それから数時間後。
「トランスフォーム!あいつら!おちょくるのもいい加減にしろよ……!」
街はずれの廃工場。スカージの怒りのボルテージはすでにレッドゾーンを通り越していた。
「レーザーオプティマスプライムと同型のくせに、随分と器が小さいんだな」
柱の陰から顔を出したのはスピンアウトであった。
「ん、お前!今までどこでなにをしていた!」
「お前のことを待ってたのさ。この最高の舞台でな」
「俺様を煽ってここに誘導した、という訳か?ふん、生意気な。地の利で勝敗は覆るとでも思っているのか?」
「まあ余裕で勝てるとも思ってもいないが。チームブルーと戦っているオプティマス。あいつとお前に組まれる方がよっぽど厄介だったのでな。司令官クラスに束になってかかられちゃあ手も足もでないさ」
「自分の実力をよくわかっているじゃないか!だがな!お前たちでは俺一人にすら勝てないのだよ!」
そう言ってスカージがどぎついピンク色の光剣の切っ先をスピンアウトに向ける。
「そうこなくっちゃな!二人とも行くぞ!」
スピンアウトの合図でロードレイジ、リフトチケットが倉庫の陰から姿を見せる。
「スピンレーザー!」「ブラックビーム!」「熱探知ミサイル!」
各々銃撃をスカージに浴びせはじめたその時、
「マトリクスシールドぉ!」
スカージの大剣の中央からエネルギー態のバリアが展開し、すべての攻撃を相殺した。
「おい、今マトリクスって……」
驚愕するスピンアウト。
「司令官クラスなんだ、マトリクスぐらい持ってておかしくないよなぁ?」
スカージがおもむろに胸部のパネルを開けると、その中には大剣と同じ色に光る球体に、左右に取っ手のついた精密機械が露出している。
「なんでこんな凶悪な奴が叡智の証を!?お前、やはりこの世界のレーザープライム、なのか!?タイムリープか何かで以前のオプティマスと……こう、共闘しているってことか!?」
スピンアウトがまくしたたて喋る。
「隊長!しっかり!」
「何か知ってるんですか!」
動揺したままのスピンアウトに、部下二人が声を浴びせるも、スピンアウトの様子は依然変わらない。
「ふっはっはっは!どうかなぁ~?面白い推理だとは思うぜぇ!」
スカージの高笑いが倉庫の壁に反響して鳴り響く。
「くっ……。ガワだけの偽物だと高を括ったか……」
スピンアウトは苦虫を噛み潰した。
「俺がどこから来たかなんて、今更どうでもよくなると思うぜぇ!見せてやろう、もうひとつのマトリクスの力を!」
スカージのマトリクスが閃光を放つ。
「やめろ!」
「隊長!!」
スピンアウトをかばっうように、ロードレイジとリフトチケットがスカージの前に飛び出した。
「二人とも!!」
静寂。飛び出した二人は、力が抜けたように首を垂れてその場から動かなかった。
「これは!面白いことになったねぇ」
「何をした!」
「今に見たまえ!!やれ!傀儡ども!」
スカージの声に反応して、ロードレイジ、リフトチケットが再び動き出す。しかし、そのまなざしはどぎついピンク色に染まり、スピンアウトを凝視した。
「おい!どうした二人とも!もしかして……」
「はっはっは!ご明察ぅ!!洗脳、施してやったよ!」
「うああああああああああ!!!」
スピンアウトが激昂する。
「スピンレーザー!!」
光線が二人を撃ち抜く。
「「!!」」
二人が光線を喰らい、身体のコントロールを失って倒れこむ。
「ふん、意外と冷静なんだな」
スカージが顎に手を当て、眉をひそめた。
「生憎、こんなことは経験済みなんだよ!」
スピンアウトの目がスカージを睨みつける。
「まあいい。俺が直接お前を操って、同士討ちさせてやるからなぁ!」
マトリクスがまたしても閃光を放つ。
「そうは行くか!」
とっさに柱の裏に身を隠す。
「おらぁ!!」
スカージの大剣が柱を叩き折る。紙一重でスピンアウトが回避する。
「なかなかやるじゃないか。やはりお前手練れだな?是非洗脳されて俺の部下になってくれよ」
スカージが後ろを振り向いて言う。
「はっ、笑わせんな。俺だってこうみえて長年チーム背負ってるんだよ」
「お互い大変なものだな!」
「一緒にするな!」
「確かに。俺はお手軽に手下を増やせるんだよ!お前と違ってなぁ」
「俺にできること…………」
そう呟くと、スピンアウトはスピンレーザーを自分の身体に突き付けていた。
「ほほう?どうした。遂に死期を悟ったか?」
「まあ、そんなところだ」
「だったら容赦なく殺してやるよ!トレーラーユニット、バトルステーションモードぉ!一斉射撃ぁ!!」
スカージのビークルモード、タンクローリーのタンク部分が左右と上部に展開。ミサイルとレーザーが倉庫を火の海へと変えていく。
「ははははははは!破壊!殺戮!!これが生きてるってことだよなぁ!おい!」
高揚した笑い声は、攻撃の爆音をかき消すほどけたたましい。
「ははっ!はっはっは……。あ~。もうやめ。流石に飽きたな」
鳴りやむ砲撃。
「ん?」
粉々になった倉庫を見渡して、スカージは違和感を感じ取った。
「死体が見当たらんな……」
そこにチームレッドの三名がいたならば、そこにはロボットの死体が3個転がっていないとおかしい、とスカージは訝しんだ。
「!!」
スカージの身体に、高速で何かがぶつかる衝撃があった。
「なんだ!?」
「俺だっ!」
「その声、スピンアウト!?どこだ!!何故あの砲撃を受けて無事なんだ!」
「後ろだよ!」
「ぐああああ!」
またしてもスカージはダメージを受ける。打ち身で姿勢が維持できず、膝が崩れる。
「見えない姿、この鉛玉のぶつかるようなボディーブロー、高速移動!?」
「ご明察ぅ!」
「小癪なっ……!」
「説明してやるよ!俺は自分自身にスピンレーザーを当てた!どうなると思う?俺の身体は摩擦の影響を受けない!すなわち、俺は今誰にも止められないってことだ!」
「そのための閉鎖空間……!!」
スカージが目を凝らすと、倉庫の地面や壁、柱を蹴り、飛び回るスピンアウトの残像が確認できた。しかし気づいたとて回避できるようなスピードではない。
「ソレが俺の作戦!」
「だあああああ!」
倉庫の真ん中でもはや身動きの取れないスカージ目掛けて、スピンアウトの猛撃が襲い掛かる。
「おらおらおらおらおらおらおらおらおらぁ!!!」
「!!!!!!」
ラッシュの前に言葉は失われた。
「ぐっ、がっ!一時退散する!」
スカージが大剣を振り払い、バリン!と、ガラスの割れる音がした。空間に亀裂が生じ、スカージがその中へと入っていく。
「待てっ!」
スピンアウトもスカージの後を追って亀裂に飛び込む。
ドン!!
スピンアウトが何もない空間に衝突し、高速移動が解除された。
「いって!」
スピンアウトの追走もむなしく、空間の亀裂は閉じてしまったようだ。
「「たいちょ~~~~!」」
倉庫の外からスピンアウトを呼ぶ声がする。
「二人とも……。良かった。無事で……」
「隊長!私たちを逃がしてくれたんですかぁ!」
ロードレイジの目から水滴が零れ落ちる。
「間に合ってよかった」
スピンアウトは右頬の口角を上げた。
「あんな技いつの間に!」
リフトチケットは興奮している。
「いや、あれはぶっつけ本番だよ」
「「えっ!?」」
「さすが隊長!!」
「あの、後遺症とかないですか!?治します!!」
「ははは……。すまないな、心配かけて」
――――チームレッドは互いの身体を支えながら、ハイウェイの元来た道を遡った。
「チームレッド!!」
シルバーストリークが気づいて駆け寄る。
「心配かけたな……。そっちはどうした?紫のオプティマスは?」
「あ、あいつならさっき撤退しましたよ。もしかしてスカージを?」
ディープカバーも駆け寄ってスピンアウトの手を取る。
「まあ、なんとかな。もうこっちはボロボロだけど」
シルバーストリークとディープカバーが、スピンアウトの身体を持ち上げて歩き出す。
「おめぇさんたち!いいからこっちで傷を治すんだ!」
遠くからブレーカーの声がする。
「もう歩けな~い!」
「ブレーカーさん、お願いします!」
二人もブレーカーに抱えられて前線基地に戻っていく。
帰路に就く彼らの背後には、地平線に沈みゆくサイバトロン恒星が染める赤い空が広がっていた。
――――一方、激戦の繰り広げられた倉庫に、数名のTFが集っている。
「むう……。これは一体どういうことだ?スタースクリーム」
「はっ。メガトロン様。ただいまサウンドウェーブが解析中です」
「ウ~ン、コレハコノマエデキタ空中ノ亀裂ト同ジゲンショウダネェ」
「そうか。これは一度ショックウェーブ議員に相談するしかないわい。科学技術局の総力を挙げて対処するんだ」
「かしこまりました」
第二章 チームレッド編 終