転生したらアウラだった件   作:ちゅーに菌

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遅れてしまい申し訳ありません。

いつも感想や評価ありがとうございます。そろそろ2期が楽しみですね。

アウラと愉快(当社比)な魔族たちの日常編のスタートです。






†私には感情が無い†

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くわぁ……」

 

 

 私はいつも通りの時間に起き、季節のせいでまだやや暗い窓の外を眺めつつ欠伸を落とす。

 

「……すー…………」

 

「………………」

 

 相変わらず、魔族と寝ているのに懐疑も畏怖も欠片もない寝顔ね。私が間抜けそうとか、馬鹿そうとか、美味しそうとか考えていること知らない訳でもないでしょうに。

 

 旦那の寝顔に少しだけ目を向けてからベッドから抜け出し、いつものように朝食を作るため、台所へと向かった。

 

 早朝の5時ほどの時間ではあるが、外に耳と魔力探知を向ければ、微かな喧騒を感じ、別段私のルーティンが周囲から逸脱していないことがわかる。

 

 とは言え、なろうでお馴染みの中世ヨーロッパ風などと言える文明レベルに思えるフリーレンの世界では、やはり昔の人間と同様に夜が短い関係で朝が早いのであろう。とは言え、街と言える規模のこの村では、魔法の玄関灯が民家の軒先には設置され、同じく魔法のランプも配られているため、本物のド田舎に比べればこれでもマシなのだ。

 

 まあ、この私が製作し、村民全てに支給するようにした魔法の灯りは、大きな街にある魔法の街灯の10倍以上のコスパで輝きが持続してメンテナンス不要で数百年は動くと思う優れものであり、人間には理解できないし、する必要もない代物だ。それで多少、村人の夜が長いというのはあるかも知れない。

 

 それにしても人間の作る魔導具の程度の低さと底の浅さには本当に辟易してしまうというものだ。だから、村に商隊が来る度にフリーレンがガラクタを買うのはマジでどうかと思うの。その度に改良型のを作ってやってんのに"違うんだよねぇ……"とでも言いたげな嫌そうな顔しかしないし。というか、思ったけれどそもそもなんでアイツ、この生活様式で現代の大学生みたいな夜更かししてるのよ、全く。

 

 

「……ふーふふんふん♪ ふーふー♪」

 

 

 そんなことを考えていると台所に着き、直ぐに決めていた通りの献立の食材と調理器具を浮かせ、包丁を握り締める。

 

 

「たじろげ 壮絶にかつ 空を舞うエレジーよ♪

 溺れる カーリーの手に 千の藁がなびくよ♪

 嗚咽は高純度 灼熱の断末魔♪

 ひも解け 記憶の粋 救済の手引きを♪」

 

 

 そう言えば先日、私が村を留守中に黄金郷のマハトが来訪し、なんか居た息子のアウルとタイマンして負けて村に暫く住むことになった。フリーレンの奇襲は失敗、スイーツ(笑)

 

 実際の出来事を簡潔にまとめればそういうことになる。まあ、もう少し詳細を語れるが、別に重要な情報も特にはなく意味もないのでそれだけでいいだろう。

 

 そんなことよりも私には看過できないことがある。

 

 先に言っておくが、魔族が一時的に増えることは別にいい。というか、ソリテールはアウルの嫁ということで認識されているし、挙式も村の教会で行っていたりするため、地味に馴染んでいる。マハトは、村出身の大英雄であるアウルの友人と言う無敵の肩書きで村に居るため、村人からは"はえー……すっごい魔族なんだぁ……"ぐらいの認識をされており、仮に何か害のある行動を彼がしようとすればアウルが殺すので問題ない。

 

 戦力的にはアウルが居れば何も問題ないだろう。見たことはないが、魔王とか言う魔族の化け物でもなければ、搦め手なしの単純な戦闘力でアウルに勝てる魔族は存在しないと言っても過言ではない。恐らく、シュラハトでも正面からは絶対に戦おうとしないだろう。まあ、アウルならあるいは既に……いや、この話はいいわね。

 

 あれはそういう生き物。私が産み出した人間の化け物だ。私の子供たちは図らずも異能レベルの異才を持つ半魔族とでも言うべき存在だけれど、アウルのそれは魔法使いに対して絶望的に相性が良過ぎる。

 

 話がズレた。それなら私が最近、看過できないことが何かと言えばそれは当然――。

 

 

 

『マハトさまー!』

 

『ソリテールのおねーちゃん!』

 

『アウラぁ!』

 

『あっ、アウラだ!』

 

『アウラー! かたぐるましてー!』

 

『なんだお前ら』

 

 

 

 魔族の中ですら私の扱いだけが、クソガキ共の中でやたら軽いことが判明したためである。

 

 思い返してもめちゃくちゃムカムカするわ。

 

 アイツら村一番の功労者にして、No.2であり、天才魔族であるこの私を500年以上生きた無職エルフと同じ扱いとは正気の沙汰ではない。ヒエラルキー最上位の者をこの扱いとは、将来ロクな人間にはなれないだろう。

 

 

『アウラには目上の人へ払われる敬意とかがないんだねぇ。まあ、わかるけどさ』

 

『フリーレンだっ!』

 

『遊べー、フリーレン!』

 

『お前も同じ穴の狢じゃんね……!』

 

『アウラのかたぐるまー!』

 

『きゃっきゃ!』

 

 

 全く……遊具や玩具もあれだけ与え、遊具が危険だとか抜かす移民のカス親を説き伏せ、肩車した時に手に刺さると危ないので"ツノの尖端を丸くする魔法(ドラフハンドル)"まで作ったと言うのにこの仕打ちは巫山戯んじゃ――。

 

「動かせ レスキューの レスキューの遺伝子――」

 

「あら? 美味しそうな匂いね」

 

 私は背後から声を掛けられたことで手が止まる。

 

 どうやら魔力の隠蔽と忍び寄るという猛獣らしい動きで、私の魔力探知に掛からず、気配の認識すら出来なかった。

 

「まるで人間みたいだわ」

 

 そこに居たのは、魔力で出来た首枷と鎖を着けられ、淡い緑髪をして薄ら笑いを浮かべた大魔族――ソリテールだ。無名でありながらマハトと同格レベルの魔族であり、何処からかアウルが捕まえて来た嫁である。

 

 少し前まで無名の大魔族だったが、アウルが聖都へも連れ回すため、すっかり無名ではなくなってしまったのは素直に笑えるところだろう。コイツレベルの魔族が名前を消すには、どれほどの年月を利口な魔族らしく過ごせば良いのかなど私には想像もしようがない。

 

「……なによ、ソリテール?」

 

「ふふっ、構えても何もしないよ。ただ、あなたが人間に馴染んでいる姿を見ているだけだから」

 

 村に居着いてから話を聞く限り、マハトとコイツは魔族の本能を理性と欲望で抑え込めるタイプの魔族だ。故にコイツらの存在が、魔族はスーパーエゴが存在しないのではなく、持っていないだけだという私の理論の裏付けになる。

 

 とは言え、罪悪感を知りたいなどと厨二病が始まった小学生みたいなことを言っているマハトに比べれば、こちらの方は知識欲だけで成り立っているため、危険度は比べ物にならないだろう。

 

 というか、そもそもマハトは、話によればあのシュラハトが送り込んで来たという時点で、私としては信用せずとも警戒もそこまではしていない。

 

「ねぇ、聞きたいことがあるのだけれど?」

 

 何せ態々私自身の魔法を使わせてまで、約400年後にシュラハトの仕事を私がしなければならない訳で、逆に言えばそれまでの私の生存は確約されているということになる。

 

 ならばシュラハトが送り込んで来た魔族が、私に直接的な害を為すことは考え辛い。まあ、人間とは感覚が異なるため、その差異で何か仕出かすことはあるだろうが、それはコチラが目を光らせるべきことなだけの話だった。

 

 

 

「いったい、どうやってアウルを作ったんだ?」

 

 

 

 だが、このソリテールという大魔族は別だ。

 

 "話す"という行動によって、人類の習慣、文化、魔法技術を生涯探求し続けている魔族の中でも一際の異端な魔族であり、本能ではなく自身の利益の為だけに人間を殺すことを選んでいた。

 

 殺すことに理由を付けられるタイプの極めて理性的で、筋の通った魔族だろう。いったい、アウルは何処からこんなものを掘り出して来たのか分からないが、これだけは言える。

 

 野生に嫌気が差して人間の村で暮らし、魔族社会に帰属する気ゼロな私とは余り話が合いそうにないということだ。似ているなどとんでもない、考え方は真逆と言っても過言ではないだろう。

 

 というか……単純にアウルの結婚式が1回目で、今回が2回目に会うから何話せばいいのかよくわからないんだけれど……歳上の義娘になるし……。

 

「しゃ……しゃー!」

 

「あら? うふふ、アウレリアもごきげんよう」

 

 いつの間にかキッチンの隅にアウレリアが居たが、いつも人見知りが激し過ぎて、懐かない野良猫のようになっているアウレリアの威嚇にも心なしか元気がない。

 

 どうやらアウルと違ってガチ魔族は性癖ではないようだ、なんかそれだと私が魔族ではないような言い方になるので癪に障るな。

 

「それで、答えて貰えるかしら? アウルに聞いてもはぐらかされるのよね」

 

「答えてどうするのよ? 魔族には縁遠いものね」

 

「つれないわねぇ……まあ、別に――」

 

「理由を言えって言ってるじゃん、ね。まどろっこしいのよ」

 

「あら、そうだったの……?」

 

 聞いておいて、なんだコイツ? まあ、いいや。

 

 別に私が"魔族が人間の子を産めるようにする魔法"でアウルを産んだからなんだと言うんだ。まあ、悪用とか以前に孕んでいる時は魔力量が5分1になる魔族的カス魔法だし、どうせ使わないだろうな。

 

「大したことじゃないわ。身近な存在だし、アウルを少し調べていたら面白い仮説が浮かんでね。その裏付けを取りたいだけよ」

 

「ふーん」

 

 心底どうでもいいことだった。

 

 私はフリーレンが魔導書を散らかすせいで、邪魔だと度々言われるので、最近作り始めた"収納魔法(仮)"から全32巻ある"魔族が人間の子を産めるようにする魔法"の魔導書の1巻を取り出す。

 

 狐につままれたような顔をしたままのソリテールは、それを受け取るとパラパラと眺め、目頭に少し手を添えてから再び口を開いた。

 

「……ねぇ、アウラ。あなたってひょっとして見た目ほど考えて生きていなかったりするかしら?」

 

「いきなり刺してくるじゃない」

 

「アウルも含めて、あなたの子供たちが皆お母さんっ子な理由が少しわかったわ」

 

 なんだかよく分からないが、貶されているということは分かる。しかし、魔族の本能故か、フリーレン並みかそれ以上に魔力のある魔族のソリテールに逆らう気は特に起きないのである。まあ、殺せるなら殺すけど。

 

「"魔族が人間の子を産めるようにする魔法"ね……ところで、アウラはアウルがなぜあれだけの才を持つと思う?」

 

「そんなの私の子だからでしょ。私は六崩賢クラスの魔族よ? それと雑種強勢じゃないかしら、まあ何でもいいのだけれど」

 

 私はそんじょそこらの魔族とは比べ物にならないスッゴい魔族なのである。特別なのである。私と子供たちの才能を見れば一目瞭然だろう。私の自己肯定感が薄まるからそれ以外の理由など別にいらん。

 

「雑種強勢……異なる種を交配すると両方の種よりも強い個体が生まれるという生物学の実験結果ね。まだ、若いのによく知っているわね」

 

 "収納魔法(仮)"から後、31巻の"魔族が人間の子を産めるようにする魔法"の魔導書を順番に取り出して宙に並べつつソリテールの言葉を聞き流す。

 

 うーん……この"収納魔法(仮)"、ぶっちゃけドラえもんの四次元ポケットをイメージして作っているのだけれど、そもそもひみつ道具な四次元ポケットをイメージできるわけがなかったので、ちょっと開発に難航している。

 

 やっぱりそもそも中に決まった空間を作る方がよっぽど簡単だ。いっそのこと内部に城のある空間でも作ってしまおうか? "ポケット魔王城"とかの方がイメージし易いかも知れない。もんむすは別売りだ。

 

「でも本当にそれだけかしら? 私は――」

 

「おはようアウラ、アウレリア。後、ソリテールさんも」

 

「にゃー……」

 

 そこまで考えたところで、いつもよりも少し早く起きた私の彼が、リビングに入って来る。すると直ぐにアウレリアはひと鳴きしてから父親の背に隠れた。

 

 アンタの父親は魔法の才もなく身体能力もその辺の木っ端魔物にも劣る程度の戦闘力でしょうが、という言葉を飲み込みつつ溜め息を吐く。

 

 するとソリテールは何故か彼の方を向き、笑みを強めながらも何処か遠くを見据えているように見えた。その間に彼はいつものように私の隣まで来る。

 

「……500年ぐらい前に遠目で少し見れたきりだけれど……やっぱり少しだけ面影があるわ。それにちょうどここは故郷だったわね」

 

「えっ? それはどういう……?」

 

 そのまま、ソリテールは彼の顔に向けてゆっくりと手を伸ばし――――彼の髪に触る寸前で、私がその手首を掴み、腕力だけで静かに圧し折った。

 

「死にたいならそう言えば?」

 

「あら? あなたが私に勝てるとでも?」

 

「勝てずともこの距離なら刺し違えられないこともないわ」

 

「ちょっと……2人とも待って――」

 

「にゃー!」

 

 アウレリアが彼を引っ張って少し離す。自分の力をまだ十全に使えないアウレリアでもそれぐらいの配慮は出来るようで何よりだ。

 

 それにしても安い挑発だな。このような問答はソリテールからすれば、何気ない会話の一幕でしかない。何より殺り合うメリットがない。故に本気では決してない筈だが……それはそれ、これはこれだ。

 

「ひとつ聞きたいのだけれど?」

 

「何よ?」

 

「あなたが一番大切なものって何かしら?」

 

「そんなもの当然、自分の命に決まっているでしょう? 当たり前じゃない」

 

「今、即座に投げ捨てようとしていたのに?」

 

 …………………………

 ……………………

 ………………

 …………

 ……?

 

 あれ? そう言えばそうね。やだ、可笑しいわ、本末転倒じゃない。

 

「うふふ、そう……お熱いわね。やっぱりあなたは興味深い魔族だわ」

 

「んだとコラ」

 

 それだけ言うと、ソリテールは折れた腕を治しつつ"魔族が人間の子を産めるようにする魔法"の魔導書を全て持ち、リビングから去って行く。

 

「少し借りるわよ? うふふ……面白いわ、本当に」

 

「待ちなさい……!」

 

「あら? 何かしら?」

 

「その魔導書、人間と魔族との交配用の奴だから……それで生まれた個体に魔族を更に掛け合わせたらどうなるのかは未知数よ?」

 

「……なるほど、それも考慮しておくわね」

 

「えっ……マジで使う気?」

 

「…………? 使わせないならどうして渡したの?」

 

「いや、そうなんだけれど……」

 

 あ、あれ……? 文献をまとめたら、魔族は魔力を態々長期間減らすようなモノなんて使わない筈だって………………まあ、管理し易くなるし別にいいか。

 

 ソリテールが変なやつってだけだろう、たぶん。

 

 そのまま、ソリテールの背中を見送り、改めてよく分からない魔族だと再確認してから彼の元まで行く。それから彼の翡翠色の瞳を見つめた。

 

「………………」

 

「アウラ? 俺は大丈夫だよ。それより、折角なんだから仲良くしないと――」

 

 ソリテールが触れようとした彼の髪――赤毛に私が触れ、いつも通り変わりなく、手に髪が流れる。

 

「……変な魔法を掛けたりはされてないわね」

 

「アウラ……少しくすぐったいな」

 

「だまれ」

 

 私の手で遊ばれる彼のその赤毛は、朝日に照らされると少しオレンジ色にも見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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