが壊れる」
ただ、問題だったことは、あまりにも相手が悪いと言わざるをえなかったことだ。
なぜならそれは、魔族のいる村の魔族であり、村長の妻かつ魔法雑貨屋を開いているこの魔族は六崩賢級の魔法を有し、魔王軍の将軍並みの武闘派であるという二足の草鞋を履き、それをたった半世紀程度の年齢で実現しているという超越者の一体だったのだ。
「えっ、あっ……えっと……ごめんなさ――」
アウラと魔法使いの冒険者が立ち会えた時間は、十数秒ほどである。
最初の数秒で正面から自身の魔法を砕かれ、無意識の驕りをへし折られ、残りの数秒で抵抗すら出来ずにタコ殴りにされ、これまで魔法で生きていた自信を磨り潰されつつ半殺しにされたのだった。
◆◇◆◇◆◇
魔法使いの少女は、魔族のいる村の魔族ことアウラによってコテンパンのボロ雑巾にされてからも暫く村に滞在していた。
魔族のいる村までの即席のパーティーだった彼女の仲間は、アウラにボコボコにされた上、幼少期からずっと人肉を食べない魔族が暮らしているという稀な話だけだった村の実状を知ったことで解散となり、既に彼女しか残ってはいない。元々、ソロで冒険者をしている彼女としてはいつものことである。
彼女はボコボコにされてから1〜2ヶ月ほどアウラの元へ足繁く通って、彼女の人となりを観察すると共に、概ね村の発展はこの魔族が作る魔法薬やなんでも屋のようなことをしているためだと理解した。
まず、この村の農地には”
村の近くで魔物が出れば事前準備をして群れや巣まで潰し、魔族が出れば即座に殲滅する。魔族でありながら魔を倒しているのは驚きだが、それ以上に魔族だからこそ魔物や魔族の特性をよく理解していることが見て取れた。
『すまないねぇ、アウラちゃんや……。オーブンが直ったらカボチャとニシンのパイでも焼いたげるねぇ』
『私あのパイ嫌いなのよ』
他にも村人の個人的な依頼や雑用――。
『できたわ。本や文字を自動で読み上げる魔導生ぶ……魔道具よ』
『セヤナー』
読み書きのできない村人が詐欺に遭わないためと娯楽の提供――。
『腕の骨が折れた……!』
『人間の体には215本の骨があるじゃない。1本くらいなによ』
即効性と信頼性があり、コストが低く彼女にしか作れない魔法治療薬の作製と配給――。
『できたわ。喋る人形よ。私の思考パターンを模したわ』
《こんなことしても時間の無駄なのに……》
『なんだとお前?』
会話ができる青いロボットっぽい見た目の小さな子供向け玩具――。
『あのアウラさん……。武器屋の娘と付き合えたのはいいんですが……なんかもう彼女が両親に色々と話を通していて、結婚する流れになってるみたいで……。最近、彼女の目付きもギラギラしてるような気がしてなんかこわ――』
『さっさと抱け』
他にも悩める若者から人生相談を受けたり――。
『アウラー! 暇そうだから遊んでやるよー!』
『私は忙しいのよクソガキ……』
なんだかんだ言いつつ子供の遊び相手になるなど、多方面に万能と言える魔法使いであり、魔族にも関わらず、村人の誰からも決して嫌われていない程度には人格者である。
『アウラ、お腹すいたよ』
『ミ゜』
後、小さくて可愛いエルフを飼っている。羨ましい。
そして、何よりも――。
『なぜだ……? お前は、同族に手を掛ける? 誇りはどうし――』
『……? 同族殺しなんて人間の方がしてるじゃない』
『アウラ、もう殺してるよ』
こともなげに北部から南下してきた将軍の胸に大鎌を突き立て、首を傾げながら月光に照らされるその魔族の背が、あまりにも妖しく見えてしまったのだ。
◆◇◆◇◆◇
「弟子にしてください……?」
魔法使いの冒険者は、村に滞在して2ヶ月と少し経った頃、アウラにそう頼み込んだ。彼女からすれば一世一代の賭けであろう。
それを聞いたアウラは、相変わらずの無表情で小首を傾げると、そのまま振り向き、その視線の先のソファーで寝そべって魔導書を眺めているエルフ――フリーレンを見つめた。
「弟子だそうよ。言われてるわよフリーレン」
「いや、アウラにだよ」
「は? そんなわけないでしょ」
「そうかな? アウラの方がよっぽど
魔導書から目線を逸らさずにそう返すフリーレンは、冒険者の彼女からすれば、伝説級の魔法使いではある。
しかし、それを目標に出来るかといえば、それは出来ないと言い切れてしまう。
あくまでもフリーレンは、莫大な魔力と並みの魔法使いなら使用すら出来ない程強力な魔法による殲滅を主としており、それはフリーレンという単一個体の魔法使いとして振り切れた強さそのものなため、言ってしまえばそれに再現性はない。
「正気じゃないのはお前なのね」
それに引き換え、アウラの戦法は、魔族の将軍クラスの近接戦闘力も然ることながら、何よりもタイマンに近い状況になったところで、異常なほど豊富な小手先の魔法を相手によって変えて行使し、確実に相手を殺すことに長けている。
さながら魔法使いの殺し屋のような手合いであり、また行使する魔法は、
それ故に彼女はただの人間の魔法使いが、努力の果てに至れる形をした魔法使いであった。魔族を倒すためならば尚更理想とも言える。
「ダメよ。そもそも私になんの利点もないじゃない。そこまで暇じゃないわ」
そして、彼女の性格なら取り付く島もなさそうなことはわかっていたため、魔法使いの冒険者は奥の手を使う。
それはアウラをひたすら褒めることだった。色々言いはしたが、家事万能、料理が上手い、強い、カッコいい、魔法が上手い、小さくて可愛い等々そんな内容である。
「ふーん……」
そんな子供騙しもいいところの作戦など、むしろ人を舐めているようにしか思われないだろう。
「お前、見る目あるじゃない」
しかし、旦那や村人を除くと普段から褒められることも労われることもほぼなく、四六時中あらゆることに奔走あるいは使われまくっているが、自己肯定感と自尊心は天元突破して高い魔族のアウラは、悲しいほどチョロかった。
こうして、これまで独学で生きて来た魔法使いの冒険者は、師を得て"魔族の弟子"となったのだ。
「私は?」
尚、ソファーから近寄ってきたフリーレンが弟子の裾を引いてそんなことを聞いて来たため、特に彼女の魔法をアウラ以上に褒めた。魔法に関してはそれはそうである。もちろん、こっちも小さくて可愛い。
「むふー」
「お前は破門よ、破門」
尚、アウラにはヘソを曲げられたが、妊娠中なので産後なら本格的に指導してやるとのことでなんとかなったのであった。
◇◆◇◆◇◆
「しゃー!」
魔法使いの冒険者がアウラの弟子になった翌日から悩みの種が出来ていた。
「がるるる……!」
それはアウラと瓜二つの容姿をした娘のアウレリアが大変ご機嫌斜めになったことである。
フォークのようにも燭台のようにも見えるデザインをした三叉の大槍にしか見えない長杖を振りかざし、人ならざる獣と化したかのように激昂しているのだ。
「アウラは、私のものだ……!」
「親を呼び捨てにするな」
どうやら母なるアウラが、弟子を取ったことにご立腹らしく、自身の地位が脅かされることを勝手に危惧して暴れているようである。
そのため、言動もいつも以上に意味不明で情緒不安であった。いや、元とあまり変わらないかも知れない。
ちなみに妊娠中のため、宣言通りに魔力増加や筋トレの自主練習に魔法の訓練は絞られ、元々弟子は口減らしの村娘でしかなかったためか、アウラは読み書き・古エルフ語の習得・計算・家事やマナーなどを何故か教えており、そのため寂しくて羨ましくてキレたというのが、アウレリアの本音である。
「私は……。お母さんの母乳で育ったんだぞ!?」
「アウレリアはお母さんっ子だねぇ」
「我が娘ながらコイツ、キモ過ぎるじゃんね」
"大半はそうなのでは……?"と弟子は首を傾げ、フリーレンは微笑ましそうに見ているため、とんでもなく気色悪いマウントを取っているだけということに気付いているのは、アウラただひとりだけである。
「私のじゃんねぇッッッ!!!」
「動くな。弟子、抱きしめてやりなさい」
「ハァ……!?」
アウレリアはアウラと瓜二つの外見通りに小さくて可愛らしい。そのため、それを言われた弟子は、そそくさとアウレリアの前に行くと手を広げて抱え、割れ物を扱うように優しくそっと抱き締める。
「や、やめろォー!? あっ、おっぱいすごッ……ああっ……!? 負ける……!?」
"ケツとタッパがデカイ女ァ……!"と叫ぶアウレリアの頭に弟子は手を乗せ、感触を確かめるようにそっと撫で始めた。
「クッ、クソォ……止めて……! 私からあなたを恨むという想いまで奪おうというの!?」
そのまま、嘆き声を上げるアウレリアだったが、徐々に声のトーンが落ちて行き、その果てに"ねーね……"と漏らしつつ弟子の胸に顔を埋めて落ち着いたことで事なきを得た。
「アウレリアは、妬ましいだけでお前を別に嫌っているわけじゃないからいいのよ」
「おいで、アウレリア」
「うっ、うう……まっ、ママぁ……」
その後、名残惜しそうな弟子を他所に解放されたアウレリアは、同じように手を広げるフリーレンの胸に飛び込む。
実際、アウレリアからするとフリーレンは生まれてからずっと共にいる存在であり、二人目の母親のようなものと言っても過言ではないだろう。
「フリーレンママの胸板薄いから落ち着く……」
「2回目」
兎に角、やたら面白いが、自分の生い立ちとは違い、愛に溢れている一家というのが、弟子の印象であった。
◇◆◇◆◇◆
「は? お前らじゃ無理よ。アウルぐらい連れて来るか、さっさと帰りなさい」
魔族の弟子になってから約半年後――。
初対面の相手に"話にならないじゃんね"と更に吐き捨てる自らの師に魔族の弟子は、唖然としつつ直ぐに焦りに襲われてアウラを凝視した。
師であり、絶望的に相手を
更に先遣隊の隊長は20〜30名の部下を連れており、王国の戦力の一端を担う一角の部隊であることは明白だろう。
ちなみにアウルとは、長男でラウラの弟であるアウラの子供のことであり、"月光の騎士"や"魔将軍"等と呼ばれ、姉と並んで王国の双壁を成している魔法使いである。
中央諸国最高戦力である姉弟の魔法使いの母親という要人とはいえ、相手が魔族かつあまりに心ない物言いに隊長はやや眉を顰めつつも自身らが王の勅命を受けて国から送り込まれており、既に個人の判断でどうにか出来る話ではないことを語っていた。
それからアウラは半日ほど一歩も引かなかった。相変わらず色々と心ない罵倒染みていたが、要するに内容は生きたければ自身を連れて行くべきであり、産後に体調が整うまで後約半年ほど待てということである。
「ふーん、まあ、別にいいけれど。遺書は書いておいた方がいいわね」
そして、最終的に交渉は決裂し、先遣隊はダンジョンへと向かうことになった。
"すまない、こちらにも退けぬ事情がある。丸一日経って音沙汰がなければ、全滅したと王に報告してくれ"
そう言って、先遣隊の隊長は、ダンジョンに入る前に認めていた王へ宛てた事前報告書と、自身と部下たちの遺書を手渡し、1日戻らなければ送付するように頼み、深淵のようなダンジョンへと挑んで行った。
しかし、この村にあるダンジョンは、性質上出入り口は一階層の落とし穴の罠しかなく、その落とし穴の罠は魔力を感知して起動するタイプの罠である。
そのため、ダンジョンの入口でアウラは暫く留まって罠を起動し続け、1日が経過しても縦穴からは何も反応はなく、そのまま2日、3日と時間が過ぎてもアウラはその場で罠を起動し続けていたのだ。
「人間が水だけで生きられる限界までいただけよ」
結局、彼女が起動を止めたのは、先遣隊がダンジョン入りしてから丁度、2週間経ってからのことであった。
この一件以降、アウラは正式なこのダンジョンの管理者となり、厳しい入場制限と試練を課したことに加え、上層からしか入れず更に蓋をされる構造上、後の世で"アウラの牢獄"と呼ばれることになる。
このダンジョンは最難関のダンジョンのひとつとして長年君臨し続け、最終的に魔王を倒した後に訪れた勇者ヒンメルとその一行に踏破されるまでの約500年間、そこにあり続けたのだった。
◆◇◆◇◆◇
「まあ、お前に教えられる程度のことは教えたわ。達者でいなさい」
そして、魔族のいる村に来て、アウラに師事してから数年の月日が経ち、確かに魔族の弟子であった彼女は、再び魔法使いの冒険者として北部高原へ魔族と戦いへ行く本来の目的に戻る日が来た。
目的が自身と同じ種族を葬るものであってもそれを咎めるどころか背中を押しており、フリーレンから丁寧に魔族に対する私怨混じりの対応の仕方なども叩き込まれている。
しかし、それ以上にこの村に居た彼女にとっての数年は、生まれた村にいた頃やここに来る前の冒険者としての時よりも遥かに充実しており、何より自身が生まれた口減らしが行われるような状況の村と家庭と比べてしまえば、アウラのことを不器用な母親のようにさえいつの間にか無意識に感じていた。
そのため、アウラが作った金のロケットペンダントにアウレリアが魔法で撮った集合写真を入れ、それを今も首に掛けている。
だからなのか、弟子はここを去る日になり、この村に留まりたいという選択肢が常に頭を過ぎり、アウラの前で顔に出ないまでも何か言いたげな仕草が見え隠れしていたのだろう。
そんな様子を見て、小さく溜め息をついたアウラと、彼女の手にいつの間にか握られていた金色の天秤の存在を見落としていた。
「それともうひとつ――
それはこれまで師が一度も見せたことがなかった彼女の魔族としての魔法であり、驚愕に目を見開く弟子を他所にアウラは"魔族は卑怯で嘘つきなのよ"と吐き捨てる。
そして、アウラに教えられたことで掛けられたその魔法が、数多の魔法を駆使する魔法戦士としての彼女からは似ても似つかない服従系のそれであることを理解し、またお伽噺の魔法使いが使うような途方もないほど高度な魔法であることも理解できた。
そうして、困惑と裏切られたような悲しみに包まれながら身動きの取れない弟子の耳元に近づくと、アウラは
「"この村にはもう戻って来ない"こと。これでお別れよ。精々、魔族を殺せばいいわ」
それは彼女なりの優しさだったのか、厳し過ぎる現れか、単に効率を優先したのか、それを知るのはアウラただ一人であろう。
それからアウラは弟子の正面に立ち、その頬に軽く口付けをする。表情も変えずに行われたそれはあまりにも不格好だったが、それが何より彼女という存在そのものを表していた。
「じゃあ、いきなさい。私の可愛い馬鹿弟子」
そして、その言葉といつも通りの無表情が、魔族の弟子が生涯最後に見たアウラという奇妙な魔族の師の姿である。
しかし、それは何処か笑っているようにも思え、彼女が北部高原で魔族を狩るとある一族の祖として生涯を終えた時、最期に浮かんだ想い出の中の師の姿は、確かに薄く微笑みを浮かべていたのだった。
◆◇◆◇◆◇
「こんにちはお嬢さん」
"魔族のいる村"が、ある日を境に"魔族がいた村"と呼ばれ、その理由も半ば忘れられてから幾星霜が過ぎ、500年ほど経った現代――。
魔導書の半分は古エルフ語で書かれているということで、フリーレンとアウラに覚えさせられ、煮詰まって外で気分転換にぼんやりとしていたフェルンは、聞き覚えのない女性の声に身を震わせた。
声の主を探してみれば、そこには十代後半ほどに見えるダークブランドの髪色をしたツィトローネと同じぐらい背の高い女性がおり、薄く笑みを浮かべている。
「こちらに……ここに写っているアウラ様という名の魔族の方はいらっしゃいますか?」
「アウラ様……!」
彼女は古めかしいデザインで雰囲気のある金のロケットペンダントを持っており、そこに入れられた魔法の写真には、確かにフェルンの知るままの姿のアウラとフリーレンとアウレリア――そして、赤子を抱く柔和な笑みの男性と、目の前の女性に似た背の高い女性の姿があった。
写真と女性の姿からフェルンが、アウラの関係者だと考え、呼びに行こうと考えていると、家の扉が丁度開かれ、そこにはフェルンを呼びに来たであろうアウラの姿がある。
「フェルン、そろそろ勉強に戻――」
そして、フェルンの側にいる女性の姿を凝視して、珍しく行動を暫く止めて思考ごと停止した様子のアウラは、若干小刻みに震えた。
壊れたロボットのような様子のアウラに首を傾げるフェルンであったが、それを他所に目の前の女性は、とても真剣で今にも臨戦態勢に入る直前のような表情でポツリと呟く。
「本当にちっちゃくて可愛い魔族……」
「うわぁ……」
普段上げない声を出すアウラの側に女性は近付く。そして、美しいと言える容姿にニコリと可愛らしい笑みを浮かべると、自身の胸に手を当てて問い掛けた。
「失礼ですが、なでなでしてもいいですか?」
「お前……ぜったいあの馬鹿弟子の子孫じゃんね」
その後、アウラは弟子の子孫――"メトーデ"という名の魔法使いから撫でられつつ、"生き写しじゃない"、"北部高原から何しに来たのよ?"等と呆れ気味に呟くのであった。
〜 道具紹介 〜
・金のペンダント
アウラが
・アウレリアの聖槍
賢者アウレリアの、三又の槍
妄念の象徴となるべき聖杖
それは、穢れた血に力を与える
母なるものとの愛の証明でもある
真実の母は、ただここにあるのだ
必要能力値
筋力 24
技量 14
神秘 27
・なでなで
メトーデが小さいものを撫でているときに話しかけると取得できるジェスチャー。
〜 もう読まなくて良いところ(投稿が遅れて申し訳ありませんでした) 〜
皆様のご愛好により、お気に入りが10000突破しました。また、いつもご感想や評価などありがとうございます。感想を眺めてニヤニヤするのが趣味のひとつなので、皆様のご感想などを眺めつつこれからも頑張って投稿していきたいと思います。
さて、皆様。"僕の妻は感情がない"というアニメが七月の頭から放送するので、是非見てください(ダイレクトマーケティング)
投稿小説やXからでもわかるように普段から貞淑に隠しているので、どなたもご存じないと思いますが、私は無類の人外スキーであり、私がここまで推しているということは、まあそういうことです。特にこの小説でのアウラの挙動が好きで読んでくれている方々には恐らく刺さると思われますので、損はしないでしょう。
また、壊れそうな物ばかり集めてしまうガラスの十代の作者的にこの作品を甘めに評価すると、令和のちょびっツと言ったところでしょうか? ミーナさん首の角度に注目して観ることを激しく勧めます。後、ミーナ通信というものが、YouTubeで何やら公式がやっておりますね。
あ、そうだ(唐突)。ちなみに作者オススメの近年(最近とは言っていない)の人外漫画を3つだけ挙げるとすると――。
・僕の妻は感情がない
・令和のダラさん
・姫ヶ崎櫻子は今日も不憫可愛い
――そんな感じですね。
真ん中の奴は姦姦蛇螺みたいな多腕蛇女の美人(迫真)の怪異が、現代っ子を相手に世話を焼くお話なので、何故かわかりませんが、上位存在が矮小な存在に歩幅を合わせてくれるというのは私が好きそうなお話ですね。
一番最後の奴は金髪・幼馴染・ツインテール・エロ要員(因果)かつハイスペックでいつも自信満々なくせによく可哀想な目にあう負けヒロインという神話生物のお話なので、人外にカウントしております。というか読んでいると櫻子ちゃんは多分、人間と同じ法則の生き物ではないような気がして来るので。
というわけで、とりあえずそれらを1話だけ……1巻だけでもとりあえず買って読んでみてくださいというのが、作者の主張でした(主旨のすり替え)
なんでもしま――(ニコニコよみがえれ…よみがえれ…)