劇場版 機動戦艦ナデシコ -The another-   作:113(いちいちさん)

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前編

西暦2201年 ターミナルコロニー「アマテラス」

 

 

「第一ライン突破されました!」

「弾幕を張れ、コロニーに近づかせるな!」

 

 防衛艦隊の総攻撃の先には、コロニーへ高速で接近する一機の青いエステバリスがあった。ブースターとスパイクが設置された大型の肩部装甲に曲線状の大型胸部装甲、モノアイにブレードアンテナが設置された特徴的な頭部、手にはショットガン、背中に二丁のマガジン式ロケットランチャー、脚部には単発式ロケットランチャーと全身を武装したその機体はシールドを張りつつ攻撃を回避して行く。

 

 

「戦闘モードに移行しながらそのまま待機、当面は高みの見物です」

「加勢はしないんですか?」

「ナデシコBは避難民の収容を最優先します」

 

ナデシコB副長補佐マキビ・ハリ少尉の問いに艦長であるホシノ・ルリ少佐は答える。

 

「それに、過去四度の襲撃で彼は防衛部隊()()一人も死者を出していません」

 

 

 

 

「くそっ!すばしっこい奴!」

 

 エステバリス隊「ライオンズシックル」の隊長スバル・リョーコ中尉は味方機動部隊と共に正体不明の敵機を追撃していた。対する相手は逃げているばかりで一向に攻撃を仕掛けては来なかった。

 

「敵、第二ラインまで後退、味方機動部隊尚も追撃中!」

「ガハハハハ!!見たかねシンジョウ君!これこそ統合軍の力、新たなる力だ!!」

 

 オペレーターの報告を聞き、アマテラスの警備責任者アズマ准将は声を張り上げる。そこにオペレーターから再度報告が入る。

 

「ボース粒子の増大反応!」

「んん?」

 

 防衛艦隊の側面に突如謎の戦艦が現れる。

 

ラピス、頼む』

 

 脳内に響く男の声を聴き、ラピスと呼ばれた少女が目を開くと船体から木連が使用していた無人兵器「バッタ」が大量に放出され、艦隊と機動部隊に攻撃を仕掛ける。

 戦艦の砲撃と大量のバッタにより大打撃を受ける統合軍だったが、武装やブースターを破壊され戦闘不能にされるのみで死者は一人も出ていなかった。

 

「チッ・・・オレの相手は奴だ!お前らなんかじゃ無いんだよ!!」

 

 まとわり付くバッタを次々と薙ぎ倒して行くリョーコ。

 

「そこか!!」

 

 バッタの群れを片付けたリョーコは敵機へとライフルを撃つ。相手はそれを最小限の動きで躱すとリョーコには目もくれずコロニーへ向かう。

 

「今の動き・・・まさか、いや、そんな筈ねぇ・・・」

 

 相手の動きに既視感を覚えたリョーコだったが、直ぐに振り払い追撃を開始した。

 

 

 

 

「不意な出現、そして強襲。反撃を見透かしたかのような伏兵による陽動。その間に突入ポイントを変えての再強襲」

「やりますねぇ」

 

冷静に状況分析をするルリにナデシコB副長タカスギ・サブロウタ大尉は相槌を打つ。

 

「気付いたリョーコさんも流石です」

「どうします?」

「もちょっと待って下さい」

「は?」

「敵の目的、敵の本当の目的、見たくありませんか?」

 

 

 

 

 敵機がコロニーに近付くと一人でにゲートが開いて行く。

 

「13番ゲートオープン!敵のハッキングです!」

「13番?何だそれは、儂ゃ知らんぞ?」

「それが有るんですよ准将」

「どういう事だ?」

「茶番は終わり、と言う事です・・・人の執念」

 

 

 

 

『お久しぶりです、リョーコさん』

「ああ、二年ぶり。元気そうだな」

 

 敵機を追跡していたリョーコへとルリが通信を繋げる。ゲートの中には侵入者を無差別攻撃するトラップが大量に仕掛けてあったが、全て無力化された後だった。

 

「敵、第五隔壁へ到達!」

「プランO2を発動」

「シンジョウ中佐!何を企んでいる!君らは一体何者だ!!」

 

 アズマ准将は突如部下に拘束され、代わりにシンジョウ中佐が指揮を取り始めていた。

 

「地球の敵、木連の敵、宇宙のあらゆる腐敗の敵」

「何?」

「我々は、火星の後継者だ!!」

 

 そう叫びシンジョウが軍服を脱ぎ捨てると、赤と緑に(火星)マークが付いた服が現れた。

 

 

 

 青い機体が隔壁の前に辿り着くと、端末へケーブルを接続する。それと同時にリョーコが追い付くと敵機へ向かって接触回線用のケーブルを撃ち付ける。

 

『オレは頼まれただけでね。この子が話をしたいんだとさ』

『こんにちは。私は連合宇宙軍少佐、ホシノ・ルリです』

 

 ルリは敵機のパイロットへと語りかける。

 

『無理矢理ですみません。貴方がウインドウ通信の送受信にプロテクトをかけているので、リョーコさんに中継を頼んだんです』

「・・・・・・・・」

『あの、教えて下さい』

 

 

「貴方は、だれですか?」

 

 

 通信画面には真っ白な仮面を被った黒髪の男が写っていた。

 

 

「ラピス、パスワード解析」

『えっ・・・その声・・・』

 

 彼がそう言うと、隔壁のロックが解除された。

 

「時間が無い、早く行くぞ」

 

 彼の声に聞き覚えがあるリョーコだったが、隔壁が開くと中の光景に目を奪われた。

 

「何!?」

 

 リョーコはソレを確かめる為に中へと進んで行く。

 

「ルリ!見てるか!!」

『リョーコさん』

「何だよこれは」

『リョーコさん、落ち着いて』

「ありゃ何だよ!!」

 

 

 そこにあったのは、かつて地球と木星両陣営が争奪戦を繰り広げ、最終的に彼女達が破棄した筈の火星の遺跡「ボソンジャンプの演算ユニット」であった

 

『ヒサゴプランの正体はこれだったんですね』

「・・・そうだ」

『これじゃ・・・アイツらが浮かばれねぇよ・・・』

 

 ルリの言葉を肯定する仮面の男、悲痛な表情を浮かべるリョーコ。

 

「何でコイツらがこんな所にあるんだよ」

『それは、人類の未来の為!!』

「えっ・・・」

クサカベ中将!?」

『リョーコちゃん!右!!』

「何!?」

 

 その時、突如謎の通信が入ると同時に二人は攻撃を受ける。

 

「ヒサゴプランは我々火星の後継者が占拠する!」

 

 突如統合軍内でクーデターが発生し、アマテラスは火星の後継者と名乗る武装組織に占拠された。

 

『占拠早々に申し訳ない。我々はこれよりアマテラスを爆破、放棄する。敵、味方、民間人を問わずこの宙域から逃げたまえ。繰り返す・・・』

 

「くそっ!今度は何だ!!」

「ッ・・・!」

 

 リョーコと仮面の男は謎の敵機動部隊の攻撃を受けていた。男はショットガンで瞬く間に敵機を撃ち落とすと、両足のロケットランチャーを発射しさらに二機撃ち落とす。

 

『君は無関係だ、直ぐに逃げろ』

「冗談・・・な、何だ!?」

 

 突如コロニーが爆破されていき、それと同時に火星の遺跡頭上に謎の赤い機体が現れる。

 

「一夜にて、天津国まで延びゆくは、瓢の如き宇宙の螺旋」

 

 赤と青、二機の機体が向かい合う。

 

『弟の前で死ぬか?』

『弟?』

「ッ・・・!!」

 

 謎の男の言葉に怒りの籠った唸り声を上げる仮面の男。僅かに見える横顔に青白い光が走る。

 その時、ブロック状の遺跡が紐解かれる様に開き出す。

 

「ッ!!」

 

 開かれた遺跡を見たルリは驚愕する。そこには。

 

 

 

 

 抱きしめ合う様な体勢で遺跡に取り込まれたテンカワ・アキトとミスマル・ユリカの姿があった。

 

 

 

 

カイトさん!!カイトさんでしょ!!だからリョーコちゃんって!!」

 

 この光景をみたリョーコは堪らず仮面の男へ話かける。しかし、答えを聞く前に二機は爆発に巻き込まれた。

 

 

 

 

 リョーコは応援に来たサブロウタのおかげで間一髪難を逃れることができた。

 

「仲間が!引き返せ!ユリカとアキトが!!カイトさんが!!」

『艦長命令だ、悪ぃな』

「ルリ!応答しろ!聴いてんだろ、観てんだろ!生きてたんだよアイツら!ルリ!」

『戦闘モード解除、タカスギ機回収後この宙域を離脱します』

『了解!』

 

 ナデシコBは崩壊したアマテラスから去って行く。

 多くの謎を残して。

 

 

 




テンカワ・カイト
アキトの実の兄。28歳。
連合宇宙軍のパイロット。階級は大尉。
趣味は絵を描くことであり、よくルリに絵を描いてあげていた。
 第七艦隊のエースパイロットであったが、ナデシコ所属のエステバリス隊の隊長としてスカウトされた。
 成り行きで乗り込む事となってしまったアキトの精神的支柱となり、また彼の明るく優しい性格から他ナデシコクルーからも慕われていた。
 終戦後は第七艦隊へ戻り旗艦であるナデシコ級五番艦「サンスベリア」所属の機動部隊隊長となる。
 弟夫婦の事故死の知らせを受け皆が悲しみに暮れる中、唯一人事故原因の究明に奔走するが火星の後継者に拉致される。
 表向きには失踪とされた。
 
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