Dユニット トランスフォーマー:狭間の戦士   作:デ森

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ついに現れる、暴君。相対する歴戦の戦士は、その暴君にかつての屈辱を想起する。彼は乗り越えることができるのか。


第二章 チームレッド編
チームレッド編 第一話


 

【挿絵表示】

 

 Dユニット基地、演習場。チームレッドは、先にSG時空に突入したチームブルーからの出動要請を受けていた。

「ついに来たか……」

 チームリーダーであるスピンアウトはガラスが砕けたような空を見上げつぶやいた。

「隊長でも緊張するんですね」

 チームレッドの紅一点、ロードレイジが後ろから声をかけた。直線的なスピンアウトと違って、流線型の美しいボディをしている。

「まあな。信号があったといっても、時空を超えている影響で簡単なものしか送ることができないらしい。つまり、あいつらが今どこで何をしているのかは向こうについてから調べる必要があるってことだ」

「まあ、それは作戦会議で聞いたんでわかってますけど?」

「ならいいんだよ」

 スピンアウトは微笑んだ。

「俺にとっては何事だって貴重な初体験なんだよ」

「隊長らしいですね!」

 ロードレイジもどこか楽し気である。

 

「たいちょ~!ねえさ~ん!」

 さらに後ろから駆けてきたのはリフトチケット。4WD由来の武骨なボディだが、繊細で気が小さい。

「その姐さんって呼ぶの、少し恥ずかしいんだけど?」

 ロードレイジは指をさして注意した。

「まあ確かに。お前さんの活躍を見たらだれでもそう呼びたくなる気持ちはわかる」

「ちょっと!隊長まで援護するのやめてくださいって!」

  笑いながらロードレイジがスピンアウトの背中を叩く。

「いたっ!ごめんごめん」

 スピンアウトのまんざらでもない様子だった。

 

「スピンアウト殿。ブリーフィングは済んだでありますか?」

 4、5m前方のアストロビームの方から、クランプダウンの声がこだます。

「今行く!」

 三人はその場を後にした。

 

 数時間後。チームレッドはチームブルーと同様にSG時空への突入を成功させた。

 

 

「くそっ、全然だめだ。落下の衝撃で無線系がダメになったのか?」

 スピンアウトが通信系統を軽く小突く。

「違いますね……。これ、今通ったワープゲートの影響で全部の通信系が不調を示してます」

 リフトチケットはいつも通り控えめにそう言った。

「つまり、ここからは自分たちの目と足で探さないとだめなのね!」

 ロードレイジは快活である。

 

「まあいいだろう。昔ほど機材が充分じゃなかったときはそうやってきたもんだ」

 スピンアウトはまんざらでもない様子で歩き出した。

「うわ~!いいですね冒険みたいで!」

 ロードレイジが目を輝かせている。

「えぇ……」

 対照的に困惑するリフトチケットであった。

 

「しかし、ここは事前に方向を受けた通りサイバトロン星そのものだな。まったく違いがないようだ」

 景色を見回してスピンアウトがつぶやく。

「そ、そうですね。地質や大気の成分もほぼ同じと言って差し支えないです」

 リフトチケットは手元の計器を見つめている。

「まあパラレルワールドってやつ?そんなに珍しいものでもないわよね」

「まあな。俺たちのこのボディも、ある次元の地球で獲得したものだしな……」

 

 ――スピンアウトは、自分がこの身体をはじめて獲得した時のことを思い出していた。ある日、今と同じように空中に突如として穴が開いた。それはTFたちの精神体である、スパークだけを吸い込みはじめ、その場に居合わせたスピンアウトもそこに巻き込まれてしまった。スパーク体となって知らない土地をさまよっていると、

「は、はやく機械の身体に定着しなければ消滅してしまう……!」

 

「あ、あれは!」

 目の前に飛び込んできたのは直線的なアウトラインに銀色のターボユニットがついたビークルが2台。赤と白の二種類があったが、迷わず生前――別に死んでいるわけではないのだが――と同じ赤い方を無意識に選んで憑依していた。

 

「よし!いけるぞ!しかも内部構造的に2足歩行で歩けそうだ!トランスフォーム!」

 ギガゴゴギギ……全身の関節にに電気エネルギーがほとばしる音とともに、スピンアウトは立ち上がった。

「なんだこのボディは!サイバトロン以外にこんな生命体がスパークなしで放置されているなんて……」

 関節をひとつひとつ動かしながら、自分の身体に違和感がないことにむしろ開いた口が塞がらなかった。

 

「どうやらここは、格納庫のようだな」

 とりもどした視覚であたりを見回す。どうやらこのビークルは待機中であったらしい。

 

「うぅ……ここは一体……」

 スピンアウトの隣で声がしたと思えば、先ほど選ばなかった方の白いビークルがトランスフォームし立ち上がっていた。

「おおっ!お前もTFか!?俺はスピンアウト!俺も今このボディでトランスフォームしたところだ!」

「スピンアウト……。私の名はコルドン。よろしく」

 

「これからどうすればいいんだ……ここはサイバトロン星ではないようだし……」

 突然襲ってきた不安に、スピンアウトは頭を抱えた。

「まあ落ち着きたまえ。現状分析から始めるとしよう」

 コルドンが冷静に喋り出す。

 

「まず、このビークルだが……。お互いのを見た限りでも、サイバトロン星のものでないのは確かだ。なにやら内部にゆとりのある空間が施されている」

「はあ」

「このサイズ感だと……ミニボットよりさらに小型……。バトルマスター、ヘッドマスターほどのサイズの者が二人乗り込める規格だろう。しかも操縦かんのようなデバイスもある」

「あっ……そういわれてみればそうだな」

「そして、この身体には先住のスパークか、それに当たる精神体は存在していない。では死んでいるのかといえば、破損をしているわけでもない。つまりこれは、小型の者が動かす用のマシンである可能性が高いな」

「そうかそうか!」

「そしれここはどうやら軍事基地のようだな……。おそらく兵士が使用する可変ビークルなのだろう。つまりここにも……」

 コルドンがボディの内部に手を突っ込む。

「やはりな。兵器は内蔵されているようだ」

「おお!これでここを突破すればいいのか!」

 目を見開いて、口角も上がりっぱなしなスピンアウトである。

 

「いやいや。とはいえ慎重に行動した方がいい。これが自律型を想定していないものだった場合、我々のスパークの介入は完全にイレギュラーだ。その兵士とやらに見つかったら何をされるかわからん」

「そうか……。でもまだ、そいつらが悪と決まったわけじゃないよな」

「ん?それはつまり?」

 コルドンが首を傾げた。

 

「こんなすげぇロボットを作れる奴らが、クインテッサ以外にいるんだろ!それってとってもすげぇことじゃん!」

 スピンアウトは、今にも踊り出しそうな勢いで腕を振り回している。

「著しく語彙力が低下しているが……」

 コルドンは隣人の様子に困惑しながら尋ねた。

「あ~~~!だからさ!きっといいやつに違いないよ!きっと情熱のあるやつらに違いない!」

「いやいや……。今君は『クインテッサ』といっただろう?奴らが元は我々TFを奴隷扱いしていたのを忘れたのか?」

 

 そう。TFの身体は機械である。といっても複雑なもので、トランスフォーミウムという電気エネルギーによって形状や高度、細かな組成までも組み替えることが可能な金属で構成されている。生まれたばかりでは何もスキャンしていないプロトフォームというボディだが、その宿したスパーク=魂が気に入った機械、そのデータをスキャンすることで体構造を再構築し、ビークルモードを獲得する。そこから先は、初めて獲得したビークルから大きく逸脱したボディになることはできない。大量のデータを一度消去してから元に戻すのが困難であるように。

 

 しかし、TFが任意のボディになれるという性質を生み出したのがクインテッサ星人である。彼らは複数の顔のある巨大な頭脳から細いケーブルが複数生えた何とも珍妙な姿をしているが、見た目通り非常に高度な知性を持っている反面、力に乏しい。そこで自らの手足として使うために量産を始めたのが、TFの起源の一つだとされている。しかし、今から1100万年前に民間用ロボットA-3が中心となった革命によってサイバトロン星から追放されたため、奴隷のように虐げられていた時代は過去の出来事となっていた。

「いやまあ、でもさ。このボディだってどんな風に扱われてるのか、俺にはわかるぜ。きちんとメンテナンスされているような気がするんだ」

「そのような感覚で語られても私には理解しがたい」

 コルドンは突き放すような態度だった。

「まあいいさ。バレずにここから出てあの穴を通って帰ればいいのかな」

「そうだな……」

 

「――――それが俺とコルドンの出会いだった。というわけ」

 スピンアウトが話を切り上げた。

「えっ、その後は?」

 ロードレイジは呆気に取られ呆然としている。

「いやいや、これ以上はさ、は長くなりそうだと思って!」

 余裕そうだったスピンアウトが慌てふためく。

「え~!?めっちゃ気になるんですけど」

「たぶん、ここからいい展開、という奴では……」

 二人とも不満そうな顔であった。

 

 一方SGサイバトロン星、オートボット基地。

「うおおおおおお!」

 猛々しい叫び声が部屋にこだまする。その声の主はオプティマスプライムであった。オプティマスは癇癪を起して基地の壁を殴打している。

「オプティマス。悔しいのはわかるが。相手を侮っていたようだねぇ」

 そう声をかけたのは、オプティマスプライムに似た姿の、漆黒のボディを持つトランスフォーマーであった。

「す、スカージ……」

 オプティマスが、漆黒のTFに向けてそう呟く。

「とはいえ、君の強さは存分に理解(わから)せてやったはずだ。相手も次の手を打ってくるに違いないだろうねぇ」

「そうか……」

「今回は俺が時期に手を貸してあげよう。面白いことになる!フハハハハ……!」

 

 一方、SGサイバトロン星の片隅。

 廃墟に前線基地を敷いていたチームブルーは、チームレッドと無事合流を果たしていた。

「よっ、待たせたな!ディープカバー。ああ、今はもうリーダーじゃ無かったか!」

「もうご存知でしたか」

 片手を振り上げて、スピンアウトが挨拶し、ディープカバーが会釈で返した。

 

「ストリーク!あなたリーダーに任命されたって聞いたけど!やるじゃない?」

「いや~!それほどでもないっすよ」

 ロードレイジとシルバーストリークは会話に興じている。

 

「あ、ブレーカーさん、どうも……」

 自信なさげにブレーカーに話しかけたのは、リフトチケットである。

「大丈夫だったかい?こっちへの突入は?」

「ま、まあ勢いで何とか……」

「はっはっは!赤組らしいなぁ!」

 

 ブリーフィングを終えて、各自次の行動ための作戦会議が始まっていた。

「だいたいこんな空間の穴、誰がなんのために作ったんでしょうね?」

 シルバーストリークが疑問を投げかけた。

「そんなの、悪い奴に決まっているだろう?」

 答えたのはスピンアウトである。

「悪い奴?」

「ああそうさ。こういう誰かの迷惑を顧みないような奴は、大体悪い奴と相場が決まっているからな」

「なるほど。しかし今までのこうした現象に何の理由があるのか、というのは今のところ不明なんですよ。解明されていないところが多いんです。もしかしたら何かしらのメリットがある可能性も否定できませんが」

 ディープカバーも会話に割って入る。

「いやいや、まあそれはその通りなんだけどな。何かメリットがあるのかも知れないところで、結局何のために何が起きているのかわからないってことは、ちゃんと説明してくれってことでもあるわけだし。説明責任を果たしてないのはプロとして失格だな」

「なんのプロフェッショナルの話なんですか……?」

 ディープカバーは首を傾げた。

「それはまあ冗談として、メリットがあるならそれを堂々と発表しないということはさ、なにか裏があるんじゃないかというわけ。私利私欲のためにこんなこと起こしてるなら、調査のために出動してるこっちの身にもなってもらいたいわけよ」

「確かに」

「まあ、それもそうですね……」

 

「とにかく、今はこの時空のオートボット、SGボッツ気を付けないといけないわけね!そういえばトラックスとかもいるのかしら」

 ロードレイジがシルバーストリークに話かけた。

「トラックスさん?」

「そうそう、あいつ悔しいけど同型じゃない?だからちょっと気になるのよね。ああ、気になるってそういう意味じゃなくて、ライバル心的なやつだから!」

「何も聞いてないでっすって!」

 シルバーストリークが笑って応える。

「ツインキャスト事件の時も世話になったしね~」

「へぇ~」

「大変だったのよ!カセットボットスパイ事件。でもあれでクロスカットさんとお知り合いになれたからよかったのかしら」

「クロスカットってあの大使の!?」

「そうよ~。Dユニットのメンバー編成に一枚嚙んでもらってるのよね。ご縁って大事にしないとだめね」

 

「はいはいそこそこ、話が脱線してるぞ」

スピンアウトの注意が二人に刺さる。

「ごめんなさいね!」

「ディープカバー、考察を聞かせてくれ」

「了解です。トラックスさんがいるかはともかく。今まで目撃されたSGオートボットは、地球方面に向かったオプティマスプライムの部隊所属のTFだったジェットファイアーにバンブルビーことゴールドバグ。こちら世界のオートボットもこの二人だけとは考えにくい。上にはこの世界のオプティマス、SGオプティマスがおり。ほかにも同じオプティマス部隊のオートボットがいると思われます」

 

「というより……。おそらく私とシルバーストリークが戦ったのはオプティマスプライムである可能性が高いです」

「そ、そうか……」

 ディープカバーの発言に、シルバーストリークが唾を飲む。

「俺がエレクトロボルトで明るくなった時に見えた人相、武器もブラスターとアックス。あの巨体とパワー。オプティマスプライムと言われたらそうかもしれない……」

 

「マグナコンボイが失踪したに飽き足らず、この世界のオートボットがあんな凶悪になっているなんて、一体どういうことなんだ……」

 スピンアウトも頭を抱えている。

「あ、あの」

「どうしたリフトチケット」

 リフトチケットは控えめそうに挙手した。 

「でもそれって、相手は未知の敵ではなく、殆どが名の知れたオートボットということですよね?つまりは、こちらのデータベースに登録されている情報や、こちらの知識である程度相手の戦力はわかるということなのでは……」

「なるほど!そういう見方もできるな!」

「やるじゃないチケ男くん!」

 チームレッドの二人の賞賛が飛び交う。

「いやあ……。どうも……」

 

「うわ~!助けてくれ!オートボットに殺される!」

 遠くから悲鳴がこだます。

「あのエンブレムは……ディセプティコンか?この世界ではやはり力関係も逆転しているということか」

 ディープカバーが逃げ惑う市民をみてつぶやく。

「ディセプティコンとかオートボットとかじゃないぜ!困っている奴がいるなら助けないと!いくぜ!」

 シルバーストリークが飛び出していく。

「いいな!その勇気!!」

 スピンアウトも威勢よく駆け出す。

「うわ~!隊長!待ってくださいって!」

 ロードレイジもその後を追っていく。

 そうして、6台のマシンがサイバトロンの大地を疾走しいくのだった。

第一話 終




 なんとか2か月ぶりに更新できました。スピンアウトはモチーフもりもりで戦隊レッドとか、防衛隊隊長とか。
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