チームブラック・ホワイト編 第一話
サイバトロン衛星のDユニット基地。バーンアウトは報告データを読みながら思案していた。彼女が率いるチームブラックには元DKチームのガードと、ボトロポリス紛争の英雄ロードレンジャーが所属している。チームの前線に赴くレッドやブルーとは違い難易度の高い特殊な任務をこなすことが多い。
「うーん、どうやらSG時空は複雑になっているな。悪に堕ちたオプティマスプライムにネメシスプライムを名乗るスカージというトランスフォーマー……」
「この世界ではディセプティコンが正義、ということですか」
バーンアウトの背後からデータを見ていたのはロードレンジャーである。彼はいわゆるミニボットに分類される小型TFで、黒い小型トラックに変形する。ロボットモードになると露わとなる橙色や赤がまぶしく映えている。
「ロードレンジャー。正義だなんて言葉を軽々しく使うものじゃない。おそらくだが、あくまでもオプティマスの存在が巨悪としてあるために、ディセプティコンは治安部隊として機能しているにすぎない」
「はぁ……」
バーンアウトの厳しい口調に、ロードレンジャーは言葉を詰まらせた。
「難しく考えることはない。正義とは、誰にでもあるもの。どちらがより正しいということはない。しかし、誰かが正義を捨てたとき、最後に正義を持っていた者が勝つのだ。君がそうであったように」
「そうかもしれませんね」
「いつか分かるだろう」
チームブラックの仕事部屋には重たい空気が満ちていた。ロードレンジャーは空気に押しつぶされないうちに、部屋を出た。
「おっす!ロードレンジャーくん」
廊下に出たロードレンジャー。バグバイトがこちら向かって手を振る。
「バグか……」
「おいおい、そのシステムの欠陥みたいな呼び方はないんじゃない!?」
「君はそういうやつだろ」
「言うね~」
「うるさい」
ロードレンジャーは廊下に出るよりも部屋に戻った方がマシだったな、と後悔した。
「レンジャー君はSG時空に行く気はないのかな?」
「SG時空、確かに興味はある。悪の司令官による混沌の世界なのか」
「ボトロポリスも似たようなもんだったろ」
「そうか……」
ボトロポリスは、彼らはサイバトロンにおいて、下等とされ虐げられたTFたちの移り住んだ惑星であった。
しかし、安住の地を見つけたそこでも過激派と保守派による争いが勃発した。結果、平和維持軍ガーディアンズと反逆者レネゲイズが戦い、最終的にリーダー同士の共倒れで争いは終結した。そして両軍のトップの後釜となったのがロードレンジャーとバグバイトだが、サイバトロンでは結局、ならず者同士の小競り合いとして評価されている。
戦争中、ロードレンジャーは率先してバグバイトを何度も逮捕しては逃亡される、ということを繰り返すしたうちに、二人は腐れ縁となった。しかし何度も犯罪を繰り返すバグバイトをロードレンジャーはどうすることもできないまま、お互いDユニットにスカウトされてまた出会ってしまったのだ。
「今はまだオートボットだけがDユニットと敵対しているが、ディセプティコンまで敵対関係になってしまっては存続の危機だ、とは思っている」
「なるほど。じゃあ、こっちからディセプティコンにアプローチして、味方につけておいた方がいいんじゃないか?」
「なるほどな」
「俺が手伝おうか?」
バグバイトが片手を差し伸べる。
「君の手は借りない。俺たちチームブラックで十分だ」
ロードレンジャーはその手を振り払った。
「そうかよ」
ロードレンジャーは仕事部屋へと戻ることとした。
「隊長。よろしいでしょうか」
「なんだ」
「SGディセプティコンに接触を図ることを提言します」
「いいアイデアだな。具体的には?」
「SGオプティマスやスカージと対抗するためには、やはり我々だけでは戦力不足です。SGディセプティコンに話を通しておくことは必要かと思われます」
「……メガトロンを相手にすることになるかも知れない。わかっているのか?」
「……僕は、”元”英雄です」
「ふふっ、大きな口を叩くようになったな」
――――数時間後、チームブラックはSG時空へと突入を開始。しかし転送先は、報告にあった都市部ではなく、工業地帯の倉庫の中心であった。
「ここは……?」
ロードレンジャーがあたりを見回す。
「倉庫のようだが、争いの形跡があるな」
折れた柱や銃弾の後、爆破の焦げ跡を見てバーンアウトがつぶやく。
「……後ろに殺意を感じる」
DK-3がシールドを構えて二人に話しかける。
背後には白いTFが三体、銃口を向けていた。
「そこの黒いトランスフォーマー、武装を解除してこちらを向きなさい!」
赤いラインの入った、翼をもつTFが恫喝する。
「僕たちは何も!」
「アヤシイナ、ナニモナイトコロカラ出テキタ!」
青い顔に緑のハチマキを巻いたTFも一歩前に出る。
「私たちに戦う意思はない。二人とも武装を解除しろ」
バーンアウトが落ち着いた口調で、両手を挙げて対応する。
「「了解」」
二人も武器を地面において両手を挙げた。
「ワシの名はメガトロン。お前たちの所属と目的を教えてくれ」
黒い頭に、青い砲身を携えた背の高いTFが語り掛ける。
「我々はDユニット。この時空に異変を感じ、調査に来た」
「この時空に異変だと?君たちは別次元から来たというのかね?」
「そうだ」
「では今君たちが出てきた亀裂について何か知っていることは?」
「現段階では何も。この時空につながっている、ということしか判明していない」
「なるほどな。ワシらも度々この現象を目撃し、調査をしていたところだ。力を貸してくれはしないだろうか」
「メガトロン様そんな急に!」
「スタースクリーム。ここはワシに任せてほしい」
翼をたずさえた、スタースクリームと呼ばれたTFがメガトロンに制止される。
「サウンドウェーブ。彼らを基地に案内しなさい」
「カシコマリマシタ!」
カタコトの機械音で元気に喋るサウンドウェーブと呼ばれたTFが敬礼した。
「あれがメガトロンとスタースクリームとサウンドウェーブ!?」
「雰囲気が真逆すぎる……」
ロードレンジャーとガードは耳打ちした。
「コッチダヨ!チェケラ!」
サウンドウェーブが先陣を切って歩き出す。
「なんですかチェケラって?」
「……」
ロードレンジャーとガードが首をかしげる。
そうしてディセプティコンとチームブラックは行動を共にすることとなった。
「どうやらワシらのことは知っているようだが?」
「そうだ。我々の知っているディセプティコンは400万年前のグレートウォーでエネルギー資源を求め旅立ったオートボットを追跡し、再び地球で争いを繰り広げることになっている」
「エネルギー資源……。確かに今は900万年に及ぶ戦争の真っ最中だが。オートボットは恐ろしい。いち警備部所属の民間ロボットによる反乱が始まってしまった」
「それはオプティマスプライム?」
「そうだ。彼は賢者アルファトライオンから与えられた叡智の証であるマトリクスを、あろうことか破壊のために使用している、如何ともしがたいことだ。我々ディセプティコンが力で押さえつけようとしたばかりに、それを上回る巨大な悪を生んでしまった。オプティマス率いるオートボットはこのサイバトロンを掌握し、罪のないディセプティコンも、彼に反抗したオートボットも皆殺しにしてしまった。我々はサイバトロン政府と結託し、技術力でこれに対抗しようとしている。このように優秀な仲間たちも揃っているしな……」
メガトロンは先を行くスタースクリームとサウンドウェーブを指してそう言った。
「オプティマスの背後にはスカージという黒いTFの存在が目撃されている」
「スカージ?」
「ネメシスプライム、とも名乗っていた」
「復讐、か……」
「ワシはもともと炭鉱夫でな。口だけで平和を語る上の者どもに虐げられるような毎日だったが、力と知恵でこのサイバトロンを取り戻そうとした。そう言った意味ではワシも復讐に取りつかれていたよ。しかしそれが新たな復讐の種を生み、その脅威に我々が晒されている現状を考えれば、これは改めねばならないと思ったのだ。オライオンはワシの古い友人でな。ワシがメガトロンを名乗る前からの知り合いだった。しかしアイアコンで再会したとき、ワシは友人を殺してしまったも同然。そして今、このサイバトロンはそのオプティマスプライムの恐怖に支配されている。これはワシの過ちだ」
これはDユニットでもよく知られている歴史である。1100万年前のサイバトロンはクインテッサから解放された200万年後=今から900万年前、グレートウォーが起こり、今もまだ続いている。もともと炭鉱労働者で後に剣闘士として名声を得て、おなじく上層部に不満を持っていた軍人たちの一派を吸収しディセプティコンをまとめあげたメガトロンによる、サイバトロン征服のためのクーデターであった。
戦いはサイバトロンの首都アイアコンで激化した。そこでエネルゴン倉庫の警備にあたっていたオライオン・パックスはメガトロンの攻撃に倒れ、負傷する。そしてアルファトライオンによりマトリクスを与えられたオライオンがオプティマスプライムに覚醒したことで、オートボットを率いる司令官となり、次第に戦火は惑星全域へと拡大した。これがグレートウォーである。
バーンアウトはもちろん、この程度の歴史の基礎知識は頭に入っていた。すなわち、今目の前にいる白いメガトロンもクーデターを決起した本人で間違いなく、そして今グレートウォーの真っ最中に間違いはない。
しかし彼女の記憶と食い違っていることがあるとすれば、400万年前にオートボットはサイバトロンを飛び立ち、ディセプティコンもその後を追って両軍は地球へと墜落はずなのである。
「メガトロン。オライオン、もといオプティマスプライムはどうしてあんなことに?」
精査のため、バーンアウトはメガトロンからより情報を引き出すことにした。
「オプティマスは……ワシに一度殺されたことで、今までの正義で抑えてきた怒りや憎しみを我々にぶつけはじめた。あろうことかマトリクスの力は悪意に共鳴し、それがオートボットたちを凶暴な戦士へと変えてしまったのだ」
「マトリクスが悪意に……?」
マトリクスとは、この世界を作ったとされる神、プライマスの創造した生命を司どる規制期の装置。叡智の証ともされる。
「おい!そこのディセプティコンども!止まりやがれ!」
ガラの悪い声が端から聞こえた。黒いボディに、紫色のファイヤーパターンをあしらった髭面のTFが立ちはだかる。
「ゲッ!”チンピラ ロディマス”ノオデマシダ!」
先頭を闊歩していたサウンドウェーブが立ちどまり、片手を横に上げて行進を制する。
「おいおい!ディセプティコン幹部クラスが勢ぞろい!この手柄で俺はオートボット司令官に……。はっ!いかんいかん!いけ!レッカーズども!」
ロディマスの指示で幾人かTFが飛び出す。
「お前がお前が!仕切るな仕切るな!」
高い声でまくしたてて喋るのは、黒いボディに今度は青い稲妻模様に入ったTF。
「アイツハ”オシャベリ”ブラーダヨ」
「ブラー!この私が相手をしてくれる!」
スタースクリームも我先にと飛び出した。
「スタースター!スタースクリーム!生意気生意気!」
二人による銃撃戦が始まる。
「サウンドウェーブ。ここであったが百年目である。覚悟しろ!」
軍人のようなたたずまいで迫ってくるのは、灰色のボディを持つTF。
「ゲッ!オマエハ”ブラスター軍曹”!」
「イジェクト!出撃である!」
「ラヴェッジ!ショータイムダヨ!」
二人がそれぞれ胴体のスイッチを押しお互い胸のパーツが開く。中から板状のTFが飛び出すな否や、イジェクトは小さい人型に、ラヴェッジは獣ような姿に変形し、にらみ合いを始めた。
「サウンドシステムの面汚しめが!」
「クチダケノイカレサウンドガ!」
サウンドウェーブとブラスターがお互い罵りながら殴り合いが始まる。
「メガトロン!俺の相手は貴様だ!」
ロディマスの片腕がバズソー(回転のこ)に変形し、メガトロン目掛けて切り込む。
「若造が!ワシに刃向かうなど100万年早いわ!」
メガトロンも自身の身長はあろうかという巨剣で迎え撃つ。
「隊長!僕たちはどうしましょう!」
ロードレンジャーがバーンアウトに指示を仰いだ。
「待ちなさい。奥から何か来る」
「……了解」
ガードが盾を構えて前に出る。
「……そこをどけ小童ども」
バーンアウトの視線の先には、メガトロンを僅かに凌ぐ巨体のTFがいた。
胴体は青く、腕は赤く、足は黒い。顔も赤い兜をつけているようだった。
「!!」
その顔を覗きこんだロードレンジャーは驚愕した。不気味な顔面を目撃した。それはまるで、資料で読んだ有機生命体の死骸で、「どくろ」と呼ばれたものにそっくりだったからだ。
「誰だお前は!」
ロードレンジャーは叫ぶ。
「……和が名はウルトラマグナス」
そう言ってウルトラマグナスが片手で大剣を振り下ろす。
「うおっ!」
「下がってろ少年!」
ガードの盾が間一髪で斬撃をはじき返した。
「ウルトラマグナスって、あのシティコマンダー!?」
困惑するロードレンジャー。
「俺が防いでいるうちに二人は射撃を!」
「了解!」
「了解」
寡黙なガードですら焦りを見せるほど、強烈な一撃が浴びせられている。
「ところでこいつの持っているその大剣、見覚えがある」
バーンアウトが迎撃の最中つぶやいた。
「隊長?何を急に?」
「よく見ろ。色こそピンクでなく赤だが、スカージの持つマトリクスソードと全く同じ形。つまり、こいつもマトリクス所持者である可能性が高い。オプティマス、スカージ、そしてウルトラマグナス。なぜマトリクスが三つもある?」
「たったひとつとされる叡智の証が?」
第三章 第一話 終
今回から短く分けて投稿します。以前のも分割編集するつもりです。
あと、ビジュアルの説明にどうしても無理があるのでどうにかして画像をつけたいです。