転生したらアウラだった件   作:ちゅーに菌

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こうしんは
わすれたころに
やってくる
(震え声)

書くのに今回時間掛かりました。いつも感想や評価ありがとうございます。また、楽しんで頂ければ幸いです。




アウラ(47歳)

 

 

 

 

 

 

 

『"人を殺す魔法(ゾルトラーク)"』

 

 

 フェルンの眼下に収まる見慣れた景色の中で先程から行われているのは、互いに"人を殺す魔法(ゾルトラーク)"を放ち、それを"防御魔法"で弾き続けるという指導試合でよく見掛ける光景であった。

 

 ただし、その規模があまりにも異常なのだ。

 

 何せ、常人にはさながら流星雨同士が衝突するようであり、数えることさえ諦めるほど無数の白と黒の"人を殺す魔法(ゾルトラーク)"がフリーレンとアウラの全方位から放たれ、それらが分裂と収束を交えつつ周囲を削りながら殺到していた。

 

 そして、それらと同数の防御魔法の部分展開をすることで互いに相殺し続けているのだ。違いとしては、アウラの方が技術に優れているのか、人を殺す魔法(ゾルトラーク)"の数がより多く、"防御魔法"が小さく展開されていることだろう。対するフリーレンは、それを余りある魔力出力で補っており、戦いは拮抗しているように見える。

 

 

『"人を殺す魔法(ゾルトラーク)"』

 

 

 ある瞬間、フリーレンが莫大な出力の"人を殺す魔法(ゾルトラーク)"による極光を放ち、それをアウラは"防御魔法"を多重展開して受け止める。フリーレンが放ったそれとほぼ全く同じ直径の"防御魔法"を瞬時に数十枚もの枚数を重ねて展開する様は、人間技とは決して思えない筈だ。

 

 しかし、途切れることなく照射され続ける"人を殺す魔法(ゾルトラーク)"は、才能や技能を上から磨り潰し、硝子のように次々と"防御魔法"が砕け――その途中でアウラは"防御魔法"を自身を守りきれないほど縮小させる代わりに枚数をより増やし、部分的に直撃しつつ防ぐ。

 

 結果的にフリーレンの"人を殺す魔法(ゾルトラーク)"はアウラの片腕を容易く消し飛ばし、それに加えて脇腹も小さくはない面積を抉られたが、その断面から鮮血が飛び散ると共に、フリーレンの魔法の余波と光があまりの威力故に彼女の姿を完全に隠した。

 

 

『"血を操る魔法(バルテーリエ)"――』

 

 

 アウラは文字通り身を削って生み出した隙に、自身の状態に目もくれずに魔法を使用する。それは明らかに致死量を超えて片腕と脇腹から溢れ出た血液が、蜘蛛の巣のように拡散し、更に先端を無数の針山のように変えつつフリーレンへと迫った。

 

『"大鎌を廻す魔法(シュピラーレ)"』

 

 それと共に飛び散った血液の雫のそれぞれが質量を無視して膨張し、数十以上の大鎌へと姿を変えて、異音と共に空中にいるフリーレンを囲む。

 

『"裁きの光を放つ魔法(カタストラーヴィア)"』

 

 更に無数の光の矢が展開され、腕から大樹のように伸びる"血を操る魔法(バルテーリエ)"の枝と、"大鎌を廻す魔法(シュピラーレ)"の合間を縫って突き進んだ。

 

 3つの魔法は速度が遅い順に放たれており、それが溜めて放たれた"人を殺す魔法(ゾルトラーク)"の被弾とほぼ同時のカウンターかつ、魔法を放った直後に発生していた。

 

 それはフリーレンが、魔法を撃った刹那の間だけ魔力探知が途切れるという魔法使いの初心者のような癖を有していることを知る故の行動であり、空から全体を見ている者は僅かな違和感を覚える程度であろう。

 

「――――ッ!」

 

 結果として、フリーレンからすれば、アウラに直撃した瞬間から全く別の魔法が同時に3つ飛んできたようにしか見えないため、目を見開いており、戦闘中の彼女にしては珍しく動揺している姿が見られる。

 

 それは"防御魔法"で自身を囲わなければ、既に間に合わないということを理解しており、その行動を強いられること自体が悪手であることを意味していた。

 

 フリーレンが幾つか飛来する魔法を引き付けて撃ち落としつつも最後は"防御魔法"を球状に展開し、自身を囲う。それを見越したアウラは健在の腕を向けて、魔力を収束させる。

 

 

「癖を直せ――"人を殺す魔法(ゾルトラーク)"」

 

 

 そして、腐敗の賢老クヴァールが生み出した貫通魔法による黒い極光が放たれた。

 

 最も遅く撃たれた筈のその奔流は、最速の魔法故にフリーレンの"防御魔法"へ殺到する3つの魔法の中へと即座に合流し、計4つの魔法による同時攻撃となる。

 

 それはあまりもの威力によって巨大な魔力の爆発を生み、見ている者たちをして過剰という単語を頭に浮かばせるだろう。

 

「相変わらず無駄に頑丈ね……」

 

 使用した魔法によって未だ魔力で作られた光や血煙の爆炎が空に色濃く残り続け、赤い残滓が空で輝く中、アウラは小さく溜め息を落とす。

 

 そして、中心にいるであろうフリーレンへ伸ばしていた"血を操る魔法(バルテーリエ)"を身体に戻しつつ、魔法を使った。

 

 失った脇腹が"血を操る魔法(バルテーリエ)"によって傷口の血で再現されると、回復魔法が起動し、血の赤から色白の肌色を帯びて完全に復元される。逆に片腕は、そちらの方が都合が良いのか、"血を操る魔法(バルテーリエ)"にしたまま腕の形を維持する。

 

 それはアウラにとって手足や大部分の肉体の欠損程度ならば、負傷ですらないということに他ならないが、今までの彼女の有り様を見ていれば、そう不思議でもないであろう。

 

 そして、それが終わったところで魔力の煙が晴れ――"防御魔法"を球状に展開したまま健在のフリーレンの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(いったいなぁ……)

 

 

 そんなことを思いつつ、フリーレンは対峙している存在――間違いなく彼女の知る限り、戦闘という分野において最強あるいは反則だと考えている魔族の一体であるアウラを見据えた。

 

 なぜこのようになったのか、答えは単純であろう。

 

 フリーレンが、アウラの魔法が受け切れる程度に強めて"防御魔法"を展開したからに他ならない。どう見ても即死の魔法による攻撃をただ迸る魔力量だけで防いでみせたのだ。

 

 ただし、フリーレンも無傷というわけではなく、アウラの大鎌のひとつの尖端が、フリーレンの"防御魔法"を貫通しており、その刃が肩口を斬り裂いているようであった。とは言え、フリーレンは当たる直前に魔力を集中させてガードしていたため、浅く裂かれているに過ぎない。

 

「"大鎌を廻す魔法(シュピラーレ)"」

 

 アウラの呟きで、"血を操る魔法(バルテーリエ)"ではない方の腕に大鎌が握られ、そのうちにフリーレンが"防御魔法"を解いたことで、刺さっていた大鎌が地に落ちていく。

 

 そして、落下した大鎌が容易く土に突き立ち――同時に魔力探知に反応があった。

 

 

『"距離を操る程度の魔法(ゼンゼンマン)"』

 

 

 見れば、アウラはその場から消えており、フリーレンの背後で大鎌を振り抜いたままの姿勢でそこにいる。

 

 対するフリーレンは、卓越した魔力探知能力と、反射神経に加え、相手に対する理解からそれを姿勢を反らすことで避けていた。

 

 それは余程に卓越した魔法使いでなければ、認識してからの回避など到底叶わないほどの絶技であり、明らかに"空間移動"あるいは"瞬間移動"という人類には、原理すら解明できない魔族の魔法であろう。

 

 

 "距離を操る程度の魔法(ゼンゼンマン)"――。

 

 

 かつてアウラが"強制脱出魔法(フリチェバウンス)"などと名付け、500年の長きに渡り改良を続けていた魔法の終着点であり、フリーレンは多少の懐かしさを覚える。

 

 それはシュラハトが用いていた"転移魔法"をほぼ完全に再現し、そこに魔法の天才足るアウラの改良が加わった結果、距離そのものを操る魔法と化した魔族らしい人智を超えた魔法だ。

 

 それ故、フリーレンの本来の魔力や、奥の手のように普段は秘匿して使わない魔法であり、それがアウラの場合――"服従させる魔法(アゼリューゼ)"と同様に確実に殺す相手にしか使わない魔法のひとつである。

 

(まずいなぁ……)

 

 当然ながらフリーレンは、初見ではなく対処可能であるが、その性能の極悪さを死人以外で知る数少ない人物であるフリーレンは、アウラの大人気無さにやや眉を顰めた。

 

 そして、アウラは大鎌を振り抜いた勢いをそのままに回転し、半分ほど身体を捻ったところで再び姿が消え、フリーレンの正面に角度を変えて出現し、大鎌の返しの刃による一閃が振るわれた。

 

(流石は()()前衛だ――けれど、ヒンメルより遅い)

 

 フリーレン(わたし)より魔力が少なく、ヒンメルより遅く、アイゼンより一撃が軽く、ハイターより回復が下手な勇者パーティーの商人。それがフリーレンが認識しているアウラという存在である。

 

 故に反応したフリーレンは、刃を受け止めるために"防御魔法"を部分展開した――が、衝突前にまたアウラの姿が消え、側面に現れると共に返しの刃を空振ることを起点に全身を駒のように回転させ、人間業でない速度でしゃくりあげられた大鎌が襲う。

 

 

『"高速で移動する魔法(ジルヴェーア)"』

 

 

 迫るアウラを横目で見据え、体捌きでの回避も"防御魔法"も間に合わないと判断したフリーレンは、自身を瞬時に加速させる魔法により距離を取る。

 

 それによって、瞬く間に100m以上アウラから距離が離れて斬撃そのものと化したような姿を遠くに見据え、僅かに生み出した時間で、反撃可能な魔法を選ぶ。

 

("人を殺す魔法(ゾルトラーク)"……はダメだね。流石にゼロ距離じゃ役に立たないし、アウラのひと振りよりはやい魔法っていうと――あぁ、最悪だなぁ)

 

 フリーレンの脳裏に魔法の作り主――アウラの長男である"アウル"の人間味のない笑みと、ついでに未だ犬猿の仲の彼のパートナーの姿が浮かび、悪態を吐きつつ杖を振りかぶりながらその魔法を展開した。

 

 次の瞬間、魔力探知の反応と共に視界が切り替わり、眼前に大鎌を振り抜き、"血を操る魔法(バルテーリエ)"を武具として放っているアウラが眼前にいる。

 

 それは転移してきたのではなく、フリーレンが目の前に転移させられたことを意味しており、魔族らしい意味のわからない魔法であることも然ることながら、異様な技量の高さと、人間離れした躊躇の無さにより、反則レベルの奇襲性の高さを誇り、これまで数多の魔族やアウラが生かしておく価値がないと判断したモノに振るわれて来たのだ。

 

 しかし、それ故、先の先を見据えられれば、転移した瞬間が唯一の隙となる。そして、アウラのクセを理解していれば、それを判断するのはそう難しい話ではない。

 

(ヒンメルなら――)

 

 更にフリーレンは自身の薬指に輝く指輪を意識しながら、かつてヒンメルがアウラの転移に反応し、対処してみせた太刀筋をなぞる。

 

 

 

『"月明かりを言祝ぐ魔法(モーントリヒト)"――』

 

 

 

 既に発動したその魔法は、フリーレンの杖を淡く纏いながら、"月光"を束ねたような一振りと化し、振り抜かれていたアウラの大鎌を片腕ごと通り抜けた。

 

 言ってしまえば、"魔力の刃を生成する魔法"という単純極まりないモノなのだが、どういうわけかその光は、竜並みに魔法耐性を持つために常人の"一般攻撃魔法(ゾルトラーク)"では傷一つ付かないほどの身体をしたアウラの腕を肘先から切断し、また彼女の半生を共にした魔法である大鎌すら断ち切る。

 

「…………ッ!」

 

 フリーレンが息子の魔法を使ったことに加え、明らかに見知った剣術と言えるそれを放ったことに僅かに目を大きくしたアウラであったが、彼女の身体は意に介さず機械のように動き、残っていた片腕の"血を操る魔法(バルテーリエ)"による貫手がフリーレンの脇腹から肋の下へ突き刺さる。

 

 互いに抱き合うような姿勢で空中に留まり、それぞれ腕と脇腹から鮮血を静かに流しつつアウラとフリーレンの視線が重なり――先にアウラの方が口を開く。

 

「私の勝ち……と、言いたいところだったわね」

 

 チラリと首元に移した視線を辿れば、フリーレンの杖がアウラの首筋に添えられており、まだ淡い光を帯びて表皮を裂くそれは刹那の時間で刈り取れるだろう。

 

 逆にフリーレンの体内を貫いて更に細く伸ばされた"血を操る魔法(バルテーリエ)"は、器用にも他の臓器や血管を一切傷めずにその心臓の手前にまで達していた。

 

「いたいんだけど……?」

 

「お前こそ……私の手足を雑草か何かだと思っているんじゃないでしょうね?」

 

「似たようなものでしょ。そっちが、千切れること前提に来てるんだから」

 

「……まあ、違いないわ」

 

 アウラはフリーレンに差し込んだ"血を操る魔法(バルテーリエ)"を引き抜きつつ、回復魔法でフリーレンの傷を跡形もなく塞ぐ。

 

 更に失った両腕を再生させると、白魚のような手の片方にベッタリとフリーレンの血が付いており、それを見たアウラは、徐ろに指先へ舌を這わせて舐め取る。

 

「ホント……。味だけは一丁前ね」

 

「……そういうところだけはいつまで経っても魔族だ」

 

 そんな何気ない会話をしつつ、フリーレンから離れたアウラは地上に降り立ち、首を鳴らすと再び"大鎌を廻す魔法(シュピラーレ)"で大鎌を構えた。

 

 空に浮いたまま対峙するフリーレンは、そっと見下ろしてただ待ち、それに答えるようにアウラは、もう片方の手を自身の頬に添えると表情が変わる。

 

 

「私は魔族よ、死ぬまで」

 

 

 次の瞬間、アウラの魔力が濁流のように溢れ、地を薙いで突風を起こすほど荒れ狂い、その体外の魔力が数倍に跳ね上がった。

 

(ほんと――)

 

 それを眺めるフリーレンは、出会った頃と比べるべくもないほど莫大になったそれに思いを馳せ、それと共に自身が常にしている魔力制限を秘匿などではなく、戦闘の駆け引きのひとつとして使用している姿に多少の呆れすら覚える。

 

 フリーレンは、自身が魔法使いとして、魔法を愚弄するような卑怯極まりない存在であると自覚しているが、アウラは明らかに好んでそれをしていた。

 

 何よりも――。

 

 

「うれしそうだね、アウラ」

 

「……? なんのことかしら?」

 

 

 アウラがしていたその表情は、頬を吊り上げて相手を見据える会心の笑み以外の何物でもないだろう。

 

 それを今でも自覚していないことにフリーレンは内心溜め息を吐く。また、これについては死ぬまで自覚しないだろうとも考えた。

 

("断頭台のアウラ"か……)

 

 約500年前に全知のシュラハトからこの生き方をしていなければ、七崩賢の断頭台となっていたと言われてから幾星霜。

 

 勇者一行の商人であり、魔族のアウラは結局その"断頭台のアウラ"という異名で魔族たちや一部の人間から呼ばれていた。

 

 それは服従させた相手の首を斬り落とすから等という生温い理由ではなく――自身よりも格上の相手ばかりを明らかに好んで殺していたからだ。

 

 魔族の社会は、人間が着飾ることで階級を示すように魔力の量で階級が決まる。そのため、魔力を誇示することを強いられ、魔法に縛られていると言えるが、魔族への社会帰属意識が皆無のアウラには一切それがない。

 

 そのため、圧倒的な技量と番狂わせや不意打ちに富んだ異常な数の魔法の選択肢によって、格上の相手を正面から搦め手で打倒するのである。

 

 丁度、庶民が貴族の首をそれに掛けるように。

 

(今は、隠すのも意味ないや)

 

 そう考えたフリーレンは、魔力制限を取り払い、外に放出する魔力だけでアウラの倍以上であるそれを顕在化させる。

 

 単純にこれで如何なる大量に魔力を消費する魔法の発動に対しても、魔力制限をしているときに比べて多少のラグが無くなるためであった。

 

 

「ウフフ……行くわよ?」

 

 

 それに答えるようにアウラは、大鎌を持たない手に"服従させる魔法(アゼリューゼ)"の金の天秤を出現させる。

 

 そして、天秤を軽く横に振るい――これまでとは毛色の違う量の魔力消費を伴う大魔法が起動し、フリーレンが魔力探知で認識出来るより遥かに広範囲に魔力が駆け巡る。

 

 その直後、フリーレンの眼下に収まる限りの大地が、色を喪って灰と銀へと置き換えられていき、僅かに聞こえていた木々や草花がざわめく葉音は、金属が擦れる不協和音へと変わった。

 

 それは大地から繋がり、アウラが魔力越しに認識出来る範囲全ての有機物・無機物及び動植物の全てが、金属に置換されていることを意味している。

 

 更に大地から様々な地域や家系のモノを模した騎士の姿をした鉄人形が生え、蠢くばかりに地を埋めていく。それらは人のような形をしているが、頭部がなく中身まで黒鉄に染まっており、やや人間離れした関節可動域になっても関係なく自立するそれらは最早魔物のように映るだろう。

 

 そのあまりに異様で現実味のない様は、まさに魔族の定義である御伽噺のような魔法そのものであり、実際にアウラは既に絵本の魔女の領域まで踏み込んでいた。

 

 最後に木々からは鉄だけで出来た剣・槍・斧に加えて、弓や大鎌などの武器が無数に生って落実し、それと共に草木は鉄の矢と矢筒へと変わり、それらを騎士たちが拾い上げ、戦列を成す。

 

 そこには無機質な鋼の世界と、武具と弓を持った数万に上る首のない鋼の軍勢が控え、その先頭にアウラが立っている。

 

 そして、金の天秤を掲げると数万の軍勢全てが鉄の矢を番え、空中に浮かぶフリーレンたった一人に狙いを定め――天秤が降ろされたことで、大地から空を黒く染めた。

 

 

 

『"万物を鋼に変える魔法(アイゼンフォルス)"――』

 

 

 

 それは、いつかアウラが、"黄金郷のマハト"と呼ばれた魔族から学び、フリーレンとアウラが数奇な運命を辿るそもそもの原因となったあの魔法を模し、それを改悪しながら自分なりのモノにした何か以外の何物でもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆ ◆

        ◆

          ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うえぇぇぇえぇん!」

 

「あー、うーうー……!」

 

 魔族のいる村の郊外で、フリーレンは先日産まれた三女の"アウローラ"を抱えながら眉をハの字に変えた困り顔をしている。

 

 というのもそれなりにアウラの魔導雑貨店ことマホショ経営が、軌道に乗って来たらしく、"少しは働くじゃんね、無職"という大変心無く、遺憾な言葉を投げつけられた結果であった。

 

 無論、魔法使いは無職ではないと反論したフリーレンであったが、アウラ曰く、魔法使い・戦士・勇者などのモノはロール(役割)であってジョブ(職業)でないらしい。尚、僧侶は職業である。

 

 ならアウラは何をしているのかと問えば、"商人だけど?"と証明証書などと共に正論を叩き付けられたため、フリーレンは小さくなり、仕方なくアウラが店にいる時にアウローラの育児を任されたのであった。無論、アウラにとって良いように言いくるめられた形であろう。

 

『きしゃー! ぐるるる……!』

 

 尚、アウラとフリーレンを同時に取られた形になったアウレリアは、赤子の妹に対しても姉らしさなどゼロであり、人見知りな飼い猫並みに自己主張や嫉妬心が強いせいで全く役に立たず、フリーレンが一人でやっている状態なのである。

 

「アウラのばか……ひとでなし……。子供全員に自分の名前入れてるくせに……」

 

「びえぇぇん!」

 

「泣きやんでよぉ……」

 

 食事はアウラが朝自ら搾ったモノをナスのような形状で謎に授乳しやすい瓶から既に与えており、おしめも少し前に替えたばかりでまた出ているということもなく、幾らあやしても泣き止む様子がない。

 

 ちなみにアウラなら"なんだ、眠いから泣いているだけじゃない"などと思いもしない答えを一瞬で判断する。流石は4人育てた母と言うべきか、魔族らしい尖り過ぎている察知能力と言うべきか。

 

「ふぇーん……!」

 

 そんなこんなでフリーレンは軽く育児ノイローゼを体験していた。尚、夕方にアウラが戻れば、その後は全てアウラが引き受けるため、日中限定である。

 

 丁度、正午過ぎの農作業の休憩時間の頃合いであり、村の何処から香ってくるのか、煙草の匂いが風に乗って微かに感じるが、フリーレンはそれどころではなかった。

 

 

「ぅん――――?」

 

 

 そんな最中、フリーレンの腕にいるアウローラは、不思議そうな様子で何処かを見つめながらキョトンとした顔になると泣き止む。

 

 そして、目を三日月のように細めて破顔すると、太陽のようにニッコリと笑みを浮かべた。

 

「んひ! んいひひっ!」

 

「……あ、わらった」

 

 その姿にフリーレンはようやく安堵する。そして、アウローラが落ち着いたら外で読もうと考えていた魔導書を取り出し、そのページを捲り――。

 

 

 

「驚いたな。俺を見つけたか」

 

 

 

 背後から掛けられた聞き覚えのある声に身を震わせ、アウローラを庇いながら飛び退くと杖を展開し、ソレから距離を取ると同時に向き合って対峙した。

 

 十数mという近さでそこにいたそれは、ワインレッドの髪をオールバックにしており、北部の帝国の軍服を思わせる衣服を纏い、左上半身を覆い隠すほどの外套を肩に掛けている大柄な男性の魔族の姿であった。

 

「一応、名乗っておこう……」

 

 魔力を隠しているためか、フリーレンの魔力探知に一切の反応はなく、魔力を隠して接近していたというのに魔族らしくその場に佇んでいる。

 

 見れば、魔族の男の片手には火の着いた紙巻き煙草が握られており、そもそも隠す気も接近するため程度のものだったのであろう。

 

「魔王軍、六崩賢黄金郷のマハト」

 

 それは約100年ほど前にフリーレンの片腕を黄金に変えた張本人であり、敗走する他なく彼女の心を折った存在である。

 

「シュラハトの言う――人間に最も近い魔族はどこだ?」

 

 魔族の男――黄金郷のマハトは"悪いようにはしない"とだけ続け、対峙しながらも何処か怯えるように杖を構えるフリーレンを他所に、アウローラの楽しげな笑い声が木霊するばかりであった。

 

 

 

 

 

 







〜 QAコーナー 〜

Q:なんで死にたくないクセに格上に挑みたがるの?

A:フロムゲーマー


Q:なんで騎士に頭ついてないの?

A:AIMの邪魔



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