劇場版 機動戦艦ナデシコ -The another-   作:113(いちいちさん)

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後編

火星

 

『これは明らかに、宇宙規模の反乱である!!地球連合見地から見れば正しく、平和に対する脅威であろう!!』

 

 火星の後継者リーダー、クサカベ・ハルキは転移前の重要施設制圧部隊に対する演説を行っていた。

 

『我々は悪である!!しかし、時空転移は新たなる世界、新たなる秩序の幕開けだ!!』

『さあ!!勇者たちを導け!!』

「「「「イメージ!!」」」

「イメージ伝達率98%」

 

 制圧部隊はナビゲーターにより各々制圧目標である重要施設への転移を開始する。

 演算ユニットに取り込まれたアキトとユリカに光が流れる。

 

 

 

『アキト?アキトはどこへ行きたいの?』

『俺が行きたいのは・・・』

 

 青空の下、二人は向かい合い言葉を交わす。

 

 

 

 

「ハッ!?」

 

 カイトは一人、コクピットの中で目を覚ました。

 

 

 

 

国際高速通信社前

 

「ええそうです!!いきなり現れて・・・グアッ!?」

 

 地球にある各重要施設の警備隊は突然現れた制圧部隊の攻撃により次々と倒れていく。

 

「国際高速通信社、占拠」

「地球連合宇宙開発局、占拠」

「国際証券取引所、占拠」

「「「おおっ・・・」」」

「もうすぐですな、閣下」

「うむ、新たな秩序が始まる」

 

 次々と報告される占拠報告にクサカベは満足そうに頷く。残る制圧地点は「ネルガル重工ビル」と「地球連合総会議場」の二つとなった。

 

 

 

地球連合総会議場前

 

「警備の部隊、沈黙!」

「これより突入!!」

 

 制圧部隊隊長の掛け声とともに突入していく兵士たち。

 

「うりゃあ!!」

「ぬん!!・・・あれ?」

「「「「うおおおおっ!?!?」」」」

 

 扉を破壊しなだれ込む兵士達。間違って個室トイレに突入する者、カップルのキスシーンに遭遇する者など途中様々な事があったが、遂に会議室へとたどり着く。

 そこで待ち受けていたものは・・・

 

 

 

 

「ダメダメ!せっかちさん?」

「「「えっ?」」」

「るーたん///」

 

 元ナデシコクルーであり、現在は芸能活動をしているメグミ・レイナードホウメイガールズであった。また、何故かバンドを結成している連合軍の重鎮達に、頭にタライが命中したネルガル会長アカツキ・ナガレもいた。

 

「総会は?地球連合の総会はどうした!?」

 

 意味不明な光景に動揺する制圧部隊。

 

「総会出席者を人質に取るような組織じゃあ、()()()取れんよ?」

「ならば貴様が死ね!!奸賊アカツキ・ナガレ!!」

 

 火星の後継者の機動兵器「積尸気(ししき)」が天井を破壊して現れる。

 

「天誅!!」

 

 アカツキ達へと迫る二機の積尸気。

その時、突如一機のエステバリスが制圧部隊の前へと現れる。

 ネルガル重工の新型「アルストロメリア」を駆る月臣により、制圧部隊は瞬く間に鎮圧された。

 

 

 

 

ネルガル宇宙船ドック

 

「ルリちゃんとナデシコCが合流したそうよ」

「勝ったな」

「ええ。あの子とオモイカネのシステムが一つになったら、ナデシコは無敵になる」

「俺達の実戦データが役に立った訳だ」

 

 カイトとラピスの母艦「ユーチャリス」の補給の為に立ち寄った宇宙船ドック内でネルガル宇宙開発部部長エリナ・キンジョウ・ウォンとラピスを連れたカイトは会話していた。

 

「やっぱり行くの?」

「ああ」

「復讐・・・昔の貴方には一番似つかわしくない言葉だったわね」

「昔は昔、今は今だ」

 

 そう言って彼女の横を通り過ぎるカイトとラピス。

 

「補給、ありがとう」

「いいえ。私は、会長の使いだから・・・」

 

 二人の後ろ姿に向かってエリナは答えた。

 

 

 

 

火星

 

 火星の後継者本部は今、混乱の真っ只中にあった。

 

「当確全て取り消し?どういう事だ、説明しろ!」

『はっ、それが敵の新兵器と、説得に・・・』

「説得?」

 

 部下の報告に疑問を持つクサカベ達。モニターに送られて来た映像には制圧部隊へと演説をする月臣の姿があった。

 

「月臣!?」

「我が基地上空にボソン反応!」

「何!?」

 

 突如火星基地上空にナデシコCが現れる。

 ()()()()()()()イネスの協力によりボソンジャンプで火星まで送られたのである。

 

「哨戒機より映像、ナデシコです!」

「ナデシコ!?・・・ッ!?」

 

 その時、戦艦から機動兵器、基地のモニターまでありとあらゆるモニターに「お休み」の文字が浮かび上がり機能が停止する。

 

「「「制御不能!!」」」

「乗っ取られた?・・・妖精?」

 

 基地の惨状を見てヤマサキ博士は一人呟く。

 ルリとオモイカネの力により、火星全域のシステムは全て掌握されたのだ。

 

『皆さん、こんにちは。私は地球連合宇宙軍所属、ナデシコC艦長のホシノ・ルリです』

 

 ルリはクサカベ達のいる指令室へと通信を繋ぐ。

 

『元木連中将クサカベ・ハルキ、貴方を逮捕します』

「黙れ!魔女め!」

 

 ルリの言葉に反発する幹部達、その中でクサカベは一人沈黙する。

 

『既に第七艦隊が火星軌道上に迫って来ています。このままでは貴方達、殲滅されてしまいますよ?』

「何!?」

 

 ルリの言葉に動揺する幹部達。既に火星宙域の防衛艦隊は第七艦隊により壊滅させられていた。

 第七艦隊の容赦の無さを理解している幹部達は狼狽え、クサカベへと顔を向ける。

 

「・・・部下の安全は、保証して貰いたい」

 

 クサカベは潔く負けを認めるのであった。

 

 

 

 

「ボソン反応、七つ!」

「ルリルリ!」

「構いません」

「「「ええっ!?」」」

「あの人に、任せます」

 

 北辰の乗る「 夜天光(やてんこう)」と、部下が乗る六機の「 六連(むづら)」はナデシコCに対して強襲をかける。

 

『良いんですか?隊長』

「ジャンプによる奇襲は諸刃の剣だ。アマテラスがやられた時、我々の勝ちは五分と五分、地球側にA級ジャンパーが生きていたという時点で我々の勝ちは・・・ん?」

 

 その時、彼らの前にユーチャリスが現れる。艦首には青き戦士に乗るカイトの姿があった。

 

「決着を着けよう」

 

 八機は一斉に飛び出した。

 カイトはショットガンで北辰を撃つ。それが躱されるとお返しとばかりにミサイルが放たれるが、カイトはそれを頭部バルカンで全て撃ち落とす。そこに六人の部下達が一斉に襲いかかる。

 

 

 

 

『貴女は誰?私はルリ、これはお友達のオモイカネ。貴女は?』

 

 ルリはラピスへと語りかける。

 

『ラピス』

『ラピス?』

『ラピス・ラズリ。ネルガルの研究所で生まれた』

 

 ラピスは答える。

 

『私はカイトの目、カイトの耳、カイトの手、カイトの足、カイトの、カイトの・・・』

 

 ラピスの脳内に研究所を襲撃する北辰の姿がフラッシュバックする。

 

 

 

 

 カイトを追う六人衆。錫杖による攻撃を回避しつつ脚部の単発式ロケットランチャーを発射する。一発目は回避されるも二発目は命中し敵機の右腕を破壊する。

 そこへ背後から一機の六連が斬りかかるがカイトはそれをショットガンで受け止めるとバルカンで相手のメインカメラを破壊する。そして相手が怯んだ隙にショットガンを捨て掴みかかると、背中からチェーン・マインを取り出し相手に巻き付け、離脱と同時に爆破する。

 爆発の煙で一時的にカイトを見失う六人衆、そこに煙の中から両手にロケットランチャーを持った青き戦士が現れ攻撃を仕掛ける。

 攻撃を躱す六人衆であったが、先程の被弾により機動力が下がった一機に攻撃が命中し爆発四散する。

 二機撃墜され編隊が乱れた隙にカイトは北辰へと迫る。二機は互いに攻撃と回避を繰り返す激しいドッグファイトを開始する。

 

『隊長!!・・・何っ!?』

 

 二人を追いかける四機は突如横から攻撃を受ける。

 

『騎兵隊だ!!男のタイマン邪魔する奴ぁ馬に蹴られて三途の川だ!!』

『馬その一ヒヒーン!』

『その二のヒヒーン』

『おいおい、俺も馬なのかよ?』

 

 そこには援護に来たリョーコとタカスギ、それにアマノ・ヒカルマキ・イズミの姿があった。

 

『流石はカイト大尉、この短時間で既に二機撃墜している』

『これってあたし達いらなかったんじゃないの?』

『言うなって、中尉がカイトに良い所を見せたかっただけだろぉ?』

『ば、馬鹿!!何言ってんだこの野郎!!』

「気を付けろ!ヘラヘラしとるが彼奴らは強い!!」

 

 四人の活躍により、残りの六人衆は瞬く間に撃墜される。

 彼女達の戦闘を背景にカイトと北辰は向かい合う。

 

「よくぞここまで・・・人の執念、見せてもらった」

「勝負だ・・・」

 

 仮面を脱ぎ捨てるカイト。それと同時に持っていたロケットランチャーを手放す。

 

「抜き打ちか、笑止」

 

 戦闘が終了するのと同時に二機は動き出す。

 青き戦士と夜天光、お互いの拳がコクピットへと突き刺さる。

 

「グハッ・・・見事、だ・・・」

 

 変形した胸部装甲に押し潰され吐血する北辰、対してカイトは増加装甲によりコクピットは無事だった。

 

「今のは殺された仲間達の分・・・そしてこれは・・・」

 

 腕と背中の装甲がパージされると折り畳まれていた三つの重力波増幅板が展開される。

 

「アキトとユリカの分だ!!」

 

 叫びとともにグラビティブラストが発射され、夜天光は跡形もなく消し飛んだ。

 発射の衝撃により悲鳴を上げるフレーム、ボロボロと外れていく増加装甲、モノアイの下からはエステバリス特有のデュアルアイが現れる。青い装甲、特徴的な三つの重力波増幅板とX字の重力波アンテナ。

 中から現れたのは、かつての木連との戦争においてカイトの乗機であったXエステバリス、通称「エクスバリス」であった。

 

「ハアッ・・・ハアッ・・・」

 

 肩で息をするカイト、機体のデュアルアイからオイルが溢れた。

 

 

 

 

「・・・あれ?」

 

 火星の演算ユニットから切り離されたユリカが目を覚ますと、彼女の周りにはルリ達ナデシコのメンバーが集まっていた。

 

「皆・・・老けたね・・・」

「「「「はあぁー」」」」

「良かったぁいつものボケだ・・・」

 

 昔と変わらないユリカの姿に皆安心する。

 

「ん、んぅ・・・」

「あ、アキトも起きた?」

 

 ユリカの隣に寝かされていたアキトも遅れて目を覚ます。

 

「ユリカ?・・・はっ!兄貴は・・・カイト兄さんは!?」

 

 目が覚めたアキトはクルー達を見渡しカイトの姿を探す。

 

 

 

 

 ボソンジャンプにより何処かへと転移するユーチャリス。それを見送るリョーコ達。

 

「さよーならー!・・・ってほんとに行かせて良かったの?」

「行くってもんを、無理に引き止めらんねぇよ」

「でも・・・これからどうすんだよ、あの人・・・」

 

 

「帰ってきますよ」

 

 ルリは答える。

 

「帰ってこなかったら追っかけるまでです」

「ルリルリ?」

「だってあの人は・・・」

 

 皆に振り返るルリ、彼女は笑顔で言う。

 

「あの人は大切な人だから」

 

 

 

 

 

 




 これにて本編は完結です。最後まで読んで頂きありがとうございました。


エクスバリス
 ウリバタケが趣味で制作していた所にカイトも参加して完成させた機体。
 汎用性を上げる為にマニュピレーターの設置や重力波増幅板の折り畳み機構など様々な改良が行われ、実用可能になったがその分費用が増加し二人してルリに怒られた。
 欠陥があったグラビティブラストは改良により発射可能になったが、一度発射すると機体のオーバーホールが必要になる為、最後の切り札的扱いになった。
 コストの高揚と耐久性という根本的問題が解決できなかった事により量産はされなかったが、カイトの乗機となり終戦まで戦い抜いた。
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