劇場版 機動戦艦ナデシコ -The another-   作:113(いちいちさん)

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オリ主救済回です。


おまけ

火星の後継者によるクーデター終息から一ヶ月後。

 

 今回のクーデターにより連合軍上層部の大幅な異動が行われる事になり、また統合軍からの離反者が多数いた事と今回の事件を宇宙軍が実質解決した事により、両陣営の対立が更に深まることとなった。

 そしてヒサゴプランは無期限に凍結する事となった。

 

 

「もー、お義兄さん全然帰って来ないじゃない!」

「そうですね」

 

 現在、アキト、ユリカ、ルリの三人は事件前と同様にアキト宅で生活していた。

 アキトとユリカの二人は実験による後遺症等の検査の為一週間ほど入院した後、現在は経過観察の為定期的に通院している。

 幸か不幸か、演算ユニットとの相性が良かった事によりカイト達の様な強引な実験をされる事が無く後遺症などは残らなかった。

 

「ねーアキトもそう思うでしょ?」

「ああそうだな!・・・全くあの馬鹿兄貴は・・・」

 

 ユリカは朝食を作る為台所に立つアキトに向かって話しかける。

 二人はルリからカイトがどの様な理由で姿を隠しているかを聞いている。

 最初はカイトの現状に酷くショックを受けた二人だったが、たとえどんな身体でも側にいて欲しいというのが二人の、そしてナデシコクルー全員の答えだった。

 

「ルリちゃーん、あの時追っかけるって言ってたよね?もう行かない?」

「そう言われましても現在軍の立て直しの真っ最中です。それに連合軍の包囲網にも探知されず所在がわかりません」

「そうだぞユリカ、いくら何でもこの忙しい時にナデシコ使って探し回るなんて出来ないだろ」

 

 本当はルリもアキトも今すぐにでも探しに行きたかったが、現状それは無理な話である。

 

「・・・あ!そうだわ!」

 

 その時、ユリカが何かを閃く。

 

「ボソンジャンプでお義兄さんの所に直接飛べば良いのよ!どうして直ぐに思いつかなかったのかしら!」

「いや、飛ぶったって・・・」

「正確な座標が判らなければ不可能なのでは?」

 

 いくらボソンジャンプでも居場所が判らなくては意味が無い。そう考える二人に対してユリカは言う。

 

「ジャンプにはイメージが大切でしょ?私、夢の中でアキトと色んな所をイメージしたお陰で想像力が豊かになったの!」

「いや、その事は忘れた方が・・・」

「それでね、お義兄さんの事をイメージするの!そしたら飛べるんじゃないかと思って!」

「いや、いくら何でもそんな都合良く行くか?」

「成る程、一理あります」

「えっ?ルリちゃん?」

「それじゃあ早速お父さんに連絡するね!」

 

 そう言うと彼女は連合宇宙軍総司令官てある父ミスマル・コウイチロウへと連絡を入れる。

 

『おおユリカか!どうした?』

「ちょっとカイトお義兄さんを探しに行きたいからナデシコを使わせて欲しいの!」

「いや、そんな鉛筆感覚で借りれる訳・・・」

『ふむ、良いぞ』

「ええっ!?」

 

 意外にもナデシコの使用許可はあっさり出た。

 

『宇宙軍の方はジュンとアンダーソンに任せておけば良い。統合軍も大忙しでナデシコ一隻居なくなったとて誰も気にせん。ま、もしもの時用のカバーストーリーは用意しているから安心しなさい。その代わり、必ずカイト君を連れ戻して来なさい』

「ありがとう!お父さん大好き!」

『だ、大好きなんて言われたらお父さん嬉しくて泣き』プツン

「それじゃあお義兄さんを探しに行きましょ!」

「ははは・・・」

 

 コウイチロウの親馬鹿加減に呆れるアキトだったが、必ず兄を連れ戻す事を胸に誓ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 連合軍の目の届かない暗礁宙域の中を当ても無く彷徨うユーチャリス。

 たった二人しか居ないブリッジの中でカイトは一人考える。

 彼はアキトとユリカの姿を見る事なく旅立った、もしも二人の顔を見てしまったらこのまま残りたくなってしまうと思ったからである。しかし、この二年間彼は二人の救出と復讐を生き甲斐とし、それを達成した今、彼は生きる意味を見失っていた。

 

『前方にボソン反応』

「何?」

 

 ラピスの声を聞き意識を浮上させるカイト。彼がモニターを確認すると、艦の前方にナデシコCが現れる。

 

「ナデシコ!?どうしてここが・・・」

『艦の通信システムに侵入者・・・ルリ?』

『繋がった!久しぶりですカイトお義兄さん!』

「ユリカちゃん・・・」

 

 回線が繋がると画面にユリカとアキトの姿が映る。

 

『コラ馬鹿兄貴!さっさと帰ってこい!!』

『この一ヶ月、ずーっと待ってたんだから!』

「ッ・・・ラピス、ジャンプだ」

『了解』

『あっ!逃げた!』

 

 カイトはユーチャリスを転移させる。しかし、その後をナデシコは追いかけて来る。

 

「グスン・・・お義兄ちゃん、ひょっとしてユリカの事嫌いになっちゃったの?」

「兄さん・・・やっぱり俺、カイト兄さんがいないと駄目なんだ・・・」

 

 再度通信が繋がると今度は泣き始めるユリカとアキト。

 

「なんか、泣き始めちゃったんですが」

「泣き落としですね。あの人こういうのに弱いんです」

「いや、こんな事に引っかかるなら苦労しませんよ・・・」

 

『・・・わ、わかった!わかったから泣き止んでくれ!』

 

「引っかかった・・・」

「案外チョロいなアイツ」

 

 あっさり引っかかるカイトに対して呆れるハリとタカスギ。

 

「本当に?やったー!」

「言ったな兄貴!漢に二言は無いからな!」

『クッ・・・裏泣きだったのか』

 

「本当に、馬鹿ばっか」

 

 コントを繰り広げる三人を見て、笑顔で呟くルリであった。

 

 

 

 

 

 とあるホテルのパーティー会場。横断幕には「オカエリナサイ、テンカワ・カイト」の文字が書かれてあり、カイトと交流が深い人達が集まっていた。

 

「それでは皆様、テンカワ・カイトの帰還を祝って乾杯!」

「「「「乾杯!!」」」」

 

 ユリカの音頭を受け、各々自分の飲み物を飲む元ナデシコクルー達。

 味覚が無いカイトは皆を気遣い水を飲みながら、ラピスと二人でパーティーを眺めていた。そこへかつての仲間達がやって来る。

 

「あ、あの、カイトさん!良ければ統合軍に入りませんか?今丁度人手不足ですし、カイトさんの腕ならあっという間にエース間違い無しですよ!」

「勝手に引き抜かないでくれたまえ。彼は第七艦隊のエースなのだから」

「今は違うだろ!それに統合軍の一割を消し去ったのは何処の何奴だ?」

「上官への口の利き方がなっていないな小娘。それを言うなら離反者を多く出した組織体制に問題があるだろう。宇宙軍を見習いたまえ、此方は一人の離反者も出していない」

「ただ人が居ねえだけだろ!」

 

 カイトの所属をめぐり口論になるリョーコとアンダーソン。中尉と中将という本来なら大問題になる階級差だが、二人はカイトを通じて知り合っており、またナデシコ周りの緩い空気感にアンダーソンが理解を示している事もありお咎め無しである。

 

「カイト先輩!見て下さいよ!先輩達をモデルに描いた漫画『黒の契約者』って言うんですけど、これが大ヒットしてるんですよ!

それでですね、先輩にあたしのアシスタントになって欲しいんですよ!先輩絵上手いですし、白黒の漫画なら大丈夫でしょ?」

 

 カイトのラピスをモデルに描いたらしい漫画を持ち迫って来るヒカル。ちなみにジャンルは異能力バトル物らしい。

 

「聞いてくださいよカイト大尉、私の駄洒落は皆さんには高度過ぎて伝わらないみたいなんです。やっぱり私を理解してくれるのは貴方だけ・・・」

「二人のセンスがズレてるだけでしょ?」

 

 自身の駄洒落が受けない事を嘆くイズミとツッコむハルカ。

 ちなみにイズミの駄洒落はカイトには馬鹿ウケな為、周りからは二人のセンスは斜め上にズレていると言われている。

 

「久しぶりだなカイト君!実は今、新型フレームの開発をしているんだがイマイチパッとしなくてなぁ。君の意見を聞きたいんだよ」

「お久しぶりですねカイトさん。ふふっ、貴方にも娘ができたみたいですね?」

 

 設計図片手に意見を求めるウリバタケ・セイヤとオリエの夫婦。

 沢山の人達がカイトに会いに来る。

 

「どう?貴方は自分で思ってる以上に必要とされてるのよ?」

 

 騒ぐ仲間達の姿を眺めるカイトの隣に立ったイネスが言う。

 

「あぁ・・・本当だ」

 

 笑顔で呟くカイトの頬に一瞬、青白い光が走った。

 

「へい!テンカワ特製ラーメンお待ち!」

 

「「「「おおおぉ!!」」」」

 

 歓迎会が半ばに差し掛かった時、アキトがラーメンを運んで来た。

 パーティー会場にラーメンというアンバランスな組み合わせだが、皆が慣れ親しんだアキトのラーメンこそが今回のメインディッシュなのである。

 

「はいお待ち!」

 

 当然、今回の主役であるカイトとラピスにも配られる。

 カイトは麺を箸で掬うと冷ます事なく啜る。残念ながら味も熱も何も感じる事が出来なかったが・・・

 

「懐かしいな・・・」

 

 感慨深いものを感じるカイトであった。

 ふと横に居るラピスを見ると、彼女は一心不乱に麺を啜っていた。

 

「これは、何?」

「ラーメンだよお嬢ちゃん」

「コク、旨味、塩味、パーフェクト・・・!」

「気に入ってもらえて良かったよ、はいおまけ」

 

 初めて食べたラーメンを気に入ったらしいラピスにアキトは味付き卵をもう一つサービスする。

 

「では、ここからが本題です」

 

 カイトとラピスの前にルリが来て言う。

 

「一時的ですがカイトさんの感覚を戻す方法があります」

「えっ・・・」

「・・・!」

 

 ルリの言葉に驚くカイトと僅かに瞼を上げるラピス。

 

「あくまで可能性があるだけですが、やってみる価値はあります」

「・・・方法は?」

「貴方達二人の脳量子波を使います」

 

 脳量子波はIFSやボソンジャンプのイメージ伝達で使われる脳波である。

 

「貴女とカイトさんの脳量子波は精神感応が行えるほど相性が良い。だから貴女の感覚をカイトさんに共有する事は理論上可能です」

「I貴方自身の感覚を取り戻す実験は色々して来たけど、他人の感覚共有実験はしたこと無かったわね」

「ただ、この方法はあくまで彼女の感覚を共有するというだけでカイトさん自身の感覚はまだ治せません」

「でも、これが成功すればまだ希望が持てるわ」

 

 ルリとイネスの説明を聴いたカイトとラピスは互いを見つめ合う。すると二人の顔に光が走る。

 

『カイト』

『ラピス・・・』

『私の全てはカイトから貰った。だから今度は私がカイトに全てをあげる』

『ラピス・・・』

『私はカイトの目、カイトの耳、カイトの手、カイトの足』

 

 その時、カイトは自分の掌に熱を感じた。驚きラピスを見ると、彼女はラーメンの丼に手を当てていた。

 

『私の温もりはカイトのもの、私の感動はカイトのもの、私の幸せはカイトのもの・・・』

 

 これはカイトの感覚が戻った訳では無くラピスの感覚を共有しているだけだが、今のカイトにとっては十分過ぎた。

 

『今はこれが限界、でもいつかカイトに全て返してあげる』

『いや、これで十分だよ』

 

 カイトとラピスは二人一緒にラーメンを食べる。

 

『カイト、美味しい?』

「ああ、美味しいよ。本当に」

 

 カイトの瞳から涙が溢れた。

 




かなり無理矢理ですが一応救済回という事でした。最後まで読んで頂きありがとうございました。
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